Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

蜘蛛巣城

2007年03月31日 11時43分15秒 | 邦画1951~1960年

 ☆蜘蛛巣城(1957年 日本 105分)

 英題 Throne of Blood

 監督/黒澤明 音楽/佐藤勝

 出演/三船敏郎 山田五十鈴 千秋実 土屋嘉男 木村功 宮口精二 中村伸郎

 

 ☆ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』

 資金不足が悔しい。、なおさら悔しい。

 さぞかし、北の舘の叛乱鎮圧を描きたかった…妖姥の糸巻き館も建てたかった…本丸御殿も実際に建てたかった…んだろうなあ。他の城についても、セットを組んで物語をわかりやすくしたかったんだろう。ほんと、その辺りが口惜しい。

 ま、この映画について、なんだかんだいったところで始まらないんだけどね。

 ちなみに、ぼくは、黒澤明の全作品とも「最初に観るのは劇場で」と、大学1年生のとき、かたく誓った。だから、どれだけ古い作品でも、劇場で公開されない内は観ないと決めてた。でも、そのせいで、この作品だけはずいぶんと後まで観られなかった。

 他の作品は『並木座』か『八重洲スター座』あたりで観られたんだけど、どういうわけか『蜘蛛巣城』には縁がなかった。だから、これが観られたときの感激たるや、大変なものだった。いや、ほんと、目を皿のようにして観るってのは、そのときの僕みたいな状態をいうんだろね。

 それにしても、ひさしぶりに観てみると、こんなに単純で場面も少なくしかしおもしろいとは。

 記憶とは妙なものだ。いやぶっとんだ。江崎孝坪の美術考証によって作り上げた村木与四郎の美術は凄いし、東宝特殊技術部による円谷英二の特殊技術は目を瞠るものがある。

 美術てのはここまでこだわるのかと。

 蜘蛛巣城跡の柱がそうで、墨書きしてそれが木材に十分染み込んだ後、徹底的に乾かして、表面の年輪だけが浮き出て残るまで磨き込まないとこうはならない。尋常じゃない手間だ。その柱の建てられた城跡が砂嵐のカット繋がりで現役の城によみがえってゆくのがまた凄い。ラストもおんなじ撮り方だけど、いや、三船敏郎の首を矢がつらぬくカット繋ぎといい、この映像はまじ凄すぎる。

 ちなみに、流鏑馬指導は大日本弓馬会範士金子家教と大日本弓馬会教士の遠藤武だったそうな。

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LIMIT OF LOVE 海猿

2007年03月30日 13時05分43秒 | 邦画2006年

 ◇LIMIT OF LOVE 海猿(2006年 日本 117分)

 監督/羽住英一郎 音楽/佐藤直紀

 出演/伊藤英明 加藤あい 佐藤隆太 大塚寧々 石黒賢 時任三郎 青木崇高

 

 ◇ここまでクサければOK

 本物のフェリーでのロケとCGによる傾斜から沈没にいたるまで、いやいや、けっこう見せてくれたっていうか、がんばった絵作りだったような気がするんだけど、どうなんだろ?

 たしかに、傾斜しているはずのフェリーの内部で、煙突を上るときとかやけに水平に保たれてたり、あれれ~とおもっちゃうところもあるにはあるし、プロポーズの場面とか、こっちが気恥しくなっちゃうくらいリアルさに欠けてはいるけど、まあ、こんな感じでいいんだよねっていっちゃうのは、なんでなんだろ?

 ようわからん。

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ブラス!

2007年03月29日 13時03分12秒 | 洋画1996年

 ☆ブラス!(1996年 イギリス)

 原題/Brassed Off

 監督・脚本/マーク・ハーマン 音楽/トレヴァー・ジョーンズ 演奏/グライムソープ・コリアリー・バンド

 出演/ピート・ポスルスウェイト ユアン・マクレガー タラ・フィッツジェラルド

 

 ☆1992年10月17日、ロイヤル・アルバート・ホール

 そこで催された全英ブラスバンド選手権大会で、炭坑夫たちのアマチュア・ブラスバンドのグライムソープ・コリアリー・バンドが優勝した。つまり、これは、実話の映画化だ。

 ほとんどが事実から取られてる。かれらが本拠を置いてるサウス・ヨークシャー州グライムソープ村のグライムソープ炭坑は、かれらが優勝する4日前の1992年10月13日に閉山になっているのも事実だ。100点満点中の99点をマークしたというから、逆境にもめげずよく頑張った。

 それにしてもこのブラスバンドの歴史は古く、1917年に始まるらしい。

 めきめきと実力をつけてきたのは戦後になってからで、1963年からずっと毎年どこかの大会で優勝するようになった。それが、炭坑の閉山という事実をつきつけられ、仲間と離れ離れになるどころか、生活すらできなくなりそうな中、それでもブラスバンドの聖地で決戦におもむいて優勝するなんてのは、うそっぱちもいいかげんにしろっていわれるくらい、よくできた話だ。

 でも、ほんとなんだもんね。身につまされる話ながら、しかも実在するブラスバンドの話ながら、それでいて童話のような展開は、何度観ても好い。何度観ても感動できるし、時をおくとまた観たくなる。

 にしても、欧米の凄さは、こういうところにあるんだろな~。どうってことない大人向けの御伽噺で、しかも音楽が絡んだ物を作るのは、まじ、欧米はうまい。

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スウィングガールズ

2007年03月28日 12時59分05秒 | 邦画2004年

 ▽スウィングガールズ(2004年 日本 105分)

 監督・脚本/矢口史靖 音楽/ミッキー吉野 岸本ひろし

 出演/上野樹里 貫地谷しほり 本仮屋ユイカ 小日向文世 白石美帆 岩佐真悠子 谷啓

 

 ▽緩慢さも二番煎じ

 ぼくらよりもずいぶん前の世代は、東宝の駅前旅館シリーズや無責任男シリーズで、けらけらと笑ってた時代だ。

 ぼくらはというと、なにか軽く見られて、くすくす笑えて、愉しくなれる映画ってあったろうか?

 わかんない。

 若大将シリーズもちょっと前の世代だし、ぼくらにとっての青春映画は、もっとまじめで、つきつめてて、じめじめしてて、いんうつな感じだった。こんなふうに、ゆる~い感じの物語はなかったんじゃないだろうか?

 だから、ぼくには、この頃の若い人達が認める映画がよくわからない。なもので、この映画でも「前半、必要なくない?」とかいっちゃう。

 竹中直人はかなり無理してるみたいに見えて痛々しいし。

 ラストの公演がなけりゃ、

「勘弁してよ~っ」

 てことになりかねなくないんだよね、ぼくの場合。

 この展開の緩慢さは、この監督の特質で『ウォーターボーイズ』や『ハッピーフライト』もそうだったけど、こういうゆるさが好い人には、ほんと、たまらないんだろうね。

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恋愛適齢期

2007年03月27日 12時55分31秒 | 洋画2003年

 ◇恋愛適齢期(2003年 アメリカ 128分)

 原題/Something's Gotta Give

 監督・脚本/ナンシー・マイヤーズ 音楽/ハンス・ジマー

 出演/ジャック・ニコルソン ダイアン・キートン キアヌ・リーヴス アマンダ・ピート

 

 ◇つまらない男と女にはなりたくない

 ときどき、こんなセリフを聞く。

 もう、年だから~とか、そろそろ、好い加減にしないとね~とかいった台詞だ。

 かといって、

「だったらひっこんでろ、つまんない女だな」

 とは、世の中の優しい男たちはいわないけど、心の中では多かれ少なかれ、そう、本能的におもってる。

 結局、それって「自分が傷つかないための言い訳」なんだよね。ほんとは、まだまだ恋もしたいし、エッチにも興味があるのに、年を食ってきたっていうことをいいわけにして、ていうか、自分に対してそういいかせて、恋愛の場から身をひかせる。

 なんでそんな防衛線を張るのかぼくにはよくわかんないけど、そういうところ、欧米の連中はたいしたもんだ。

「恋に歳は関係ないんだよ」

 って、かろやかにいいきってくれる。

 けど、だからといって、どんな相手でもいいってわけじゃない。自分にとって魅力的な異性かどうかっていう見極めが大切だ。そんなことを映画にしちゃうのが欧米で、この作品も、人生の寓話が大好きな米国人の考えそうな物語なんだけど、ほんと、うまく作ってる。

 キアヌ・リーブスは本気で年上の女性が好きみたいだから、還暦になっても爽やかな魅力をふりまいてるダイアン・キートンなんか、まさに理想の異性像なのかもしれないね。

 けど、それよりなにより、ジャック・ニコルソンだ。古希になっても凄腕の女誑しが演じられ、それでいて可愛い男を演じられる役者なんて、なかなかいない。

 凄いぞ、ジャック!

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座頭市

2007年03月26日 12時53分10秒 | 邦画2003年

 ◇座頭市(2003年 日本 115分)

 監督・脚本/北野武 音楽/鈴木慶一

 出演/ビートたけし 夏川結衣 浅野忠信 大楠道代 ガダルカナル・タカ 岸部一徳

 

 ◇1948年、子母沢寛により『座頭市物語』誕生

 ふしぎな映画で、これまでの勝新太郎の『座頭市』のシリーズとはまるで印象が異なり、まあ、座頭市へのオマージュだとおもえば、すんなり入る。銀髪の座頭市は、勝新のような生臭さもないし、たぶん、観客の好感度も高かったんじゃないかと。

 映画はたぶん時代を背負っているもので、勝新が座頭市を演じたときは、生臭さはリアリズムとして受け取られた。ほんとは、勝新が創り上げた人物像でしかないんだけど、座頭市というのはなんだか野卑で、薄汚くて、強情っぱりな人間だと、ぼくなんか、ずっとおもってきた。

 それをさっぱり洗い流してくれたことからいえば、たいしたもんだ。

 たいしたもんといえば、農具や工具と音楽を同調させた演出は見事だった。

 タップまで仕出かしてしまうのを見ると、なるほど、娯楽映画ってのは「観客もノッて騒いでね」っていうメッセージが必要が入ってるものもあるのねと、妙に納得しちゃったわ。

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ヴィレッジ

2007年03月25日 12時49分51秒 | 洋画2004年

 ◇ヴィレッジ(2004年 アメリカ 108分)

 原題/The Village

 監督・脚本/M・ナイト・シャマラン 音楽/ジェームズ・ニュートン・ハワード

 出演/ブライス・ダラス・ハワード ウィリアム・ハート シガニー・ウィーヴァー

 

 ◇人間牧場

 なぜか、とっても期待してた。

 ナイト・シャマランの世界は常に箱庭が意識されてる。登場人物たちの置かれている世界と外界とは完全に区別され、それがどんでん返しの形をとって示されることで、ある種のカタストロフを迎えるわけだけど、今回の話くらいは「1897年という設定のまま終わってほしかったな~」っておもうんだよね。

 まあ、納得できたからいいんだけど、でも、この作品は大作だし、衣装デザインをはじめ村そのものを作り上げた部分が評価できるだけに、最後まで19世紀の雰囲気をおしとおしてほしかったわ。

 そうでないと、実をいうと、いろんなところで破綻が生じる。

 いったい、国立公園の中に村を作るということが許されるのかとか、村人のどういう人間だけが事実を知る権利を与えられるのかとか、この共同体は国が作っているのだとしたら募集はあるのかとか、村が19世紀の村でないという現実をなにも知らない村人たちは知る日が来るのかとか、人権とか自由とかそういう最低限度の保障はありえるのかとか、外界と接触しないでいられることは不可能なのではないかとか、自分たちが外界に出なくても国立公園に立ち寄る外部の人間はいるだろうしそういう外界からの侵入に関しては武器を手に闘うのかとか。

 いあまあ、ほんと、挙げればきりがなくなる。

 だから、シャラマンには悪いんだけど、今回ばかりは、箱庭主義を棄てて、純粋な「ヴィレッジ」を作ってほしかった。

 全体的な雰囲気がとても好かった分、そう感じるわ。

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ドリームガールズ

2007年03月24日 12時47分04秒 | 洋画2006年

 ◎ドリームガールズ(2006年 アメリカ 131分)

 原題/Dreamgirls

 監督・脚本/ビル・コンドン 音楽/ヘンリー・クリーガー

 出演/ビヨンセ・ノウルズ ジェニファー・ハドソン アニカ・ノニ・ローズ エディ・マーフィー

 

 ◎1960年代、デトロイト。

 ぼくは、どうも舞台が苦手だ。生ものはダメっていうより、大仰さについていけないからだ。だから、どれだけ『ドリームガールズ』の舞台がおもしろいといわれても、なんだか、行く気になれず、いまだに本場の凄さを味わっていない。そんなぼくだから、かなりいいかげんな見方になっちゃう。

 でもまあ、舞台では観られないものも、映画にはある。ビヨンセの登場シーンのかわいらしさったらないけど、それもそのひとつだ。ま、それはさておき、舞台ミュージカルが原作ってことを感じさせないくらい巧みな展開だった。エディ・マーフィーがとてもよく、よくやったぞ的な部分もあるし、いかにもハリウッド的な泣かせも上手に織り込んでる。

 で、ちょっとだけ、整理しときたい。

 映画に登場するドリーメッツのモデルは、黒人女性グループのシュープリームスだ。ダイアナ・ロス、フローレンス・バラード、メアリー・ウィルソンの三名で、それぞれを、ビヨンセ・ノウルズ、ジェニファー・ハドソン、アニカ・ノニ・ローズが演じてる。

 注目は、フローレンス・バラードを演じたジェニファー・ハドソンだ。抜群の声量で、実際、フローレンスはダイアナ・ロスを凌いだらしい。まあ、そういう役回りだったから、ビヨンセも声量をおさえたって話だ。ただ、そのフローレンスは、グループを脱退後、ソロで活動したんだけど、アルコール中毒がたたって、いったん復帰したものの、32歳で没したらしい。

 そんな彼女たちの伝記を著したのがメアリー・ウィルソンで、この伝記『Dreamgirl: My Life As a Supreme』が舞台になって、今回の映画になったそうだ。

 なんだか、三者三様な人生だよね。

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丹下左膳 こけ猿の壷

2007年03月23日 12時43分09秒 | 邦画1951~1960年

 ◇丹下左膳 こけ猿の壷(1954年 日本 87分)

 監督/三隅研次 音楽/服部正

 出演/大河内傳次郎 高峰三枝子 三田登喜子 高堂國典 香川良介 伊達三郎

 

 ◇山中貞雄『丹下左膳余話 百万両の壺』のリメイク

 けど、山中版を凌ぐのは難しいね。

 でも衣笠貞之助の贈り物の脚本として三隅研次の第一回作品となったそうで、なんだか昔の黄金時代の音色が聞こえてきそうだ。

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続丹下左膳

2007年03月22日 12時40分37秒 | 邦画1951~1960年

 ◇丹下左膳・続丹下左膳(1953 日本 82分/89分)

 監督/マキノ雅弘 音楽/鈴木静一

 出演/大河内傳次郎 水戸水子 山本富士子 沢村昌子 市川小太夫 澤村國太郎

 

 ◇林不忘『丹下左膳 乾雲坤竜の巻』

「しぇいは丹下、名はしゃぜん。およよ」

 ていう名台詞を知ってる人は、もう少なくなってきたのかもしれない。

 ま、それも仕方のないことなんだけど、この2本は、合わせて1本の物語になってる。

 なんたって、前篇の橋の上の立ち回りは凄い。

 たしかに、この頃は大河内傳次郎も年をとって、貫禄ばかりが前面に出てしまってるもので、左膳の凄みのある魁偉さは影を潜めてる。けど、二役の大岡越前の方は、その分、かなり好い。御用堤燈が押し寄せる佳境はなかなか見せる。映画の醍醐味ってやつだろう。

 監督が乗らないまま撮った物だって話も聞いたけど、物語性は充分すぎるくらいある。

 この後、左膳は魁偉さだけが面白がられ、なんだか正義漢のように扱われるようになってくるけど、そんなことないのは、これを観ればよくわかる。

 過去の姿も観ていけば、際立った悪党だという事もわかるんだよね。

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多桑 父さん

2007年03月21日 15時35分48秒 | 洋画2000年

 ▽多桑 父さん(1994年 台湾 144分)

 原題/A Borrowed Life 多桑

 監督・脚本/呉念眞(ウー・ニェンチェン)音楽/江孝文(ジャン・シャオウェン) 林慧玲(リン・ホェイリン)

 出演/蔡振南、蔡秋鳳、鍾侑宏、程奎中、傳窩

 

 ▽1991年1月12日、皇居

 日本贔屓という設定がなければ、あまりに辛すぎる内容。

 よくもこれだけ物悲しく居たたまれない映画を作ったもんだと、感心はするんだけど、ちょっとね。

 いや、もちろん、現実を見据えた映画もあっていい。

 あっていいんだけど、日本の統治時代によほど好い日本人と知り合えたのか、ともかく、日本が好きで好きで仕方がなく、日本に憧れて、いつかかならず富士山と皇居にいきたいと願いつつも、まあいろいろと運も悪かったのか、炭坑の閉山とともに生活も苦しくなり、麻雀賭博に明け暮れ、ようやく炭坑の責任者になったときには、胸を患ってて、結局、日本へ行くっていう夢を果たせないまま死んじゃうっていう、ただひたすら、饐えた現実だけが淡々と語られる。

 不幸だと思ってる人にはあまりにも居たたまれない。

 で、ちょっと勧められないかもしれないね。

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ブラック・ダリア

2007年03月20日 15時33分04秒 | 洋画2006年

 ◎ブラック・ダリア(2006年 アメリカ 121分)

 監督/ブライアン・デ・パルマ 音楽/マーク・アイシャム

 出演/スカーレット・ヨハンソン ヒラリー・スワンク ジョシュ・ハートネット アーロン・エッカート

 

 ◎ジェームズ・エルロイ『ブラック・ダリア』

 1947年1月15日、ブラック・ダリア事件。

 ハリウッドを震撼させたこの事件の被害者は、エリザベス・ショートという女優で、ブラック・ダリアってのは、彼女のあだ名だ。いつも黒い服ばかり着ているからで、これはアラン・ラッドの主演映画『The Blue Dahlia』をもじったものだ。

 この事件がなんで有名になってるのかっていえば、死体が凄まじく損傷されていただけじゃなくて、自称犯人がつぎつぎに現れ、500人にも達したばかりか、現代になってもいまだに未解決なままだからだ。

 まあ、かなりスキャンダラスな真実があるんだろうし、そんなことが予測される分、ブライアン・デ・パルマが起用されたんだろうけど、デ・パルマ贔屓のぼくとしては公開当時からとっても嬉しかった。

 ところが、どことなく物足りなさを感じちゃうんだ。

 いや、たしかに、大クレーンを使ったビルの屋上から道路にかけてのワンショットとか、もう観ていてわくわくするんだけど、なんとなく物足りない。

 生前と死後のダリアに翻弄される男女の、凝縮した時と屈折した愛憎を描こうとしてるのはわかるし、それを経て慈愛に辿りつく展開も理解できる。

 でも、ダリアが、なんで狂おしいくらい愛され憎まれるかってことが、ふかく描かれてないんだよね。

 それが、残念。

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曽我兄弟 富士の夜襲

2007年03月19日 15時31分07秒 | 邦画1951~1960年

 ◇曽我兄弟 富士の夜襲(1956年 日本 110分)

 監督/佐々木康 音楽/万城目正

 出演/東千代之介 中村錦之介 高千穂ひづる 北大路欣也 植木基晴 植木千恵

 

 ◇建久4年(1193年)5月28日、曾我兄弟、仇討ち

 これぞ、東映イーストマン。

 往年の東映時代劇の骨頂って感じなんだけど、錦之助の前髪はちょいと戸惑うわ~。

 高千穂ひづるはとっても綺麗で好い感じ。こういう女優さんは現代ではちょっといなくない?

 なにより、源頼家を演じてるのは、北大路欣也なんだけど、もしかしたら、この作品がデビュー?

 同じ年に『父子鷹』があるから、そっちがデビューか。

 ま、それにしても、曾我兄弟の仇討ちは姿を消して久しいけど、なんでなんだろ?

 忠臣蔵より曾我物語の方が知名度が低いからかな?

 やっぱり時代が遠すぎるのかな?

 そうなってくると、どんどん歴史劇や時代劇の幅が狭くなっていくような気がして、とってもいやな感じなんだけど、まあ、観客の質が変わってきたってことがいちばん辛いところかもしれないね。

 堂々とした時代劇はもう新作ではありえないんだろか…。

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記憶の棘

2007年03月18日 15時29分15秒 | 洋画2004年

 ◇記憶の棘(2004年 アメリカ 100分)

 原題/Birth

 監督/ジョナサン・グレイザー 音楽/アレクサンドル・デスプラ

 出演/ニコール・キッドマン ローレン・バコール ピーター・ストーメア

 

 ◇期待と裏切り

 転生を扱った神秘的な恋愛讃歌かと思いきや、それなりの推理劇で、少年と三十代寡婦の思い込みの恐怖と自己崩壊を扱ったエキセントリックな物語だった。

 ただ、なんていうのかな~、もうすこし上手に作れなかったんだろうか…。

 ニコール・キッドマンの夫が死ぬ。10年後、キッドマンはダニー・ヒューストンから結婚をせがまれている。ところが、ある日、夫の生まれ変わりだと主張する少年キャメロン・ブライトが現れる。キッドマンはキャメロンの言葉を信じ、夫が生まれ変わったとおもう。

 恐ろしいのは、このふたりが恋をし始めることだ。

 けど、これには裏があって、夫は、彼の花婿付添人だった親友ピーター・ストーメアの妻アン・ヘッシュと浮気をしていた。まあ、ややこしい関係なんだけど、この夫の愛人アンはやや異常なところがあって、キッドマンが夫に出していた手紙を全部持っていた。愛人であるキッドマンの夫のすべてを知っていたいという願望からだろう。

 このアンの持っていた手紙を、キャメロンは読んでおり、自分の憧れている未亡人に近づく手段として、誰も知らないはずのキッドマンと夫の過去を口にするわけだ。

 まあ、いびつながらも、キャメロンの純粋な恋心の為せる嘘っぱちだったわけだけど、このキャメロンの嘘に、おとなたちはみんな、狼狽する。ていうより、10年経って現れてしまった夫の亡霊に悩まされることになるんだね。

 それにしても夫はまったく罪な男で、死んでからもキッドマンを10年間束縛していたし、愛人のアンも同じように束縛し、親友のピーターを裏切らせていた。それどころか、キャメロンに詐欺罪にあたるような嘘までつかせたわけだし、ピーターが疑い始めなければ、キッドマンはキャメロンと結婚したかもしれない。

 そんなことになったら空恐ろしい嘘っぱちの将来になってしまうわけだけど、さすがにキッドマンの母ローレン・バコールが、押さえるところは押さえてる。

「わたしは、あの人が好きじゃなかった」

 キッドマンの夫のいかがわしさを見抜いていたってことになるんだけど、こうした関係をつづるだけでもややこしい。

 ただ、映画は、キッドマンの揺れ動きつつ崩れてゆく精神を描いているわけで、そういう点だけでいえば、いかにもキッドマンの演じたがる役どころだったのかもしれないね。

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夏に抱かれて

2007年03月17日 15時26分51秒 | 洋画1981~1990年

 ◎夏に抱かれて(1987年 フランス 119分)

 原題/De Guerre Lasse

 監督/ロベール・アンリコ 音楽/フィリップ・サルド

 出演/ナタリー・バイ ピエール・アルディティ クリストフ・マラヴォワ

 

 ◎フランソワーズ・サガン『夏に抱かれて』

 フランスの性根とか書くと批難してるみたいだけど、なるほど、サガン原作か~とおもわず納得しちゃう展開のWWⅡ恋物語。

 大切な情報を得てそうなレジスタンスの話なのに、恋愛オンリなのは、なんとも最高だ。

 フランス映画はこうでなくっちゃいけない。

 あらすじは、いたって単純だ。

 レジスタンスに加担してるナタリー・バイとピエール・アルディティの、ユダヤ人の家族を国外へ逃がすために頼った先がクリストフ・マラヴォワの所だったんだけど、マラヴォワがナタリーの美しさに魅せられ、ふたりで情報収集のためにパリに行った際、ついに抜き差しならない関係になり、それがアルディティに発覚し、ナタリーは強姦されたあげく、アルディディは出征、 ナタリーとマラヴォワとの関係が良好だったのも束の間、ナタリーは戦火に消える。

 ってな感じの、徐々に戦争を主題のひとつにおいてきたサガンらしい物語だ。

 ま、ぼくはとても好きです。

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