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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

パターソン

2018年03月31日 11時57分49秒 | 洋画2016年

 ☆パターソン(2016年 アメリカ、ドイツ、フランス 118分)

 原題/Paterson

 監督・脚本/ジム・ジャームッシュ

 音楽/Squrl(ジム・ジャームッシュ カーター・ローガン シェーン・ストーンバック)

 出演/アダム・ドライバー ゴルシフテ・ファラハニ 永瀬正敏 カーラ・ヘイワード

 

 ☆ウィリアム・カーロス・ウィリアムズへのオマージュ

 ニュー・ジャージー州パターソンに住むバス運転手のパターソンは、寛容な男だ。

 怒らない。

 奥さんが朝起きなくてもご飯を作ってくれなくてもたまに作ったのがとんでもない料理で水で流し込まないと食べられなくても怒らない。バスが電気系統の故障で動かなくなっても落ち着いたものだ。しかしとろいのではなく、散歩の帰りに立ち寄る酒場で一杯の麦酒を呑んでいるとき、女にふられた男がいきなり銃をかまえるんだけど、焦らず素早く飛びつき取り押さえ、銃を取り上げる。ま、おもちゃなんだけどね。

 でも、怒らない。

 最後に登場する『あっ、は~っ』と叫ぶ永瀬正敏は神様なんだろうか。仕事の合間にいつもつけてきた詩のノートを飼い犬に粉みじんにされた後、偶然に出会うんだけれども、唐突にまっさらなノートを手渡される。また作ればいいんだよといっているようだ。

 実に寛容なのだ。

 ま、犬に対して『おまえなんか嫌いだ』とはいうんだけど、感情をほとばしらせるのはこのときだけだ。寛容なのだ。町中に現れる双子の意味がわからないけど、優しい生き方とはこういうものなのだな、それは神様もちゃんと見ていてくれるのだな、とおもわずおもってしまう映画。あとになればなるほど、またおもいだしてしまう不思議な魅力の映画だった。

 ともあれ、寛容というのはどういうものかを教えてくれる。

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白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々

2018年03月29日 16時26分01秒 | 洋画2005年

 ◇白バラの祈り ゾフィー・ショル、最期の日々(2005年 ドイツ 120分)

 原題/Sophie Scholl – Die letzten Tage

 監督/マルク・ローテムント 音楽/ラインホルト・ハイル

 出演/ユリア・イェンチ アレクサンダー・ヘルト アンドレ・ヘンニッケ

 

 ◇1943年2月22日

 反ヒトラーのビラをミュンヘン大学のホール内に撒いていくところだけ緊迫感があったものの、あとはひたすら取り調べられてるだけで飽きる。制作者としては佳境の裁判で当時のドイツ国民の心を表したかったんだろうけれども、なんか舞台劇を見てる感じで、やっぱり飽きる。

 とはいえ、このヒロインのゾフィー・マグダレナ・ショルは実在の女性で、小説『天国の門』にも登場したナチス時代の白バラ抵抗運動のメンバーのひとりだ。

 フォルヒテンベルクの市長の娘に生まれてドイツ少女同盟(BDM)にも参加していた、まあいうなればヒットラー・ユーゲントの女の子版みたいな少女時代を送ったんだけど、兄貴の影響なのか白バラ運動に身を投じて、反ヒットラーのビラをまいたことで捕まり、国家反逆罪に問われて死刑判決を受けて即処刑されるっていう短い人生を送った。

 そういうことからいうと、映画としての展開よりも内容によっていろんな映画祭で評価されたんじゃないかって気がしてくるんだけど、どうなんだろう?

 なんだか、ちょっとな~。

 ちなみに邦題の『~最期の日々』の『最期』の使い方なんだけど、まちがってない?

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不機嫌なママにメルシィ!

2018年03月26日 00時33分49秒 | 洋画2013年

 ☆不機嫌なママにメルシィ!(2013年 フランス、ベルギー 87分)

 原題/Les garcons et Guillaume, a table!

 監督・脚本・主演/ギョーム・ガリエンヌ 音楽/マリー=ジャンヌ・セレロ

 出演/ダイアン・クルーガー チャーリー・アンソン ブリジット・カティヨン キャロル・ブレナー

 

 ☆自伝的戯曲らしい

 おもしろかった。

 ゲイじゃないと気がつく男の子の物語だ。

 男の子たちとギョームと呼ばれる男の子なのだが、見事に演じてる。途中、いんげぼるぐという名前の温泉療養所の看護婦で、登場するダイアン・クルーガーがやけに綺麗なんだが、それはさておき、ゲイなのかゲイとしての素質を持ちながらもなりきれていないのか、ともかく母親の影響があまりにも強すぎるがためにオカマ同然に扱われ、それをまた素直にかつ自然に受け入れてしまっている息子の物語だが、男っぽい口調ながらも女っぽい仕草もする母親と、母親の真似が得意ですべての動作と口調があまりにも女性的な息子のひとり二役は実にうまい。

 それにしても、自宅、寄宿舎、留学先、療養所でのモノローグの途中、唐突に登場する幻影なのか空想なのかもわからない母親とのやりとりは実にシュールで、それらがすべて劇場の舞台で告白されてゆくという二重構造になっている構成のうまさ。

 で、ゲイじゃないと気がつくきっかけは女の子たちとギョームと呼ばれる女の子に出会い、恋をすることなのだが、それを知った母親が『あなたはゲイじゃなかったの?』と落胆するという感情はいったいなんなんだともおもう。つまりは母親の呪縛から解放されてゆく話なのだが、それを舞台で告白したとき、はじめて母親役が『かれ』ではなく女性の役者が演じる。

 うまい演出だな。

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本能寺ホテル

2018年03月25日 12時44分08秒 | 邦画2017年

 △本能寺ホテル(2017年 日本 119分)

 監督/鈴木雅之 音楽/佐藤直紀

 出演/綾瀬はるか 堤真一 濱田岳 平山浩行 風間杜夫 高嶋政宏 近藤正臣 八嶋智人 宇梶剛士

 

 △ワンパターン本能寺タイムスリップ

 なんで、いつもタイムスリップすると本能寺なんだ?

 そうおもうのは僕だけなんだろうか。

 それも、いつも出会うのは織田信長だ。どうして明智光秀のところへタイムスリップしないんだろう。で、おいおい、あんた、敵は本能寺にありっていうつもりだろう?って訊かないんだろう。たまには、ちょっとくらいひねった物語を見せてくれないか。

 と、ここで書いたから、この後、明智光秀のところへタイムスリップした物語が出てきたら、ぼくの入れ知恵です。

 で、このたびのタイムスリップ本能寺だけど。

 やりたいことの見つからない教員免許だけ持っている綾瀬はるかが申し込まれるままに結婚へと引きずられていく中、本能寺の変に遭遇して信長からやりたいことはないのか、人間はやりたいことができたのだとわかればもうなにもいらなくなるのだ、それをして人生の満足というのだ、とだけ教えられて結婚もやめて教員になっていくという、たったそれだけのために本能寺に時間跳躍するという映画だった。

 ま、見る前からわかってたけど。

 良かったのは、料亭のロケセットと近藤正臣の金婚式の挨拶だったな。

 この監督の作品は『プリンセス・トヨトミ』の方がおもしろかったな。どちらも似たような雰囲気だけど。

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バニシングin60″

2018年03月24日 13時50分26秒 | 洋画1971~1980年

 △バニシングin60″(1974年 アメリカ 98分)

 原題/Gone in 60 Seconds

 製作・監督・脚本・主演・スタント/H・B・ハリッキー

 音楽/ロナルド・ハリッキー フィリップ・カチャトリアン エブ・ジャンセン

 出演/マリオン・ブシア ジェリー・ドージラーダ 1973年型マスタング「ELEANOR」

 

 △LOCK YOUR CAR OR IT MAY BE GONE IN 60 SECONDS

 ぶっ壊した車は93台らしい。

 車好きにはこたえられない約40分間のカーチェイスなんだろうけど、どうにも、ぼくには何度観ても飽きちゃう。

 もともと車のことはほとんどわからないし、そもそも運転することもめったにないから、カーチェイス自体にそれほどこだわりはない。だからマスタングが徐々に見る影もなくなっていくのをまのあたりにしていても、なるほどな~としかおもえないのは自分ながら不幸な野郎だな~とおもったりするのだ。

 

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ベイビー・ドライバー

2018年03月23日 00時19分59秒 | 洋画2017年

 ◎ベイビー・ドライバー(2017年 イギリス、アメリカ 113分)

 原題/Baby Driver

 監督・脚本/エドガー・ライト 音楽/スティーヴン・プライス

 出演/ケヴィン・スペイシー リリー・ジェームズ ジェイミー・フォックス エイザ・ゴンザレス

 

 ◎アンセル・エルゴートの耳鳴り

 なるほど、ウォルター・ヒル『ザ・ドライバー』へのオマージュね、わかるわ~。

 幼い頃の交通事故で両親が目の前で死に、その物心両面の衝撃を受けたことで耳鳴りがやまなくなり、けれど運転の技術が神懸かったものになるという皮肉な設定はいいし、それによって麻薬の入った車を盗もんでしまったことで悪の道に誘い込まれ、足が抜けなくなりつつも足掻きつづけるという展開も悪くない。

 耳鳴りを聞こえなくするには音楽を聴くしかなく、いつも聴いているために里親とは会話ができないのかとおもえば、里親は耳が遠く、手話で意思の疎通をはかるという心憎い設定もいい。母親が働いていたダイナーで毎朝食事をとり、そこで働くようになった天涯孤独の少女と恋仲になっていくのも悪くない。

 脚本がうまいだけでなく、音楽と画面が完全にシンクロしてる。

 見事だな。

 起承転結がしっかりと作られ、最後の一対一の決闘までちゃんと用意され、母親との思い出の声でから始まり里親や彼女など出会った人間の声でテープを作るのが趣味で、それがまた追い込まれてしまう切っ掛けにもなり、さらには土壇場の銃撃で耳鳴りは消え、またエピローグでの彼女との再会まで物語の見本のような完璧な脚本だった。

 

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ヴァン・ヘルシング

2018年03月22日 23時18分24秒 | 洋画2004年

 △ヴァン・ヘルシング(2004年 アメリカ 132分)

 原題/Van Helsing

 監督・脚本/スティーヴン・ソマーズ 音楽/アラン・シルヴェストリ

 出演/ヒュー・ジャックマン ケイト・ベッキンセイル リチャード・ロクスバーグ

 

 △怪物くんか!?

 いくらヒュー・ジャックマンが好い人だからって、なんだか途中からかわいそうになってきた。

 だって、あまりにも中身がないんだもん。

 もうなんていうか『ドラキュラ』と『フランケンシュタイン』と『狼男』と『ジキルとハイド』を足して割ったような、モンスターの顔見世みたいな感じになっちゃってて、どうやっていろんなものを繋ぎ合わせようかってことに苦心して、で、あとはCGの活劇だけを連続させていってるようにしか見えない。

 だから、肝心の物語がなんともかんとも薄っぺらなものに感じられて仕方がなかった。演じろっていわれてるヒュー・ジャックマンがかわいそうじゃん。

 それと、せっかくのケイト・ベッキンセイルなんだから、もうちょっと好い感じにしてあげればいいのに。眉もなんだか細くし過ぎて蓮っ葉に見えるし、最後なんか、え?まじで死んじゃうわけ?ガブリエルことヒュー・ジャックマンの変身しちゃった狼男と激突した拍子になにがおこってるわけ?てな展開で、なんじゃこりゃっていう目まぐるしいテンポの映画だったわ。

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最高の花婿

2018年03月15日 00時06分09秒 | 洋画2014年

 ◎最高の花婿(2014年 フランス 97分)

 原題/Qu'est-ce qu'on a fait au Bon Dieu ?

 監督/フィリップ・ドゥ・ショーヴロン 音楽/マルク・シュアラン

 出演/フレデリック・ベル ジュリア・ピアトン エミリー・カン エロディ・フォンタン

 

 ◎婿の国に対してエスプリの応酬

 この見事なまでに性格のえげつないカトリック教徒のドゴール主義者を演じたのがクリスチャン・クラヴィエなんだけど、ぼくはこの役者によくにた人を知ってる。やっぱり、皮肉屋だ。

 それはともかく、かんたんにいってしまえば、ロードショーよりも前に上映されたときのタイトルどおり『ヴェルヌイユ家の結婚狂騒曲』で、多国籍な婿が四姉妹につぎからつぎへと現れてくるのをフランス特有の皮肉をぶつけつづけてるだけなんだけど、でも、これが意外なほどおもしろかった。

 ただまあおもうんだけど、それなりの地位のまま老後をむかえて、かわいがってた娘たちはたしかに勝手気ままな生き方をして、信じられないような婿を連れてはくるものの、それでも家族の絆はちゃんと保たれてるし、金銭的にも社会的にもなんら心配がなく、このまま死ぬまで生きていけるわけだから、すこしばかりのはちゃめちゃは我慢しないと罰があたるってもんだよね。

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スコルピオ

2018年03月13日 22時25分18秒 | 洋画1971~1980年

 △スコルピオ(1972年 アメリカ 114分)

 原題/Scorpio

 監督/マイケル・ウィナー 音楽/ジェリー・フィールディング 

 出演/バート・ランカスター アラン・ドロン ポール・スコフィールド

 

 △で、結局、スコルピオって誰?

 とでもいいたくなっちゃうほどに、どうってことのないCIA物だったわ。

 殺し屋稼業ってのはゴルゴ13でもないかぎり疲れて嫌になっちゃうものなんだろうけど、なんだかこれじゃあCIAが暗殺集団のような印象になっちゃってて、スパイ物っていうよりスナイパー物って感じだったね。

 でも、人間、老いてくると生活の安定を求めたくなるもので、そういうことでいうと、その安定した生活の中にはやっぱり異性が入ってないとダメなんだね。そんなことをぼんやりとおもいながら、CIAを裏切って逃げ続けるバート・ランカスターと、CIAに弱みをにぎられて育ての親を標的にせざるを得なくなるアラン・ドロンとの追跡劇なんだけど、だれる。

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女神の見えざる手

2018年03月01日 00時09分12秒 | 洋画2016年

 ◎女神の見えざる手(2016年 アメリカ、フランス 132分)

 原題/Miss Sloane

 監督/ジョン・マッデン

 出演/マーク・ストロング アリソン・ピル マイケル・スタールバーグ サム・ウォーターストン

 

 ◎激震はゴキブリ

 たしかにジェシカ・チャステインのひとり舞台ではあったものの、きわめてよく練られた脚本で、時系列がバラバラに設定されてて、インドネシアのパーム油の関税について関係している議員の外遊接待をしたことで過剰接待にとられ、ジョン・リスゴーを議長にした公聴会に召喚されるところから始まったかとおもえば、それよりもずいぶん前らしき銃の規制強化法案の反対派のキャンペーンを断わって代理店をやめるところへと飛び、さらにさまざまに時が飛ぶ。最初はちょっとばかし戸惑ったけれども、どんどんと全体像が明らかになってくるにつれ、なるほど、この構成じゃないとダメだわねとおもうようになった。

 とはいえ、ジェシカ・チャステインの設定は、生まれ育ちはあんまりよろしくなかったのかもね、学生時代も辛かったんじゃないかなっておもわせるだけで、あとはしゃにむにがむしゃらに恐ろしいくらいに仕事に精を出しているキャリア・ウーマンを演じてて、しかも男娼を買い、結局は情にほだされちゃったりもするっていう、なんとも一般的な女性は眉を顰めそうな人物像になってる。これが好いのか悪いのかはわからないけど、最後のどんでん返しまで、見せてくれる。たしかに歯切れのいい編集と台詞回しで追いかけていくだけでも大変だったものの、いや、最後の裁判の推移には鳥肌が立ったわ。

 あ、ググ・バサ=ローの純粋な綺麗さが清涼剤みたいだったね。

 

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