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にっぽん泥棒物語

2024年11月25日 11時34分24秒 | 邦画1961~1970年

 ◎にっぽん泥棒物語(1965)

 

 植木照男、がんばったね。

 昭和40年の作品だからカラー化が勧められてはいたもののまだまだ未熟なところもあったし製作費も嵩む頃なんだけど、この作品については、白黒が活きてる。松川事件のニュースがほんの一瞬挟み込まれるときに、なんの違和感ないからだね。

 ま、それはそれとして、当時の松川あたりをおもえば夜ともなれば真っ暗だったろうし、泥棒の林田(三國連太郎)が9人の真犯人とすれちがったときに顔がわからなくするためには画面を暗くしておく必要があったのかもしれないんだけど、やっぱり暗くてよく見えない。くわえて福島弁がわからないから、台詞がかなり聴き取れない。でもまあ、この二重苦がありながらも、おもしろかった。さすが山本薩夫。

 三國連太郎が花沢徳衛の仕入れてきた松川事件の容疑者が10万円の保釈金で出られたっていう情報に喜んだときの場面で、

「本来ならば、みんな無罪になっとるとこだ」

「無罪?それがなしておめにわかるだ?」

「おら、このまなこで、ず件の現場、はっきり見てんだ」

 このひと言から物語が俄然おもしろくなる。

 

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帝銀事件 死刑囚

2024年11月23日 07時12分13秒 | 邦画1961~1970年

 ◎帝銀事件 死刑囚(1964)

 

 大学の時に初見したんだけど、そのときの印象とさほど変わらない。

 山本陽子が生き残りの女性事務員の役で、かわいすぎる。笹森礼子と出てくるんだけど、もちろん、ふたりとも綺麗なんだけどさ。

 ま、それはさておき、熊井啓はこれが初監督作品だそうな。ちからがあるなあ。

 事件で使用された劇薬はアセト・シアン・ヒドリンといい、これは陸軍の特殊研究所で取り扱われていたらしい。神奈川県川崎市稲田登戸の陸軍第九研究所、通称登戸研究所で、もちろん、一般人はこの存在はまず知らない。従って、すくなくとも画家の平沢貞道には、この劇薬を入手する手だてがない。ここに関係していた傷痍軍人の少佐を演じた佐野浅夫が上手に填まってる。見事なもんで、731部隊の生き残りっていう設定なんだけど、性根の据わった感じがあって好い。佐野は叫ぶ。

「戦争責任は敗戦国だけのものか?原爆だって、国際法上、違反ではないのか?」

 昭和日報の料亭での会議で、草薙幸二郎はいう。

「犯人が帝銀で言ってたスペンサー中尉が実際におりました。それから安田荏原支店のバーカー中尉も防疫の関係者です。共犯はこの辺からかならず出てくるとおもって追ったんですが、なにしろ相手は占領軍です。どうにも入っていけないんですよ」

 デスク役の鈴木瑞穂はいう。

「われわれにいま必要なのは、想像や推理なんかじゃない。はっきりした客観的事実だ。もし、米軍に共犯者がおれば、そんなものの処分は米軍に任せておけばいい。だが、帝銀に現れた犯人はまちがいなく日本人だ。われわれがこの事件を追及する大きな意味は、日本人がおなじ日本人になぜあんな残酷な真似をしたのかということじゃないのか?」

 そのとおりだ。

「弁護団が言ってたね。ジャーナリズムが毎日、クロと書き立てる。すると、大衆は批評もせずにそれを鵜呑みにしてしまう。戦争中とまるきり同じだ。その世論の大きな暗示が鑑定人に大きく作用している。裁判官にもその影響がなかったとはいえない」

 戦後の混乱期に限ったことじゃないな。

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東京オリンピック

2024年11月12日 16時44分58秒 | 邦画1961~1970年

 ☆東京オリンピック(1964)

 

 オリンピックは人類の持っている夢のあらわれである。

 という字幕が消えるや日輪のアップ、そしてそれと二重写しとなるように巨大な鉄球が映し出され、戦争に翻弄されたオリンピックの開催年が詠み上げられ、古めかしいビルが叩き壊され、代々木公園、体育館、国立競技場が完成し、望遠レンズで撮られたクルマとヒトとコンクリートがきゅうぎゅうに密集された東京の街にメインタイトルが重なる。そしてオリンポスの丘から始まる聖火ランナーのリレーに沿ってアジアの各地が映し出され、日本の最初は沖縄のひめゆりの塔。本州に入れば広島の原爆ドームに空撮で入り、平和公園で日の丸の小旗をふって出迎える人々のまんなかを抜け、京都の古道を、霊峰富士の裾野を聖火ランナーがゆく。開会式に登場する各国は、キューバ以外の国はあらかた隊列や足並みをそろえている。聖火が点灯されるときはもう列は乱れて選手はばらばらになって喝采を送っている。これだけでもう市川崑のいわんとすことがわかるような気になる。スローモーションが、実に良い。走る前、投げる前の緊張感がひしひしと伝わる。そして閉会式。緊張感はなくなり、解放感だけが湧き上がる。戦争が終わった光景をおもいだした。字幕が掲げられる。市川崑の言葉だろう。

「夜

 聖火は太陽へ帰った

 人類は4年ごとに夢をみる

 この創られた平和を夢で終わらせていいのであろうか」

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戦争と人間

2024年11月11日 18時08分41秒 | 邦画1961~1970年

 ☆戦争と人間 第一部 運命の序曲(1970)

 

『満蒙はわが日本帝国の生命線である』

 この映画の肝は奉勅命令だ。満鉄付属地外への出兵は天皇陛下のご命令がいる、すなわち奉勅命令の伝宣が必要だと、中谷一郎演じる河本大作は、芦田伸介演じる満洲伍代にいう。

 この満洲伍代は、甥の歓送会の席上、実業家の市来善兵衛の「蔣介石が北伐を始めるや否や日本は現地居留民の保護を名目に山東へ出兵したんだが、いや、これをもってまたぞろ中支線以南の反日感情を燃え上がらせて、おまけに北京の張作霖が負けるとなると、中南支はおろか満洲からもなんの収穫も期待できなくなるわけだ。よほど慎重にやってもらわんと」という慎重な意見に「いかんいかん、そんな弱腰じゃ」と活を入れ、在留邦人の生命財産が実際に侵されようとするときに、外務省の舌三寸や片々たる文書でこれが守れますかねと前置きし、昭和映画史に残る名台詞をぶっ放す。

「軍人さんの出番なんだよ」

 芦田伸介の演技は特出すべきもので、北京の軍人や浙江財閥の要人とホテルへしけこんで情報を得ている謎の酒店オーナー岸田今日子が、太腿に足をからませて「ね、日本軍は山海関に出兵するの?」と尋ねたときも「しなけりゃ出させるまでさ」と嘯く。これに「どうやって?」と岸田今日子が被せれば、その股間に膝を突っ込んでみせる。岸田今日子も大した玉で「こうやって?」と股をしめれば、芦田伸介「そこのホテルに部屋をとってある。ひさしぶりにひと汗かかんか?」岸田今日子「いいわね」となるが、なんとまあおとなのやりとりだろう。そこへ現れるのが奉天総領事館の石原裕次郎なんだが、芦田伸介はいう。なぜ、こんにちまで満蒙の未解決問題を山積させておくのかね、あんたがたに任せておいたんでは満洲の夜明けは来ないねと。石原裕次郎は余裕を見せる。

「あなたがたのやり方では満洲の夜明けは血で染まりはしませんか?」

 むつかしいところだ。伍代の次男中村勘九郎は、貧しい人の多さを嘆くが、総帥滝沢修はそのとおりだと頷くが、しかし、と息子を諭す。

「貧しい人は確かに気の毒だ。しかし、貧乏をするにはそれだけの理由がある。はじめから金持ちの人間はいない。人生の終わりまで貧乏なのは、その当人に責任の大半があるということだ。貧乏人が多いということは、国が貧乏だということだ。だから日本は豊かになろうと考えている。豊かになるにはそれに必要なちからを持たなければならない。今、日本の貧乏を解決するには、貧乏を泣くことではない。日本に当然の権利のある満洲をどしどし開発して、日本から貧乏をなくすように努力することだ」

 滝沢修がいうとどんな強引な意見でも妙な説得力があるなあ。

 ま、それで柳条湖事件。関東軍司令部に総領事館から石原裕次郎到着、軍出動命令について統帥権の発動を取りやめてもらいたいと交渉。しかし、領事館は関東軍の統帥に容喙干渉しようというのか、それが領事館の方針か。総領事代理があきらめて帰ろうとするとき、待ってくださいと石原裕次郎が止め、もうひとつの名台詞がほとばしる。

「今、日本の運命の決定的瞬間がわたしたちの上をよぎろうとしています。…わたしたち外交官は、軍の公道に関してそれが如何に理に適わない行動であってもなんらなすことができないと無力になってないでしょうか。もしそうだとしたら、わたしは今日かぎり外交官を辞めざるを得ません」

 そして高橋悦史が「おんな!」と恫喝して栗原小巻を暴行しているとき、その恋人にして医者の加藤剛は、最後の名台詞をいう。

「戦争状態の人間には消毒の方法はないよ」

 かくして満洲事変は為され、戦火は上海へ飛び火する。新興財閥伍代家の運命もろとも物語は進んでゆくことになる。

 いや〜、ひさしぶりに映画を堪能したわ。

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銃殺

2024年11月10日 03時05分47秒 | 邦画1961~1970年

 ◎銃殺(1964)

 

 菊の御紋を戴いた厳しい扉を開けて、丹波哲郎演じる相澤三郎の永田鉄山暗殺事件から始まり、この扉が丹波さんがやってくると閉じ、タイトルが被さり、また開くと、陸軍練兵場になってる。うわ、最初から合成じゃん。

 青年将校の会議で、こう意見が出る。

「軍隊を使用して直接行動に出るのは、陛下ご自身が、重臣元老を斬らねばならないとお考えになったときだけ許されるべきだ。わたしには陛下がそうお考えになっているとはおもえないのだ」

 しかしこれは否定され、うやむやになる。

 将校鶴田浩二は牛鍋をつつきながらいう。

「ここ2、3年、どん底の生活苦に喘いでいる農民や労働者の家庭では、一家の働き手を兵隊にとられて自分の娘を売らなきゃならない悲惨な親もある。その一方、兵隊の中には自分の貰った慰問袋をそっくり家(うち)に送っている者もいるんだ。こんな現状の中から強い兵隊ができるとおもうか。士官学校時代は考えてもみなかったし、それに直面した現代だって、どえしてやることもできない。しかも、いったん戦争になれば、その兵隊たちを弾の中に突撃させる。それが将校なんだ」

 昭和維新、昭和維新と血気に逸る青年将校たちはなにがしたかったんだろう。そのひとり、 江原真二郎、ここでも栗林役だ。まあそれはいいとして鶴田浩二の見逃してやった脱走兵が、病の母親と吉原に身売りすることになっていた妹を殺して首をくくる。その焼香に訪れた鶴田浩二と井川比佐志に農民の女がいう。

「中隊長さま。息子を兵隊に出すのも、娘が身売りするのも、みんな、お国のためでございましょうか?」

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二・二六事件 脱出

2024年11月09日 14時07分38秒 | 邦画1961~1970年

 二・二六事件 脱出

 

 冒頭、秘書官の三國連太郎が帰ってくると応接間にふたり、よく似た男がいる。首相ともうひとり。応援演説に立った代議士。これで、あ〜このふたりが入れ代わるのかと察しはつくんだけど、複雑なあらすじな分、これは良い伏線だ。庭を眺めて赤坂までの地下道は使えるのかと尋ねる伏線もわかりやすい。中原ひとみと久保菜穂子がふりはじめた雪を眺める静けさのあと官邸襲撃が始まる静と動の展開もいい。

 高岩肇、親切で上手い脚本だ。

 ただまあ、斬られたり撃たれたりしたときの断末魔はあいかわらずの東映調で、音楽もそうだが、ちょいといただけない。

 特高部曹長の高倉健の登場はやや遅いけど、長いプロローグは二・二六事件の官邸襲撃の前に持ってくるのもなんだか役者中心になって野暮だから、これでいい。この脚本はじつにうまくて、健さんが出勤したところへ官邸斜め前の官舎から電話、これが三國連太郎で、総理の死命の確認に来いと。健さんは道路が封鎖されてるからむりだと無碍に断る。伏線の連続だね。

 三國連太郎が総理の代わりに代議士が死んだと知るのはそれからで、この時間差もいい。

 部下が見た枕元の人影を幽霊だと一笑した織本順吉がいい。ただひとり疑いをもって女中部屋まで探しにくるあたり、けっこうどきどきするわ。

 さらに千葉真一がいい。班長どのの健さんの部下なんだが、ひとり、襲撃時に潜り込んで押入れの総理を確認したただひとりの若造憲兵なんだが、血気盛んな純粋さがいい。

 撮影がんばってる。雪の総理官邸のオープンだけじゃなくて、模造戦車の隊列の横をゆく歩兵部隊もだが、憲兵隊司令部の切り返しはスクリーン・プロセスだ。健さんと千葉真一の後ろを戦車部隊がゆく。三宅坂の横の堀はたぶん書き割りに合成、凄い。

 音楽。ラスト曲はええね。

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日本暗殺秘録

2024年11月01日 18時49分05秒 | 邦画1961~1970年

 ◎日本暗殺秘録(1969)

 

 製作はもちろん大川博なんだけど、製作補に俊藤浩滋のタイトルになってる。まあ、藤純子がヒロインだしね。

 企画は天尾完次ひとり。すげえ。

 のっけから黛敏郎の打楽器と男性コーラスにしてやられる。かっこええ。

 有村次左衛門を演じた若山富三郎、ワンシーンのみの出演。

「もう行けもはん」

 って台詞だけで、井伊直弼を刺し殺し、首を下げて歩き出し、刺されて倒れ、割腹する。

 それだけで、そこにナレーションが被さる。明治天皇が激怒のあまり下したという詔勅で、

『そもそも維新より以来大臣の害に罹るもの三人におよべり。これ朕が不逮にして朝憲の立たず綱紀の粛ならざるの致すところ。朕甚だこれを憾む』

 ただしこれはプロローグで、つづく大久保利通と大隈重信の暗殺行もおなじように序章あつかいだ。趣向を変えているのは星亨の暗殺でワンカットの主観撮影だから暗殺者の顔は映らない。でもこの処理をしないと、そのあとの安田善次郎の暗殺が埋もれてしまう。せっかく神州義団団長の朝日平吾こと菅原文太が正座からいきなり座卓に飛び上がって斬りつけるという誰もやったことのない刺殺行をワンカットで見せる凄技を披露してくれたんだからもったいない。

『きみたちは、結局は、自分の人生の上に、自分の血で美しい詩を書いてみたいだけなんだ』

 ギロチン社の高橋長英演じる吉田大次郎に向けられた五十嵐義弘演じる小川義夫の台詞だが、なるほど、これが主題か。つぎの本章、千葉真一演じる小沼正の裁判にかぶせるナレーションよりも説得力があるなあ。

 それにしても黛敏郎のちからづよいこと。千葉真一のカステラ職人の修行にかぶさる曲の短く単調ながらも階段を上っていく強さがある。千葉真一の鬼気迫る演技がそれとオーバーラップしてて、恋人が死んだとき、入水しようとしても果たせず波打ち際に打上げられたとき、おもわず目に入った旭日に向かって合掌し、題目を一心不乱に唱えるときの音楽もまた男性コーラスと打楽器で迫力がある。このお題目の伏線は片岡千恵蔵演じる井上日召の凄まじい眼力の「お題目を唱えるのなら本気で唱えなさい」という言葉だ。

 背景になっているのは、ロンドン軍縮条約が調印された昭和五年四月。この年、と字幕が始まり、こうつづく。

『全国の失業者三十一万人、スト件数九百八十四件、小作争議件数三千四百十九件』

 田宮二郎演じる藤井斉は大洗の海岸で千葉真一の『とうしたら和尚のいう正義が日本に生まれるんですか』という問いかけに答える。

「革命だよ。財閥、重臣、金によって動く既成政党を倒し、国家を改造するんだ。小沼くん、水戸は桜田門の烈士を生んだ土地だ。もし、やるときがきたら、おれか、きみか、どっちかがトップを切ろうじゃないか」

 ここに主題が通じてくる。そのあとの会話の中で「国民大衆はエログロナンセンスだ」と軽蔑していうところがある。東映のジレンマなのかもしれないね。田宮二郎の「革命には現状打破が必要なんだ。まず破壊なんだ」と主張したとき、片岡千恵蔵のバックで踊る盆踊りの囃子と歌声が大きく響き始める。黛敏郎の音楽はない。常道なんだけど、これでいい。

 千葉真一がワカメを売りに上京した場面たけど、どこから観ても京都で、しかも京極東宝の裏にある裏寺町通だ。そして、誓願寺の墓場。

 十月事件のくだりは数分後の場面のスチール処理。片岡千恵蔵や田宮二郎まで繰り出してセットで撮影してるのを編集して前に持ってきたんだね。

 満洲事変、上海事変ときて血盟団事件の小沼正は井上準之助を暗殺。あとはエピローグなんだけど、いやいや相澤三郎を高倉健が演じてる。ワンシーンだけなんだけど、ここを白黒でやるべきだったね。

 最後の二・二六事件が白黒にして、銃殺のときだけカラーにしてるのは意味がわからない。鶴田浩二、里見浩太朗、川谷拓三(大部屋のため台詞なし)が出てるし、かなりの尺があるんたから、健さんのところを白黒にした方がわかりやすかったろうに。

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古都

2024年09月02日 18時17分44秒 | 邦画1961~1970年

 ☆古都(1963)

 

 遠景ではたしかにコンクリート造りのビルも見られるけど、手前の中京のあたりはもう町家の屋根がびっしり。このタイトルバックだけでも中村登と成島東一郎の天才ぶりが味わえる。合成も上手にできてるし、実に落ち着いた画面になってた。ラスト、淡雪が降ってくる気配を感じるところがあるけれど、前編をとおして音もなく雪がふりつもるような印象だった。不安をかきたてる武満徹の現代音楽が妙に合ってたしね。

 いやあ、見事。

 岩下志麻、綺麗だったな。

 ちょっとうろ覚えだけど、これは、市川崑の『古都』とは格が違うな。市川崑のファンとしては、残念だけど。 

 

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真白き富士の嶺

2024年08月30日 16時34分40秒 | 邦画1961~1970年

 △真白き富士の嶺(1963)

 

 太宰治の『葉桜と魔笛』が原作といわれても、そんな短編があることすら知らなかった。吉永小百合、23歳。若いわ。白血病で逗子に住むと。なるほど、転地療養だね。

 逗子が田舎なのはさておき、不治の病でちょっと心がねじくれた妹と姉の物語なんだけど、へ〜、吉永小百合がエキセントリックな妹で、妹おもいの姉が芦川いづみとはおもわんかったな。浜田光夫は、療養してる吉永小百合と出会うヨット部の青年なんだけど、ここでもコンビなのね。でもかなりカットされてるのか、吉永小百合は芦川いづみと小高雄二にも焼き餅を焼いてる観があって、どうもしっくりこない。

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赤毛

2022年08月18日 22時45分35秒 | 邦画1961~1970年

 ◎赤毛

 

 前半の途中で観るのをやめようかとおもったけど、我慢したら案外おもしろくなった。ていうか、たぶん40年ぶりくらいに観たんだけど、ラストシーンだけはよく憶えてたのに、ほかはいっさい忘れてた。つまり、後半がおもしろかったんだろうな。

 三船さんが赤報隊の端ッパになっててそれで赤毛をかぶって故郷に錦を飾ったはいいけど、あまりの頭の悪さに空回りしていく前半は、岡本喜八好きにはたまらず面白いんだろうけど、どうにもわざとらしさが匂うというか、大仰すぎるっていうのか、とにかくどうも肌が合わない。ただ、これだけ馬鹿な主人公をからっと演じられるのは三船さんしかいないんじゃないかっておもったりした。やっぱりこのふたりは相性がいいんだろうなあ。寺田農もそうだけどさ。ところが後半、官軍の手先にされたとわかってからの三船さんは俄然よくなる。女郎の岩下志麻も乙羽信子もそうだね。ラストのええじゃないかにいたる乙羽さんも張り切ってるし、撃ち殺される寸前の岩下さんもええね。

 
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新選組

2021年10月19日 01時18分52秒 | 邦画1961~1970年

 ◇新選組

 

 まあ、三船敏郎命のぼくとしては、認めないわけにはいかないんだけど、大学の時に初めて観たときは「あ゛~っ」とがっくりしたものだが、今回はそれほどでもなかった。

 ていうか、稲垣浩が脚本にからんでいるせいか、いやまじな話、上手にまとめられてる。近藤勇の京都時代の話があらかたで、まあつまりこれまで擦り切れるくらい擦られた部分の映画化なんだけど、でも2時間でこれだけまとめるのはけっこう骨が折れたんじゃないかしらね。

 栗塚旭のところへ依頼が来たっていう話を、前に栗塚さんがしてたけど、でもこれは小林桂樹で良かったんじゃないかな。このキャストが並んでるところに栗塚さんが顔を出したらなんだか違和感がありありで、違う世界から迷い込んできたような感じになっちゃうっておもうんだけどな。

 ま、三國連太郎が芹沢鴨を演じてるんだけど、これ、大河ドラマの『新選組!』をおもいだしちゃうよね。父子で芹沢鴨ってのが、栗塚さんが佐藤彦五郎を演じたのや島田順司が登場したのとかをおもいだして、ちょっとなんだか好い感じだなっておもったわ。

 それと、勝海舟と近藤勇の軋轢はやっぱりあったのねって確信しちゃえるのも、好。

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待ち伏せ

2021年09月24日 02時50分41秒 | 邦画1961~1970年
◇待ち伏せ



初めて観たのは大学2年生の時だった。ベータに録画してしばらく本棚に列べてたんだけど見直す気にはあんまりならなかった。

稲垣浩も、三船敏郎との付き合いがあるし三船プロの作品だしってことから遺作を撮る羽目になっちゃったんだろうけど、なんだかね。

峠の茶屋に用心棒と役人と股旅者と幕府転覆を望みながらも御用金めあての悪党と嗜虐趣味の旦那とそいつから逃げた人妻とが居合わせて絡み合うっていう発想はわかるんだけどね。

脚本と音楽と撮影と演技がな~。

中村錦之助だけ、一所懸命にどもって神経質な正義漢を演じてはいるんだけどね~。
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銭形平次

2021年07月23日 14時25分42秒 | 邦画1961~1970年

 ◇銭形平次(1967)

 

 

 あらま、岡田茂の単独企画じゃないのね。ま、所長だったし、かかりきりは無理か。それにしても、八五郎は大辻伺郎だし、お静は水野久美だし、このあたりは映画版ってことで張り込んだんだね。ま、箕輪の万七はおんなじコンビだけど、遠藤さんは辰雄の漢字だったんだあ。へ~。

 つか、平次はまだ賭博に顔を出す鳶職で、岡っ引きの父親に勘当されて飛び出してる時代なのね。映画版のシリーズにしたかったのかな。苦しい時代だね。

 山内鉄也の演出はかっちりしてるな。田坂啓の脚本がいいんだな、これは。でも、十手でかための金打ってのは初めて見たわ。深川のお稲荷さんが祇園の辰巳稲荷でロケしてる。楽にできてたのかな。拓ぼんも志賀勝も汐路章もみんな若いな~。

 いいロケセットだなっておもったのは、心中に見せかけられたとび政の死体が見つかる橋なんだけど欄干が壊れそうに傾いてる。この美術はええね。いや、待てよ。どうも既視感が強い。大友柳太朗が「煙草を持っていけ」というあたりから、これ見たな、虎の穴みたいな河岸が出てきて、江戸の歌舞伎町的な感じのところが巣窟になってて、幼なじみの小池朝雄が顔を潰されて殺されるんだけど実は……とかいう筋書きじゃなかったっけと。

 あらあら、デジャビュじゃなくて、ほんとに前に観てたのね。

 ま、なんにしても、僕はやっぱり銭形平次は大川橋蔵だな~。

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座頭市と用心棒

2021年06月18日 12時10分35秒 | 邦画1961~1970年

 ◇座頭市と用心棒

 

 凄いなとおもったのは、いつもと雰囲気のちがう伊福部昭の主題曲が流れたとおもったら、なんとまあ、座頭市が3年ぶりに訪れた宿場の鍛冶屋で常田冨士夫がなまくらを打ってる音とリズムがおんなじだった。岡本喜八の頼みか伊福部昭の発想かはわからないけど、これは凄い。『七人の侍』の水車の響きと主題曲のリズムの見立てより合ってるわ。

 脚本もうまい。常田がなまくらしか打てねえというのに対して、なあに大根が斬れりゃいいんだよという勝新太郎が、さらに、鶯の声でも聞きながら露天風呂にのんびりとなといえば、次のカットは温泉に浸かる勝新の背後で騒いでるのは女郎どもだ。せせらぎの音がいいなあという勝新だが、そこには斬られて棄てられた死体がある。うまい。

 うまいといえば、最初、酔っぱらった三船敏郎がつまずきながら逆さ抜きして勝新を刺そうとしたとき、咄嗟に鞘を抜いてまたそこへ刀を差し入れさせる勝新の絶好さといったらない。

 ていうかこれ、傑作だな。得体の知れない烏帽子屋こと滝澤修んちの蔵が火事になるのと九頭竜こと仲代達矢じゃなかった岸田森の登場が合わさるのもうまいし、謎と心の小出しもうまいね。

 三船敏郎と岡本喜八ってのはほんと良いコンビだとおもうな。

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キューポラのある街

2021年04月01日 18時56分33秒 | 邦画1961~1970年

 ◇キューポラのある街

 

 カメラがええな~とおもってたら、姫田真佐久だった。さすがだな。吉永さん、勉強してくるとうそついてパチンコ屋のアルバイトに出かけるとき、ズボン脱いでスカートに履き替えるんだけど、ジミーズが透けてパンツがわかる。百恵ちゃんもそうだったけど、女優としたら当たり前のことが平成以降は通用しない。情けないな。吉永さんは初潮前の中学三年生で、友達に口紅をプレゼントされ、鏡を見てあわてつ脱ぐいとり、なんで大人ってこんなもんつけるのかしらっていうんだけど、いやまじ、今日びの女子中学生に見せてやりたいぞ。それにしても、よくできてる。北朝鮮に帰る家族まで絡めてあるし。ラスト、陸橋と列車の切り返し。朝も早よから、何度、電車走らせたんだ。

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