△男はつらいよ 噂の寅次郎(1978年 日本 104分)
監督/山田洋次 音楽/山本直純
出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 志村喬 大原麗子
△第22作 1978年12月27日
南無観世音寅地蔵尊。100円玉入れちゃったんだけどお釣りくれねえかな、お釣り。そうか、この回はこんにゃく物語の回だったか。
寅が、博の父親の志村喬に木曽路で遭うんだけど、芸者遊びの果てに志村喬がお開きにしろといっても聞かず、眠いといったら外で遊ぼうと連れ出し、あげくの果てには志村喬がさしだした財布を遠慮なくさっとあずかって出ていく始末だ。
志村喬が「まいったな」とつぶやくのはあたりまえで、今昔物語をこんにゃくの作り方と聞きまちがえるのはいつものことながら、恋女房の墓をあばいて腐り果てた姿に無常を感じて仏門に入ったという挿話を聞き反省したのはいいし、今昔物語を借りて出ていったのは百歩譲っていいとしても、財布から電車賃まで拝借するというのはどうだろう?
じれったいほど初回の寅のまんまで、これが親なら「泥棒だぞ」と説教するところだ。
まあ、この今昔物語が『とらや』で働く大原麗子に出会う伏線になるし、やがて志村喬が『とらや』を訪ねて、不仲というより相容れない仲の博のために安曇野に土地が買ってあることをさくらにそっと告げるという引っ張りにもなり、またついでながら、その話をした際、さくらが「兄がお借りしたお金をお返ししておいてくれ」とまるで言付かったように拝借金を返そうとするという展開になる。
もちろん志村喬が受け取るはずもないんだけれども、こうした筋立ては実は巧みで、さすが山田洋次ってところだけど、どうも寅がね、なんだかね。あまりにも成長しないどころか、ここまで無遠慮だと笑うどころか不愉快になってくるのは、ぼくだけなんだろうか?