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☆=☆☆☆☆☆
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▽=☆

交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10,000mの頭脳戦

2017年11月07日 18時20分12秒 | 邦画2010年

 △交渉人 THE MOVIE タイムリミット高度10,000mの頭脳戦(2010年 日本 123分)

 監督 松田秀和

 出演 筧利夫、陣内孝則、笹野高史、塚地武雄、高橋克実、反町隆史、柳葉敏郎、橋爪功、林遣都

 

 △米倉涼子のシリーズ

 それにしても題名が長い。2時間ドラマかとおもったが、どうやらテレビ映画ではないらしい。津川雅彦以下の面々がテレビで出てるかどうかは知らないけど、役者はとにかく揃えようってのはもういいんじゃないかって気もするな。なんていうか、テレビシリーズが特別になるとこんなに凄いんだよっていわれてるみたいな。

 要するに米倉涼子をどれだけスーパーウーマンに見せられるかって話なわけで、よくわからない設定の銀行強盗がいきなりショッピングモールに突っ込んでいって、それがハイジャックに変わっていって、なんでか知らないけど巻き込まれた米倉涼子があれよという間に飛行機の操縦桿を握って着陸させるっていう009ノ1も真っ青な「操縦人・活劇」を披露しようとしている話だ。

 ん?それはいいが、交渉はどうなってるんだ?

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雷桜

2016年05月25日 18時24分04秒 | 邦画2010年

 ◇雷桜(2010年 日本 133分)

 監督 廣木隆一

 

 ◇江戸から三日の瀬田山

 とかいうところがどこにあるのか知らないんだけど、やけに綺麗な沖縄のような風景のところだ。

 ま、それはそれとして、最初観始めたときは狼少女みたいな話かとおもったら、なんのことやらよくわからない物語が展開した。視点が散漫だからか心情が割れてるからか、ともかくいろんな人間の過去が絡んでくるもんだから主題がなんなのかちゃんと定まらないまま始まり、終わる。

 あ、でも桜と銀杏の合いの子とかっていう大木は綺麗だったけどね。

 で、おもうんだけど、要するにこの物語は合いの子の物語なのかしらね。主役の岡田将生は徳川家でありながら将軍とは縁遠い存在で、侍として生きるのかただの男として生きるのかどっちつかずの人間で、蒼井優はもうまったく里と山の合いの子で、蒼井優を育てる時任三郎も侍と樵の合いの子で、小出恵介も庄屋と侍の合いの子ってことになる。つまり、合いの子の生きにくい時代の悲劇みたいなもんが雷桜っていう混血樹を象徴して語られてるってことなんじゃないかって。

 なんとなくそんな気がするんだけど、ちがうかしら?

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ノルウェイの森

2016年04月27日 02時06分09秒 | 邦画2010年

 ◇ノルウェイの森(2010年 日本 133分)

 監督・脚本 トラン・アン・ユン

 

 ◇1969年、早稲田大学

 信じられないような話だけど、ぼくはこの原作を読んでいない。

 世の中でいちばん売れた恋愛小説ってことくらいは知ってる。でも、読む機会がないままに結局、映画だけ観た。まあ、ぼくみたいな活字に疎い人間が目を通したところで右から左へ文字が流れて消えていくだけのことだろうし、もはやそれだけの体力も根気もない。いや、ほんとのところ、小説を読むのも映画を観るのも気力と体力の勝負でしかない。かろうじて受動態の極地のような映画鑑賞だけはできるものの、長編小説をじっくり読んでいられるような心の余裕はないんだよね。

 そんないいわけはこの辺でやめて、この映画のことだ。ひとことでいえば、懐かしかった。本学の中庭も文学部の中もなんとなく懐かしく、ふたりで散歩したりしてるところは甘泉園だろうか、もしかしたら別なところで撮影されてるかもしれないんだけどまあそれはそれでいいとして、当時の寮やラブホテルについてはまるでわからないけど、郊外の下宿というのはあんな感じだったかもしれない。

 ただまあ、ぼくはこの時代よりも10年ほど遅れて大学生になったから学生運動が血気盛んに行われていた時代の大学生についてはちょっとよくわからない。わからないけれども、ほとんど似たようなことを考えていたみたいで、心の崩壊していく過程と恋が成就し破綻していくさまとが綯い交ぜになっていく情景は、なんとなくわかる。だから、この映画がおもしろいとかおもしろくないとか当時の風物や生活についてリアルだったとかリアルじゃなかったとかそんな意見を口にするつもりもないし、ただ懐かしい風景と心情とが淡々と続いてたな~っていうくらいしかできない。

 大学時代につきものなのは、怠惰な日々ともの悲しい恋とうぶでぎこちないセックス、そして他者からすれば恥ずかしい以外の何者でもない自己陶酔とかで、それ以外のことをおもいだせといわれてもなにひとつ浮かんでこない。かろうじて季節を問わずに旅に出ていたときの風景や出会った子についての断片的な思い出くらいなものだ。

 そうしたことをおもえば、この映画は単調な印象はあるものの10年遅れていたぼくらの日々にも通じるものがあるようにおもわれるんだけど、トラン・アン・ユンのこれまでの映画にくらべるとやや官能さが物足りない感じはしないでもないけど、浮遊感はあったような気がする。

 総じていえば、ただなんともいえず懐かしかった。

 あ、でもぼくは女の子を交換してセックスするようなことは絶対にしなかったけどね。

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アブラクサスの祭

2015年08月22日 23時32分56秒 | 邦画2010年

 △アブラクサスの祭(2010年 日本 113分)

 監督 加藤直輝

 

 △ロケは福島県

 三春町、国見町、郡山市で行われたそうな。

 郡山の柏屋さんとかいう和菓子屋さんの薄皮饅頭という名物を聞いたことがある。食べたことあったかな?たぶん美味しいにちがいない。誰かお土産にくれないかな。ま、それはともかく、この柏屋さんが協力しているらしい。二本松の大七さんとかいう蔵元も協力しているそうな。ほんと、地元ロケのときに協力してくれる会社があるのはありがたいんだけど、ね。

 まあ、なんというのか、この物語は「坊さんが鬱になって、それを打破するためにロックをする」っていうのが味噌なんだよね、たぶん。でもさ、こういう設定ってめずらしいのかな?まあ、都会の坊さんとあんまりつきあったことのない出版社の編集者や作家や映画会社の人達にとってはめずらしいのかもしれないんだけど、そんなことないぜ。すくなくともぼくの知り合いは境内でジャズをしてるし、本堂でとんでもないこともしてたりしてるし、世の中、そんなものだ。で、これが珍しくないとしたら、この物語にはなにが残るんだろう。よくわからん。

 薄皮饅頭、食べたいな~。

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気球クラブ、その後

2014年09月21日 02時29分01秒 | 邦画2010年

 ◇気球クラブ、その後(2006年 日本 93分)

 staff 脚本・監督/園子温 撮影/谷川創平

    音楽/荒井由実 主題歌/畠山美由紀『翳りゆく部屋』

 cast 川村ゆきえ 永作博美 西山繭子 江口のりこ 安藤玉恵 深水元基 長谷川朝晴

 

 ◇荒井由実の『翳りゆく部屋』が主題

 なにかをモチーフにして別な作品を仕上げるというのは、

 これまでにも多くの人達がそうしてきたし、

 これからも多くの人達がそうしていくだろう。

 その時代にはその時代の感覚みたいなものがあって、

 とくに歌や映画の場合は、

 そこに登場している人物たちと同じような年齢や境遇で、

 その作品を観たとき、ことにそれが青春期だった場合、

 その物語は自分の青春の1ページと重なったりする。

 荒井由実は、ぼくにとっては高校時代の記憶と共にときどき蘇る。

 だから、

 この映画の場合、時代は多少ちがうんだけど、

 ああこんな家にみんなで棲んでたことあったな~とかおもうし、

 風船が天井にいくつも上がってるのを見ると、

 そういえば僕の下宿も風船で埋もれたことがあったな~とかおもったりする。

 ただ、赤い風船はやっぱり5つ浮かんでるようにしてほしいなとかもおもったりした。

 なぜって、ぼくはそういう時代の人間だからだ。

 だから、

 この映画に出てくる連中は、ぼくよりもずっと下の学生たちだから、

 どうしても相容れない感覚がある。

 川村ゆきえはたしかに魅力的だけど、

 なんだかはすっぱな感じの設定で、あんまり魅力的な描かれ方じゃなかった。

 それはほかの男たちはとくにそうで、低俗さと調子の良さが空回りする空虚さっていうのか、

 そういう演出がほどこされてるような気がして、ちょいと引き気味だったかも。

 ただ、妙に自主製作映画っぽいところがたくさんあって、

 そうしたところは、それなりに懐かしかったりした。

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最後の忠臣蔵

2014年06月06日 13時21分58秒 | 邦画2010年

 ◇最後の忠臣蔵(2010年 日本)

 ちょっと「へえ~」とおもったのは、

 田中陽造の脚本だってことだ。

 あんまりねっとり感が感じられなかったのは、

 一般大衆向けと判断したんだろか?

 それとも杉田成道の希望だったんだろか?

 ま、そんな個人的な疑問はいいんだけど、

 ともかく徹頭徹尾、桜庭ななみがええね~。

 寺坂吉右衛門については、

 誰もが題材に取りたい人物で、

 これまでにも少なからず、

 寺坂に関する小説の類はあったんじゃないかと。

 だからそのあたりはあんまり真新しくは感じらなかったんだけど、

 大石に隠し子がいてうんぬんっていうのは、

 もしかしたらこれまでになかった設定かもね。

 全体にしっとりと落ち着いた絵柄と構成で、

 そういう意味でいえばどっしりした印象はあるんだけど、

 もはや赤穂藩の世界というより、

 大石をへそとした世界になってるわけで、

 そのあたり、どうも忠臣蔵からはそれてる気がしないでもないかと。

 大石が主君みたいな気になってくるんだよな~。

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RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語

2014年06月01日 18時46分42秒 | 邦画2010年

 ◇RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語(2010年 日本)

 鉄道好きな人はたくさんいても、

 鉄道嫌いな人はそんなに多くはないだろう。

 とかっておもっちゃうのは、ぼくが鉄道好きだからだろうか?

 といっても、

 ぼくは単に好きってだけで、

 この映画に出てくる車輛がデハニ52・53とかってことは知らなかった。

 そりゃあ、

 機関車や電車のフィギュアを見るのは好きだし、

 そういうものが展示してあるBARとかにも何度か行ったし、

 これから先も、鉄道関連のところには出かけてみたい気もする。

 でも、それくらいなものだ。

 だからとはいえ、

 会社を辞めて鉄道の運転手に生きがいを見出す、

 っていう気持ちがわからないわけじゃない。

 もちろん、郷土愛めいた感情もわかる。

 わかるけど、

 故郷に戻って再就職するかって聞かれると、

 そりゃ勘弁してちょうだいなと答えちゃう。

 都会に出てきた連中の内、

 少なくない人達がそんなふうに答えるんじゃないだろか。

 作品中、美術セットは一所懸命に作られてるし、ことに車輛はたいしたものだ。

 往年のデハニ52・53を改修したそうだけど、いやまじ、よくやってる。

 そういうことからすると、

 絵づくりは丁寧な気がしたよ。

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桜田門外ノ変

2014年05月17日 13時22分37秒 | 邦画2010年

 ◇桜田門外ノ変(2010年 日本)

 このブログのDENBEYというのは、ぼくのひいひいじいちゃんの名前だ。

 いちおう、世襲名だから、いまでもきちんと届け出すれば、

 ぼくも傳兵衛っていう名前を名乗れる。

 まあ、名乗らないけどさ。

 で、その傳兵衛さんが生前、ことあるごとに、

「井伊掃部が死んだ朝の雪はすごかった」

 と、口癖のようにいってたらしい。

 当時、傳兵衛さんは17歳だったっていうから、

 たぶん、記憶ちがいじゃないんだろう。

 その日に降った牡丹雪は、関東から関西一円に降り積もったみたいだ。

 さぞかしすげえ雪だったんだろね。

 で、

 世にいう桜田門外の変だけど、

 これは、安政7年3月3日(1860年3月24日)早朝、

 江戸城桜田門外において、

 水戸藩の脱藩浪士17名と薩摩藩士1名が、

 彦根藩の大名行列約60名を襲撃して、大老の井伊直弼を暗殺した事件だ。

 ところが、この映画は、

 安政4年(1857年)正月から始まって、

 文久2年(1862年)5月11日に終わる。

 暗殺の中心人物のひとり、関鉄之介の斬首が最後のくだりになるんだけど、

 変そのものの描写はさほど多いわけではなくて、

 どちらかというと、

 暗殺した浪士たちのその後に重点が置かれてる。

 これは好みの分かれるところで、

 その点、ずいぶん前に撮られた三船敏郎主演の『侍』は、

 変そのものが佳境に用意されていたから、

 観る側としても焦点がかなり一致してたような気がする。

 まあ、原作に沿った脚本らしいんで、

 純彌さんの構想というわけではないんだろうけど、

 吉村昭はたぶん関鉄之介という人間を見つめたかったのかもしれない。

 この映画は、どちらかといえば、茨城に建てられたオープンセットが有名で、

 30万人くらいの観光客を集めたみたいで、

 そういうことからいえば、

 地域振興の映画制作としては成功だったんだろね。

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必死剣鳥刺し

2013年12月08日 23時36分58秒 | 邦画2010年

 ◇必死剣鳥刺し(2010年 日本 114分)

 staff 原作/藤沢周平『必死剣 鳥刺し』

     監督/平山秀幸 脚本/伊藤秀裕 、 江良至

     撮影/石井浩一 美術/中澤克巳

     音楽/EDISON 主題歌/alan『風に向かう花』

 cast 豊川悦司 池脇千鶴 吉川晃司 戸田菜穂 村上淳 小日向文世 岸部一徳

 

 ◇謎の秘太刀

 トヨエツは、渋かった。

 吉川晃司も、渋かった。

 このふたりは、年を食うに従って、どんどん渋くなってくるような気がする。

 だけど、

 なんとなく納得できるようなできないようなことが、3つある。

 ひとつめ。

 この鳥刺しという必殺の太刀技は、

 自分が死んだと見せかけ、相手が油断した隙に刺し殺すってものなの?

 それとも、

 自分の心臓が止まってもなお、敵が正面に立ったら何かが反応して刺殺するの?

 どっちなのかわからないんだけど、

 どちらにせよ、どうやって編み出したり、練習したりしたんだろ?

 謎だ。

 いや、そもそも、こういう必殺技を、なんで藩のみんなが知ってるんだ?

 秘太刀ってのは、名称をわざと流布させるんだろうか?

 でも、そんなことしたら、教えてくれとか見せてくれとかいわれるの当たり前じゃない?

 謎だ。

 こんなことを書いてると、難癖つけてるようにいわれるのかな?

 そんな気はまるでないんだけど、やっぱり設定が設定だけに気になるんだよね。

 ふたつめ。

 豊川悦司はとってもまじめな侍で、

 3年前に亡くした妻戸田菜穂をいまだに愛してるはずなんだけど、ちがうのかしら?

 でも、戸田菜穂の姪の池脇千鶴が自分のことを好きだってことに気づいてて、

 自分の世話をさせて、しかも床入りしちゃうんだよね?

 いいんだろか、それ?

 ふたりがいいとおもっても、ちょっとばかり戸田菜穂が可哀想な気もしないではない。

 まあ、

 おばさんが亡くなって、出戻りの自分としてはおじさんのことが好きだったんだから、

 抱かれちゃうのは悪いことじゃないでしょ?

 とかいわれたら、う~ん、困るよね、まじで。

 みっつめ。

 岸部一徳の陰謀は、どうしようもない藩主を守るために、

 藩の道を正そうとしていた吉川晃司を殺すために、

 藩主にとっては愛妾の仇である豊川悦司に恩を売り、

 機を捉えて仕留めさせるっていうものだったんでしょ?

 ということは、藩主ぐるみの陰謀と罠だったことにはならないのかしら?

 だとしたら、最後の立ち回りの後、主人公がこの藩に残したものは何だったんだろ?

 そりゃあたしかに、いつもいいもんばかりが勝つとはおもえない。

 多くの場合、わるもんの方が頭が良いし、結局、好い目を見たりするもんだ。

 でもさ、いちばん悪いのは藩主なんだよね?

 ところが、ふしぎなことに、豊川悦司は愛妾は刺し殺すものの、

 藩主に対して諫言に及ぶまでには至っていない。

 これって、忠義心から行動とはいえ、すこしばかり不十分じゃない?

 忠義一徹の武士というのは、おのれの死をもって諫言するものじゃない?

 にもかかわらず、蟄居壱年とかいう軽い処罰を受けただけで、

 そののち出仕して、あほな藩主に忠勤を尽くすというのは合点がいかなくない?

 藩の運営が愛妾のせいでおかしくなっただけなら、豊川悦司の行動は正しい。

 でも、そうじゃなくて、藩主が愚かだから、藩が行き詰っているのだとすれば、

 吉川晃司がほんとうの忠義心なわけで、

 つまりは豊川悦司と同じ心根になってるわけだから、

 ふたりが激突しなくちゃいけなくなる前に、そもそも密会とかしてるんじゃない?

 なんだかそのあたりから中途半端な気がするのよ。

 全体を通して、渋さはよくわかったし、

 時代劇としての所作に注意が払われてるのもよくわかった。

 腰の据わらないタレントまがいの役者を使って学芸会を見せられるより、ずっといい。

 でもね~、

 なんだか溜飲の下がらない気がするんだけど、

 こんな重箱の隅をつつくようなことをいっちゃうのは、

 時代劇を見慣れてないとか、物語の中身をちゃんとこなしてないからなのかな?

 やっぱり、わかってないのかな~、

 ぼくは。

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花のあと

2013年12月03日 00時43分38秒 | 邦画2010年

 △花のあと(2010年 日本 107分)

 staff 原作/藤沢周平『花のあと 以登女お物語』

     監督/中西健二 脚本/長谷川康夫 飯田健三郎

     撮影/喜久村徳章 美術/金田克美 装飾/中山まこと

     音楽/武部聡志 主題歌/一青窈『花のあと』

 cast 北川景子 甲本雅裕 市川猿之助 伊藤歩 柄本明 國村隼 相築あきこ

 

 △甲本雅裕の味

 いつもいってることなんだけど、原作は読んでないから、いい加減なことしか書けない。

 藤沢周平の世界はどうやら静謐に包まれているらしい。

 で、丹念に構築された海坂藩の長い歴史の中に、

 美貌の女人剣士がいたというような短編があったんだろう。

 それをそのまま映画化したわけではないだろうから、

 映画に関してのみ、簡単なメモを取っておくっていう程度だ。

 味わい深いのは冴えない夫役を演じた甲本雅裕で、

 ぼくはこういう風采の上がらない雰囲気をもった男がいちばんいいとおもってる。

 一般的に、世の中というのは不公平に出来ていて、

 イケメンという言葉は好きじゃないから使いたくないんだけど、

 世にいうそういう部類の人間は多かれ少なかれ自分の容姿に自信があるものだ。

 そりゃまあ、たいがいの女性は見てくれのいい男が好きだろうし、

 ぶさいくな男は、多くの場合、相手にされない。

 でも、美男子よりも風采の上がらない男の方が実直で、優しいことってない?

 ないか~。

 劣等感とか、嫉妬とか、ひがみとか、そういうものが渦巻くからな~。

 ま、そんな雑談はおいといて、映画について書かないといけないね。

 さて。

 う~む、なんていったらいいんだろうか。

 不細工な夫としては、

 恋い焦がれていた男の仇を討とうしている美貌の嫁のやりたいようにさせ、

 やがて本懐を遂げたときに、おもいきりの優しさを見せて、

 その嫁の心を自分のものにするべく、

 まずは我慢を決め込み、ひたすら笑顔で励まし続けるという、

 なんとも忍耐づよさだけが武器になるわけだけど、

 そういう一見するだけではつまらない男の役を、

 甲本雅裕は役者の中ではいちばん素直に演じたような気がするよ。

 ああ、それと、

 北川景子は現代劇に出てる方が似合ってるとおもんだけど、

 そんなことないかしら?

 あ、それから、

 北川景子のポスター、なんでくちびるに桜の花びらが引っ掛かってるんだろう?

 謎だ。

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パーマネント野ばら

2013年10月21日 00時46分07秒 | 邦画2010年

 ◎パーマネント野ばら(2010年 日本 100分)

 staff 原作/西原理恵子『パーマネント野ばら』

     監督/吉田大八 脚本/奥寺佐渡子 撮影/近藤龍人

     美術/富田麻友美 スタイリスト/小里幸子 谷口みゆき

     ヘアメイク/小沼みどり 音楽/福原まり 主題歌/さかいゆう『train』

 cast 菅野美穂 小池栄子 池脇千鶴 宇崎竜童 夏木マリ 江口洋介 山本浩司

 

 ◎美容室に集う人々

 高知の人って優しいのね。

 それとも海辺の町の人が優しいのかな。

 どちらかわからないけど、

 ひとつだけいえることは、吉田大八がたぶん優しい人なんだろなってことだ。

 ぼくはネタバレという言葉をほとんど憎んでるくらいに好きじゃない。

 脱線ついでいえば、ネタバレというのは業界の中でも限られた人達の用語だ。

 それを使うことでなんとなく芸能界に触れたような感じになるのはいいけど、

 あたかも市民権を得てしまったように、誰も彼も使うのはちょっと気持ちが悪い。

 たとえていえば、そう、お寿司屋さんにいって、

 あがりだの、むらさきだの、おあいそだのを口にするのと、

 おんなじことのようにおもえるからだ。

 だから、ぼくはネタバレという言葉は使わない。

 なんでそんなことをいうかといえば、

 江口洋介の正体について書いておこうかな~とおもったからだ。

 でもね、映画のラストをいってしまうことは、ネタバレとはいわんのですよ。

 ラストはラストです。大団円とか、締めくくりとか、幕切れとかいうけど、

 それをばらすかどうかってだけの話で、ラストは「ネタ」ではないのよ。

 でまあ、海辺の町にたぶん一軒しかないであろう美容室には、

 いろんな常連がやってくる。

 一見さんはおそらく怖くて入れないだろうし、

 いまどき、こんな田舎の美容室で頭をやってもらう若い人は、

 常連しかいないだろうから、そんなことはいいんだけど、

 ともかく、その常連さんの中でも、菅野美穂の同級生だけが若い。

 小池栄子と池脇千鶴なんだけど、この3人の身の回りの描写が主な話だ。

 フィリピンパブを経営して、どうしようもない浮気夫が女に走り、

 車で轢き殺してやろうとするんだけど、結局できずに怪我をする小池栄子と、

 スロットマシンに嵌ってしまって、そのまま行方をくらました夫が、

 やがて森の中で死体になって発見されてしまう池脇千鶴なんだけど、

 要するに、3人は3人とも、男運が悪い。

 ていうか、菅野美穂の母親の夏木マリもやっぱり男運が悪い。

 男運の悪いところには、それなりの連中が集うようで、

 寄ると触るとちんこの話しかしないような世界の中で、

 ただひとり、菅野美穂だけが江口洋介とプラトニックな恋をしてるなんて、

 どう考えたって、ありえない話だ。

 となれば、この江口洋介自身になにか謎があるわけで、

 菅野美穂の見ている江口洋介はいったい何者かってことになる。

 こういう伏線と回りの連中のオムニバス的な描写を上手に描き、

 くわえて、現在と過去を微妙に交差させて描いているのは、

 いったい脚本が冴えてるのか、それとも大八演出が冴えてるのか、

 ぼくにはよくわからない。

 最後の最後まで江口洋介の正体を完全には明かさず、

 ラストカットで「なるほどね」とおもわせるのは、

 やっぱり演出なのかな~とおもったりもするんだけど、

 いや、吉田大八、たいしたもんだわ。

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武士の家計簿

2013年10月11日 13時26分14秒 | 邦画2010年

 ◎武士の家計簿(2010年 日本 129分)

 staff 原作/磯田道史『武士の家計簿 「加賀藩御算用者」の幕末維新』

     監督/森田芳光 脚本/柏田道夫 撮影/沖村志宏 美術/近藤成之

     装飾/鎌田康男 殺陣/中瀬博文 題字/村田清雪 算盤考証/吉田政美

     軍事教練指導/伊藤清(元海上自衛官) 音楽/大島ミチル

 cast 堺雅人 仲間由紀恵 中村雅俊 松坂慶子 伊藤祐輝 西村雅彦 草笛光子

 

 ◎幕末、加賀藩御算用方、猪山家

 好感がもてるっていうのか、

 いたずらに評判の漫画や小説とか使うんじゃなく、

 自分たちのオリジナルにこだわることもなく、

 こういう歴史のちいさな事実から考証されたものを元にするっていう姿勢は、

 ぼくは嫌いじゃない。

 もちろん、脚本にする際にかなりのカリカチュアはあったんだろうし、

 そうじゃなければ映画にはなりえないんだろうけど、

 そのあたりは肩の凝らない感じで仕上がってるようにおもえたわ~。

 そりゃあ、欲をいえばきりがないし、

 もうすこし役者たちのわざとらしさはなんとかならないかしら、

 とかおもわないでもないし、

 セットやロケ地が綺麗すぎてかえってリアルさに欠けてない?

 とかいいたくならないでもないんだけど、

 そんなところは枝葉のまた枝葉で、

 映画の主題として、そろばん、というものを用いた目のつけどころに、

 今回は「ええんやないの?」とかおもってしまったんですわ。

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SP THE MOTION PICTURE 野望篇

2013年09月17日 18時44分06秒 | 邦画2010年

 ◇SP THE MOTION PICTURE 野望篇(2010年 日本 98分)

 staff 監督/波多野貴文 原案・脚本/金城一紀

     撮影/相馬大輔 美術/青木陽次 竹中健  アクション監督/大内貴仁

     サウンドデザイン/トム・マイヤー 選曲/藤村義孝 音楽/菅野祐悟

 cast 岡田准一 真木よう子 香川照之 堤真一 山本圭 螢雪次朗 松尾諭 神尾佑

 

 ◇大義のためだ

 テレビの『SP 警視庁警備部警護課第四係』は、

 いやまじ、ほんとに愉しんで観てた。

 だから当然、映画になるのを期待してたんだけど、

 テレビシリーズが映画になったとき、たいがい、

 その期待はかなりけっこう過度なものだということをおもいしらされるものだ。

 この作品が、

 そうした一連のテレビドラマ映画化作品の例に漏れないかどうかは別にして、

 すくなくともまちがいなくいえることは、

「な~んだ、すんごい長い予告編なのね~」

 ってことだった。

 ぼくは、そう、受け取った。

 国会議事堂を占拠して革命の大儀のために行動するっていう話なんだから、

 その前後のことがあれこれと伏線があったり後付けだったりするだけで、

 テレビシリーズの最終回から次の革命篇への繋ぎとおもえばいいし、

 なによりの見どころは、岡田くんのアクションなんで、

 これを観て「たしたもんだわ~」と惚れ直せばいいのだ。

 にしても、なんで悲劇の源になる回想場面ってのは、

 たいかい、土砂降りなんだろね?

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マザーウォーター

2013年08月30日 02時56分19秒 | 邦画2010年

 △マザーウォーター(2010年 日本 105分)

 staff 監督/松本佳奈 脚本/白木朋子 たかのいちこ

     撮影/谷峰登 美術/富田麻友美 フードスタイリスト/飯島奈美

     衣裳/堀越絹衣 ヘアメイク/竹下フミ

     音楽/金子隆博 エンディングテーマ/大貫妙子

 cast 小林聡美 小泉今日子 市川実日子 加瀬亮 光石研 永山絢斗 もたいまさこ

 

 △マザーウォーターってのは、

 ウイスキーの仕込み水なんだね。

 知らなかったわ~。

 それはさておき、ぼくは京都が好きだ。

 暮らしたいとはおもわないので、異邦人として訪れるのが好きだ。

 だから、この映画に登場するロケ地は、ほとんどわかる。

 ま、そういう意味からすれば、贔屓したい映画ではある。

 でもな~、

 監督が変わると、こうも主題と雰囲気が変わるんだね~ていう、

 見本のような映画になってるような気がするんだけど、

 そんなことないかしら?

 荻上直子の世界というのは、自然な中の不自然さだけでなく、

 それなりに物語が展開して、筋が通っていて、ふしぎな見立てがある。

 この映画は、たんに雰囲気は似ているんだけど、

 登場人物たちの成長というか変化はほとんどなく、ただたゆたっている。

 とあるコミュニティがあって、そこに異邦人の訪れるのが荻上直子の物語だ。

 ところが、この映画の異邦人は小泉今日子のはずでしょ?

 なのに、最初から小泉今日子は完成されていて、

 そのかわりに不完全なのが市川実日子という設定になってる。

 荻上直子の世界では主役だった人間が、ふたつに分かれてしまってる。

 しかも、主人公は小林聡美となってるものだから、視点が分散してしまい、

 観客は自分の思い入れを誰に託していいのかわからなくなってしまうんだよね。

 雰囲気だけを愉しむのならこれでいいのかもしれないんだけど、

 でもね、ちょっとね、なんか欲しいじゃん。

 そんな感想でした。

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トイレット

2013年05月28日 23時21分13秒 | 邦画2010年

 ◇トイレット(2010年 日本、カナダ 109分)

 英題 toilet

 staff 監督・脚本/荻上直子

     撮影/マイケル・レブロン 美術/ダイアナ・アバタンジェロ

     音楽/ブードゥー・ハイウェイ フードスタイリスト/飯島奈美

 cast もたいまさこ アレックス・ハウス タチアナ・マスラニー デイヴィッド・レンドル

 

 ◇ばーちゃん、幽霊?

 またもや、見当違いなことを書いちゃうのかも。

『かもめ食堂』でも『めがね』でも同じことを感じたんだけど、

 荻上直子の作品を観ていると、

 深い山の奥にある湖のほとりに立ったような気分になる。

 その湖面に石ころを投げると、綺麗な円形の波紋が立つんだけど、

 それが周辺に溶け込んで、やがてふたたび静寂が訪れると、

 湖は何事もなかったように、漣ひとつ立たなくなる。

 つまり、

 荻上直子の描いている世界はそれとよく似ていて、

 整然と調和していたはずの世界に異邦人が入り込むことで、

 ほんのつかのま、ざわめき、混沌とした世界になりかけるんだけど、

 まもなく異邦人が世界に同化するのか、あるいは世界が異邦人の色に染まるのか、

 ともかくふたたび調和の保たれた世界が復活する。

 その世界は、湖の底に石ころが沈んだように、

 以前とはやや違う世界になっているはずなんだけど、

 でも、その新しい世界は何気なく見ただけでは以前とほぼ変わらない。

 いや、変わっていないのかもしれないし、

 変わったことがわからないのかもしれない。

 そうした石ころを、荻上直子の常連になっている役者さんたちが演じてきた。

 この映画でいえば、もたいまさこだ。

 もたいまさこは、映画の中の兄弟のほんとの祖母なのか?

 母親が連れてきたのは赤の他人なんじゃないのか?

 いや、そもそも、もたいまさこは生きているのか?

 兄弟たちにだけ見える幽霊なんじゃないのか?

 だから、ご飯も食べないし、トイレも長いし、

 寿司を食べてしまったことで、人間界から去らないといけなくなったんじゃないのか?

 なんていう、あきらかに的外れな想像までしてしまうんだけど、

 実をいえば、そんなことはどうだってよくて、

 ばーちゃんという石がぽちゃりと落ちてきて、

 静かに波紋を広げながらも、その家庭という名の湖に受け入れられ、

 湖を構成するひとつの欠片となり、やがて湖はふたたび静謐に包まれる。

 そういう話なんだから、

 ばーちゃんの正体なんて、どうでもいい。

 にしても、もたいまさこはどうしてあんなにお金を持っているんだろう?

 いや、これは『かもめ食堂』でも『めがね』でもそうだった。

 お金はどこからともかく湧いてくる。

 そんな印象を受けるんだけど、

 世の中、お金の出所なんてセコイことを考えてちゃいけないんだろうね、たぶん。

 みみっちい観方しかできないのが、辛いところだ。

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