Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

阿寒に果つ

2007年12月31日 23時34分53秒 | 邦画1971~1980年

 ◇阿寒に果つ(1975年 日本 87分)

 監督/渡辺邦男 音楽/眞鍋理一郎

 出演/五十嵐じゅん 三浦友和 大出俊 地井武男 二宮さよ子

 

 ◇見事、木村大作

 印象として、懐かしき時代の象徴みたいな脚本と映像におもえた。

 すべてが象徴的に撮られていて、そうした挑戦的ともいえる絵を見られて嬉しいんだけど、それだけじゃなくて、なんといっても五十嵐じゅん(現・淳子)が凄い。綺麗なだけじゃなく、演技というよりその存在感が凄い。ほかの出演者は気恥ずかしいほど若くて、監督の渡辺邦彦の気分がこれまた若い。

 斬新さへの意欲は息苦しい程で、時代というひとくくりにしてしまうのは惜しいくらいだ。

 ほんとなら、ヒロインのモデルである加清純子について書く留めておくべきなんだろうけど、ここで片手間に書いたところで仕方がないし、この作品はもはや独立した映像作品と観るべきだともおもうんだよね。

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波の塔

2007年12月20日 11時20分59秒 | 邦画1951~1960年

 ◇波の塔(1960年 日本 99分)

 監督/中村登 音楽/鏑木創

 出演/有馬稲子 津川雅彦 岸田今日子 桑野みゆき 沢村貞子 西村晃 佐藤慶

 

 ◇深大寺

 清張初のメロドラマだとおもうんだけど。

 不倫を情感こめて描くとこうなるのね的な悲劇に向わざるを得ない設定が、なんとも昭和35年。

 日暮里か西日暮里の駅近くの待合旅館で、機関車の蒸気が聞こえる中の別れの演出は、まあ、なんというのか、客車と客車ががっしゃんがっしゃんと何度も連結したり離れたり、それが男女の睦事に見立てられてるのは想像つくけど、ちょっとばかり直接的すぎないかしら。

 ちなみに、津川雅彦は46年後に夫役を演じてる。

 なんかね~時の流れを感じちゃうよね。

 メロウな有馬稲子がなんとも生々しいわ。

 ただ、男と女の抜き差しならない関係ってのは、得体が知れないね。不倫してたときはあれほど離れがたいとおもっているのに、それが成就できるとおもったとき、女は富士山の樹海に身を投じていくっていうのは、いったいどういう踏ん切りのつけ方なんだろ?

 このあたりが現実と違って物語なんだよな。

 ちなみに、1978年に現役で大学を受験したとき、ぼくはこの映画のような待合旅館に宿を取り、入試を受けた。

 木造二階建ての和風旅館だったんだけど、二階のぼくの客室に行くまでに、赤い欄干のついた小さな太鼓橋があった。部屋の入り口には小さな軒があって、格子戸を開けて小さな玄関があり、障子を開けた先に四畳半の座敷があった。これまた小さな床の間があって、窓を開けると駅の遠景が見えた。

 谷中の墓地が裏手にあったから、駅の裏側の丘の上の宿だったような気がする。朝食がついてて、帳場の奥にある座敷で食べた。何泊かしたとおもうんだけど、駅前はなんともさびれた雰囲気で、おのぼりさんの僕は満足に食堂も見つけられなかった。

 映画が作られてから18年後のことなんだけど、津川雅彦と有馬稲子の密会した待合は、たぶん、あんな雰囲気だったんだろうなぁ。

 それと、ぼくが初めて調布に行ったのは、それから4年後のことだ。深大寺がふたりの出会いの場なんだけど、ぼくが深大寺に初めていったのはさらに数年経った1985年あたりだ。映画の撮影が行われてから25年後の深大寺は、現在とほとんど変わっていない。

 たぶん、映画が撮られてすぐに凄まじい勢いで都市化したんだろね。

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BODY ボディ

2007年12月16日 13時42分32秒 | 洋画1992年

 ◎BODY ボディ(1992年 アメリカ 99分)

 原題/Body of Evidence

 監督/ウーリ・エーデル 音楽/グレーム・レヴェル

 出演/マドンナ ウィレム・デフォー ジュリアン・ムーア アン・アーチャー

 

 ◎ぼくの偏見

 かもしれないんだけど、日本人の映画好きの間ではマドンナは過小評価されてる気がするんだよね。

 セクシーを売り物にしている日本の歌手や女優には絶対に真似の出来ない露出過度の艶っぽさを出してくれるのは、マドンナがプロという証なんじゃないかともおもうんだけどな。

 まあ、内容はハリウッド形式を踏襲してて、それに官能のおまけがついたとおもえばいいわけで、やっぱり『氷の微笑』が意識されたとおもってもいいんだろうけど、それでも、けっこう愉しめたような気がするんだけどなぁ。

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イン・ベッド・ウィズ・マドンナ

2007年12月13日 17時44分51秒 | 洋画1991年

 ◇イン・ベッド・ウィズ・マドンナ(1991年 アメリカ 120分)

 原題/Truth or Dare

 別題/In Bed With Madonna

 監督/アレック・ケシシアン

 出演/マドンナ ケヴィン・コスナー ウォーレン・ベイティ アル・パチーノ ジャン=ポール・ゴルチエ マット・ディロン ライオネル・リッチー アントニオ・バンデラス ペドロ・アルモドバル

 

 ◇意外な佳作

 たぶん、90年4月の日本ツアーから始まるBlond Ambition Tour(ブロンド・アンビション・ツアー)を記録したこのドキュメンタリー作品が時代を包含して鑑賞されるためには、まだ四半世紀くらい必要かもしれない。一般人と違ってスターを追う記録映画は旬があるんだけど、ライクアヴァージンの舞台は当時のマドンナの凄さを見事に映し出してる。

 ぼくは、マドンナについてはほとんど知らない。

 けど、ほとんどコンサートに行かないぼくが、このツアーよりも数年前だったか、後楽園球場で催されたやつには出かけてるんだから、やっぱり当時はものすごいブレイクだったんだとおもうんだよね。ライクアヴァージンのMPVもちゃんと覚えてるしさ。

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クラッシュ(2004)

2007年12月07日 16時53分20秒 | 洋画2004年

 ◎クラッシュ(2004年 アメリカ 112分/114分)

 原題/Crash

 監督/ポール・ハギス 音楽/マーク・アイシャム

 出演/サンドラ・ブロック ドン・チードル マット・ディロン ウィリアム・フィクナー

 

 ◎上手な回り舞台

 グランドホテル形式の人物が複雑に絡み合って、ひとつの物語を構築していきつつ、現実味には欠けながらも観客を納得させなければならない、という演出を要求される話にも拘らず、人種の坩堝ロスを描いてみせた手腕は、いや、ほんと、見事だった。

 ま、それともうひとつ、つまんないことをいうんだけど。

 警官のような民間人に対してある意味絶対的な権力を持った立場に立ったとき、尋問した相手がどうにも高慢で気に入らない女だった場合、しかも、どうしようもなく挑発的な恰好だったりした場合、やっぱり男というつまらない生き物は、眼の前のミニスカートの中に手を入れて、ボディチェックをするふりをして指を下着の中に入れてしまうものなんだろうか?

 それとも、映画の中だけの話なんだろうか?

「そんなことできるわけないし、するわけないじゃん」

 ていうのが、一般的な答えだとおもうんだけど、観ていて納得しちゃうのが、リアリティってやつなんだろね。

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椿三十郎

2007年12月01日 21時52分19秒 | 邦画1961~1970年

 ☆椿三十郎(1962年 日本 96分)

 監督/黒澤明 音楽/佐藤勝

 出演/三船敏郎 仲代達矢 加山雄三 団令子 田中邦衛 平田明彦 伊藤雄之助 志村隆 藤原鎌足

 

 ☆逆抜き逆手不意打ち斬り右手添え

 黒澤の偉大な所は、原作を見事に料理して、誰の物でもない黒澤版の日々平安を映像化した所だ。

 自分の言葉を用いて、自分の世界を追求するのが活動屋で、独創的な世界があるから、興奮があり、観客が喝采してくれる。

 この映画にかぎらず、黒澤作品をリメイクする意味がわからない。

 ちなみにこの殺陣について阿部嘉典著には「逆抜き不意打ち斬り」とあるが、秋月達郎によれば「逆抜き逆手不意打ち斬り右手添え」となるらしい。

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