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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

屍者の帝国

2018年01月22日 00時00分00秒 | 邦画2015年

 ◇屍者の帝国(2015年 日本 120分)

 監督/牧原亮太郎 音楽/池頼広

 出演/細谷佳正 村瀬歩 楠大典 三木眞一郎 山下大輝 花澤香菜 大塚明夫 菅生隆之

 

 ◇19世紀末、ロンドン

 要は21gとされる魂を探し求めていく旅と解釈するのがいいのではないかと個人的には察した。

 おそらく間違っているんだろうけれど、なんとなくそう感じられた。

 屍者はあくまでも一度死んで細胞が生き返った単なる生体であると過程するのであれば、魂を持った屍者はまるで別な生体であり、しかしながらそれを人間として認めることができないというのであれば、これは新たなる人類ということになってしまう。

 う~む、難しいな。

 もっとも、物語はきわめて予定調和に展開していき、やがてワトソンは魂というか言葉を備えた屍者として存在していくことになり、それがつまりはシャーロック・ホームズの語り部になっていくという前日譚で幕を下ろすことになるんだけど、そのように収まりをつけなければ、物語の世界がいたずらに拡散してしまうだけになっちゃうもんね。

 でも、この物語の時代はやっぱり未開なる土地やアジアの奥地かブラック大陸と呼ばれたアフリカ、あるいは南米の未開拓地であって、そういうところへ話が進んでいくのはいかにも20世紀の前夜といった観はあるね。ただ、日本が妙にハリウッド的な大味に包まれてて、なんだかな~とはおもったりもしたかな。

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天空の蜂

2018年01月11日 00時38分46秒 | 邦画2015年

 ◎天空の蜂(2015年 日本 138分)

 監督/堤幸彦 音楽/リチャード・プリン

 出演/江口洋介 本木雅弘 仲間由紀恵 綾野剛 向井理 竹中直人 石橋蓮司 柄本明 國村隼

 

 ◎ビッグB

 なるほど、無人飛行の可能な巨大ヘリを原発の上空でホバリングさせるか。

 いやあ、なるほどね~とおもった。

  誰もが漠然と考えているんだけど、それがなかなか実体化してこない物語を細部にわたって描いてみせた分、この作品は価値があるとおもうんだよね。原作は読んでないけれど、たぶん納得のゆく物理的な説明と関係者たちの心理が描写されてるんだろう。

 まあ、江口洋介の正義感と父性愛はさておき、ほんとうの主人公といっていい本木雅弘の心情はきわめてよくわかる。人間のもっとも陰湿な面の出てくるイジメについても体験している父と子の怨念めいたものが原発に結集しているわけで、これは心情的な憐憫もともない、よくわかる。現実的な怒りというのか江口洋介とはまた異なる怒りの増幅については綾野剛を観ていればいい。これもまたよくわかる。

 けれども、なんともリアルなのは仲間由紀恵で、それがいかに大義名分があろうとも犯罪にちがいないことがわかっていてもなお男に加担してしまう女の心情というのはこういうものなんだろうなっておもうんだよね。

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海のふた

2018年01月04日 00時09分45秒 | 邦画2015年

 △海のふた(2015年 日本 84分)

 監督/豊島圭介 音楽/蘭華

 出演/菊池亜希子 三根梓 小林ユウキチ

 

 △西伊豆

 なんだか似たようなほんわか映画が続く。

 都会につかれた、仕事に限界を感じた、人間関係に嫌気がさした、田舎に癒されたい、なんだかんだ…てな感じで、妙に資金の豊富そうで頭も良さそうでそれでいてやけに浮世離れしてて生活力もなさそうなのにでも楽しく暮らしちゃってる女の子の映画がまた出来たのかって感じだった。

 たいがいそういう映画は料理も綺麗に移されてて、おおむね、登場人物たちは旺盛な食欲こそ見せないものの妙に料理が上手でなんかにつけて拘りがあって、でも共通して男っ気がない。なんだか透明感を漂わせるばかりで、おもわず「欲情しないのか、あんたら?」とかって聞きたくなるんだけど、そんな下世話な野郎はこういう一連の映画は観なくてよいのだよね、たぶん。

 でも、かき氷は僕も好きだし、夏になればかならずいただくもののひとつではあるんだけれど、都会のとっても暖かい店に入ってもやっぱり冬はあんまり食べないし、夏だって台風で吹き飛ばされそうな店には入りたくない。雨風の心配のないところで、なんだかおんぼろなんだけどおしゃれな感じのお店があればなおさらいいけど、海辺の掘っ建て小屋みたいなところでは味もあんまり期待できないような気がするし、そういうことからいえば、やっぱりこの作品も現実味に乏しいかな。

 かき氷のようにふわふわした浮遊感だけ味わえれば、現実味なんてどうだっていいじゃんといわれれば、たしかにそれまでなんだけどさ。

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台風のノルダ

2017年10月12日 02時45分43秒 | 邦画2015年

 ◇台風のノルダ(2015年 日本 26分)

 監督 新井陽次郎

 出演 清原果耶、野村周平、金子大地

 

 ◇ノルダはエスペラント語

 北を意味するらしい。なるほど、Northか。

 まあ、自然の脅威に対する命名ならそれもありかとおもってたら、なんじゃ、宇宙船に乗ってったってことは異星人だったってこと?ちょっと納得がいかないな。

 ノルダはどうやら相当なちからを持っているようで、旧体育館にもとてつもない穴を開けちゃう。地球の中心まで続いてる穴だ。で、こういうんだ。自分の開けた地の渦と大型台風つまり空の渦、そして自分が一直線に繋がったら、自分はいやおうなく人柱にされて地球を再構築させるんだと。それが自分の役目なんだと。ま、この役目っていうか呪縛は主人公の投げつけた野球ボールがノルダの首輪を破壊して解き放つんだけどね。

 こういう、巨大な現象がとても小さな主人公たちのしでかす些細なことで収まるっていう物語は、昔は自主製作映画によくあった。地球の盲腸が金色のリンゴでそれを食べちゃえば地球が救われる、みたいな。だから、物語の新鮮味はあんまり感じられないんだけど、まあ、若さのもたらす瑞々しさを買うしかないね。

 ただ、やっぱり宇宙人ってのは納得いかないな。地球という不可思議な存在の投影であるべきじゃないのかな~。

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日本のいちばん長い日

2017年10月09日 00時28分38秒 | 邦画2015年

 ◇日本のいちばん長い日(2015年 日本 136分)

 監督・脚本 原田眞人

 出演 役所広司、本木雅弘、山崎努、堤真一、松坂桃李、三船力也、戸田恵梨香、蓮佛美沙子

 

 ◇狂気が足りない

 そもそもいまさらなんでこの作品を再映画化しなければならなかったのかがわからない。

 原田眞人は上手な監督で、かたい演出をするし、絵面もうまく作る。だから映画は安心して観ていられるものが少なくない。たとえば『駆込み女と駆出し男』みたいに。でも、この作品についてはどうかな。役所広司もまた好い役者なんだけど、人格者に過ぎるのが難点で、すべてを寛容にくるんでしまう芝居は上手だけど魂の激情のような迫力はやはり三船敏郎の気迫に一歩足りない気がする。役者はそれぞれに得手不得手があるもので、戦争当時の張り子の虎ではあっても張り切った絹糸のような精神をあらわすには三船敏郎のような役者が必要だったような気がするんだよね。

 まあそれは役所広司にかぎらず、他の役者についても同様で、終戦当時の緊迫しきった心模様をどのように演じるかという点について、感情の昂揚の凄まじさについて、しかしながらそれが狂気による奔出であるのか冷静沈着な行動であるのかを表現しなければならず、これはなかなか大変だ。たしかに岡本喜八の前作は大仰すぎるところもなくはなかったけれど、それは戦争のもたらす狂気がこんにちから見れば滑稽極まりない悲喜劇であるという視点のもとに描かれているからそうなるわけで、演出もどのような視点に立つのかというところがいまひとつ稀薄なように感じられるんだけど、まあこれは個人的な意見だから。

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ビリギャル

2017年07月28日 01時16分01秒 | 邦画2015年

 ◇ビリギャル(2015年 日本 115分)

 監督 土井裕泰

 出演 有村架純、伊藤淳史、田中哲司、吉田羊、あがた森魚、安田顕、矢島健一

 

 ◇偏差値40でも慶應は不思議じゃない

 実をいえばそれほど驚くような展開でもない。ぼくもそのくらいの偏差値だったこともある。

 偏差値って、実はかなり乱高下するもので、人間やっぱり努力すればそれだけの結果はついてくる。

 ただ、これはどうしようもなくおもうんだけど、頭の良いやつはほんとに良くて、かれらは勉強は人並みでも結果は人並みはずれてる。この主人公の金髪パーマ、厚化粧、ピアス、極端ミニスカ、素行不良、語彙不足のギャルが、実はもともと勉強する才能があったのかもしれないし、もしかしたらすべて努力のたまものなのかもしれない。そんなことは、ぼくは本人を知らないからなんともいえないんだけど、うん、こういうこともときどきあったんだろうな。ていうより、意外に身近にそういう受験生はいたな。

 とはいえ、映画はなかなか展開もよくて親と子の信頼について過不足なく撮れてたような気がするわ。まあ、センセーショナルな題名が成功の源だったんじゃないかって、なんか他人行儀な言い方だけどそげなふうにおもったんだわ~。

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あん

2017年07月26日 00時21分53秒 | 邦画2015年

 ◇あん(2015年 日本 113分)

 監督・脚本 河瀨直美

 出演 樹木希林、永瀬正敏、市原悦子、浅田美代子、水野美紀

 

 ◇ぼくも餡子は好きだけど

 いつもどおり、河瀨直美の録音は凄いな。

 樹木希林も市原悦子も上手だなっておもうんだけど、あの女子高生の役どころは取って付けた観があるね。樹木希林の指のことを執拗に訊くのも物語では必要だし、誰かに話したかと訊かれたとき母親の水野美紀にしか話してないと答えたとき、ああこれで広がったのかと分かるけれど、だったら、その後、女子高生の後悔と愁嘆が要るんじゃないかしらね。もうひと押し欲しいなって。

 それと、ラスト、永瀬正敏が「いらっしゃいませ」って声をはりあげて呼び込みするのはいただけないな。あれじゃあ花見をしている人には迷惑だし、かえって売れない。樹木希林はそれを望んでるわけじゃないでしょ。やっぱり、小豆を茹でて水を張ったときにじっと見ている印象的な場面があるんだから、最後は永瀬も樹木希林とおんなじポーズで小豆を見守ってた方がいいんじゃないかしらね。それが志を受け継ぐってことなんじゃないかな。

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深夜食堂

2017年07月22日 23時18分52秒 | 邦画2015年

 ◇深夜食堂(2015年 日本 119分)

 監督 松岡錠司

 出演 小林薫、多部未華子、高岡早紀、余貴美子、オダギリジョー、谷村美月、田中裕子、光石研、筒井道隆、松重豊

 

 ◇めしやの話

 鍵になっているのは多部未華子なんだけど、まあ物語はいろいろなところで触れられているからわざわざここで書く必要もないだろう。

 おもいだすのは学生時代のことで、ぼくには行きつけの居酒屋はなかったけど、食堂はあった。ただ、ここのようにお酒を出したり、常連があれこれと混ざり合ったりすることはなかった。あ、あの人、知ってる。あ、この人、こないだも来てたな。とかいうくらいで、口もきいたことがないし、おたがいに目を合わせることもなかった。それが現実なのかもしれないよ、食堂ではね。ちなみに、ぼくが通っていたのは大学の周辺はさておき、下宿してたところは東長崎っていうところなんだけど、グリーンっていう軽食喫茶と、おおむらっていう蕎麦屋があって、そこで晩ご飯を食べることができた。どちらも三日に一度は行ってたような気がするな~。

 昔から食堂物は変わらず続いていて、この作品もまたそうした食堂を舞台にした人情話のひとつになっていくんだろうね。とはいえ、ここで『駅前食堂』とかの話をもちだしても仕方ないし、この映画の持ち味になってる地味さは『駅前食堂』にはないかもしれないしね。

 ちなみに、この映画でひとつ救いになっているのは、ぼくのように原作の漫画も知らなければそのほかの情報もなにひとつ持っていない観客も少なからずいるわけで、そういう物わかりの悪い連中にもわかるように映画が作られているっていうことかな。

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種まく旅人くにうみの郷

2017年07月20日 13時38分08秒 | 邦画2015年

 ◇種まく旅人くにうみの郷(2015年 日本 111分)

 監督 篠原哲雄

 出演 栗山千明、桐谷健太、三浦貴大、谷村美月、根岸季衣、山口いづみ、永島敏行、豊原功補

 

 ◇伝統作業“かいぼり”の復活

 なんだかこの作品は「種まく旅人」シリーズとかってなってるらしい。松竹はシリーズが好きだね。農林水産省の職員が地方に派遣されてその土地土地の名物や名産や風習や伝統やらといったものを知り、味わい、体験し、そして感動することで地方から日本を見つめるとかいった感じなんだろうけど、まあ女性版の寅さんみたいなものかしらね。

 かいぼりってのは、灌漑のために掘られた溜め池の池の水を抜いて、底に堆積してる草木や土砂を取り除くことをいうんだそうな。これをやると、山の栄養が海に流れ込んで、海水にミネラルが満ちて、これを食べた魚を獲って食べることで畑に栄養が還っていくっていう循環をうながせる。だから、山と海の両方が得をするってことになるんだけど、なかなか面倒だからこんにちではあまりやられてない。それをやろうって物語だ。

 で、物語のへそになってるのは山彦海彦の神話みたいな兄弟で、山彦が桐谷健太で、海彦が三浦貴大ってわけだね。女寅次郎の栗山千明を地方へ派遣するのが永島敏行で、地方でそれを受けとめるのが豊原功補という面子になってて、まあ、おさまりはつく。ただまあ地域調査官という設定だからここに残るわけにはいかないし、そうした分、地に足のついた主人公は求められない。こういうほんわかした話には必要ないんだろうけど、どうしてもヒロインが第三者になっちゃうんだよね。シリーズ物の探偵とおんなじで、こればかりは宿命だから仕方がないね。

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目を閉じれば、いつもそこに 故郷 私が愛したシリア

2016年10月21日 20時55分07秒 | 邦画2015年

 △目を閉じれば、いつもそこに 故郷 私が愛したシリア(2015年 日本 57分)

 監督 藤井沙織

 

 △シリア難民のドキュメンタリー

 で、東京外語大で催事がおこなわれたので、行ってきた。

 なんていえばいいのかな。やっぱりシリアのロケは必要なんだろうなっていうのが正直なところだ。この国へ逃れてきたしリアの人々の望郷の念はよくわかるし、そうした人々を撮っていくのは報道の姿勢としても時事性からしても有意義なのだろうけれども、素朴な感想としてもうすこし踏み込んだらよりいっそう完成度は高くなのではないかとおもうのですよ。

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ライアの祈り

2016年04月04日 19時59分40秒 | 邦画2015年

 ◇ライアの祈り(2015年 日本 119分)

 監督 黒川浩行

 

 ◇ベトナムの部分は要らん

 いやまあ、バツイチの鈴木杏樹が人数合わせで参加した街コンで、いきなり、四十過ぎで無精髭の考古学オタク宇梶剛士に出会った瞬間、縄文時代を吹き抜ける風を感じたとかって、それはないだろ、普通。もうこの瞬間からなんだか得体の知れない昭和の良き時代のような甘ったるくい世界が始まるんだが、こんな素朴な人間たちちょっとおらんぞみたいなことを感じながらもまあいちおう最後まで観た。

 鈴木杏樹はほんとうに好い子で、普段からこういう純粋な人なんだろうな~って気がするし、いや実際、そういう素敵な女性なんだから、こんな恋愛をして幸せになってもらいたいし、宇梶剛士にしてもまあ若い時の暴力的なイメージはまるで影をひそめ、まじにとっても好い人なオーラを発しているし、いや実際、こういう太古の響きを背に受けていかなければならない立場なんじゃないかっておもうからこういう映画に次々に出て頑張ってほしいっておもってるんだけどね。

 だからこのライアっていう存在がいまひとつよくわからないぼくは、夢の中に出てきた太古の少女ライアの祈りとかっていうんじゃなくて、もうすこし別なネーミングっていうか象徴っていうかそういうものが欲しかった気がするんだけど、そんなことはさておき、途中で宇梶がベトナムに往っちゃうのは駄目だな。いたずらに時間を伸ばすだけのことだし、舞台を移してしまうことで町おこし的な雰囲気はもろくも崩れ去るし、時の流れを追っていた緊張が切れる。好いことはいっさいない。

 もうちょっと頑張れば、それなりに素敵な小品にはなりそうなんだけどな~。

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杉原千畝 スギハラチウネ

2016年04月01日 00時00分00秒 | 邦画2015年

 ◇杉原千畝 スギハラチウネ(2015年 日本 139分)

 監督 チェリン・グラック

 

 ◇ジェームス・ボンドじゃないんだから

 いくらなんでも『ロシアより愛をこめて』のようなシベリア鉄道での活劇はないんじゃないか。

 どうも感覚が違うっていうか、杉原千畝という人をどのように描こうかとか、製作者側がこうした人道的な行為についていかなる意見を持っているのかといったことがうまく見えてこないんだよね。人間を超越したような英雄を描いたところでダメなだけで、なんで唐沢寿明も小雪も長い収容所生活の果てに解放されたとき衣類も汚れてなければ気持ちも溌溂としているのかっていうような重箱の隅を楊枝でほじくるみたいなことをいっても仕方ないとはおもってるんだけど、どうにもいわなければ気が済まないっていう感じなんだよな~。

 当時、リトアニアまで辿り着いたユダヤ人を救ったのはなにも杉原千畝だけではないというのは、むろんちょっとは描かれているものの、しかしそれでも杉原をいちだんと高く扱っていることにちょっとした違和感がある。たしかにユダヤ人救出のひきがねをひいたのは杉原で、杉原に続いてさまざまな人達が人道的な行動をとっていったわけだけれども、なにもこの一連の物語は杉原を英雄とすることではなく、杉原のとった行為に拍手を捧げ、かつそれに続いた人々を掘り起こして喝采を浴びせることに主題を置かなくちゃいけなかったんじゃないのかな~っておもうんだけどね。

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ソロモンの偽証

2015年10月09日 00時00分35秒 | 邦画2015年

 ◇ソロモンの偽証(2015年 日本 前篇121分、後篇146分)

 監督 成島出

 

 ◇全編267分は半分でよろしい

 いくらなんでも長すぎる。それなのに、死んだ子の死んだ原因がよくわからないっていうのは脚本の不出来としかいいようがない。邦画で脚本が不出来になってしまうのは、ひとえに監督の口出しとプロデューサーの仕切りの悪さでしかないんだけれど、この作品がなんでこんなに冗漫になってしまったのかについては、ぼくは製作現場にいたわけでもないからさっぱりわからんものの、とにかく長い。長すぎる。これではあかん。

 というよりも、雨のふらしも脚本とおなじくらいあかんかったです。噴水がこんな夜にかかってくるのか?とおもったらいきなりの雨だった。演出のせいか、スタッフの技量のせいか、わからんけど、なににしても必要なのか、あれ?とおもわせる悲しさ。すべての人物がつながっているようでつながっていない辛さ。実をいえば、この作品の「中学生が友達の死について自分たちで裁判をする」という主題を聞いたとき「そいつはすげえ」とおもった。だから、けっこう期待してたんだよ、いやまじで。

 ところが、これだ。

 期待度が高かった分、呆然度も高いぞ。

 結局のところ、大人も子供もみんな心の闇を抱えていて、それが連鎖して少年の自殺なのか過失なのかはわからないけどとにかく1990年の大雪のクリスマスの朝に死んじゃった、というだけの話になっちゃってる。そもそもは、いじめだ。けれど、このいじめを解決できないのは、大人の身勝手さと人間の心の弱さなのかもしれないっていうところに主題が在りそうな無さそうな感じなんだけど、それにしても、たったそれだけのいうためにこの長さがあったのだとしたら、邦画の観客たちよ、怒りたまえ。前後編合わせて1800円でええがや!と。

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