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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

理想の女

2012年03月29日 00時12分48秒 | 洋画2004年

 ◎理想の女(2004年 スペイン、イギリス、イタリア、ルクセンブルク、アメリカ 93分)

 原題 A Good Woman

 監督 マイク・バーカー

 出演 ヘレン・ハント、スカーレット・ヨハンソン、トム・ウィルキンソン

 

 ◎1930年、アマルフィ

 オスカー・ワイルドの戯曲『ウィンダミア卿夫人の扇』をもとにしてて、舞台をロンドンからアマルフィに変えたってことなんだけど、なにしろいつものように不勉強な僕はその戯曲を読んだことがないから違いがわからない。でも、アマルフィで好かったんじゃないかって気がする。浮名を流し続けるヘレン・ハントがニューヨークからアマルフィへ流れてくるってのがなんとなく退廃的でいいじゃないか。

 まあ、スカーレット・ヨハンソンの印象として貞淑な新妻というのがどうしてもしっくりこないのは僕だけなんだろうか。ハリウッドではずいぶんと可愛がられてるっていう印象があるんだけど、どうしても肉感的なくちびると姿態だから、なんか貞淑な人妻って気がしない。とはいえ、だからこそ、今回のような不倫を汚らわしいとおもうがゆえに夫が裏切っているとおもいこんで夫の親友と不倫に走りかけてしまうという不安定な貞淑を演じたのかもしれないね。

 20年前にスカーレット・ヨハンソンを産み落としながらもその場を去り社交界を流れていたヘレン・ハントの最後の相手になるトム・ウィルキンソンは、あいかわらず好い演技だ。おしころした感情を上手に表現できるし、好い役者だな。ゴシップ好きな有閑マダムどもの興味の対象になる二度の離婚を経験した財産家ってのがいいね。

 ちなみに、アマルフィを舞台にした邦画とはまるで別な町のようにしっとりと撮られているのは、やっぱり作り手の感性の差なんだろな。あ、邦題の『理想の女』は『りそうのひと』と読ませるらしい。もうちょっとほかにないんかいな?

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ペイチェック 消された記憶

2012年03月24日 00時07分48秒 | 邦画2003年

 ◎ペイチェック 消された記憶(Paycheck)

 

 フィリップ・K・ディックは大学時代に愛読していた。理解していたかどうかってことすら、よく憶えていない。

 3年間の消された記憶を追い掛ける際に障害となるものを、未来を覗いてしまった記憶喪失前の自分が、未来の自分の為に用意した19個のアイテムを駆使する事で通過してゆく、という発想は見事だ。こういう鍵になる言葉を残しておけば、憶えてたかもしれないけど。

 まあそれはともかく、いろいろと示唆されたような気分になる映画だったことはたしかだ。過去の自分と未来の自分という括りでいえば、未来の自分は実は過去の自分が未来にいったときにすでに事実を体験している自分ということで、その体験をもとにして19の鍵になる品物を残しているんだけど、なにもこんなまだるっこしいことをしなくても詳細な手紙を残しておけばいいんじゃないかって気もするんだけど、まあ、そういうあたりは映画だからね~。

 イワナ・ミルセヴィッチは雰囲気があるし、キャスリン・モリスはユマ・サーマンと配役を入れ替えた方が良かったんじゃないかって気がする。

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エレジー

2012年03月19日 17時16分58秒 | 洋画2008年

 ◎エレジー(Elegy)

 

 死にゆく獣。

 原作はそういう題名らしいんだけど、死にゆくっていう表現があってるとはおもえないんだけどなあ。

 まあ、完璧な容姿の女性を前にして、情念はあってもケモノになりきれないプライドと観念が老いさらばえた大学教授を通して観ると切実にわかるような気もするけど、魅惑的すぎる設定のペネロペ・クルスがいかにも男目線の理想像となりすぎな印象がして、なんだか損な感じがする。

 (以上、2010年3月19日)

 

 観たことをまるきり忘れてて、観ている内に「これ、観たわ」と。

 ニコラス・メイヤーもやけに老いた目線になってきたんだなあっていう印象で、こっちも老いてきたから、ベン・キングズレーのどうにもやりきれない優柔不断さが身に染みるようになってきた。

 ペネロペ・クルスの誕生日に招待され、キューバの家族や親戚に紹介したいといわれても、自分は30歳も年上だし、おそらく親たちよりも年上で、そんな自分が花束をもっていそいそ出かけるなんて恥ずかしさの極致じゃないかとおもい、車が壊れたと嘘をついて別れにいたるものの、ペネロペ・クルスにしてみればそんなことで家族に会うのを躊躇してしまうくらい自分のことは好きじゃないんだあってわけで、それで涙を流しちゃうわけで、こういうのは老いてみないと切実じゃないね。

 でもそうか、乳癌で乳房を失っちゃうから、前半でペネロペ・クルスの美しい乳房に触れて、こんなに美しい乳房は世界にふたつとないといわせちゃうんだね。まさか乳癌の話になるとおもってなくて、いやあ、伏線だったんだあと。

 だけどまあ、前に観たときも男目線のやけに自分本位な映画だっていう印象はあったみたいだけど、今回もそうで、赤のルブタンと白のルブタンがそうだ。というのも、ペネロペ・クルスは赤を履いてて、パトリシア・クラークソンは白を履いてる。けれど、彼女の下着は黒だ。20年も都合のいい愛人をしていて、ときにペネロペ・クルスに嫉妬しつつも、これから先もそういう関係なのかも知れないとしたら、あまりにかわいそうじゃないか?

 ベン・キングズレーはこの先、乳房はなくなったけれど命は失わずに済んだペネロペ・クルスと共に生きていこうとするんだけど、じゃあ、パトリシア・クラークソンはどうしてくれるんだと。

 ちなみに、エレジーは何曲か流れるんだけど、

 Philippe JarousskyのGiustino, RV 717: "Vedro con mio diletto" (Anastasio) 
 Gnossienne, No. 3 (Echoes) on Spotify. Erik Satie
 Adagio from Concerto No 3 in D minor, BWV 974

 の3つが好きだな。

 (以上、2022年11月20日)

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