☆東ベルリンから来た女(2013年 ドイツ 105分)
原題 Barbara
staff 監督/クリスティアン・ペツォルト
脚本/クリスティアン・ペツォルト ハルーン・ファロッキ
撮影/ハンス・フロム 美術/K・D・グルーバー
衣裳デザイン/アネッテ・グーター 音楽/シュテファン・ビル
cast ニーナ・ホス ロナルト・ツェアフェルト ヤスナ・フリッツィー・バウアー
☆1980年、東ドイツ
そのバルト海に面した小さな村の話だ。
西ドイツへの移住申請をしたことで目をつけられた女医が、
東ベルリンからその村に監視をつけられたまま左遷されてる。
彼女は国外脱出する気だ。
なぜって、恋人が西側にいるからで、西にいって自由になりたいと熱望してる。
毎日が緊張の連続で、ときおり家宅捜査もされ、それだけではなく、
彼女は裸に剥かれて身体検査を受けなければならない。
その際、余計な物を所持していないか、膣の中まで検査される。
人権なんてものは存在しないのだと突きつけられるような軟禁状態で、
ここで出会った医師に惚れられ、緊張が徐々に解けていき、
やがては強制労働場から脱走してきた少女を匿い、
自分の代わりに脱出させ、自分は医師と恋をし、東に棲むことを決意する。
むろん、ベルリンの壁の崩壊は目前に迫ってるわけだけど、、
好い面の皮なのは、西側の恋人だ。
必死になって東側まで逢いに来て、ダンヒルの煙草とか差し入れしてるのに、
彼女は自分の悩みを聞いてくれそうな優しげな同僚の誘いに応えるわけで、
これについては、ぼくみたいにモテナイ男は「そんなばかな」といいたくなる。
西側の男は多額の金を用意して、恋人をひたすら待ってるのに、
その金は労働場を脱走してきた少女のために使われるわけで、
たしかに人道的にいえば、少女は妊娠してたし、自由になりたいと欲してたし、
自分はもしかしたらこの先も脱国できるかもしれないし、てなことから、
自分のために用意してくれた海からの脱出劇に少女を行かせるんだけど、
西で待ってた恋人は、少女をまのあたりにした瞬間、
「げ」
というんだろな~とおもうと、なんだか、その男が可哀想で仕方がない。
つきあってる男が必死に自分を救おうとしてくれてるのに、
しかも、逢いに来てくれて、
森の中やらホテルやらで何回もセックスまでしてるのに、
いくらなんでもそりゃないだろ…と、モテナイぼくはおもってしまう。
もちろん、映画の主旨からはまるで離れて、感動することすら忘れてる。
こんなアホはぼくはさておき、
映像は非常に落ち着いてて、ぴりぴりした緊迫感とリアルさに満ちてる。
夏なのかどうかもよくわからない寒々しさで、
もはやいい年になってしまった女医の人生の空しさもひしひしと感じる。
ポスターはあまりにも若く綺麗に処理されてるけど、
銀幕の中の彼女は凄絶さすら感じる。
壊れたピアノの他にはなにもない部屋で暮らし、病院に通う。
ピアノの調律師が同僚の男の善意で、派遣されてくるけど、
それもまた監視のためかと感じ、最初は断る。
けど、男の善意なんてものは、好きだから善意を見せるわけで、
好きでもない相手に善意なんて見せない。
その善意を、彼女は「下心ないんだろな」って受け止めたんだろか?
そのときは下心はなくたって、恋愛感情に発展するってことを、
彼女のように頭の好い女医でも、わからなかったんだろか?
ま、
結局、恋人は棄てられるわけだから、
遠く離れてしまえば愛は終わるのかしらね。
まあ、それだけ、彼女は祖国なのに孤独だったってことなんだろう。
生まれ故郷にいても孤独感に包まれなくちゃいけない国は、
やはりまちがってたんだろな。