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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

マイ ビューティフル ガーデン

2017年09月30日 00時01分01秒 | 洋画2016年

 ☆マイ ビューティフル ガーデン(2016年 イギリス、アメリカ 92分)

 原題 This Beautiful Fantastic

 監督 サイモン・アバウド

 出演 トム・ウィルキンソン、アンドリュー・スコット、ジェレミー・アーヴァイン

 

 ☆機械仕掛けの鳥ルナ

 いやまあ男と女ではまるでちがうかもしれないけど、ジェシカ・ブラウン・フィンドレイの演じた図書館の司書をしながら絵本作家をめざしている捨て子だったヒロインは、実にぼくによく似ている。ぼくも物の並びにはこだわりすぎているし、戸棚も冷蔵庫も本棚も箪笥もロッカーも机の上も抽斗の中もすべてが整理整頓されて整列していないと気持ちが悪くなる。さらには植物嫌いというより小さな虫や不潔なところが苦手で、そのため土いじりとか庭掃除とか草刈とかは苦手だ。このジェシカが、トム・ウィルキンソンから借りている庭が荒れ放題になっているのは非常によくわかる。

 しかしながら、トム・ウィルキンソンが「乱雑と混沌はちがうのだよ、混沌に美を見出すのだ」というように、英国式の庭園というのは雑草の繁みなのか手入れされた森なのか判然としないところがあるんだけど、実はひと目見ればわかる。それがジェシカんちの乱雑な庭とトム・ウィルキンソンんちの混沌とした庭なのだ。乱雑なままでは本は選べないが混沌たる図書館ではすぐに見つけ出せる。乱雑な人間関係はやがて混沌としながらも理解しあえるようになる。なるほど、そういう主題だったのか。

 ちなみに原題のThis Beautiful fantasticっていうのは「この美しき風変わり」という意味で、ラストでジェシカが出版する本なんだけれど、ここにいう風変わりは、気難しい園芸家トム・ウィルキンソン、花粉症で庭に出られない料理人アンドリュー・スコット、どもりで三つ子で金にならない物しか作れない発明家ジェレミー・アーヴァイン、口うるさく時間に几帳面な先輩司書アナ・チャンセラー、つまり、すべての登場人物のことなんだね。

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リリーのすべて

2017年09月29日 11時49分57秒 | 洋画2015年

 ☆リリーのすべて(2015年 アメリカ、イギリス、ドイツ 120分)

 原題 The Danish Girl

 監督 トム・フーパー

 出演 エディ・レッドメイン、アリシア・ヴィキャンデル、アンバー・ハード

 

 ☆世界初の性別適合手術

 リリー・エルベが性転換手術を受けたのは1930年から31年にかけてのことらしい。

 文字どおり命を懸けたわけだから、ほんとにその決意たるや、ぼくなんかのおよびもつかないことなんだろうけど、受けようと決意した時点でもはやリリーは女性なんだよね。だって、男はどうしても体面を気にするし、関係者にも気を使うし、なにより臆病だもん。男は、ほんとに弱虫だ。だめだな。リリー・エルベにはそういうところが微塵もなかったわけだから、その精神の強さはやっぱり女性なんだろうな。

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コロニア

2017年09月28日 00時12分35秒 | 洋画2015年

 ◎コロニア(2015年 ドイツ、ルクセンブルク、フランス 110分)

 原題 Colonia

 監督 フローリアン・ガレンベルガー

 出演 エマ・ワトソン、ダニエル・ブリュール、ミカエル・ニクヴィスト

 

 ◎コロニア・ディグニダのこと

 ビジャ・バビエラともいうらしい。チリ共和国マウレ州リナレス県パラルにあるドイツ系の施設で、完璧な秘密主義をとってて、現地ではカルト集団のようにおもわれていたらしい。ナチスの残党のヨーゼフ・メンゲレもいたというから、つまりはきわめて不穏当な施設として位置づけられていたんだろね。

 で、ここへ潜入して拉致された恋人ダニエル・ブリュールを救出しようとしたのが、ほかならぬエマ・ワトソンなわけで、なんだか夢と魔法の寄宿舎から夢もなく魔法もつうじない信じられないような現実をかかえた寄宿舎に身を投じるんだけど、それだけエマ・ワトソンが成長したっていうことなんだろうか。

 まあいずれにせよ、軍政下チリのカルト施設から緊迫の脱出劇になってたわ。

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五日物語 3つの王国と3人の女

2017年09月27日 00時31分40秒 | 洋画2015年

 ☆五日物語 3つの王国と3人の女(2015年 イタリア、フランス 133分)

 原題 racconto dei racconti

 監督 マッテオ・ガローネ

 出演 サルマ・ハエック、ヴァンサン・カッセル、トビー・ジョーンズ、ベベ・ケイヴ

 

 ☆ペンタメロン

 この頃の言い方だと、ナポリ方言をできるかぎり元の発音に近づけた表現で『ペンタメローネ』とかいうんだろうけど、どうしても僕は『デカメロン~十日物語~』の印象が強烈なものだから、この『五日物語』も『ペンタメロン』といいたくなる。とはいえ、ジャン・アレッシオ・アッパトゥーティスことジャンバティスタ・バジーレが書いた原作の説話集っていうか童話集は『Lo cunto de li cunti』というのが正式な書名で、翻訳すると『物語のなかの物語、すなわち幼いものたちの楽しみの場』とかってなるらしい。1日10篇の物語を5日語るから五日物語らしいんだけど、ぼくはもちろん原作は読んだことがないからなんともいえない。

 ただ、尽きせぬ欲望の寓話であることはよくわかる。歌を見初められた老女の物語、知りたがりの姫君の婚約者選びの物語、鬼に連れて行かれた姫君の物語とか、どれもそうだ。ただ、画面の美しさもさることながら、アレクサンドル・デスプラの音楽がいいね。

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めぐりあう日

2017年09月26日 00時32分00秒 | 洋画2015年

 ☆めぐりあう日(2015年 フランス 104分)

 原題 Je vous souhaite d'etre follement aimee

 監督 ウニー・ルコント

 出演 セリーヌ・サレット、アンヌ・ブノワ、ルイ=ド・ドゥ・ランクザン

 

 ☆息子を連れてパリからダンケルクへ

 母と娘の廻り合い物は多いけど、理学療法士になっている実の娘と知らずに整体治療をするというのは初めてだな。

 孫をついつい心配してしまう給食のおばさんのアルバイトをしているという設定はなかなかおもいつかない。いいね。けど、へ~っておもったのはフランスにも給食があるってことだ。日本だけの食育制度かとおもってたんだけど、考えてみればそんなはずはないよね。

 自分が生まれたところはわかっていても、それ以外がまるでわからないとしたらどうだろう?息子が生まれていればなおさらそうおもうのかな?ぼくは幸いにも生まれた病院もわかっているからこういう出生についての疑問は抱いたことがないし、多くの人がそうかもしれない。でもそれを当たり前のことと受けとめることはできないよね。こうした悩みを抱えている人は、実は相当な数に上っているのだから。

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アスファルト

2017年09月25日 02時54分06秒 | 洋画2015年

 ◇アスファルト(2015年 フランス 100分)

 原題 Asphalte

 監督 サミュエル・ベンシェトリ

 出演 イザベル・ユペール、ギュスタブ・ケルバン、バレリア・ブルーニ・テデスキ、タサディット・マンディ

 

 ◇団地映画

 いかにもシュールな出会いの男女の3つの物語(突如車椅子生活になった中年男性×夜勤勤務の独身看護師、母子家庭で基本一人で生活している少年×落ち目の女優、団地に不時着したNASAの宇宙飛行士×息子が服役中の移民女性)がまるで交差しないで進む。

 これは趣味の問題だから、なんともいえないんだけれども、交差しないままラストを迎えた方がいいのか、はたまた複雑に絡み合って人物のいれかわりがあったりした方がいいのかどうか、さあどちらだろう。まあ、コンクリート(だからアスファルトなのか?)で固められた団地が舞台だから、どうしても人のつきあいは稀薄にならざるをえないし、だから、エレベーターをつけるかどうかっていう団地内の理事会みたいなものが持たれて初めて会うような人々がいるわけで、昔の長屋のようなわけにはいかないだろうから、交差しないというのがリアリズムなのかもしれないね。

 リアルさのかけらもないような物語で、たったひとつリアルだなとおもわれたのは、その交叉しない物語という一点だ。けど、ちょっとばかりテンポがあんまり良くないかな。

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エイリアン コヴェナント

2017年09月24日 02時03分37秒 | 洋画2017年

 ◇エイリアン コヴェナント(2017年 アメリカ、イギリス 122分)

 原題 Alien Covenant

 監督 リドリー・スコット

 出演 マイケル・ファスベンダー、キャサリン・ウォーターストン、ダニー・マクブライド

 

 ◇『エイリアン パラダイス・ロスト』

 そうか、ついにデヴィットの物語になってしまったのか。

 マイケル・ファスベンダー演じるデヴィットとウォルターが『プロメテウス』との懸け橋になってるっていうか、もはや、この2作はデヴィットの物語になってしまっている。まあそれならそれでいいのだけれども、いってみればもともと主役は誰あろうエイリアンなわけで、これまで語ることをせずにきたエイリアンがデヴィットというアンドロイドを下僕にしてしまったことで、脳髄と言語を得たということになる。この成長は凄いっていうか、ようやくっていうか、ともかくそういうことだ。ただ、コヴェナントという単語の意味は「契約、約束、 誓約、盟約」といったことだから、誰と誰が約束したのかといえば、やっぱり、デヴィットとウォルターってことになるのかな?それとも、デヴィットとエイリアンなのかな?

 ちなみに、宇宙探査船プロメテウス号が惑星LV-223に向けて地球を出発したのは西暦2089年で、到着したのは2093年12月25日ということになってて、それから10年後に植民船コヴェナント号が到着したようだから、この物語は2103年に起こったということになる。さらにいうと『エイリアン』において宇宙貨物船ノストロモ号が地球へ帰る途中に小惑星LV-426(惑星LV-223じゃないのね)に降り立ってしまったのが2122年だから、リドリー・スコットが設定した年賦どおりに進んでいることになる。さらにちなみにエレン・リプリーの乗ったノストロモ号が発見されたのはエイリアンとの遭遇から57年後とされているから、2179年ってことになるのだ。ただまあ、エイリアンのシリーズも3.4になるとちょっと食傷気味にはなるんだけどね。

 ただまあ、物語という観点からいえば、あきらかに『プロメテウス』の方が厚みがある。この『コヴェナント』は惑星LV-223の超古代文明が圧倒的な数のエイリアンによって滅亡してしまった風景だけは観ることができるものの、あとは『エイリアンⅡ』のように「今度は戦争だ!」といいきってしまいそうな感じだった。ただ、コヴェナント号に乗り込んでしまったエイリアンの子供たちのその後の物語が制作されないとはいいきれないわけで、何部作になるのかはわからないけれど、次回作に期待するしかないような繋ぎの作品であることはまちがいないかな。

 なんにしても、今回はちょっといただけない。

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トーク・トゥ・ハー

2017年09月23日 00時53分29秒 | 洋画2002年

 ☆トーク・トゥ・ハー(2002年 スペイン 113分)

 原題 Hable con ella

 英題 Talk to Her

 監督・脚本 ペドロ・アルモドバル

 出演 レオノール・ワトリング、ジェラルディン・チャップリン、ダリオ・グランディネッティ

 

 ☆眠れる美女か

 自分だったからどうだろう?

 盗み見までして岡惚れしていた彼女レオノール・ワトリングがいきなり昏睡に陥ったら、この気は優しいけれどもおもいつめてしまう若者ハビエル・カマラのように、看護師になって尽くして、ところが、あげくのはてに犯して妊娠させちゃったかもしれないかどうか。そんなことはないと観客としてはおもいたいのだけれど、さて…。

 もう一方、こちらは中年の男ダリオ・グランディネッティだけど、女闘牛士ロサリオ・フローレスが闘牛の失敗で昏睡に陥ってしまい、こちらに対してはまるでなにもできずにいる。うん、こちらはなんとなくわかる。

 けど、どちらにせよ、なんとも難しい話で、そこまでおもいつめてしまう若者の生理と中年男の詩情を上手に描いていたんじゃないかと。

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ジュリエッタ

2017年09月22日 00時37分51秒 | 洋画2016年

 ◎ジュリエッタ(2016年 スペイン 96分)

 原題 Julieta

 監督・脚本 ペドロ・アルモドバル

 出演 エマ・スアレス、アドリアーナ・ウガルテ、インマ・クエスタ、ダリオ・グランディネッティ

 

 ◎ふたり一役の成功例

 現在のジュリエッタであるエマ・スアレス、過去のジュリエッタであるアドリアーナ・ウガルテはほんとうによく似ているようにメイクされていて、性格などは年齢を重ねることで違ってくるという前提のもとに見れば、いや、実に丁寧に演出されていて、どちらも好感触だった。

 父親を亡くしたことによる母と娘の亀裂の復活なんだけど、その復活に向かっていくところで終わるのは上手いね。そこになんとなく頼りなさげにくっついているダリオ・グランディネッティなんだけど、好いのか悪いのかよくわからないふしぎなおっちゃんだわ。

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ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち

2017年09月21日 00時52分19秒 | 洋画2016年

 ◇ミス・ペレグリンと奇妙なこどもたち(2016年 アメリカ 127分)

 監督 ティム・バートン

 出演 エヴァ・グレーン、テレンス・スタンプ、ジュディ・デンチ、サミュエル・L・ジャクソン

 

 ◇ハヤブサが守る家

「ケインホルム島へ行き、1943年9月3日のループへ行け。そうすれば鳥が全てを教えてくれる」

 ふ~ん、時間のループにさ迷い込む話か~と、その台詞を聞いたときはそうおもった。で、それはそれなりに楽しめるんだけど、エヴァ・グリーンがいやっていうくらいの厚化粧で、なんというか、いまひとつだな。もともと弩級の綺麗さをほこる女優なんだから、あんまり厚化粧はさせてほしくないな。

 そんなことより、1943年のウェールズ爆撃で死んでしまった子供たちの幽霊の話なんだ~と軽く受けとめたんだけど、ちょっとちがうようだ。そう、実は途中まで学校の怪談4みたいな気がしてたんだけどちがってて、もうすこし物語がうねってるんだなって。

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メッセージ

2017年09月20日 18時42分58秒 | 洋画2016年

 ◎メッセージ(2016年 アメリカ 116分)

 原題 Arrival

 監督 ドゥニ・ヴィルヌーヴ

 出演 エイミー・アダムス、ジェレミー・レナー、フォレスト・ウィテカー

 

 ◎ある日突然、巨大ばかうけが地球に。その味は不明

 つまり「栗山米菓のばかうけ」のような宇宙船「柿の種」がいきなり現れるんだな。

 しかも、その異星人は未来が読めて、3000年後に地球人が自分たちを救うのだと。なんだか弥勒菩薩とは逆なのね。弥勒は人類を救うために降りてきてれるんだもんね。まあそんなことはさておき、知的生命体にしては蛸か烏賊に酷似してるんだが、そのかれらと意志の疎通をはかるのが円形の言語絵というのはどうかな。そもそも蛸は英語が読める風味なのだから、ならば英語で疎通しろよっておもっちゃったのは僕だけなんだろうか?

 結局、エイミー・アダムスの未来の心の再生ていうかやがて生まれてくる娘への懺悔というか、それでもわたしは生むのよだってそれは生まれてくる子の決意なんだから的な複雑きわまりない心情、つまり深層心理を混乱させつつも平穏にさせる話で、なんかこういうのってこの頃多くないかしら。時代の潮流っていうか、ハリウッドはこういう神秘的とも宗教的もいえるような内面世界が好きなんだね、たぶん。

(以下、2022年4月の二度目の感想)

 ヘプタポッドの「○」の変形文字の解読がだんだん飽きてくるんだけど、なんとなくわかってきたのはこれは単なる表意文字ではなくて対象物の歴史というか将来も含めた人生すべての映像を一瞬にしてにして相手の脳に届かせてしまうという代物なのだね。

 だから、ヘプタポッドに出会ってしまって自分の人生をあらわす変形○文字をつきつけられてしまったエイミー・アダムスは過去をフラッシュバックするようにやがてジェレミー・レナーと結婚して生まれた子供が白血病を患って死んでゆく未来まで感じとってしまうっていう、そういうことよね。

 でも、それだけのことを、こんなに長尺でおもわせぶりな展開で見せる意味はどこにあるんだろうか?

 しかし武器の提供ってなんだ?なぜわたしにハンナってつけたの?hannahは前からも後ろからもハンナって読めるからよ。武器は言語よ。かれらとおなじように時を理解できるからよ。時は流れるものじゃない。このあたりのやりとりはもはや頭がこんがらかってきそうになるね。わかるようなわからないような。

 つか、ジェレミー・レナーが毛布をかけてやるとき、撮影スタッフのマイクかなにかにひっかかっただろ?NGにしなくていいのか?

 

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人間の値打ち

2017年09月19日 23時19分21秒 | 洋画2013年

 ☆人間の値打ち(2013年 イタリア、フランス 109分)

 原題 Il capitale umano

 監督 パオロ・ビルツィ

 出演 バレリア・ブルーニ・テデスキ、ファブリッツィオ・ベンティボリオ、マティルデ・ジョリ

 

 ☆イタリア・ミラノ郊外

 3つの物語、父親、娘の別れたばかりの彼氏の母親、そして娘の物語に、まとめの話がくっついた構成は嫌いじゃない。

 人間の値打ちというのは、自動車にはねられて死んだときの将来的な稼ぎの全額をいうのだと最後にいわれるんだけど、その額ですみあった罰が世間的には娘の数年間が禁固となるわけだが、ほんとは娘は新しい恋人のために身代わり犯となるわけで、その新しい恋人の価値が禁固刑に価するのかどうかはなんともな~。

 物語は最後にどんでん返しのように新しい恋人の存在が見えてきて、とても上手だ。

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エル・クラン

2017年09月18日 23時28分16秒 | 洋画2015年

 ◇エル・クラン(2015年 アルゼンチン 106分)

 原題 El Clan

 監督・脚本 パブロ・トラペロ

 出演 ギレルモ・フランチェラ、ペテル・ランサーニ、リリー・ポポヴィッチ、ヒセリェ・モッタ

 

 ◇1985年8月、プッチオ家逮捕

 ブエノスアイレス郊外のサン・イシドロに住む家族のしでかした実際の誘拐事件を映画化したものなんだけど、アルゼンチンが独裁だった頃に精神的な怪物になってしまったとおぼしき父親の内面にもうすこし踏み込むのかとおもってたら、案外さっぱりしてた。ていうか、さっぱりしすぎなんじゃないかと。けど、ラグビー選手の息子が父親と同様に終身刑の判決を受けた際、裁判所の最上階からパティオへ飛び降りるときの映像は、いやまじ、凄く好ましいCG処理だったとおもうな。

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幸せなひとりぼっち

2017年09月17日 01時11分37秒 | 洋画2015年

 ◇幸せなひとりぼっち(2015年 スウェーデン 115分)

 原題 En man som heter Ove

 監督・脚本 ハンネス・ホルム

 出演 ロルフ・ラスゴード、イーダ・エングボル、バハー・パール

 

 ◇身につまされる老後

 このデブで気難しい老人は僕だなとおもっていたんだけど、妻の後を追って自殺したいとおもいつづけて結局自殺しちゃうというのはどうだろうな。どうも、後味が良くない。新たな人生を近所の人達と生きる決意をしてほしかったな。けど、それだけ観客におもわせてしまう展開が、上手といえば上手なのかもしれないね。

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お嬢さん

2017年09月16日 01時32分58秒 | 洋画2016年

 ◇お嬢さん(2016年 韓国 145分)

 原題 아가씨

 監督 パク・チャヌク

 出演 キム・ミニ、キム・テリ、キム・ヘスク、ムン・ソリ、ハ・ジョンウ

 

 ◇サラ・ウォーターズの『荊の城』

 なんでビクトリア時代のイギリスの物語が日本統治時代の韓国になったのかはわからないけれども、年表の上で西洋と東洋を移動させたらちょうどその時代になったってことかしら?

 まあそれはそれとして、えらく評判のこの作品、いったいどうしてなのかって考えたんだけど、実はよくわからない。視点を変えて物語を再構築させるという手法は好きではあるけれど、だからといって評判をとっているのはそうした演出面だけではないだろうね。視点を変えることによって次々にどんでん返しの応酬がなされ、事件に巻き込まれていたはずのか弱き女中が実はそうではなくてなにもかも承知の上で陰謀をたくらんだ張本人のひとりというような展開が視点を変えるたびに煉瓦積みにされるというのは、視点を変えただけ以上の効果を持つ。そのあたりがうまいとおもわせたところだったんだろうね。

 ただ、エロチックかどうかという点については、玉門と声に出したところで現代の観客はきょとんとするばかりで、朗読や晒し程度では誰の官能も刺激されないことはわかっているわけで、そうしたところ、この映画自体は実は官能劇ではないということになり、そんなものを期待して観に行った観客は肩透かしを食らったかもしれないね。

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