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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ロング・エンゲージメント

2024年08月27日 18時17分13秒 | 洋画2004年

 ◎ロング・エンゲージメント(Un long dimanche de fiançailles)

 

 難しい。つまりは『ひまわり』の第一次大戦フランス版なんだけど、ジャン=ピエール・ジュネのコケティッシュな演出がときに煩わしく、物語に入り込めない。ただ、戦場のフラッシュ・バックのときに、画面まで挟み込んで説明しているところからすると、やっぱり演出側も難しいとおもったんだろう。

 オドレイ・トトゥは『アメリ』からもわかるとおりだけど、マリオン・コティヤールやジュディ・フォスターが要所に出てて、なんとなくほっとするのはどうしてなんだろう?

 なんにしても、5人のノロマな兵士が、フランス軍とドイツ軍の間に追い出されて処刑代わりになるビンゴ刑が今ひとつ要を成してないようで、ほかに筋立てはなかったんだろうかともおもえる。

 両親が死んで叔父夫婦にひきとられて、小児麻痺で足を悪くして、運命の相手に巡り合った頃の、とくに燈台のシーンとかが秀逸な分、もうすこし凝縮した脚本はできなかったんだろうかと。断片的にはわかるんだけど、全体像がうまくつかみきれない。マリオン・コティヤールがギロチンされる佳境になってようやく見えてくる。

 画像はすごい。1920年代のパリも郊外も戦場もみごとに再現されているし、爆裂してゆく塹壕もよく撮れてる。

 けど、わかりにくいんだなあ。MMMの意味はわかるし、予定調和な最後もいいんだけど、素直に納得するにはマリオン・コティヤールのエピソードは要らないし、あれもこれもと入れ過ぎてる気がするね。

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ハリー・ポッターとアズカバンの囚人

2024年01月03日 00時39分02秒 | 洋画2004年

 ◎ハリー・ポッターとアズカバンの囚人(Harry Potter And The Prisoner Of Azkaban)

 

 牽引役はシリウス・ブラック。やっぱり、ゲイリー・オールドマンはすごい。かれの登場は、マンネリ間際の世界を引き締めてる。とはいえ、少年のおとぎ話から青春ファンタジーへと移行する過渡期で、この時代を象徴する見事な画面は、なんといったも、病室からハリーたちが駈け出していくときのカメラ・ワークだ。時計塔の文字盤をすり抜けて外へ出、時空を超えたハリーとハーマイオニーがフレームインしてくるところだね。

(以上、2011-02-21 16:57:00)

 とはいえ、このシリーズの前半はここまでで、後半はがらりと印象が変わる。どんな物語でもそうなんだろうけど、子どもから青年へと成長する中で、愛らしさや子どもらしさとは決別しなければならない。それは時の非情な掟みたいなもので、そうしたところから時間の物語になってるんじゃないかっておもうのはうがちすぎなんだろうか?

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ヒトラー 最期の12日間

2022年08月11日 01時50分28秒 | 洋画2004年

 ◇ヒトラー 最期の12日間(Der Untergang)

 

 アレクサンドラ・マリア・ララ演じるトラウドゥル・ユンゲが主人公で、つまりはヒットラーの秘書の物語であって、ヒットラーは脇役でしかない。

 だからか、ヒットラーが死を迎えるところもカメラはパンしてアウトしてしまい、ヒットラーとエヴァ・ブラウンが自決したところへまたパンしてインしてくる。そのあと30分あまりもあり、それは、コリンナ・ハルフォーフ演じるマクダ・ゲッベルスの子供たちの服毒と夫との心中が延々と描かれた後、トラウドゥル・ユンゲの脱出行を追いかけてる。ブルーノ・ガンツがもう厭きるくらいにがなり続けるヒットラーの最期はさして重要でもないのに延々撮られてる。

 なんだかな~興味が半減しちゃうわ。

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クローサー

2022年02月23日 23時54分49秒 | 洋画2004年

 ◇クローサー(Closer)

 

 舞台劇の映画化は、台詞のやりとりは練られているんだけど、巧すぎる。途中でやっぱり舞台は舞台なんだよな~っていう厭きがやってくることもある。これがそうだった。

 役者は揃ってるけど、やっぱりナタリー・ポートマンのストリップは削除しない方がよかったんじゃないかっておもうわ。

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フライト・オブ・フェニックス

2021年07月13日 14時11分10秒 | 洋画2004年

 ◇フライト・オブ・フェニックス

 

 小学生のときだったか『飛べ!フェニックス』を観て、おもしろいな~っておもった。何度か観るうちにだんだん古さが目立つような気になった。リメイクした連中もそんなもんだったんだろう。

 それにしても、墜落するときの絵はなかなかたいしたもんだ。

 ただ、明日の命もわからない非常事態に追い込まれたにしては乗客たちがかなり落ちついてるように見えるのは、やがて飛び立つからっていう筋書きのせいなんだろうけど、ちょっと恐慌さが足りないね。

 飛行機を作ろうと声が上がったときも、なんだか、デニス・クエイドのほかは右へならえで、すこし素直すぎないかって気もするけど、まあ、密航とか殺人とか余計な脇道がある分、結論のわかってる議論はさっさと省略した方がいいっていう判断なのかもしれないけど。なんつうか、みんな、物分かりが良くて頭が良すぎる印象だな。

 ちなみに、元の映画ではサハラ砂漠で、そのせいでぼくはサハラっていう単語には敏感になって妙なあこがれを抱くようになったんだけど、このリメイクはゴビ砂漠だ。当時は中国がハリウッドに多額の投資をしてた頃だったかな~となんとなくおもった。

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ヴァン・ヘルシング

2018年03月22日 23時18分24秒 | 洋画2004年

 △ヴァン・ヘルシング(2004年 アメリカ 132分)

 原題/Van Helsing

 監督・脚本/スティーヴン・ソマーズ 音楽/アラン・シルヴェストリ

 出演/ヒュー・ジャックマン ケイト・ベッキンセイル リチャード・ロクスバーグ

 

 △怪物くんか!?

 いくらヒュー・ジャックマンが好い人だからって、なんだか途中からかわいそうになってきた。

 だって、あまりにも中身がないんだもん。

 もうなんていうか『ドラキュラ』と『フランケンシュタイン』と『狼男』と『ジキルとハイド』を足して割ったような、モンスターの顔見世みたいな感じになっちゃってて、どうやっていろんなものを繋ぎ合わせようかってことに苦心して、で、あとはCGの活劇だけを連続させていってるようにしか見えない。

 だから、肝心の物語がなんともかんとも薄っぺらなものに感じられて仕方がなかった。演じろっていわれてるヒュー・ジャックマンがかわいそうじゃん。

 それと、せっかくのケイト・ベッキンセイルなんだから、もうちょっと好い感じにしてあげればいいのに。眉もなんだか細くし過ぎて蓮っ葉に見えるし、最後なんか、え?まじで死んじゃうわけ?ガブリエルことヒュー・ジャックマンの変身しちゃった狼男と激突した拍子になにがおこってるわけ?てな展開で、なんじゃこりゃっていう目まぐるしいテンポの映画だったわ。

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コラテラル

2017年08月10日 22時47分08秒 | 洋画2004年

 ◇コラテラル(2004年 アメリカ 120分)

 原題 Collateral

 監督 マイケル・マン

 出演 トム・クルーズ、ジェイミー・フォックス、ハビエル・バルデム、ジェイソン・ステイサム

 

 ◇タクシーの運転手と検事の出会いの話

 トム・クルーズの完全悪役というのも珍しいけど『ヒッチハイク』みたいなもので、いつなんどき自分の車に殺人鬼が乗り込んでくるのかわからないといったアメリカ人の恐怖がこういう物語を生み出すんだろうね。タクシーの運転手であればその不安はなおさらだ。最初に乗ってきた女検事ジェイダ・ピンケット=スミスに興味を持ち、殺人鬼トム・クルーズにも付き合いを勧められたりする関係ないような設定がやがて暗殺者のターゲットだとわかってくる過程で、自明なことながらそうこなくちゃねとおもわせるのは定番ながらいい感じではあった。

 いずれにしても男と女の出会いはどこでどんな具合に発展するのか予測が立たないし、暗殺者が仲人になって出会うってこともあるじゃんねっていう映画だった。まあ、一夜の物語を徹底して追いかけるってのがいちばん映画的なんだろな。

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エターナル・サンシャイン

2015年11月02日 00時53分33秒 | 洋画2004年

 ☆エターナル・サンシャイン(2004年 アメリカ 107分)

 原題 Eternal Sunshine of the Spotless Mind

 監督 ミシェル・ゴンドリー

 

 ☆記憶消します

 モザイクのように物語の断片を散りばめていき、観客がそれを自分の脳裏で整えることで、ようやく物語の全貌をつかむことができる。もちろん、詳細な筋立てはそのときに確認できるんだけど、こういう綿密な組み方の脚本は、ぼくはとても好みだ。

 もっとも話の筋はいたってシンプルで、相容れなくなった恋人と別れたとき、すべてを忘れてしまいたいからと恋人の記憶を消去することが医学的にできるようになっているという世界の物語だ。恋人同士は互いの存在を脳裏から消し去ろうとしているんだけど、どこかでまだ相手を求めていたりするものだから、ふたりにとっては忘れられない素敵な思い出の場になっているモノホークという言葉だけ、ケイト・ウィンスレットがジム・キャリーに告げる。

 で、ジム・キャリーはもはや運命がそうさせるようにどうしてもモノホークの浜辺へ往かざるを得なくなり、やがて行く途中の電車にもはや失くした記憶に誘われるかのように本能的に乗り込んでいるケイト・ウィンスレットと新たな出会いをするという出だしに至るわけだけれども、物語が佳境へ向かうにしたがってふたりの脳内の映像が濃くなってくる。記憶除去手術に抵抗するかのようなその一連の映像つまり記憶はそれが崩壊と復活を繰り返すたびにどんどんと甦ってきてしまうという皮肉さと、やっぱり愛は強いんだよっていう主題とが見事に融合してる。

 いやまあ、たいしたもんだ。

 ミシェル・ゴンドリーはどうやらミュージック・ビデオをたくさん撮っているみたいで、どちらかといえばそっちの方が得意みたいで、本編はこの作品が2本目らしい。ああ、だから断片的な映像と上手なカッティングを見せてくれるんだ~とおもったわけです。

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ホテル・ルワンダ

2015年08月31日 15時42分48秒 | 洋画2004年

 ◎ホテル・ルワンダ(2004年 南アフリカ共和国、イギリス、イタリア 122分)

 原題 Hotel Rwanda

 監督 テリー・ジョージ

 

 ◎ドン・チードル、好演。

 かれはポール・ルセサバギナっていうオテル・デ・ミル・コリンの支配人を演じてるんだけど、このポールは、ルワンダ内戦で、虐殺した側フツ族とされた側ツチ族の両親を持って生まれたんだけど、父親がフツ族だったため、フツ族となってるわけだけど、奥さんがツチ族だったもんだから家族は窮地に立たされる。

 ここで、見えてくるのは差別だ。

 けど、国内の差別だけじゃない。ホテルの経営者のジョン・レノはかなり友好的に接してくれるし、助力も惜しまないが、他国はそうじゃない。欧米の超大国はアフリカについては人外であるかのような態度で、たった300人の国連平和維持軍は放置された観がある。こんな複雑な立場の中で、冷静であろうと務めるのがチードルなんだけど、かれは支配人という立場について矜持があるから、必死に文明人であろうとする。

 けれど、どれだけ知的であろうと礼儀正しかろうと、かれはアフリカ人なのだ。差別される側なのだと、どうしようもなく自覚させられる。つらい立場だ。それを好演してる。ただ、支配人という、支配する人間として、かれは家族をホテルにかくまうんだけど、ここでちょっと疑問をおぼえる。他の従業員の家族は、かくまわなくてもいいんだろうかってことだ。それについては映画はまるで触れてない。どうしてたんだろね?

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リトル・ランナー

2015年07月31日 20時50分36秒 | 洋画2004年

 ☆リトル・ランナー(2004年 カナダ 98分)

 原題 Saint Ralph

 監督・脚本 マイケル・マッゴーワン

 

 ☆ハレルヤ

 何度観ても好いものは好い。この作品はなんか好きなんだよね。カナダのハミルトンというところは綺麗な空気が張りつめてるっていうような印象があって、その逆光の美しさに映える映像もなかなかいい。なんとなく『小さな恋のメロディ』をおもいだしちゃうんだよな、なんでだろ。

 それと、ボストン・マラソンの当日、アダム・ブッチャーを眼の仇にしている校長がラジオに向かって「勝て!」と叫ぶところはわかっていることながらやっぱりええです。アカペラで流れるハレルヤがいつまでも耳に残っておもわず口ずさんじゃうのは、やっぱり僕の好みと合ってたってことなんだろね。

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Dearフランキー

2014年11月06日 00時30分14秒 | 洋画2004年

 ☆Dearフランキー(2004年 イギリス 102分)

 原題 Dear Frankie

 staff 監督/ショーナ・オーバック 脚本/アンドレア・ギブ

     撮影/ショーナ・オーバック 美術/ジェニファー・カーンキ

     衣装デザイン/キャロル・ケー・ミラー 音楽/アレックス・ヘッフェス

 cast ジェラルド・バトラー エミリー・モーティマー メアリー・リガンズ シャロン・スモール

 

 ☆スコットランド、グラスゴー

 ちょっと驚いたのは物語とはまるきり関係のないことで、

 ジェラルド・バトラーが舞台になってるグラスゴーの生まれだってことだ。

 でも、生後半年でカナダに移住したものの、

 両親が離婚したことで母親とスコットランドに戻り、ペイズリーで育ったらしい。

 ところが、グラスゴー大学を首席で卒業して弁護士になった。

 それも英王室の事務をとりあつかう弁護士で、エリート中のエリートだ。

 ただ、その間に父親を亡くしたらしく、自身もたいそう苦労して結局俳優になった。

 で、ここまで見てくると、なんとなく物語のフランキーに重なってくるものがある。

 フランキーは父親の暴力によって聴覚障害者になり、

 そのDVから逃れるために母親と居場所を転々とし、最後に祖母を頼ってきた。

 でも、母親は父親を悪くはいわず、船乗りだと偽り、偽の手紙のやりとりをしてる。

 ところがその船が実際にグラスゴーにやってくることで物語の本題になる。

 こうした物語の作り方は小さな話であるが故に丁寧で、

 偽の父親役を演じるジェラルド・バトラーの正体が最後までわからないんだけど、

 結局は、母親の相談していた親友の弟だってことがわかったときに、

 ああ、よかった、これでフランキーは偽だとわかってても幸せになれるんだ、

 てなことをおもわずおもっちゃうくらい、身を入れて観ちゃった。

 ジェラルド・バトラーがどういう気持ちで役に臨んだのかはわからないけど、

 でも、ちょっぴり自分の幼い頃の思い出がよぎったのかもしれないな、

 とかって想像したりしてる。

 ぼくはジェラルド・バトラーの映画はそんなに観てなくて、

『300スリーハンドレット』の印象はあんまりよくなくて、

 ようやく『エンド・オブ・ホワイトハウス』で、すげーとおもったくらいだから、

 こういう家族の小さな幸せを願った小品とはどうも結びつかなった。

 ところが、好いんだよね、意外に。

 赤の他人がいきなり偽の父親役をやらせられ、

 それで、その子のことがいとおしくなるだけじゃなく、

 さらに、その子の母親のことも気になったりしてくるところが、

 たしかに予定調和な展開ではあるんだけど、妙にはらはらしつつも幸せな気分になれる。

 いや~、ぼく、この映画、好きだわ。

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ビフォア・サンセット

2014年10月30日 02時36分05秒 | 洋画2004年

 ◎ビフォア・サンセット(2004年 アメリカ 81分)

 原題 Before Sunset

 staff 監督/リチャード・リンクレイター

     脚本/リチャード・リンクレイター、ジュリー・デルピー、イーサン・ホーク

     原案/リチャード・リンクレイター、キム・クリザン

     製作/リチャード・リンクレイター、アン・ウォーカー=マクベイ

     撮影/リー・ダニエル 衣装デザイン/ティエリー・デレトル

     音楽/ジュリー・デルピー『An Ocean Apart』『A Waltz For A Night』『Je T'aime Tant』

        ニーナ・シモン『Just In Time』

 cast イーサン・ホーク ジュリー・デルピー マリー・ピレ アルバート・デルピー

 

 ◎85分間の岐路

 こういう構成の作品はたまにある。

 映画内の時間がほぼ現実の時間と同時進行する構成だ。

 ぼくはこういう作り方は意外と好みで、自主製作映画っぽい感じも嫌いじゃない。

 ま、映画のつくりはさておき、

 異国での出会いという甘美な思い出は、

 誰でも記録に残しておきたいとおもうだろうし、

 文才があればなおさらのことで、

 恋愛小説の体裁をとりながらもそこに人生哲学をちりばめたものが書けるなら、

 やっぱり小説家になろうっておもったりもするだろう。

 また一方で、

 かつて特別な一夜を過ごした男が小説を書き、

 そこに自分の投影された姿が描かれているとすれば、

 これもまた顔を見てみたいとか声を聞いてみたいとおもうのは当然だろう。

 まあ、そんな感じで、上手に出会うことが設定できてるし、

 飛行機が飛び立つまで85分しかないっていうのが味噌だ。

 かぎられた時間は、

 かつてふたりがウィーン駅で味わった、

 列車に乗り込まなければならないっていう、

 切羽詰まった感情をおもいださせるには十分なものがある。

 それだけでも淡い恋のときめきをおもいだしちゃうわけで、

 ときめきをおもいだしたら、もう、とまらない。

 作家になって、結婚して、息子までできちゃってるんだけど、

 でも、

 半年後にウィーン駅で逢おうっていう約束だけを頼りに海を超え、

 でも逢えなくて悲しみに沈んだっていう無念さもあるし、

 相手は相手で、ずっとパリにいて、写真家と別れたばかりの、

 文化芸術系の男についつい惹かれちゃう性分らしき思い出まじりの美女となったら、

 これはもう、不倫だろうがなんだろうが仕方ないじゃん、

 っていう感情に追い込まれていくあたりが、 

 小憎らしいほど上手に組み込まれてる脚本なんだよね。

 なんだか身近な感じにさせる映画だったわ~。

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キング・アーサー

2014年10月03日 01時12分50秒 | 洋画2004年

 ◇キング・アーサー(2004年 アメリカ 126分)

 原題 King Arthur

 staff 監督/アントワン・フークア 脚本/デイヴィッド・フランゾーニ

    撮影/スワヴォミール・イジャック 美術/ダン・ウェイル

    衣装デザイン/ペニー・ローズ 音楽/ハンス・ジマー

 cast クライヴ・オーウェン キーラ・ナイトレイ ヨアン・グリフィズ レイ・ウィンストン

 

 ◇西暦415年、ブリテン島

 中世のアーサー王伝説にまつわる円卓の騎士の話かとおもえば、まるでちがう。

 古代ケルトの攻防戦で、

 敵役になってるのが、

 イングランドに上陸したアングロサクソン人の王にして、

 ウェセックス王室の始祖セルディックだ。

 つまり、イギリスの開闢時代の物語ってことになる。

 しかも、敵役は倒される運命にあるわけで、

 くわえて、

 最近の学説によって、アーサー王のモデルになったといわれる古代ローマ帝国の傭兵、

 ルキウス・アルトリウス・カストゥスが主人公になってるものだから、

 そうなると、イギリスの始祖が古代ローマ帝国の傭兵に倒されちゃうことになり、

 この映画の説が正しいとすれば、イギリスの歴史が変わっちゃわない?てなことになる。

 まあ、そういうかなり小難しい背景を持ってるものだから、

 イギリスから遠く離れた国のぼくには、なんだかよくわからない。

 だもんで、あ~こういう物語もあるのね~くらいな気持ちで眺めるしかない。

 とはいえ、

 三人の主役たちはさすがに芸達者で、存分にブリトン建国物語を見せてくれる。

 そういう面では安心して楽しめたし、画面も音楽も出来はいい。

 ただ、なじみのない物語に戸惑っちゃうだけのことで…。

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灯台守の恋

2014年09月28日 00時34分29秒 | 洋画2004年

 ☆灯台守の恋(2004年 フランス 104分)

 原題 L'equipier

 staff 監督/フィリップ・リオレ 撮影/パトリック・ブロシェ

    脚本/フィリップ・リオレ、エマニュエル・クールコル、クリスチャン・シニジェ

    衣装デザイン/ピエール・ビガー 音楽/ニコラ・ピオヴァーニ

 cast サンドリーヌ・ボネール フィリップ・トレトン エミリエ・デュケンヌ アンヌ・コンシニ

 

 ☆1963年、ブルターニュ、ウエッサン島

 亡くなった両親の家を売却するために訪れた辺境で、両親のかつての恋を知る話。

 とかって書いたら、なんともありきたりの物語に聞こえるが、骨太の恋愛劇だった。

 話はいたって簡単だ。

 アルジェリア戦争で左手の自由を失った帰還兵が、灯台守を志願して島へやってくる。

 しかし島の住民はケルトからわたってきた連中で恐ろしく閉鎖的だった。

 なかでも灯台守を仕切る親方は、元時計職人の帰還兵につらくあたり、

 荒れ狂う波の砕け散る岩の上に建てられているジュマン灯台でいろいろと苛める。

 けど、常に落ち着いた物腰で優しさを失わない帰還兵を親方は認めるようになり、

 ほかの連中が仲間はずれにするのをただひとり面倒を見てやるようになる。

 ところが、

 親方の妻はもともと島を出たがっていたのだが親方と結婚させられた不満を抱えていた。

 妻は缶詰工場で働いているが灯台守の仕事からこちらに回された帰還兵と恋仲になってしまう。

 帰還兵にしてみれば、

 たったひとりの味方の親方の妻に惚れ、村祭りの花火の下でまぐあってしまうのは罪悪だ。

 自分のことを慕ってくれている村娘の誘いもふりきり、やがて帰還兵は村を去る決意をする。

 で、時が流れ、島に残った親方夫婦にはひとりの娘が生まれていて、

 この両親が死んで家を売却するとき、

 実の父つまり帰還兵の著した『私の世界の果て』を読んで真実を知りながらも、

 父つまり親方はずっと自分を愛してくれていたと涙し、

 かつまた全自動になった灯台の記念館で実の父の遺品と、

 父母と実父が3人で撮った写真を見てふたたび涙するという実に定番の物語なんだけど、

 異様にカメラがいいんだな~。

 役者たちの役になりきった細かい演技も、ブルターニュの自然に溶け込むような滑らかさだし、

 なんといっても、サンドリーヌ・ボネールが際立って綺麗だ。

 こりゃあ、都会に憧れるだろうし、帰還兵と不倫しちゃっても文句はいえないよな~、

 てなことを不埒にもおもった。

 定番かもしれないけど、恋愛映画の佳作であることはまちがいないんじゃないかな。

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メリンダとメリンダ

2014年09月23日 03時59分04秒 | 洋画2004年

 ◎メリンダとメリンダ(2004年 アメリカ 100分)

 原題 Melinda and Melinda

 staff 監督・脚本/ウディ・アレン 撮影/ヴィルモス・ジグモンド

    美術/サント・ロカスト 衣装デザイン/ジュディ・ラスキン・ハウエル

    音楽/デューク・エリントン『A列車で行こう』他

 cast ラダ・ミッチェル クロエ・セヴィニー ジョニー・リー・ミラー アマンダ・ピート

 

 ◎悲劇と喜劇

 人生なんて所詮、

「この映画のようにテーブルの上で語られる程度の他愛ないもんなんだよ」

 とかいわれちゃった気分になって、

「いろいろと悩んだり、あくせくしたりしたところで知れてるんだよな~」

 とかおもわずあきらめ半分に苦笑しちゃったりできたらいいんだけど、

 なかなかそうはいかない。

 でも、

 マンハッタンの劇作家連中ってのは、

 ほんと、そんなふうに人生を茶化してしまえる余裕と才能があるんだね、たぶん。

 まったく同じ状況設定から、

 ほんの少し角度を変えるだけで悲劇になったり喜劇になったり、

 まったく言葉と想像だけで、人生の甘辛を作り出しちゃうんだから、たいしたもんだ。

「だから、人生なんてものはほんのちょっとのきっかけと選択と出会いで決まるんだよ」

 ウディ・アレンはそんなふうにいってるんだろうか?

 でもな~。

 あ、どうでもいいことかもしれないけど、

 ラダ・ミッチェルっていう女優さんは、上手だ。

 彼女は、それこそ悲劇も喜劇も、ときにはSFやホラーまでこなす。

 綺麗なんだから、なにもいろんなことに挑戦しなくてもいいのに、

 とか、

 そんなふうにいろいろとキャラを変えるから小器用だとおもわれて損するんじゃないの、

 とかおもっちゃうのは、老婆心なんだろね、たぶん。

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