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☆=☆☆☆☆☆
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ヘルプ 心がつなぐストーリー

2023年11月24日 22時56分35秒 | 洋画2011年

 ☆ヘルプ 心がつなぐストーリー(The Help)

 

 観てるうちに『ミシシッピー・バーニング』をおもいだしたけど、1960年当時の黒人差別問題を新卒の女性新聞記者の視点から描くっていうのもありかなっておもった。

 ただ、これはエマ・ストーンの物語っていうより彼女は狂言回しで、主人公は黒人メイドのヴィオラ・デイヴィスだったり、オクタヴィア・スペンサーだったりする。エマ・ストーンについては黒人メイドのシシリー・タイソンに育てられたのにその伏線が軽くて物語がかなり進んでから明かされるものだから、最初から黒人問題に理解があるように見える。この筋立ては、ちょっとどうかなあ。導入がちがうんだなあ。博愛な子ってのはすぐわかるようになってんだけどね。

 差別しているのに意識が高いとおもっているブライス・ダラス・ハワード一派に対して、ちょっとピントのはずれたことから仲間はずれになってるジェシカ・チャステインの存在は貴重で、たいがい世の中ってのはこういうものなんだなっておもわせるわ。とにかく、うわべをつくろうことの愚かさの話になってるけどね。

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美女と野獣 (2014)

2023年11月15日 01時23分56秒 | 洋画2014年

 ◎美女と野獣(La Belle et la Bête)

 

 レア・セドゥがどうしても清純な美女に見えない。見栄えだけからいえば、エマ・ワトソンの方がしっくりする。レア・セドゥは、どうしても高慢そうで、鼻っ柱がつよすぎる印象があって、可愛げがうすらぐ。その分、妙な色気はあるんだけどね。でも、こういう強烈さがないと、野獣と恋をするまでにはならないのかな?

 城に行くまでが30分。長い。丁寧っていえばそうなんだけど、だんどり踏みすぎな気がする。子供たちに読んで聞かせてる童話だってことをついつい忘れる。しかしすごいな、全カットがCGかよ。クリストフ・ガンズの色彩の感覚はたいしたもんだ。

 それと、ヴァンサン・カッセルがなんで野獣になったのかってことがちゃんと描かれているのは好感が持てる。そうか、森の精を妻にしてしまって、その本性の牝鹿を射殺してしまったからか。それで、父親の神に罰を受けたわけか。なるほど。だから、妃が「鹿狩りはもうやめてください」としつこく言ってたわけね。自分との時を過ごしてほしいっていうわがままじゃなくて、切実な願いだったわけね。なるほど。

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心と体と

2023年11月14日 12時41分29秒 | 洋画2017年

 ☆心と体と(Testről és lélekről)

 

 イルディコー・エニェディっていう監督にはまるでなじみがない。でも、えらくちからのある映像だった。

 だけど、屠殺と肉処理と血の場面をえんえんと撮ることはないだろうに、ともおもった。牛が屠殺されるんだけど、どうしても鹿の夢が描かれる分、屠殺の対象が鹿におもえ、さらにこの主人公のふたりにおもえてくる。このままだと、左手の動かない財務部長ゲーザ・モルチャーと孤独で自閉症ぎみの食肉品質検査官アレクサンドラ・ボルベーイの未来は屍になるしかないのだが、どうする?みたいな。挿入される雌雄の鹿がふたりの共通した夢だってことで、余計にああやっぱりそうだったんだあって気になる。

 それにしても、アレクサンドラ・ボルベーイの洗濯物干し、なんて便利な収納できるんだ。

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フェイブルマンズ

2023年11月10日 00時33分09秒 | 洋画2022年

 ◎フェイブルマンズ(The Fabelmans)

 

 なんてまあ、ポール・ダノは、亡き手塚治に似てるんだろう。なんだか手塚にまた会えたようで、見てるだけでなんともいえない気分になってきた。お別れ会があったのは何か月前だったか。そんなことをおもうと、なんとも個人的なことながら、見る機会が別だった方がよかった。

 それはさておき、少年の日に『史上最大のショウ』を観るんだけど、へ~こんな映画だったんだあ、迫力満点じゃん、とかっておもった。

 この親父はクレムリン。叔父はバックトゥーザフューチャーだね。ETの自転車連中と腰のアクセサリーと家族構成。

 しかしそうか、銃撃場面でなにかが足りない、嘘っぽいと悩んでいたあと、母親のピアノ弾きで爪があたる、爪を切る、楽譜に穴が開く、穴!ときてフィルムに穴を開けて迫力を出し、写真部門に入選。誰もこの凄さはわからないけど、エンジニアの父親手塚にだけはわかる。父と息子。凄い。

 お母ちゃんの浮気を突き詰めるのに8mmを利用するのはうまいし、浮気相手の父親の親友とのカメラ屋の別れも、引っ越し先の家族の不和も見事だったのに、変人クリスチャン女子が出てくると、がくんとつまらなくなる。でも高校時代のあとはまたおもしろくなる。

 なんといっても、ジョン・フォードを演じていたのがデビッド・リンチだってのが凄い。過剰な演技だ。芸術とはなんだ?地平線が下にあるのはおもしろい。上にあるのもおもしろい。だが、真ん中にあるのはだめだ。芸がない。てなことをいわれるんだけど、ラストカットは、撮影所の地平線が真ん中だったのが手持ちで下に来る。なるほど、主人公の心模様はこうでなくちゃ表現できないね。

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私の知らないわたしの素顔

2023年11月04日 13時44分11秒 | 洋画2019年

 ◎私の知らないわたしの素顔(Celle que vous croyez)

 

 まあ僕はジュリエット・ビノシュのファンだからどうしても贔屓目になる。

 で、この、あかん世界のあかん映画だが、おもしろい。見事。

 でもそういいきれるのは前半までで、ようするに五十路になったビノシュがとちくるっておもわず25歳といつわってSNSを始めてしまったことで、自分から奈落に墜ちちゃうって話なんだけどね。後半が、あかん。若い男ギヨーム・グイにふられたことで、そのルームメイトのフランソワ・シヴィルをたぶらかそうとしたのは、まあいいだろう。ふたりがSNS上で本気になっちゃって逢いたいとかってなるほもまあいい。で、もちろん、逢える勇気もなく、幻の若い女(自分を捨てていった元夫の結婚相手の名前なんだけど)を行方不明にさせて、自分から接近してつきあうようになるのも、まあそんなところだろう。で、こういうだまくらかしのつきあいはどこかで破綻するもので、あんのじょう、そうなるわけだが、このあとがあかん。

 ギヨーム・グイが心理療法士ニコール・ガルシアに嘘をついてフランソワ・シヴィルが自殺したことにして、その罪の意識からビノシュが小説風の告白を残して精神病になって9か月入院したのもまあゆるそう。けど、そのあと、またもや、結婚してふたりの子をなしたフランソワ・シヴィルに若い女といつわって連絡しようとするっていう展開はありか?

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レクイエム(2009)

2023年11月03日 13時57分05秒 | 洋画2009年

 ☆レクイエム(Five Minutes of Heaven)

 

 原題があんまりよくないから別な邦題をつけたくなる気持ちはわかるんだけど、つまらない題名だな。

 さらには、リーアム・ニーソン、ほとんど出てこんじゃないか?とおもったら出てきた。いやあ、リーアム・ニーソンもジェームズ・ネスビットもちから入っとるなあ。北アイルランド問題はもはやどうしようもないくらいに根深いものになってるんだけど、30年という歳月を経てのちに、兄を殺された男と殺した男が、テレビ番組で対談しなければならないっていう設定はそれだけでもよくおもいついたなあっておもう物語で、こういうのはなかなかできないね。右派民兵組織アルスター義勇軍ってのも初めて知ったわ。

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オットーという男

2023年11月02日 14時04分21秒 | 洋画2022年

 ◇オットーという男(A Man Called Otto)

 

 丁寧な脚本だけど単調。盛り上がりに欠ける。孤独に堪えかねて自殺しようとしている男トム・ハンクスが近くに越してきた子持ちの女性マリアナ・トレビーニョに感化されてもう一度生きようとする物語はよくある。けど、彼女の学位がありながら頼りなくお人好しの夫マヌエル・ガルシア=ルルフォと、亡くした妻レイチェル・ケラーが登場してしまうことで、トム・ハンクスに未来がないんだなとわかり、ああ、とある朝に死んじゃってるんだろうなあっていうラストまで見えてしまうのは、脚本が考え違いをしてるとしかいいようがない。

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最後の決闘裁判

2023年11月01日 14時10分39秒 | 洋画2021年

 ◎最後の決闘裁判(The Last Duel)

 

 1386年のフランス王国のパリでほんとうにあった決闘裁判ってのがすごいんだけど、でも複雑。物語を理解するまでは戸惑う。

 なるほど、まさしく羅生門だ。

 しかしこれはなんか脚本がおかしい。アダム・ドライバーの証言のくだりだが、これは強姦に近く見える。もっと妻の方から誘うようにしないとあかん。どうしようもなく引きずり込まれてゆくようにせなあかん。マット・ディモンに対して妻がなよなよと告白せなあかんだろ。せっかくリドリー・スコットが演出してるんだから、もうすこし脚本を練ってからにするべきだったんじゃないか?

 ジョディ・カマーが微妙な分、ベン・アフレックはよくやったとおもうんだけど、そうじゃないのかなあ。

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