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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
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男はつらいよ 噂の寅次郎

2019年10月31日 00時03分16秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 噂の寅次郎(1978年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 志村喬 大原麗子

 

 △第22作 1978年12月27日

 南無観世音寅地蔵尊。100円玉入れちゃったんだけどお釣りくれねえかな、お釣り。そうか、この回はこんにゃく物語の回だったか。

 寅が、博の父親の志村喬に木曽路で遭うんだけど、芸者遊びの果てに志村喬がお開きにしろといっても聞かず、眠いといったら外で遊ぼうと連れ出し、あげくの果てには志村喬がさしだした財布を遠慮なくさっとあずかって出ていく始末だ。

 志村喬が「まいったな」とつぶやくのはあたりまえで、今昔物語をこんにゃくの作り方と聞きまちがえるのはいつものことながら、恋女房の墓をあばいて腐り果てた姿に無常を感じて仏門に入ったという挿話を聞き反省したのはいいし、今昔物語を借りて出ていったのは百歩譲っていいとしても、財布から電車賃まで拝借するというのはどうだろう?

 じれったいほど初回の寅のまんまで、これが親なら「泥棒だぞ」と説教するところだ。

 まあ、この今昔物語が『とらや』で働く大原麗子に出会う伏線になるし、やがて志村喬が『とらや』を訪ねて、不仲というより相容れない仲の博のために安曇野に土地が買ってあることをさくらにそっと告げるという引っ張りにもなり、またついでながら、その話をした際、さくらが「兄がお借りしたお金をお返ししておいてくれ」とまるで言付かったように拝借金を返そうとするという展開になる。

 もちろん志村喬が受け取るはずもないんだけれども、こうした筋立ては実は巧みで、さすが山田洋次ってところだけど、どうも寅がね、なんだかね。あまりにも成長しないどころか、ここまで無遠慮だと笑うどころか不愉快になってくるのは、ぼくだけなんだろうか?

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男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく

2019年10月30日 23時42分15秒 | 邦画1971~1980年

▽男はつらいよ 寅次郎わが道をゆく(1978年 日本 103分)

監督/山田洋次 音楽/山本直純

出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 竜雷太 木の実ナナ

 

▽第21作 1978年8月5日

 夢で、寅の帽子の形をしたUFOが去っていくとき、ピンクレディの『UFO』が流れ、あ~ヒットした年か~とおもった。

 寅に「あいかわらず、ばかか」といわれるちょび髭の佐山俊二の「ばかに、ばかよばわりされるほど、こっちは、ばかじゃねえんだ」という台詞と、それが伏線になった後の反対の「お利口そうで」というやりとりは常道だとして。

 山田洋次監督がSKD(松竹歌劇団)の脚本・演出に迎えられたのは1979年だから、この作品が封切られた翌年ってことになるんだけど、この頃からSKDはかなり低迷してもがき苦しんでたのかしらね。

 ぼくはSKDを一度しか見たことがなくて、でもそのときはSKDの得意技の『舞台後方、6段落としの瀑布』を見られた。

『夏のおどり』だったんじゃないかっておもうけど、あれはかなり凄かった。ただ、同じ歌劇団とはいえ、最後の頃のSKDはどちらかといえば日劇ダンシングチームと両翼だったような気がする。あたりまえか。

 いずれにしても、国際劇場の裏方を描いた作品ってこれひとつだけなんじゃないかっておもったりするんだけど、だとしたら映像遺産になるんだろうなって気はする。

 ま、それはさておき、この回はきつかった。

 武田鉄矢も『幸福の黄色いハンカチ』の前日譚みたいな感じで登場して、もうなんだか、かわいそうで。いつまでたっても成長しないでわが道をゆく寅と、それをだらだら漫然と観ている自分とが、どうにも辛くなったわ。

 ところで、おいちゃんの夢は「満洲で馬賊になりたかった」で、おばちゃんは「日本橋の大きな呉服屋さんの奥さん」らしいんだけど、なるほどそういう時代だったのね。まあしかし、ぎりぎりの時代錯誤なんだろうけど。

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男はつらいよ 寅次郎頑張れ!

2019年10月29日 23時32分57秒 | 邦画1971~1980年

 ▽男はつらいよ 寅次郎頑張れ!(1977年 日本 95分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 中村雅俊 藤村志保

 

 ▽第20作 1977年12月24日

 いや、ほんとに、寅次郎頑張れ!だよ。

 ラスト、いつまでたっても、まるで変わらない、いや、変わることのできない寅は『寅次郎純情詩集』同様、また、旅芸人坂東鶴八郎の一座に出くわし「先生」と呼ばれ、軽トラの荷台に乗り込んで町まで送っ手もらいつつ、おそらくまた、今夜の芝居に呼ばれるにちがいない。

 結果は、わかってる。

 いつものとおりたかられて、いいとこ見せようと大盤振る舞いし、あげくのはてに無銭飲食で警察に捕まり、さくらは正月明けにその町へと急ぐのだ。あの軽トラは、地獄に堕ちていくための火の車だね。

 にしても、大竹しのぶ、当時のお決まりの「とぼけながらもほんとは芯が強いんだよ的な演技」だったし、中村雅俊もあれこれ辛かったろう。いくら、世話になってる松竹作品とはいえ、田舎出の純情で奥手な配線工というのは苦手な役だったろうなあって。

 それはともかく、雅俊さんに「寅さんをこれ以上傷つけるな」と卑怯な心を見透かされたように告げられる藤村志保だけど、実は、寅も寅だ。店の留守番を任されながら、それすらできずに、藤村志保に会いたい一心で平戸島から柴又まで帰ってくる無責任さは、どうだろうな。

 まじで、頑張れよっておもうわ。

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男はつらいよ 寅次郎と殿様

2019年10月28日 00時54分31秒 | 邦画1971~1980年

 ▽男はつらいよ 寅次郎と殿様(1977年 日本 99分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 嵐寛寿郎 真野響子

 

 ▽第19作 1977年8月6日

 久しぶりに寅が普通にフラれるんだけど、さすがに、嵐寛十郎の時代錯誤設定はきつい。夢の設定が鞍馬天狗ってのは、まあ、嵐勘十郎へのオマージュとおもっていいんだろうけど、それはそれとして、いやまじ、つらかったわ。

 それと佳境、お相手の真野響子なんだけど、なんとも唐突に付き合ってほしいといわれている人がいると告白する。いやまじ唐突だから。

 にしても、伊予大洲の殿様に藤堂家とか設定しちゃっていいのだろうか。

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男はつらいよ 寅次郎純情詩集

2019年10月27日 23時43分07秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 寅次郎純情詩集(1976年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 檀ふみ 京マチ子

 

 △第18作 1976年12月25日

 京マチ子が没落したお嬢さんで戦争成金の嫁になって檀ふみを産むという設定はなんとなく覚えてるけど、ここでも寅は両想いだ。

「お母さんを好きだったの?」

「そんなわけねえだろ」

「お母さんは寅さんを好きだったわ。亡くなる前の1か月は人生で一番楽しそうだったもの」

 とかいう流れは、この頃から寅がモテる男になっていく感じなんだろね。

 ただ、こういう逃げ腰というか、土壇場でとぼける寅を卑怯というのか、あるいは意気地なしとなじるのか、よくわからないけど、見ていてあんまり気持ちのいい態度じゃないな。男らしくないっていえばいいのかどうかもわからないけどさ。

 にもかかわらず、最後の柴又のホームでの見送りも、やけに物分かりのいい兄妹になってんだよね。これはどういうことなんだろう。京マチ子の心情に対して、寅はどういう配慮をもって臨むべきだったんだろう。京マチ子の寅への気持ちが本気だったとしたら、童貞のような臆病さでたじろいでしまっていいのだろうか。

 難しいな。

 アラビアのトランスとかいってる場合じゃないぞ、まじ。

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男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け

2019年10月26日 11時43分57秒 | 邦画1971~1980年

 ◎男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け(1976年 日本 109分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 宇野重吉 太地喜和子

 

 ◎第17作 1976年7月24日

 そうか、ジョーズがヒットした頃か。

 まさか、寅の夢の中でみんな食われちゃうとはおもわなかった。ていうか、まったく覚えてなかった。嫌だね、ほんと、この物覚えの悪さは。

 でも、この『泣くな嘆くな影法師』の歌詞は知らないな。何番の歌詞なんだろう。

 さらに、そうか、満男も小学校に入学か。だから、さくらのショットじゃなくてとらやから始まるのか。

 しかし、最初から帰ってきた寅が「懐が旅先だから」と秀逸な洒落を飛ばしたあと「まさか、500円てわけにも行かないか」という展開はいいとして、そうね、入学式で寅のせいでいじめられるさくらの話は身につまされるな。

 竜造の「みんなが嗤うっていうことはだよ、今までおまえが嗤われるようなことをしてきたからなんだよ。そこんとこ、ようく考えてみろ」という台詞をいわせてしまう寅と、それが図星だと知っていながらも「おれがなにをしたっていうんだよ」と開きなおり飛び出す寅に対してまた慰め、機嫌をとってしまう周りの甘やかしがこういう寅の生き方をつくっちゃったともいえるわけで、このあたり、よくわかる日本人の家庭なだけに悲しいくらい苦しいね。

 寅と態度と考え方には腹が立つけど、でも、それだけ、山田洋次が上手いということなんだよね。

 龍野か~。ええところだな~。あら、市長室に三木露風の『赤とんぼ』が大きく貼られてんのね。ま、宇野重吉演ずる画家の対比と捉えればいいわけだけど、かなり皮肉な諷刺に見えるんだよね。いいのかしら。

 あ~けど『夕焼け小焼け』の流れるタイミングはうまいなあ。つまりは、宇野重吉が露風の見立てなのね。

 岡田嘉子の品の良さが大地喜和子との対比で余計に際立つけど、やっぱり、榊原るみも好いなあ。

 あれ?大地喜和子がとらやに来たとき覗きに来た工員たちに『てめえら、さっさと工場行って働け。職工っ』といったあと、一瞬だけストップモーションになるんだけど、なんか妙な感じがするのは気のせいかしら?

 太地喜和子と岡田嘉子に、なにもかも掬い取られた観のある回だね。

 ていうか、寅、もてるじゃん。

 200万をだまし取られたことに怒って逮捕されるのを覚悟して談判におよぼうとする寅も見せるし、それに感涙する太地喜和子はほぼまちがいなく寅にほだされたはずなんだけど、ところが、なんでか知らないままラストを迎える。両想いのまま終わるんか、この回は。

 ちなみに、宇野重吉と岡田嘉子の初恋の人と添い遂げられなかった話はまあよくある挿話ながら、もごもごいっててよく台詞のわからない宇野重吉とあんまり上手くない頃に親子共演をはたした寺尾聡はともかく、岡田嘉子は綺麗だった。

 いや、そんなことより『男はつらいよ 奮闘篇』でヒロインを演じた榊原るみが、なんで、お手伝いさんになってるんだよ!?

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男はつらいよ 葛飾立志篇

2019年10月25日 00時25分43秒 | 邦画1971~1980年

 ◎男はつらいよ 葛飾立志篇(1975年 日本 97分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 小林桂樹 樫山文枝

 

 ◎第16作 1975年12月27日

 まさか夢で噴き出すとはおもってなかった。

「わたしがお兄ちゃんのその特徴のある四角い顔を忘れるわけがないじゃない」

「他人の空豆よ」

 ほんと、笑ったわ。

 笑うといえば、ま、時代というのかな、眼鏡をかけて気取って本でも読んでればインテリという、なんとも短絡的な考えをそのまま実行する寅次郎に笑った観客がいたあの頃。まさに、時代なんだよね。でも、どうなんだろう。いまだにこのギャグで大笑いする観客っているのかしらね?

 ただまあ、桜田淳子が修学旅行生になって『とらや』を訪ねてくるんだから、要するに1975年というのはそれくらいの時代だ。

 で、当時、いかに『ノストラダムスの大予言』が凄かったかといえば、両想いなのに振られたとおもって旅に出る小林桂樹が、おんなじ名前の田所教授で出演してるってことだ。これは、ほんと「へ~」だね。

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男はつらいよ 寅次郎相合い傘

2019年10月24日 00時16分19秒 | 邦画1971~1980年

 ☆男はつらいよ 寅次郎相合い傘(1975年 日本 97分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 船越英二 浅丘ルリ子

 

 ☆第15作 1975年8月2日

 リリーの第2弾だけど、シリーズ中、出色の出来なんじゃないかしら。

 海賊タイガーとチェリー。上條恒彦も米倉斉加年も、登場する。豪華な夢だな。

 THE ENDから覚めた劇場はいかにも当時の地方の小屋で、そういえばこんな木の背もたれだったなあ。タイトルバックに荒川の土手を自転車で走るさくらとはおもわなんだ。帝釈天で、笠智衆も俄次郎も出てる。夢ばかりかタイトルバックまで豪華だな。

 そうか、いきなりリリーが訪ねてくるところから始まったんだっけ。寅に会いに来たんだね。好きなんだね。こんなに正直な展開だったんだあ。

 寅が「ほんとはてめえ棄てられたんだろ」とリリーにいい、これを受けて「あんたまでそんなことを。あんただけはそんなふうに考えないとおもってたんだけどね」というときの浅丘さんの表情は好いね。そのあと、夕暮れの函館の桟橋にひとり残って海をみつめる寅のかたわらで焼き玉エンジンが掛かる演出もまた上手い。

 笠智衆がリリーと聞いて「アメリカ人か?」と訊くくだりから、八百屋の主婦どもの「かたぎじゃないね」ていう展開、さらには「寅がリリーのヒモだ」ていう反応まで、ほんと、うまいな。

 とおもってたら、リリーの歌ってる場末のキャバレーまで送ってきた寅の「リリーにあんなところで歌わせちゃいけないよ。おれはなんだかかわいそうでしまいにゃ涙が出てきたよ」というまではよかったんだが、そのあと、いつものように寅の独演会だ。これはいかんな。もういいかげんにしてもらいたいって気分になっちゃう。

 ただ、寅が船越英二からもらったメロンを食べられてしまったことに癇癪を起こして、いつもどおり周りがしゅんとなったとき、朝丘ルリ子が一喝するのだが、これが他の回にはなくて、とっても好いんだな。すかっとする。

 と同時に、寅とリリーの似たもの同士の哀感というか腐れ縁の予感は他の回にないね。

 あるとすれば『夕焼け小焼け』かなあ。

 実際、寅にふられたとおもいこんだプライドから「ばいばい」とだけ言い残して去っていくっていう構図は、ほかの回にはないわけで、たとえば、八千草薫の『寅次郎夢枕』が似たようなものだけれども、あのときは寅の人生について、とらやの連中もまだまだ楽観的だったし、さくら自身も切羽詰まったようなところはなかった。

 それだけ、みんな、歳をとってきたってことなんだろうね。

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男はつらいよ 寅次郎子守唄

2019年10月23日 00時09分49秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 寅次郎子守唄(1974年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 上条恒彦 十朱幸代

 

 △第14作 1974年12月28日

 おいちゃん、下條正巳に。

 タイトルバックは唐津の「くんち」なんだね。

 上条恒彦もこのときは恋敵として登場するけど、次からしばらく夢の中の登場人物になるんだよね。

 ま、そんなことはともかく、ストリッパー春川ますみの挿話の方がおもしろいんじゃないかっておもえるくらい、看護婦の十朱幸代の話はなんだか昔の青春物を観てるような気がしてたんだけど、そりゃそうだよね、70年代だもんね。

 労働者の合唱倶楽部が舞台になってるのも、いかにも当時の雰囲気っていうかね。かれらは、統一劇場の青年たちなんだろうか。なんか『同胞』をおもいだしちゃうな。

 ただまあ、日頃から注意深くて怪我なんかしないはずの前田吟がいきなり怪我をするのは、話を病院に持っていかないといけないからなんだけど、う~ん、仕方ないのかな。

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男はつらいよ 寅次郎恋やつれ

2019年10月22日 14時29分58秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 寅次郎恋やつれ(1974年 日本 104分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 宮口精二 吉永小百合

 

 △第13作 1974年8月3日

 吉永さん、若いな~。

 折れそうなくらいほっそりしてて、ミニスカートだの太いベルトにGパンだのと、こういう時代もあったんだなあ。

 吉永さんが二回出てるのは知ってたけど、やっぱり観てなかったわ。たぶん、この作品くらいから寅離れが始まってたんだろう。結局、撮影されなかったけど、この後日談となる話も構想されてたんだってね。でも、どうなんだろう。

 津和野には行ったことないけど、たぶん、今もこの頃とあまり変わらないんだろうか。大島の場面はあんまり大島らしくなかったから、ロケには行かなかったのかもしれないね。そんなことは、まあいいっか。

 ふとおもったんだけど、吉永さん、この頃からお得意のおもいつめた焦点の合わない瞳でカメラを見つめる演技が始まってるんだね。

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男はつらいよ わたしの寅さん

2019年10月21日 14時09分32秒 | 邦画1971~1980年

 ◇男はつらいよ わたしの寅さん(1973年 日本 107分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 津川雅彦 岸惠子

 

 ◇第12作 1973年12月26日

 夢の中とはいえ悪徳金貸しとはいえ河原に火が立ち上る市民蜂起の皮切りとはいえ、寅が拳銃で撃ち殺しちゃうとはおもわなんだ。

 帝釈天の前を横切ってとらやにやってくるさくらから始まるのが恒例になるのは、この回からなのかしら。

 でも、そうか、とらやの人達が別府旅行に出て、寅がひとりで留守番ていう展開は初めてだね。ていうか、あれだね、電話に順番に出たり長くなるから切ろうとする光景や、じゃあばいばいおならぶうとかいう決まり文句も含めて、すべては過去なんだね。前にさくらが入れ替わってやりたいというが、それがほんとになるってことなのね。

 しかし、太宰久雄演じるタコ社長は哀れで見ちゃいられないというが、離れていてまでも迷惑をかける寅は、自分のわがままにも気づかないほど頭が悪いわけなんだけれども、見ちゃいられないのは観客だよねといいたくなるような演出なんだけど、よくもまあこれだけ不愉快な主人公を設定できたもんだとおもったとき、寅がかいがいしく晩ご飯をつくり、お風呂まで沸かして待っているという図が効いてくる。

 うまいな、まったく。このあたりは悔しいくらいに、うまい。観客の気持ちを転がしてるっていうんだろうか。

 昔馴染みのマエタケこと前田武彦と寅が堤防横の道をゆくと、その下の岸辺を小学生のガキふたりがやってくる。かつての寅と前田武彦なんだよね。このカットも、秀逸だ。

 岸惠子との出会いは喧嘩なんだけど、そういえば、喧嘩からていうのは初の展開かもしれない。

 それはともかく、熊とキリギリスね。あ~似てるわね、ふたりとも。でも、カバに似てる。

 しかし、なんでかわからないけど、訪ねてくるんだよね。マドンナと呼ばれる女の人たちは、みんな。結果、さくらを悲しませることになるんだけど、ま、それはさておき、津川雅彦の気障っぷりは凄いな。ここまで気障になれた役者は津川さんだけなんじゃないかしら。

 岸惠子のエレガントぶりもだけど、この上品な華やかさはどこからくるんだろ。

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男はつらいよ 寅次郎忘れな草

2019年10月20日 10時08分30秒 | 邦画1971~1980年

 ◎男はつらいよ 寅次郎忘れな草(1973年 日本 99分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 松村達雄 浅丘ルリ子

 

 ◎第11作 1973年8月4日

 25年後の1998年にアニメまで作られてるんだね、知らなかった。

 でも、この回の脚本は秀逸だな。山田洋次に加えてこれまでの相方だった宮崎晃に浅間義隆が参加してる。脚本は複数で書けば書くほど良くなるわけではないけれども、この回の場合、それは成功しているとおもっていいんだろう。いや、ぼくがいうのはなんだけど、うまい。

 リリーとの出会いからして将来このふたりは一緒になったら好い夫婦になるんじゃないかっていう妙な気の合い方と物悲しさが混ざり合ってる。

 どうしようもない男と女が幸せになろうとして頑張るんだけど、でもすれ違ってしまって、せっかく手が届きかけた幸せが擦り抜けていっちゃう辛さがそこかしこに散りばめられてる。

 浅丘ルリ子のメイクも並はずれて好い。毒蝮三太夫の嫁になって寿司屋の女将になったときの自然なメイクもいいしね。

 上手だね、この回は。

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男はつらいよ 寅次郎夢枕

2019年10月19日 19時57分37秒 | 邦画1971~1980年

 ◇男はつらいよ 寅次郎夢枕(1972年 日本 98分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 田中絹代 八千草薫

 

 ◇第10作 1972年12月29日

 前回、森川信の急死で、急遽、おいちゃんが松村達雄になったんだけど、もうその違和感は抜けてる。

 また、数回前、併映されるのもハナ肇の為五郎シリーズからドリフに変わったりして、この時代はなんだか変化があったんだね。

 で、そのハナ肇への餞のように、夢の中で「マカオの寅」が登場する。ちょうど『喜劇 一発大必勝』の「ボルネオの寅吉」のようだけど、まあその寅が登場して書生の博と女給のさくらを救う。たぶん、この回から夢のパターンが出来てきたってことなんだろう。

 日出塩駅を通過するSLの迫力はたいしたもんだけど、ほんと、このシリーズにSLは多いね。

 帝釈天の境内で遊んでるガキんちょの母親が呼びにきて「遊んでばかりいるとね、寅さんみたいになっちまうんだよ!」といわれたり、寅の縁談を探すと町中がそっぽをむいたしまうっていう町では厄介者あつかいだ。いやこの頃の寅は、源公が帝釈天の門扉に「トラのバカ」と落書きするようにどうしようもない低能のろくでなしなんだよね。いつからまともになったんだろう。

 ところでこの回で、源公が「バカ」と書いた寅の泣いた似顔絵を鐘に貼って憎々しげに撞くんだけど、むかし、これがよく受けたんだよね。劇場はなぜか笑いの渦だった。

 それと、寅が出ていくときのすったもんだだけど、この回がいちばんいいかもしれない。寅の縁談話がこじれるんだけど、「おれが一番つらいおもいしてんだぞ、そうおもわねえか」と怒鳴る寅に、さくらは泣きながら「そうおもうわよ」とうなずき「だけどね、ほんっとにつらいのはおにいちゃんよりおいちゃんたちかもしれないのよ」と顔をおおったとき、寅は気がつくんだな。

「そうよな。さくら、いちばんつれえのは…」

 といってさくらをふりかえるんだ。この瞬間、ヒロインはさくらなんだなってのがわかるね。マドンナは、やっぱり、ゲストなんだよね。

 で、このあと信州の引きの絵になってビバルディが掛かる。染み入るような曲調から転調して物語も転じ、登場するのが田中絹代。うまいな。タイトルがトメになってるだけあるな。

 そこで語られるのが、ハナ肇の為五郎ならぬ為三郎ていう旅者の死にざまだ。寅の将来だね。このままじゃこうなるという暗示だね。

 墓参りまでバロックだ。うまいな。

 しかしせっかくのいい雰囲気が、奈良井の宿で寅をかたった登と再会してからもビバルディだ。これはちょっとな。

 ちなみに、足を洗えと置き手紙して朝いなくなる寅の姿を追って登が駅を見下ろしたとき、やっぱりSLが駅を通過する。ここでもSLか~って話だ。

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男はつらいよ 柴又慕情

2019年10月18日 01時00分40秒 | 邦画1971~1980年

 △男はつらいよ 柴又慕情(1972年 日本 102分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 宮口精二 吉永小百合

 

 △第9作 1972年8月5日

 木枯し紋次郎が流行ってた頃だったんだろうか?

 夢の中の寅は、紋次郎気取りで札束を放り投げるんだけど、単に海辺の貧乏な夫婦に金を恵んでやるだけの話なんだよね。

 わざわざロケをするほどの話かと観客におもわせるのは、あまりにもひどいロケセットと現代の住宅地が筒抜けになってる茶番劇のくだらなさを狙ってるからなんだろうか。夢から覚めた金平の駅と列車があまりにも素晴らしく、夢とのギャップが凄い。夢落ちのひと芝居もなく、列車がゆくのを延々撮ってる。信号の切り替えまでちゃんと収まってる。へ~。

 タイトルバックにタコ社長と源公が登場するのはこれだけなのかな?珍しいな。

 ていうか、この回は「へ~」とおもわせるところが続いている。柴又の駅前ってこの頃は公園に面してて狭かったんだね。へ~。旅先で吉永小百合に出会うんだろな~とおもってたけど、あらま、ずっと同じ行程で宿の部屋まで向かい合わせなのに知り合わないのね。こういう展開もいいよねとおもってたら、やっぱりすぐに出会ったわ。

 けど、吉永さん、この頃からdiscoverJapanなのね。もういい加減にしてくれよといいたくなる『笑ってえ。はい、バター』の定番ギャグに辟易しつつも、その駅舎の美しさに感動し、さらに、寅が吉永さんを見送る駅もまた風情があってよかった。こんなふうに旅先で出会ったりすることはまずないぞっておもいながらもね。

 ただまあ、かなりきつい台詞もあったりする。たとえば「見ろ、頭の足りない源でもああして働いておる」とかいうのがそれで、現代の邦画でこうした台詞は通用するんだろうか。ま、それはそれとして、寅が帝釈天の渡り廊下をすぺるんだけど、こういうのは懐かしいな。ぼくも小学生の時分には裏のお寺の渡り廊下でそうしたもんだ。

 ちなみに「愛知県の窯のあるような田舎で暮らすことになるのね?」とさくらは訊ねるんだけど、それ、倍賞さんがバスガイドを演じた『喜劇 一発大必勝』の舞台なんだよね。となると知多半島の常滑ってことになるんだけど、あれれ、吉永さんからの手紙の住所、愛知県春日井市高蔵寺町じゃん。常滑じゃなかったんだ?

 でも、なぜか、この続編は場所が移動されちゃってる。岐阜県の多治見に変更されてるんだけど、なんでなんだろう?

 ところで、日本語の使い間違いが多いのはちょいと気になる。愛知県の方に、とか、とんでもございません、とかいうのがそれだ。

 ま、そんなことはいいとして、ラスト、のぐそをしたのぼること津坂匡章と一緒にペプシコーラの販売をしてる『中部飲料株式会社』のトラックに乗ってくんだね。結局、常滑っていう設定だったのか、瀬戸だったのか、春日井だったのか、よくわからん。

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男はつらいよ 寅次郎恋歌

2019年10月17日 00時45分40秒 | 邦画1971~1980年

 ◇男はつらいよ 寅次郎恋歌(1971年 日本 113分)

 監督/山田洋次 音楽/山本直純

 出演/渥美清 倍賞千恵子 前田吟 笠智衆 三崎千恵子 太宰久雄 志村喬 池内淳子

 

 ◇第8作 1971年12月29日

 ほう、ここから岡本茉莉演ずるところの大空小百合が出てくるのね。

 森川信のタイトルもおいちゃんになってるし。で、池内淳子がトメで志村喬がトメ前なんだあ、なるほどね。

 さくらが泣いて、やおまんが「そんなに勉強しないと寅さんみたいになっちゃうよ」と孫を叱って「何でそんなにばかにされないといけないの?」と嘆くんだが、この頃の倍賞さんは品があって綺麗だな~。

 で、池内淳子は帝釈天の斜め前にある喫茶店ロークを営んでいるんだけど、まあそれはそれとして、観る気を失せさせるほどの寅の素行と頭の悪さがどんどん度を越してくるんだ。観ていて、つらいね。続きを観る気が失せてくる。

 けど、寅、かっこいいところもある。池内淳子が騙されたような借金に苦しんでいるのを知ったとき、結局、自分ではなにもしてあげられず、りんどうの花束を持ってきてこういうんだ。

「あのう、なにか、困っていることはございませんか。どうぞ、わたくしにいってください。どうせ、わたくしのことです。大したことはできませんが、指の一本や二本、片腕や片足くらいなら大したことはありません。どうぞ、いってください。どこかに気に入らない奴がいるんじゃありませんか?」

 愛の告白やね。

 あれ?今回は泣かせるな。

 佳境、さくらが寅と代わりたいというところだ。寒い冬の日、さくらはどうしてるかと心配させてやりたいと。寅は泣いて「さくら、すまねえ」といって去る。ここ、泣かせるね。ラストは大空小百合と再会してトラックの荷台に乗って行くんだけど、このパターンはこの回からだったんだね。

 両想いになるパターンも、ここからなのかな。

 明らかに寅は身を引いたわけだけど、もしかしたら、寅は死に場所を探してたのかもしれないね。池内淳子のためにかたわもんになるか、あるいは死ぬことで愛は成就されるんだけど、池内淳子が借金の精算のめどが立ったことで、もはや、寅の介入できる可能性はゼロになっちゃったから、あとはもう去るしかない。池内淳子の琴線は刺激したかもしれないけど、それは一時的なことだってわかってるからね。

 寅が働けばいいんだけど、性分としてそれはできない。まあそれに池内淳子が「いつか旅に出たい」とちょっと物欲しげにいったところで、がきんちょもいるし、うまくいかないのは目に見えてる。つらいところだ。身を引く、悪く言えば逃げるしかない。それが寅の人生なんだな。

 他人が「寅さんみたいになっちゃうよ」っていうのは、こういう深いところの運命もいってるんだよね。

 それと、池内淳子にいう志村喬のうけうりに自分の旅先の姿を投影して柴又の家族をおもう寅の告白をさせるんだが、これ、すぐあとのさくらの旅先の寅をおもう心根とが対になってるんだよね。ま、あれだね、シリーズ後半なら「りんどうの花」とか「りんどうの詩」とかになるんだろうな。

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