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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ノマドランド

2023年01月31日 23時40分21秒 | 洋画2021年

 ◎ノマドランド(Nomadland)

 

 批評家たちや映画祭など、世界中から絶賛されてるんだけど、そこまで凄いか?

 なるほど、立ち小便から始まるとはおもわなんだ。象徴的だなっておもったけど、この冒頭部分がいちばんおもしろかったかもしれない。炊き出しを頼るキャンピングカーの集落が、なんとも遊牧民をおもいださせるし、放浪の民ノマドってのもよくわかる。同時に、映画中でもいってるように、これもアメリカなんだなともおもう。フランシス・マクドーマンドが製作総指揮と主演を兼ねたいと切望して、アカデミー賞で作品賞と主演女優賞を取っちゃうのもわかる。

 けど、だれる。

 単調な車上生活の点描に疲れる。

 そのかわり、音楽がいい。

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母との約束 250通の手紙

2023年01月25日 23時56分49秒 | 洋画2022年

 ◇母との約束、250通の手紙(La Promesse de l'aube)

 

 どはずれたエキセントリック母ちゃんの物語だったわ。どんどん興味が薄れてくのが途中からわかったけど、いやまあ、なんとも驚きなのは、なるほど、このお母ちゃん、シャルロット・ゲンズブールだね。そう、いつまでも『なまいきシャルロット』じゃないわな~。

 喜劇なのか、悲劇なのか、作家ロマン・ガリの自叙伝が元だからなんともいえないんだけど、どうにも中途半端な感じは拭えないんだけど、どうなんだろう?

 ただまあ、世の中の作家なんてもんはみんなこんなもんなんだろうがっていう印象は強いね。ひとつ当たれば故郷に錦を飾ったつもりになるし、自分のちからが無いために新聞に掲載してもらえないとはとても家族にはいえず、編集者がまちがってるだの、筆名を変えているんだの、とにかく自己愛と矜持がものすごい。ロマン・ガリはそれで成功したからいいけどさ。

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鉄くず拾いの物語

2023年01月25日 02時09分14秒 | 洋画2013年

 ◎鉄くず拾いの物語(Epizoda u životu berača željeza)

 

 いやあ、ロマの人達の暮らしは悲惨だなあとか、蚊帳の外からの発言とかしてるから、この実話映画に本人役で出演したナジフ・ムジチは村八分になってボスニア・ヘルツェゴヴィナなんか嫌いだとまで発言するようになり、出られなくなったベルリン映画祭が開幕して三日後に死んじゃうとかって、まじ、大変じゃんね。ダニス・タノヴィッチはそこまで予測して映画は撮らなかったにせよ、いやあ、これは辛いな。

 にしても、主役ふたりもさることながら、娘ふたりもドキュメンタリーを観てるみたいで、まあ、そういう撮り方なんだけど、自然体でものすごくいい。撮影も同時録音もいいし、原子力発電所がなんか象徴的に映されててこれもまたいい。まあ、そこらじゅうの映画祭でもてはやされるのはわかるよ。

 しかし、保険証を持っていないために手術が受けられなかったから妹の保険証を持って妹のふりをして掻爬手術を受けるとかってありな国なのか。えらいところだな。神はどうして貧しいものを苦しめるんだって、ナジフの面倒見のいい弟はいうんだけど、ほんとだよね。

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シリアナ

2023年01月24日 02時24分08秒 | 洋画2005年

 ◎シリアナ(Syriana)

 

 中東の架空の国シリアナの石油の利権をめぐる物語なんだけど、もはやこの時代の中国はまるで違った国になっちゃってるから、CIAの暗躍もあってアメリカに牛耳られて利権をすべて吸い取られちゃうことに我慢がならないっていう正義感の物語は成立しにくくなってる。

 現代の縮図を一国で、しかもグランドホテル形式でやろうっていう試みはわからないじゃないけど、ほんと、鮮度を失っちゃうときついな。

 ただ、ジョージ・クルーニー、この映画のために15キロ肥えたっていうのはよくわかるけど、肥える意味はあったんだろうか?まあ、アカデミー賞もらったからいいか。マット・デイモン、クリストファー・プラマー、クリス・クーパー、ウィリアム・ハート、マーク・ストロング、すごいな。これ、みんな、クルーニーのキャスティングなんだろうか。たいしたもんだな。

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アーニャは、きっと来る

2023年01月13日 23時21分19秒 | 洋画2020年

 ◇アーニャは、きっと来る(Waiting for Anya)

 

 脚本がよくないな。音楽はいいし、主人公の羊飼いの少年を演じたノア・シュナップはじめ役者もいいし、ロケーションもいいのに、脚本と演出が良くない。もっとおもしろくなるのにね、残念だ。

 よくないところは多々あるけど、レア役の女の子がまるで演技になってないところもそうだし、なんといっても、最後の最後まで出てこないアーニャのことはすっかり忘れ去られて、まるで関係ない子供たちの脱走劇になってくってところだ。なんか山を越えていくって教会で送別会をして村の子供たちが歌を歌うあたりから『サウンド・オブ・ミュージック』をおもいだしたわ。

 てゆーか、この子供たちはいったい誰の手でこの山間の村まで連れてこられたんだよ。アンジェリカ・ニューストンは単に山の中に隠遁してる風変わりな婆さんってだけだし、これに惚れてるジョン・レノもそんなユダヤ人を脱出させる組織とかと連絡とってるわけでもないし、謎だ。

 
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プロテージ 偽りの絆

2023年01月07日 23時44分55秒 | 洋画2007年

 △プロテージ 偽りの絆(門徒 Protege)

 

 リアルさを求めるかわりにエンタメ度が低くなったのか、アンディ・ラウの良さが削られた。

 また観ることはないだろうなあ。

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修道士は沈黙する

2023年01月06日 23時53分40秒 | 洋画2016年

 ◇修道士は沈黙する(Le confessioni)

 

 なんだかわざわざ難しくしてるような気がする。

 つかなるほど、G8(Group of Eight)か。もうロシアが入ることはないんだろうなあっていう話はともかく、このG8が行われたドイツのハイリゲンダムがそのまま舞台になってるんだけど、なんていうか、要するに先進国の財務相が好き勝手な悪だくみをして貧乏な国への援助はやめちゃおうぜみたいなことを話し、さらに女がいればやっちゃおうぜみたいな野郎が財務大臣だったりして、そのあたりはともかく茶化した喜劇なんだけど、このG8の内容もよくわからないし、ビニール袋をかぶって自殺した国際通貨基金の専務理事ダニエル・オートゥイユがわざわざ特別聴取人に修道士を選んで告解する意味がどこにあったんだろう?

 ていうか、告解を受けた修道士トニ・セルビッロはなんであんなに喋っちゃうんだろう?

 監督のロベルト・アンド―はいったいなにがいいたかったんだろう?

 わかるようでよくわからないところで、修道士が沈黙するというのはあくまでも第三者に徹して、自分の意見はなにもいわず、最後の最後まで見守るだけの部外者であるべきはずが、最後には演説までかますってのはどうよ?って感じだ。そもそも修道士である意味もなく、別に坊さんでもよかったわけで、それをいえば秘密を保持しなければならない偉い人たちの合宿でもいいわけで、要するに権力をもった連中も実は金とセックスには目がなくて、ちょっとだけ良心を持ってる人間は絵本作家だったり歌手だったり宗教者だったりするんだよねっていう、もう、ちょっと古い典型的な設定の物語だったかな。

 ただ、撮影は好かった。

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ベルファスト

2023年01月05日 23時46分38秒 | 洋画2021年

 ◇ベルファスト(Belfast)

 

 ケネス・ブラナーはこの作品でアカデミー賞の脚本賞を獲ったらしいんだけど、そうかなあって感じだ。なんだか少年時代に『小さな恋のメロディ』でも観たんじゃないかってくらい、おんなじような構図の情景が重なる。平和なロンドンの下町と、アイルランド紛争の勃発するベルファストの下町の差はあるけどね。

 アイルランドの問題が地球のまるで裏側に住んでいると、いまひとつ切実感がなくて、この当時のベルファストの雰囲気も想像しにくい。この少年ジュード・ヒルはケネス・ブラナーの幼い日なんだろうけど、なるほど、成績の良い内気な子供だったのねってことしかわからない。

 おもしろかったのは、カンバーバッチの親戚としかおもえないコリン・モーガンの煽る暴動で、ジュード・ヒルがスーパーから洗剤を盗むところで、お母さんカトリーナ・バルフに「なんで洗剤を盗んだの?!」とド叱られたとき、その答えが「環境に優しいから」って答えたところで、舞台だったらここで笑いをとるんだろうなっておもった。舞台の発想になったのは、このベルファストの下町のオープンがたったひとつだけで撮られていることで、なんだか舞台みたいだな~って最初からおもって観てた。

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リトル・ミス・サンシャイン

2023年01月02日 14時22分38秒 | 洋画2006年

 ◎リトル・ミス・サンシャイン(Little Miss Sunshine)

 

 映画がヒットした背景には、もちろん、デヴォーチカとマイケル・ダナの楽曲がある。

 それにくわえて、台詞のやりとりがいい。リトル・ミス・コンテストに出るべくダンスを修行しているアビゲイル・ブレスリンに、じいちゃんアラン・アーキンはいう。負け犬の定義を知っているか?負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ。おまえは違うだろ?なんてかっこいい台詞なんだろう。

 脚本もだが、演出も上手だ。麻薬の発作で急死したのはさておき、アビゲイル・ブレスリンが「おじいちゃんはどうなるの?」って聞いたとき、根暗で言葉をしゃべろうとしない色弱のパイロット希望兄貴ポール・ダノが上を向く。さまざまな高速道路の線が交差していろんな方角に延びていく。うまい。

 世界で2番目のマルセル・プルースト学者で鬱の叔父スティーヴ・カレルがいう。誰にもわからない。わたしはあるとおもう。このあたりもうまい。自信はあっても実力のともなわない学者にして実用書作家のグレッグ・キニアの神経症ぶりもいいし、こうした連中の中で唯一まともな母トニ・コレットの怒らない見守り方も上手い。

 ただ、最後におじいちゃんが蘇生して一緒にバーレスクを踊り、二度とカリフォルニアのミスコンに娘を出すなといわれたら「今度はおとなになってから来る」と宣言して颯爽と帰っていってほしかった。ちなみにこのエンジンがかからないから押して駈けて乗り込むオンボロワゴンがまたいい。黄色いフォルクスワーゲンT2マイクロバス。欲しいわ。

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ナイル殺人事件

2023年01月01日 00時02分52秒 | 洋画2022年

 △ナイル殺人事件(Death on the Nile)

 

 ケネス・ブラナーは舞台の演出だけしていた方がいいんじゃないかな。

 とてもじゃないけど、これだけ退屈な映画を自分の主演も兼ねて撮れる人間はそうそういないぞ。ただ、この『ナイルに死す』の映画化はいつも失敗するような気がする。

 1978年のジョン・ギラーミン版もたいしておもしろくなかったし、あのときはまだ役者が揃ってたけど、今回は、ガル・ガボットとアネット・ベニングくらいなもので、ポアロの第一次世界大戦の塹壕戦に出ていたことも、そのときの突撃で爆弾を蒙り口許にすごい怪我をしたことが髭のきっかけになったってことも、実はどうでもよくて、そんなことに鉦をかけるくらいなら、観光客船に乗り込むまでの長ったらしい部分は削除してもうすこし船内劇に金をかけてほしかったわ。

 まあなんにしてもつまらなすぎてどうしようかとおもったぞ、ケネス・ポワロ君。

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