☆戦場のメリークリスマス(1983年 イギリス、日本 125分)
英題 Merry Christmas Mr.Lawrence
staff 原作/ローレンス・ヴァン・デル・ポスト『影さす牢格子』『種子と蒔く者』
監督/大島渚 脚本/大島渚 ポール・マイヤーズバーグ
撮影/成島東一郎 美術/戸田重昌 音楽/坂本龍一
主題歌/デヴィッド・シルヴィアン『Forbidden Colours』
cast デヴィッド・ボウイ トム・コンティ 坂本龍一 北野武 ジャック・トンプソン
☆昭和21年9月11日、森正男処刑
兵庫出身、森正男陸軍曹長33歳。
北野武演じるところのモデルになった人だ。
ジャワ俘虜収容所第1分所・派遣第3分遣所虐待事件について起訴され、
イギリス管轄のシンガポールにおいて裁判の後、絞首刑になった。
連座6名で、
阿南三蘇男中佐、森正男曹長、川井吉次曹長、
植田忠雄大尉、倉島秀一大尉、島田蔵之助大尉が全員、処刑された。
事件の全容について、その真実がどのようなものだったのかはわからない。
けど、
少なくとも、この映画の原作者ローレンス・ヴァン・デル・ポストは、
かれらと接触していただろうし、森正男とはそれなりに親密な仲だったんだろう。
それと、全員の遺書を読むかぎり、
かれらは、絞首刑に対する恐怖もあっただろうけれども、
一所懸命に耐え、家族と祖国への愛惜だけを伝えている。
阿南三蘇男の絶筆は「有色人種の為に立て」というものなんだけど、
おそらく、かれらはかれらなりに大東亜共栄圏の理想を追い求めてたんだろう。
戦争ってやつは、人間を狂気に駆り立てるし、
戦後、かならずといっていいほど、俘虜収容所での虐待が問題視される。
でもさ、フィリピンで、死の行進とかって後に呼ばれた移動のときだって、
飢餓状態になってる米軍の兵士を憐れみ、牛蒡を食べさせたら、
「木の根を食べろと強制された、これは虐待だ」
と起訴され、処刑されたとかって話もあるくらいで、
戦場っていう異常な場所で起きたことは何が真実なのかよくわからない。
大島渚は、そうした常軌を逸した時代と場所を背景にして、
男同士の恋愛感情を漂わせながら、ふしぎな青春物語を撮り上げた。
いや、たいした映画だった。
とはいえ、いまさら、この作品のあらすじや挿話とかを書いても仕方ない。
ぼくは、これまでにかなりの数の映画を観てきたけど、
溝口健二の『雨月物語』と『山椒大夫』と『近松物語』、木下恵介の『二十四の瞳』、
黒澤明の『赤ひげ』と『七人の侍』と『隠し砦の三悪人』と『白痴』と『天国と地獄』、
同黒澤の『羅生門』と『用心棒』と『椿三十郎』と『野良犬』と『影武者』と『生きる』、
森谷司郎の『八甲田山』と『海峡』と『聖職の碑』、渡辺邦彦の『アモーレの鐘』、
市川崑の『犬神家の一族』と『細雪』、野村芳太郎の『砂の器』と『八つ墓村』、
稲垣浩の『無法松の一生』と『風林火山』、熊井啓の『千利休・本覚坊遺文』、
小津安二郎の『東京物語』と『晩春』と『麦秋』、山下耕作の『戒厳令の夜』、
小林正樹の『切腹』と『上意討ち』、岡本喜八の『日本のいちばん長い日』、
黒木和雄の『祭りの準備』、斎藤耕一の『約束』と『渚の白い家』、
鈴木清順の『ツィゴイネルワイゼン』、河瀬直美の『萌の朱雀』、
山本薩夫の『戦争と人間』、高林陽一の『本陣殺人事件』、
山田洋次の『故郷』と『同胞』と『幸福の黄色いハンカチ』、
内田吐夢の『飢餓海峡』、工藤栄一の『十三人の刺客』、
川島雄三の『幕末太陽伝』、成瀬巳喜男の『浮雲』、
増村保造の『遊び』、大島渚の『愛のコリーダ』、
そしてこの戦メリを含めた50本に、かなり影響を受けた。
もちろん、今あげた他にも影響を受けたものはあるし、
それを並べたら、ベスト100とかになるのかもしれないけど、
98本しかなかった、とかってことになったら困るから、50本にしとく。
そんなことはともかく、戦メリだ。
戦メリは渋谷東映の地下で観たとおもうんだけど、
ぼくにしてはめずらしく、3回くらい観に行き、
サントラとそのピアノバージョンまで購入するという入れ込みようで、
もしかしたら、これ以後の日本映画は変わるんじゃないかとまでおもった。
でも、全然、変わんなかった。
なにがどう変わんなかったについては、ここで書かないけど、
まあ、そういうふうに昂揚させてくれたってことにおいては、
この戦メリは忘れ難い1本なんだよね~。