◎リトル・ミス・サンシャイン(Little Miss Sunshine)
映画がヒットした背景には、もちろん、デヴォーチカとマイケル・ダナの楽曲がある。
それにくわえて、台詞のやりとりがいい。リトル・ミス・コンテストに出るべくダンスを修行しているアビゲイル・ブレスリンに、じいちゃんアラン・アーキンはいう。負け犬の定義を知っているか?負けるのが怖くて挑戦しない奴らのことだ。おまえは違うだろ?なんてかっこいい台詞なんだろう。
脚本もだが、演出も上手だ。麻薬の発作で急死したのはさておき、アビゲイル・ブレスリンが「おじいちゃんはどうなるの?」って聞いたとき、根暗で言葉をしゃべろうとしない色弱のパイロット希望兄貴ポール・ダノが上を向く。さまざまな高速道路の線が交差していろんな方角に延びていく。うまい。
世界で2番目のマルセル・プルースト学者で鬱の叔父スティーヴ・カレルがいう。誰にもわからない。わたしはあるとおもう。このあたりもうまい。自信はあっても実力のともなわない学者にして実用書作家のグレッグ・キニアの神経症ぶりもいいし、こうした連中の中で唯一まともな母トニ・コレットの怒らない見守り方も上手い。
ただ、最後におじいちゃんが蘇生して一緒にバーレスクを踊り、二度とカリフォルニアのミスコンに娘を出すなといわれたら「今度はおとなになってから来る」と宣言して颯爽と帰っていってほしかった。ちなみにこのエンジンがかからないから押して駈けて乗り込むオンボロワゴンがまたいい。黄色いフォルクスワーゲンT2マイクロバス。欲しいわ。