△源氏九郎颯爽記 秘剣揚羽の蝶(1962年 日本 109分)
監督・脚色 伊藤大輔
△最後の白塗り?
一心太助が白塗りかどうかは微妙なところだけど、少なくとも美剣士ではないわけで、そういうことからいうと、もしかしたら錦之助にとっては最後の白塗りだったんじゃないかって気がする。でも、その作品を演出するのはやっぱり伊藤大輔なんだよな~。こういう偶然なのか必然なのかよくわからないけど、ともかく結果として節目節目にふたりが一緒になってるのを観ると、いや、ほんと、錦之助と伊藤大輔の絆はほんと深いな~って感じるわ。
1960~70年代はもう日本映画が一気に坂を転げ落ちていく時代で、見るも無残なことになっていくんだけど、でも、おもうに白塗りは消えていったわけじゃないんだよね。立ち回りで見えを切るのはテレビの時代劇で嫌ってくらいに残ったし、かえってリアリズムは映画だけのものになったまま現代に至っちゃったって感じもする。ということはどういうことかっていうと、所詮、時代劇を愉しむときはそういう芝居芝居してる方がいいってことなのかもしれないね。
ぼくは時代小説ってやつをまったく読まないし、いつのまにやらテレビの時代劇も見ないようになっちゃったんだけど、どうも生理的に白塗りが肌に合わないらしい。こればかりは趣味の問題からどうしようもないんだけど、う~ん、源氏九郎は当時どれだけヒットしたんだろ?ぼくみたいなひねくれ者は少なかっただろうから、みんな、純粋に錦之助の白塗りを愉しんだんだろうか?
ちなみに、錦之助が二役を演じてる初音の鼓っていうやくざ者のことなんだけど、これ、古典落語なんだよね。そもそも伝えられるところえでは、この鼓、源九郎狐の親狐の皮が張られてて、源義経が静御前に与えたっていういわくつきな代物だ。で、それが偽物かどうかっていうのが落語なんだけど、それはともかく、つまりは源氏九郎や源義経に繋がってて、しかも偽物うんぬんっていう二役めいた話になってるところから、この初音の鼓っていう役回りができてきたんだろうね、たぶん。
ただまあ、原作を読んだことのないぼくは、それが柴田錬三郎のオリジナルかどうかは知らんけどさ。