Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

スター・ウォーズ フォースの覚醒

2018年01月31日 14時09分53秒 | 洋画2015年

 ◎スター・ウォーズ フォースの覚醒(2015年 アメリカ 136分)

 原題/Star Wars : The Force Awaken

 監督/J・J・エイブラムス 音楽/ジョン・ウィリアムズ

 出演/ハリソン・フォード マーク・ハミル キャリー・フィッシャー

    アダム・ドライバー デイジー・リドリー ジョン・ボイエガ オスカー・アイザック

 

 ◎ハン・ソロ「帰ってきたぞ」

 予告編で泣いた。

 ミレニアム・ファルコン号にハン・ソロがチューバッカと乗り込んだときの台詞だ。

 で、本編を目を皿のようにしてみてたんだけど、なかった。見逃したのか、それとも別な台詞にされてしまってたのか、あるいは字幕だけ変えられていたのか、わからない。たぶん、いちばん最後が正解なんだろうけど、なんだよ~!って感じだった。それだけを期待してたのに。

 本編の中身については観ない方がいいと最初からおもってた。たとえどれだけおもしろいものであっても、ぼくの頭の中にある『スター・ウォーズ』は結局、個人的なものだから、現実の物語を観たところでどうなるものではないからさ。だから、できるかぎり『スター・ウォーズ』からは離れようとおもってきたし、ハン・ソロの運命がどうなろうと、あ、まあこういう展開もありだろうな~ってくらいにしか感じられない。

 けど、もはや、観るしかなくなってしまった。

 おもえば、40年間。

 半世紀近く経っても尚、初めて観たときの驚きが鮮明に甦ってくる映画も少なく、でも、最初の2本まではつまり『新たなる希望』と『帝国の逆襲』までものすごく興奮したものの、それから先は期待する中身との差が次第に大きくなっていって、やがてはついに観ないようにした方がいいかもしれないとまでおもってしまうシリーズになっちゃうのは、なんだか『男はつらいよ』みたいでよくないな~とかっておもってたんだけど、まあ、なにもかもひっくるめて「ともあれ、みるか」とおもって、観た。

 感想は、ひとことしかない。

「いったい、いつまで、デス・スターが引っ張られていくんだろう?」

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サタデー・ナイト・フィーバー

2018年01月30日 01時20分58秒 | 洋画1971~1980年

 △サタデー・ナイト・フィーバー(1977年 アメリカ 118分)

 原題/Saturday Night Fever

 監督/ジョン・バダム 音楽/ビー・ジーズ デヴィッド・シャイア

 出演/ジョン・トラボルタ カレン・リン・ゴーニイ ジョセフ・カリ、ドナ・ペスコウ

 

 △フィーバーの語源

 当時、このペンキ屋の若造の青春劇はちょっとした評判だった。

 ぼくは実はあんまり好きじゃなくて、友達がやけに凝っててそれを見るのもちょっと横目で見てたりした。ディスコなるものに行ったのはこの映画が出来てから2年も後のことで、結局、これまでに数回しか行ったことがない。

 実際、ぼくの口から「フィーバー」なんて台詞は一度も発されることはなかったし、これから先もないだろうけど、いやまじな話「フィーバーしちゃおうぜ」みたいな台詞を口にする奴とは友達になりたくなかったし。

 そんなことはさておき、映画も、最後の輪姦と自殺は気分が悪いな。トラボルタは若くてもうなんだか嫌になっちゃうようなポーズをとらされてるし、悲しかったんじゃないかっておもうんだけど、そんなことなかったんだろうか。いずれにせよ、やり場のない若い連中のはすっぱな物語なんだけど、つまりはいい奴になることがちょいと恥ずかしくて、でもどうしてもいい奴にしかなれないじれったさというかジレンマというか、そんなものを出そうとしてうまくいったんだかいかなかったんだかよくわからない出来栄えになったって感じがするなあ。

 音楽は、別格だけどね。

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地下室のメロディー

2018年01月29日 01時07分08秒 | 洋画1961~1970年

 ◇地下室のメロディー(1963年 フランス 118分)

 原題/Mélodie en sous-sol

 監督/アンリ・ヴェルヌイユ 音楽/ミシェル・マーニュ

 出演/アラン・ドロン ジャン・ギャバン ヴィヴィアーヌ・ロマンス カルラ・マルリエ

 

 ◇カジノ『パーム・ビーチ』のプール

 そうだな~。まあ、凝った映画だし、スタイリッシュな画面だし、しゃれた音楽だとおもうんだけどね。

 ただ、映画のほぼ半分くらいまで、ジャン・ギャバンに命令されたアラン・ドロンの下準備つまりカンヌでカジノのあるホテル『パーム・ビーチ』の踊り子ヴィヴィアーヌ・ロマンスをひっかけるまでの、なんともたらたらした、はすっぱな二枚目のお遊びが続いててちょっと飽きる。エレベーターの上に乗り込んでカジノの売上金を狙うという話がようやく出る頃には、かなり疲れてる。

 ちなみに、アラン・ドロンの右の頬にある向こう傷がカッコイイのか、それとも余計なものなのかわからないんだけど、そういえば、この頃、向こう傷をつけた役って見なくなったなあ。

 ただ、アラン・ドロンの昔の映画を観るといつもおもうことなんだけど、運動神経がものすごく好いんじゃないかって。それと、うでぢからがすんごくあるんじゃないかって。だって、ホテルの屋上の壁際をすいすいすらすらとよじ登っていくだけでなく、エレベーターの中に宙づりになってもいかにもたいしさことなさそうに片手で身体をささえて降りていくなんてことはなかなかできない。すごいちからだ。色男なのにな~。

 でも、まわりに警察がいっぱいになって、ちょっとの間だけプールの底に沈めておくしかないかってそっと底へ沈めた、警察が血眼になって追いかけてる特徴的なバックから札束がなんとも虚しく浮かび上がってくるまでの緊張感はもの凄い。

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スポットライト 世紀のスクープ

2018年01月28日 23時23分08秒 | 洋画2015年

 ☆スポットライト 世紀のスクープ(2015年 アメリカ 129分)

 原題/Spotlight

 監督/トム・マッカーシー 音楽/ハワード・ショア

 出演/マーク・ラファロ マイケル・キートン リーヴ・シュレイバー スタンリー・トゥッチ

 

 ☆カトリック司祭による性的児童虐待事件

 なんとなく想像がつくんだけど、カトリック教会が子供を保護あるいは庇護してきた事実はむろんあるのだろうけれども、それは子供を持つ親あるいは子供本人が教会に対して崇敬の念をもち、かつ全面的に気を許してしまうとい習慣的な心根を逆手に取った、実に非道かつ卑劣な事件だといわざるをえない。

 その事件を徹底的に調べ上げて2002年1月に報道してみせたボストン・グローブ社の記者たちを描いたのがこの映画なんだけど、正義大好きアメリカ人にとってこれほど興味を惹かれる映画もなかったろう。こういう映画は、なかなか邦画では登場しないね。溜め息でちゃうよ。

 けど、紅一点のレイチェル・マクアダムスがこの映画の宣伝で来日したときのビデオを見たら、なんとまあ派手な衣装だこと。銀幕の中に登場する知的な冒険心に満ち溢れた魅力的な女性記者はいったいどこへ往っちゃったんだろうって感じだ。

 まあそれは余談だけれども、こうした児童への性的虐待はなにもアメリカのみならず、イギリス、アイルランド、ドイツ、メキシコ、ギリシャ、オーストラリアなど世界中で起きているらしい。おどろくべきことに報道された当時にローマ法王だったベネディクト16世が大司教をつとめていたミュンヘン管区でもそうした事件が起こっていて、それが退位のひきがねのひとつにもなったらしい。

 すごい話だけれど、実をいうと、日本でも起きてる。

 なんとなく、ああ、そうかもしれないな~っておもっちゃうんだ、ちょっと。

(以下、2度目)

 新聞社の新任編集局長の、神父の虐待事件の記事に興味を持つところが、抜けてる気がする。

 つまり、新聞社が事件の情報の開示を求め、教会と戦うきっかけになるところが欠如している。

 この導入は大事だとおもうんだけどな。えらくすべて、さらりと撮ってる。テンポは、早い。たくさんの情報をつめこまないといけないからだろう。けど、被害者の会のsnapの登場が遅いからか、事件に入り込めないし、重要さがちょっと伝わってこない気がするんだよね。

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ラザロ・エフェクト

2018年01月27日 20時49分22秒 | 洋画2015年

 △ラザロ・エフェクト(2015年 アメリカ 83分)

 原題/The Lazarus Effect

 監督/デヴィッド・ゲルブ 音楽/セーラ・シャクナー

 出演/オリヴィア・ワイルド サラ・ボルジャー マーク・デュプラス、レイ・ワイズ

 

 △なんだか『フラット・ライナーズ』の亜流?

 というわけでもないのだろうけれども、生物学的に死を迎えた者をふたたび甦らせるという実験をおこなうわけだから、似ているようなそうでもないようなそんな感じだ。

 ただ『フラット・ライナーズ』が臨死体験についてなんらかの解答を出そうとしているのに対し、こちらはもう味付けのちがうゾンビ映画じゃんっていわれそうな感じだ。

 なるほど、オリヴィア・ワイルドが綺麗な分、妖しい雰囲気は出るし、死後の世界を垣間見えるというのが臍なのかもしれないけど、かといって解答のあるものではないし、結局、自分とおなじような境遇となる仲間を増やしていくのだっていう結び方はこういう映画にはありがちなものだしね。

 あ、でも、ポスターの黒い眼の中、注意深く観るとちゃんと味付けがなされてるんだよ。

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ある戦争

2018年01月26日 01時46分54秒 | 洋画2015年

 ◎ある戦争(2015年 デンマーク 115分)

 原題/Krigen 英題/A War

 監督・脚本/トビアス・リンホルム

 出演/ピルウ・アズベック ソーレン・マリン ダール・サリム ダルフィ・アル・ジャブリ

 

 ◎アフガニスタン、ヘルマンド州

 平和維持軍として派遣されたデンマーク陸軍の中隊が、空爆支援を要請して爆撃をおこなったことで民間人11人が死亡し、その中には子供すらおり、この誤爆について中隊の指揮官が殺人罪で起訴されるという物語なんだが、故郷に残してきた子供たちと再会したのも束の間、起訴された自分に突きつけられた子供の問いかけが「パパ、ほんとうに子供を殺したの?」というのはなんとも生々しいし、辛いね。

 でも、敵の姿を視認しないかぎり空爆の要請はしてはならないというのはわからないでもないけれども、そんなことをいっている間に自分の部隊も自分たちが守ってきた村や人が熾烈な攻撃を受け続け、殺されていかねばならないとしたら、どうだろう。

 空爆してくれっておもうだろうし、要請するんじゃないか。

 そう問いかけられているわけだ。こういう映画は強烈だよね。

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フィフス・ウェイブ

2018年01月25日 14時19分55秒 | 洋画2016年

 ◇フィフス・ウェイブ(2016年 アメリカ 116分)

 原題/The 5th Wave

 監督/J・ブレイクソン 音楽/ヘンリー・ジャックマン

 出演/クロエ・グレース・モレッツ リーヴ・シュレイバー マリア・ベロ マイカ・モンロー

 

 ◇異星人の波状攻撃

 これといって、へ~とかいう話でもない。

 まあ想像どおりの展開で、地球外生命体による「アザーズ」なる巨大飛行物体が来襲して五つの波状攻撃を仕掛けてくる。第一波は暗黒つまり電子パルスによる攻撃でありとあらゆる電子回路を破壊し、第二波は崩壊つまり地殻変動を誘発させて地震と洪水を見舞い、第三波は感染つまり疫病を蔓延させて人類の大半を死滅させ、第四波は侵略つまり異星人の寄生した人類に攻撃を仕掛けさせんだけど、で、第五派はなんなんだっていえば…。

 掃蕩。

 つまり、エイリアンの寄生した「アザーズ」が新たな人類になりきり、助けて集めた子供を教育して生き残った旧人類を狩らせるわけなんだけど、そんなに面倒なことしなくたっていいじゃんっていう話だ。どうしてもヤングアダルト(あんまり好きな言い方じゃないな)向けのジュブナイル小説が原作だから子供を主役に立てないといけないんだけど、だったら新人類が軍隊を掌握して掃討作戦を展開した方が話が早いわけで、要するに途中で出会ったイケメン(吐き気がする言い方だが)のアレックス・ローと恋仲にさせて、しかもこいつはすでに寄生されたんだよどーしよーっていう展開をさせたいがためだけの筋書きだから余計な設定をしなくちゃいけなくなったんだよね。

 まあ、3部作の1番目ってことだから、隠し砦に集められた生き残りの子供たちがどんな戦いをしていくのかっていう物語が待ってるんだろう、たぶん。

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ONCE ダブリンの街角で

2018年01月24日 01時16分49秒 | 洋画2007年

 ◇ONCE ダブリンの街角で(2007年 アイルランド 87分)

 原題/ONCE

 監督・脚本/ジョン・カーニー

 音楽・主演/ザ・スウェル・シーズン(グレン・ハンサード マルケタ・イルグロヴァ)

 出演/マルチェラ・プランケット ダヌシュ・クトレストヴァ ヒュー・ウォルシュ

 

 ◇Miluju tebe

 グレン・ハンサードがマルケタ・イルグロヴァに対して「別居してる旦那を今でも愛しているの?」と訊いたとき、マルケタはチェコ語で「Miluju tebe」で答える。わたしが愛しているのはあなただけよ。エレジーだね。

 なんかまあ話は単純で、別れた恋人マルチェラ・プランケットの面影を歌に託して街角でギター片手に流して歩いている男グレン・ハンサードが、娘と母親ダヌシュ・クトレストヴァの面倒を見ている花売り女マルケタ・イルグロヴァと知り合い、彼女の手助けと父親ビル・ホドネットの支援により遅ればせながらロンドンでプロデビューを果たしていこうとする一方、女は夫が戻ってきて一緒に暮らし始めるっていう物語なんだけど、いやまあ、かれらは実際にも共に音楽活動をしているらしく、そのオリジナル曲が随所に挿し込まれていて、それを愉しむ向きにはいいんだけど、ぼくみたいに音楽のわからない奴の場合、ちょっとね。

 おもしろかったのは資金を借りようと訪れた銀行の融資課長がいきなりギターをかまえて『聞いてくれ』と弾き語りを始めたところくらいだったかな。ただ、リアルなタッチは好感がもてたし、主人公たちのアコースティックな曲は決して悪くはない。とても自然な感じが好かったしね。

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雪国

2018年01月23日 16時18分08秒 | 邦画1951~1960年

 ◎雪国(1957年 日本 134分)

 監督/豊田四郎 音楽/團伊久磨

 出演/岸惠子 池部良 八千草薫 森繁久彌 加東大介 浦辺粂子 市原悦子 千石規子

 

 ◎日本画家にする理由がわからない

 いや、東京が麻痺するくらいの凄い雪が降ったからってわけじゃないけれども。

 團伊久磨の音楽もいいけど、なんといっても、安本淳のカメラがいい。ロケの空模様が書き割りみたいな綺麗さだとおもってたら旅館の中はたぶんスタジオだとおもうんだけど野外入れ込みで室内を撮ったときのリアルさは見事だな。ラスト、岸惠子が仕事へ向かっていくとき、闇に埋もれた雪景色の中へ沈みこんでいくような撮り方はまるで墨絵のようで、見事だ。

 それと冒頭、列車の窓に映り込んでくる八千草薫の美しさ、駅舎の窓に映り込んでくる岸惠子の凛とした美しさ、どちらもたいしたもんだ。カメラだけじゃなくて豊田四郎の演出も細部まで気持ちの演技が見えてくる。ワンカットワンカットが丁寧だね。鏡台に雪景色が映りそこへ岸惠子のアップがフレームインしてきたりね。

 ただまあ、池部良がうまいんだろうけど、この高等遊民のようなどうしてもなく浮世離れした野郎の情けなさといったらない。日本画家という設定にする必要はまったくなくて、そんな意味のないことをするより山歩きの好きな作家としておいた方が好かったんじゃないかっておもうわ。

 でもまあ、ひどい男だね。この男がいなかったら、岸惠子も八千草薫も幸せとまではいかないものの不幸のどん底に落ちてしまうこともなかったろうに。そうしたどうしようもなく凍てついた呪縛というか運命の悪戯みたいなものがこの作品の底流になってるんだけど、このあたりがどうしても僕には辛い。

 ところで、女風呂で池部良と岸惠子がふたりで浸かってるとき、池部良がタオルで湯面に風船を作るんだけど、これ、妙に懐かしい。その昔、そう、ぼくがまだ幼稚園に入って間もない頃だったか、母親に風呂に入れられたとき、湯面でよくこの風船を作ってた。当時園児だった僕はそれがうまくできなくて何度もやりなおしたものだ。銭湯で手拭いを風呂に入れるのは失礼なことだから勿論するはずもなく、つまり家のお風呂でしかできない。当時ちょうど、家庭で風呂を作るようになってて、その頃、この遊びがなんとなく世の中に広がってたのかもしれないね。

 原作とちがうところは、火事のあと、つまりラストになって後日譚が描かれていることだ。

 火事から救出された八千草薫が顔の火傷を恥て人前に出られないようになり、それがまた岸惠子に対する怨念のようになって家で留守を守り、岸惠子は岸惠子で八千草薫の自殺のような映画館での炎への包まれようは自分が追い込んでしまったとおもっているからなんとかふたりで生きていこうとして芸者稼業に身を窶しているわけだけれども、でも、もうそれも限界に近づいていることを自覚しつつも、かといってどうにもならない現状があり、これからどうやって生きていけばいいのだろうと、我が身を呪い、かつまたいけないことだとわかっていながらも八千草薫を憎まずにはいられなくなっている自分をどうしようもなく憎み、その絶望感に包まれながらもはや死へ向かっていくのように薄暗い雪に閉ざされた中、今夜も仕事に向かうしかないという哀れさがひしひしと沁み入ってくる。たいした映画だわ。

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屍者の帝国

2018年01月22日 00時00分00秒 | 邦画2015年

 ◇屍者の帝国(2015年 日本 120分)

 監督/牧原亮太郎 音楽/池頼広

 出演/細谷佳正 村瀬歩 楠大典 三木眞一郎 山下大輝 花澤香菜 大塚明夫 菅生隆之

 

 ◇19世紀末、ロンドン

 要は21gとされる魂を探し求めていく旅と解釈するのがいいのではないかと個人的には察した。

 おそらく間違っているんだろうけれど、なんとなくそう感じられた。

 屍者はあくまでも一度死んで細胞が生き返った単なる生体であると過程するのであれば、魂を持った屍者はまるで別な生体であり、しかしながらそれを人間として認めることができないというのであれば、これは新たなる人類ということになってしまう。

 う~む、難しいな。

 もっとも、物語はきわめて予定調和に展開していき、やがてワトソンは魂というか言葉を備えた屍者として存在していくことになり、それがつまりはシャーロック・ホームズの語り部になっていくという前日譚で幕を下ろすことになるんだけど、そのように収まりをつけなければ、物語の世界がいたずらに拡散してしまうだけになっちゃうもんね。

 でも、この物語の時代はやっぱり未開なる土地やアジアの奥地かブラック大陸と呼ばれたアフリカ、あるいは南米の未開拓地であって、そういうところへ話が進んでいくのはいかにも20世紀の前夜といった観はあるね。ただ、日本が妙にハリウッド的な大味に包まれてて、なんだかな~とはおもったりもしたかな。

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レヴェナント 蘇えりし者

2018年01月21日 14時29分14秒 | 洋画2015年

 ◇レヴェナント 蘇えりし者(2015年 アメリカ 156分)

 原題/The Revenant

 監督/アレハンドロ・ゴンサレス・イニャリトゥ 音楽/坂本龍一 アルヴァ・ノト

 出演/レオナルド・ディカプリオ トム・ハーディ ドーナル・グリーソン ウィル・ポールター

 

 ◇1823年、極寒のアメリカ北西部

 まったく知らなかったんだけど、この主人公のヒュー・グラスっていう人物は実在したんだそうな。猟師っていうだけじゃなくて、毛皮商人でもあり、探検家でもあったりしたようで、その生涯はアメリカ人の多くが知ってて、これまでにも映画やテレビになったりしてるんだそうな。なるほど、ディカプリオの念願のアカデミー賞はそういう背景も後押しされてるのかっておもったりもしたんだけど、これについては個人的な感想でしかない。

 とはいえ、この作品について、9か月も撮影に懸かったっていうのはうなずけないこともないし、なるほど、大変だっただろうなって気はする。スカイライン狙いっていえばいいのか、一日の中でもごく限られた時間帯にその風光を狙うのは嫌になるくらい時間を消費するし、雪中の撮影はそれだけでも大変だ。そうした労力は各映画賞の受賞で多少は報われたかもしれないけど、でも、大変なんだよこれが。

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12人の優しい日本人

2018年01月20日 13時58分39秒 | 邦画1991~2000年

 ◎12人の優しい日本人(1991年 日本 116分)

 監督/中原俊

 音楽/エリザベータ・ステファンスカ(モーツァルト/ピアノ・ソナタ 15番ハ長調 K545)

 出演/塩見三省 相島一之 上田耕一 二瓶鮫一 中村まり子 大河内浩 梶原善、

    山下容莉枝 村松克己 林美智子 豊川悦司 加藤善博 久保晶 近藤芳正

 

 ◎オマージュかパロディか

 もちろん『十二人の怒れる男』に対するものなんだけど、これはその両方なわけで、三谷幸喜って人はほんとに往年のハリウッド映画が好きなんだな~ってあらためておもったりもする。

 シドニー・ルメットの『十二人の怒れる男』はそりゃもう大した心理劇で、正義と倫理によって論議されて真実に辿り着こうとするきわめて真摯な映画なわけだけれども、そういう名作に対する憧れが濃厚に出てるのはもういうまでもないことで、しかしながら日本で撮ったらこうなっちゃうんだよね~っていう三谷幸喜の微笑みが聴こえてきそうな茶化しもまた色濃く出てきちゃうのも当然の結果だ。

 ただまあ、いかにも「死んじゃえ」と「ジンジャエール」の聞き間違いはむりやりな気もするし、トラックのヘッドライトにはどちらも向いていても気づくだろうし、ピザの大きさについては店のメニューのほかにも食べる人の体格と胃袋と大きさとお腹の減り具合とその日の気分とでずいぶんな差が出てくるだろうし、もちろん喜劇だという前提もあるからそこまで突っ込まなくてもいいし、そんなことをいいだしたら切りがない。

 けど、総じて役者たちは上手に演じてたし、この時代の中原俊はとても好いね。

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夜明けの祈り

2018年01月19日 01時28分15秒 | 洋画2016年

 ☆夜明けの祈り(2016年 フランス、ポーランド 115分)

 原題/Les Innocentes

 監督/アンヌ・フォンテーヌ 音楽/グレゴワール・エッツェル

 出演 ルー・ドゥ・ラージュ アガタ・ブゼク アガタ・クレシャ バンサン・マケーニュ ヨアンナ・クーリグ

 

 ☆1945年12月、ポーランド

 第二次世界大戦末期のソ連軍の大侵攻による略奪と強姦の悲劇は満洲や樺太や北方領土のみならず東ヨーロッパでも凄まじいものがあった。いったいどれだけの人々がかれらの非人道的な暴力に踏み躙られたのか、想像もつかないし、おそらくぼくなんかの想像のとてもおよばないものがあるんだろう。もちろん、樺太や北方領土を見るまでもなく、そうした時代の爪痕は今もなお厳然として残されてる。どうにかならないのかっておもうけれども、この映画はそんな大それた話じゃない。でも、たいせつなことだ。

 実話である。

 女医マドレーヌ・ポーリアックがポーランドの修道院において献身的におこなった医療行為の物語なんだけど、いやまあ、このモデルの女医さんに主役のルー・ドゥ・ラージュはとってもよく似せてる。

 ま、女医さんの方がアイドル的な微笑みだけど、それはさておき、彼女はこの修道女たちの多くを救った英雄的な行為の翌年、不幸にも事故で他界しちゃってる。天に召されたんだね、とかいうおためごかしは一切きかないくらい、この時期の3つの修道院を襲った事件は悲劇的だ。ほんと、ソ連兵ってのはけだものかとおもったりするけど、でも、例外的な人間もいるようで映画の中では修道女を守ろうとした兵もひとりいたっていうことになってる。とはいえ、シスター役のアガタ・ブゼクはいう。

「信仰は24時間の疑問と1分の希望」

 その希望が最後の最後に、孤児たちを修道院にひきとることで修道院でつぎつぎに生まれた赤ん坊もまた育てていくことに支障がなくなるというものなんだけれど、ともあれ、これで院長のように神の御心なのかどうか知らないけど十字架の前におきざりにして凍死させずに済むわけで、なるほど、希望だね。この大団円はせめてもの救いだわ。

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おさな妻

2018年01月18日 00時44分09秒 | 邦画1961~1970年

 ◇おさな妻(1970年 日本 86分)

 監督/臼坂礼次郎 音楽/北村和夫

 出演/関根恵子 新克利 坪内ミキ子 渡辺美佐子

 

 ◇ダイニチ映配配給

 ダイニチ映配は大映と日活の作品を配給するための会社だったんだけど、この会社で配給されたものはきわめて珍しい。だからといってこの作品の内容とはまるで関係ないんだけどね。要するにこの二社が倒産する前夜、一所懸命になって時勢にあらがって組織された会社とおもっていいのかもしれない。この作品は、いわば、そうした時代の象徴的な産物で、想像されるとおりキワモノ的な売り方をされた。それは、あおりの文章を読んでもよくわかる。

 でも、中身はいたってまじめな映画で、関根恵子はとってもまじめな女子高生で、いたいたしいほどに家族に尽くすのだけれども、そんなことは当時の観客も期待していないし、おそらくは大映本体もそんな映画を期待してはいなかったのかもしれない。一所懸命だったのは現場だけだったかもしれない。

 ま、個人的な想像だけど。

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ローマ法王になる日まで

2018年01月17日 13時35分44秒 | 洋画2015年

 ◎ローマ法王になる日まで(2015年 イタリア 113分)

 原題/Chiamatemi Francesco - Il Papa della gente

 監督/ダニエル・ルケッティ 音楽/アルトゥーロ・カルデルス

 出演/メルセデス・モラーン ホセ・アンヘル・エヒド パウラ・バルディーニ アレックス・ブレンデミュール

 

 ◎第266代ローマ教皇フランシスコの半生

 映画の途中で日本へ赴任するしないっていうくだりがあったんだけど、それってどうだったんだろうって興味はあったものの、なんだかいつのまにか語られなくなってた。でも、ん~っておもってたのはそれくらいで、あとはきわめてスムーズに観られた。ただ、もちろん、この物語はたいへんな半生のほんの一部分でしかないんだろうけど、それでもよくまとまってたな~って印象だわ。

 ちょっとだけ戸惑ったのは、若き日の法王つまりイエズス会士ベルゴリオ神父を演じたのがロドリゴ・デ・ラ・セルナで、就任前夜の法王を演じたのがセルヒオ・エルナンデスなんだけど、どうせだったらメイクで老けさせた方がよかったんじゃないかな。だって、かつての恋人で、かつ初老になるまで政治運動をして、最後には逮捕されて睡眠薬を打たれそのまま飛行機から海へ落とされてしまう恩師の娘を演じたムリエル・サンタ・アナはひとりで若いときも老いたときも演じてるわけだから。

 ちょっとだけおもえば、この殺害されるときがあまりにも淡々としてて、この事実を知ったときのフランシスコの絶望感がもう少しほしかった。自分は無力なのだというどうしようもない絶望感が。そのせいで地方の農村に隠遁するわけだから、なおさらほしかった。

 でも、そうした体験が大司教に迎えにこられてその補佐となりスラムの立ち退きを防ぐべく奔走していく起点にもなってることはよくわかるし、やがてバチカンが認めるところとなってローマに呼ばれるのもよくわかった。かれと対極にいるのだといいきる秘書の婆さんもいつまにか崇敬者になってるしね。物語の構成上からスペイン語に誘われるのはよかった。

 というのは、ドイツ・ババリア地方アウグスブルグのペルラハ聖ペトロ巡礼教会(ペルラハ教会)にあるヨアン・ゲオルグ・メルチオ・シュミトナーの『結び目をほどくマリア』と出会うくだりことだ。見えない糸つまり言葉が繋がってるんだね。

 あ、あと、音楽、よかったなあ。

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