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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

プリズナーズ

2024年03月26日 01時38分17秒 | 洋画2013年

 ◎プリズナーズ(Prisoners)

 

 ♪ジングルベル、ジングルベル、バットマンもロビンもばか。

 教会の秘密の地下から椅子に縛りつけられたミイラを発見したジェイク・ギレンホールが、26年前の神隠しの記事を見つけてその母親から誘拐されたときにRV車が止まっていたっていう証言を聞いたときに、すべての謎が解けちゃった。しかしアメリカというのはふしぎな国だな。誘拐された子供の家の前に集まって蝋燭立てて見つかるように祈るんだね。キリスト柄の蝋燭立てまであったりする。信仰なんだろうけど。

 なんにしても、ヒュー・ジャックマンが感情的な父親を演ったのが失敗だったかもしれないね。

 拉致した知恵遅れのふりをしてるとおぼしき肥満の若造を痛めつけるのは黒人の若夫婦にしといてそれを止めに入ったときにガラスで切られたことで怪しいとわかるっていう展開の方が主役として立てられるのに。しかしそうか、迷路の彫られたペンダントか~。迷路をクリアできたら帰してあげようといって16人の子供を殺して、神父に地下へ落とされてミイラになってたわけかあ。

 ホイッスルの聴こえてくるラストカットはいいね。

(以上、2022-01-25 01:19:12)

 

 物語は、その愛情のあまりに理性をかなぐりすてて法を犯すことすら厭わなくなって怪物化してしまう、誘拐された娘を追う父親ヒュー・ジャックマンと、あくまでも物事を客観的に捉えて事件を解決しようとする刑事ジェイク・ギレンホールというふたりを軸にしてる。けど、少女への異常な執着を見せながらも10歳程度の知能しかないポール・ダノが絡んできて、ジャックマンの暴走がダノに向けられてしまうことで、事件が迷路(この円形迷路が鍵なんだけど)に入りこんじゃう。ダノの叔母メリッサ・レオの狂気までは、なかなか行き着かない。

 構図としてはそういう感じなんだけど、主題はあくまでも「囚われた人々」複数形だ。

 それぞれの登場人物が囚われている。敬虔な信仰心、社会における正義感、少女に対する異常性愛、家族を失うことからの喪失感など、登場人物たちはおのおの主題をもってそれに対峙している。そうやって俯瞰すれば理解しやすいんだけど、どうしても失踪、誘拐、監禁、拷問、暴力、迷宮、異常性愛、そして大量殺人という絵的な凄まじさに囚われてしまって、そうした見るべき構図を見失ってしまいがちになる。

 すごいな、ドゥニ・ヴィルヌーヴ。

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クリムゾン・タイド

2024年03月20日 02時33分42秒 | 洋画1995年

 ◎クリムゾン・タイド

 

 君はハーバード出か。趣味は乗馬か。わしは、乗りこなせんよ。老馬がせいぜいだ。馬には感心するよ。頭は悪いが勘は鋭い。女子高生に似ている。男のスケベ心だけはすぐ見抜く。教養は不要だってことだ。わかるようなわからんようなジーン・ハックマンの台詞だ。が、この馬の話が最後まで尾をひくんだ。

 スピニッツァー種がスペイン生まれで最初は黒毛だが大人になると白毛になるというデンゼル・ワシントンと、ポルトガル生まれで最初から白毛だというハックマンだが、最後にわたしがまちがっていたといい、潜水艦の指揮をあやまるのかとおもえば観客をいなしてスピニッツァーはスペイン生まれだと嗤う。

 たいしたもんだ、リドリー・スコット。

(2021-12-22 13:08:24)

 

 チェチェン紛争にからんで核ミサイルが日米に向けて撃ち込まれるんじゃないかっていう危機が、潜水艦アラバマの出撃のひきがねになってるんだけど、この映画ではそんなロシア方面の情勢は背景以外の何物でもない。ハンス・ジマーの傑作曲に乗って描かれるものは、たたきあげで傲慢な白人と、知的な訓練をおこなってきた冷静な黒人の相容れない感情がどのような危機を経れば互いに歩み寄ることができるかという考察だ。それが、実際はトリエステ近郊スロベニアの馬ながら、ふたりおのおの、スペイン生まれとポルトガル生まれというまちがった主張を展開するふたりという構図で説明される。でも、構図を描きたいのなら文章ひとつで十分なわけで、これを背景にした緊迫劇がトニー・スコットの描きたかったものなのは疑いない。潜水艦という密閉された舞台空間がその緊張感をますます駆り立てる。うまい映画だ。

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