◎単騎、千里を走る。(2005年 中国、日本 108分)
中国語題 千里走単騎
英題 Riding Alone for Thousands of Miles
監督 張芸謀、降旗康男
◎チャン・イーモウのオファー
高倉健は東映を辞めてから矢継ぎ早に代表的な作品に出演していったけど、そんな健さんの晩年の代表作なんじゃないかっておもうんだよね。ただ、晩年、健さんの映画はどうしても降旗さんの色が濃くって、その匂いが強かったような気がするんだけど、もちろん、それが好いとか悪いとかって話じゃなくて、この作品の場合、たしかに日本の部分の監督は降旗さんだけれども、本編の中国部分はまぎれもなくチャン・イーモウだ。それがなんとも新鮮なんだよね。
なんていうか、ドキュメンタリーを観てるような錯覚すら受けた。健さんが作中の人物を超えて健さん本人になっちゃったような感じがあって、それって健さんの身の入れ具合が強かったからなのかもしれないんだけど、途中からどうにもだぶった。健さんは決して上手な人とはおもえないところがあるんだけど、ただ健さんの場合、上手下手を超越したところがあるから、こういうドキュメンタリータッチな撮り方だとなんだか不思議な感覚すらおぼえる。
内容はいたって単純で、雲南の民俗学を研究していた息子中井貴一がいたんだけど、疎遠になってるうちに死んじゃって、その息子を成仏させてあげるのが父親のとしての役目だってことで、健さんは単身、雲南へいって、関羽千里を行くの京劇を撮影してやろうとするものの、肝心の役者が収監されてるっていうとんでもない障碍にぶちあたり、でもやがて刑務所の所長たちまで息子をおもう健さんの心情にほだされ、刑務所の中で披露しかつ撮影するのを認めるっていう人情話だ。でもさ、単純なように見えて、ちゃんとできてるし、このあたり、さすがチャン・イーモウだなっておもったわ。
ただ、この映画、日本国内で最初に噂されたとき、健さんが関羽になるんだってよ!みたいな感じで広まった。まじか!とおもった。信じられないことに劉備の夫人が小百合さんだってよ!みたいな話まで耳に入ってきた。ほんとか?とさすがにおもったし、正直なところ、やめといたらどうよっておもってた。そんな映画作ったところで誰も観ないぜと。でもそれはまったくのデマで、関羽千里行をやるんじゃなくて、関羽千里行の京劇を追っていく現代劇だってことがまるでわかってなかった。誰がわかってなかったのかは、いまでもよくわからない。