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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

細雪(1983)

2008年12月31日 02時40分54秒 | 邦画1981~1990年

 ☆細雪(1983年 日本 140分)

 英題/The Makioka Sisters

 原作/谷崎潤一郎『細雪』

 監督/市川崑 製作/市川崑 田中友幸 脚本/日高真也 市川崑

 台詞校訂/谷崎松子 音楽/大川新之助、渡辺俊幸 琴/山田節子

 撮影/長谷川清 美術/村木忍 衣裳/斉藤育子 衣裳監修/斉藤寛

 方言指導/大原穣子 頭師孝雄 人形制作/桑原実絵

 出演/岸惠子 佐久間良子 吉永小百合 古手川祐子 伊丹十三 石坂浩二

 

 ☆追悼市川崑その21

 この映画を封切で観られたことに、喜びすらおぼえる。

 正に鬼才市川崑の代表作だとおもうんだよね。

 台風とか水害とか事故の因縁とかいった余分な出来事を排除し、斬新なカット割りと原色を浮き立たせる淡い色調だけで、姉妹の日々の静謐と欲望と軋轢と嫉妬と愛情を、浮彫にしてる。

 ちなみに、この作品は、和田夏十が手を入れた最後の作品で、その場面は、佳境、花見の回想に入る直前、小料理屋での石坂浩二と白石加代子の会話らしい。

 書きたいことは山ほどあるけど、まあ、ここでは書かない。

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細雪(1959)

2008年12月30日 00時42分46秒 | 邦画1951~1960年

 ◇細雪(1959年 日本 105分)

 英題/The Makioka Sisters

 原作/谷崎潤一郎『細雪』

 監督/島耕二 脚色/八住利雄

 撮影/小原譲治 美術/柴田篤二 音楽/大森盛太郎

 出演/轟夕起子 京マチ子 山本富士子 叶順子 三宅邦子 川崎敬三 菅原謙二

 

 ◇阪神大水害

 昭和13年7月3日から5日にかけて、神戸市および阪神地区に降り続いた豪雨によって、死者616名を数える大水害がおこった。

 原作でもこの大水害は描かれてて、島耕二はそれをカットすることなく、作中に描いた。

 まあ、それは原作どおりでいいんだけど、谷崎という巨人に終始おされっぱなしの印象はある。

 原作に引き摺られちゃうと、どうしても物語が長いだけに、話だけを追ってる感じになっちゃう。市川崑はそういうのをよくわかっていたんだろう、この大水害には触れてないんだけど、はたして、この四姉妹の物語にどこまで劇的な演出が必要なのかといえば、なんともいいがたい。

 ところで、叶順子なんだけど、若尾文子が病気で降板した事で大役を手にしたそうだ。叶順子に比べると、轟夕起子の扱いが、たしかにこれもまた原作どおりとはいえ、なんだか物悲しくて、ぼくとしては辛かったかな~。

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ミッドナイト・ラン

2008年12月28日 12時10分52秒 | 洋画1981~1990年

 ◇ミッドナイト・ラン(1988年 アメリカ 126分)

 原題/Midnight Run

 製作・監督/マーティン・ブレスト 脚本/ジョージ・ギャロ 撮影/ドナルド・ソーリン

 美術/アンジェロ・グラハム 衣装デザイン/グロリア・グレシャム 音楽/ダニー・エルフマン

 出演/ロバート・デ・ニーロ チャールズ・グローディン ヤフェット・コットー

 

 ◇賞金稼ぎと保険会社経理係の逃避行

 警察を退職するとこういう賞金稼ぎ屋になる方法もあるのか~とちょっとおもったけど、実際はどうなんだろね?

 まあ、淡泊ながらも滑稽的な要素も含んだ味のある旅映画だった。

 デニーロは上手すぎて、見ず嫌いな所があるんだけど、ゆったり楽しめる点において、この作品は、旅映画の持っている長閑さを感じられる。

 別れた妻との絡みがもう少し欲しかったかなって気もするけどね。

 ただ、保険会社の金を横領するってのは現実味はあるんだけど、それを社長が悪党だからって、慈善団体に寄付しちゃうってのがいいところだ。

 そういうことでいえば、冷酷な犯罪者は登場しないっていうコメディの定法はちゃんと守ってるし、まあ、心優しき連中の追走劇としてはきちんとまとまってる。

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逃亡列車

2008年12月24日 01時56分23秒 | 邦画1961~1970年

 ◇逃亡列車(1966年 日本 94分)

 英題/The Last Escape

 原作/渡辺明『逃亡列車』

 監督/江崎実生 脚色/池上金男、宮川一郎

 撮影/横山実 美術/大鶴泰弘、坂口武玄 音楽/山本直純

 出演/石原裕次郎 伊藤雄之助 十朱幸代 中尾彬 山内賢 川津祐介 小松方正

 

 ◇飛べフェニックス!邦画版

 ぼくの父親は学徒動員で関東軍に配属された、らしい。

 で、終戦時、満洲里にいた、らしい。ちょうど演習していたときに終戦だったようで、そもそも父親たちはさぼって西瓜を食べてた、らしい。けど、そんなにのんびりしてられる状況でもなく、ソ連が攻めてくるのに部隊はまるで動かない。で、父親たちはなにをしたかといえば、脱走した、らしい。上官を殴り倒して貨車を強奪して逃げた、らしい。

 父親から直接に聞いたわけではなく、ときおり、父親と知り合いが話をしているのを横で聞き耳を立て、ぼくなりに話を総合してみたところ、そんな感じの情景になった。だから、どこまで正確かわからないけど、まあ、そんなようなことがあったみたいだ。

 当時、父親の実家は大連にあって、その淡路町という大通りで小さな会社を経営してたんだけど、終戦後、大連広場ちかくにある神明町の家へ父親が帰ったときは真夜中で、門をたたいても誰も出てこず、やがて家人の誰かが応対したんだけど、父親は戦死したことになってたらしく、おまえは幽霊かカタリだといわれ、仕方がないので門の前で寝て、ようやく朝になって家の者が起きてきて、

「あれま、ほんものだ」

 ということになったそうだ。

 ま、終戦の頃は、どこもかしこもそんな混乱状態で、だいたい想像はつくんだけど、で、この映画だ。

 満洲国境の町、図們。終戦間際、ソ連軍が南下する一方で、抗日ゲリラの襲撃に見舞われる独立鉄道第30大隊の話なんだけど、いやまあ予想より面白かったものの、裕次郎が語学も銃撃も博打も出来て女にもモテルという設定が、どうにも現実離れして厭味な感じすら受けるのは、たぶん、ぼくがまるで反対の人間だからだろう。

 東亜同文書院を脱走した似非中国人に扮した伊藤雄之助は、好演。

 でもな~主題歌は勘弁してちょうだいな。

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太平洋ひとりぼっち

2008年12月23日 01時53分43秒 | 邦画1961~1970年

 ◎太平洋ひとりぼっち(1963年 日本 96分)

 英題/My Enemy,the Sea/Alone Across the Pacific

 原作/堀江謙一『太平洋ひとりぼっち』

 監督/市川崑 脚色/和田夏十 美術/松山崇 音楽/芥川也寸志 武満徹

 撮影/山崎善弘 撮影協力/サンフランシスコ市、アメリカ合衆国沿岸警備隊

 cast 石原裕次郎 森雅之 田中絹代 浅丘ルリ子 ハナ肇 神山勝 芦屋雁之助

 

 ◎追悼市川崑その20

 1962年5月12日、西宮港。マーメイド号、密出国。長さ5・8メートル、幅2メートル。積載物、水20リットル、米40kg、缶詰200個。8月12日、サンフランシスコ到着。

 サンフランシスコ市長曰く、

「コロンブスもパスポートは省略した」

 この太平洋単独横断航海の記録を映画化したのが、石原裕次郎だ。

 当時としては限界の撮影だったんだろうけど、どうしても太平洋の雄大さと恐ろしさが出にくい。でも、町工場を営む実家での日々はやけにリアルで、なんといっても、裕次郎が健気だ。様式美うんぬんの映画ではなく、世界の中の日本を見つめた作品じゃないかと。

 ちなみに、この映画は、石原プロモーションの第1回作品。

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RONIN

2008年12月22日 11時20分17秒 | 洋画1999年

 ◇RONIN(1999年 アメリカ 122分)

 原題/Ronin

 監督/ジョン・フランケンハイマー 原案/ジェイ・ディー・ザイク

 脚本/ジェイ・ディー・ザイク リチャード・ウェイズ 撮影/ロベール・フレス

 美術/マイケル・Z・ハナン 衣装デザイン/メイ・ルース 音楽/エリア・クミラル

 出演/ロバート・デ・ニーロ ジャン・レノ ナターシャ・マケルホーン ショーン・ビーン

 

 ◇なんで浪人なの?

 題名をつけた意味が見終わってもよくわからん。

 まあ、途中、傷を負ったロバート・デ・ニーロに、謎の老人ミシェル・ロンダールが、日本の浪人の話をするんだけど、それがデ・ニーロたちの見立てになってるのかどうかも、よくわからん。米仏の顔見せ映画とかいったらかわいそうではあるけど、フランス主導なんだろか?だからフレンチ好みの題になったとか?

 車の追撃は、さすがにフランケンハイマーはこだわり充分で、派手ではないけれども、質感は十分にある。フランケンハイマー自身、テストドライバーかなんかの出身なんだよね?

 だから、CGなんか使えるかとばばかり、街中を走り回らせてるわけだけど、迫力あるわ。ケースの中身とか、あんまり関係なくて、謎をひっぱるよりもRONINたちの動きが見せ所なんだろね。

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私は二歳

2008年12月21日 00時39分14秒 | 邦画1961~1970年

 ◇私は二歳(1962年 日本 87分)

 英題/Being Two Isn't Easy

 原作/松田道雄『私は二歳』 製作/永田秀雅 市川崑 監督/市川崑

 脚色/和田夏十 撮影/小林節雄 美術/千田隆 音楽/芥川也寸志

 出演/船越英二 山本富士子 京塚昌子 岸田今日子 浦辺粂子 渡辺美佐子 大辻伺郎

 

 ◇追悼市川崑その19

 なるほど、とおもったのは、森永乳業が協賛していることだ。

 この作品が製作されたのは、昭和37年。

 これって、どういう年かっていうと、森永乳業は昭和30年に森永ヒ素ミルク中毒事件をひきおこして、社会的な信用を失墜させるという大変な状況に追い込まれた。これを一所懸命に挽回して、ついに昭和36年、ロングセラーのクリープを販売して復活する。

 実にたいしたもので、いかに企業が努力したかってことだけど、信頼を回復しようとする企業がいちばんにしなくちゃいけないのは、生産と販売と宣伝っていう三位一体はもちろんだけど、その中でも最終的な宣伝がまずいとせっかくの努力が水の泡になる。

 この広告宣伝のひとつが、当時、大ヒットを飛ばした『私は二歳』の映画化に協賛するってことだったんだろね。

 なるほどな~と、映画とは別なところで感心したわ。

 で、山本富士子と京塚昌子が姉妹役ってのは愛嬌だけれども、赤ん坊(鈴木博雄)の目線にもかかわらず、役者がカメラを見つめていないのがやけに気になった。

 赤ん坊のナレーションが中村メイコというのも、いやまあ当時としてははまり役だったんだろうけど、ちょっと印象が強すぎるきらいがあるんじゃないかって気がするし、途中から嫁を中心にした家族物になってしまって、市川崑らしき冴えがなんだか見られなかったような気がするんだよなあ。

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セブン・イヤーズ・イン・チベット

2008年12月20日 13時57分23秒 | 洋画1996年

 ◎セブン・イヤーズ・イン・チベット(1996年 アメリカ 139分)

 原題/Seven Years in Tibet

 原作/ハインリヒ・ハラー『チベットの七年 ダライ・ラマの宮廷に仕えて』

 監督/ジャン・ジャック・アノー 脚本/ベッキー・ジョンストン

 製作/ジャン・ジャック・アノー、ジョン・エイチ・ウィリアムズ、イエン・スミス

 撮影/ロベール・フレス 美術/アト・ホアン 演奏/ヨー・ヨー・マ

 衣装デザイン/エンリコ・サバッティーニ 音楽/ジョン・ウィリアムス

 出演/ブラッド・ピット デイヴィッド・シューリス ダニー・デンゾンパ B・D・ウォン

 

 ◎1950年10月、チベット侵攻

 動乱のチベットが描かれてるにもかかわらず、なんてまあ、静かさが特徴的な映画なんだろう。

 静謐な雰囲気で情緒的にラサやポタラ宮が語られるんだけど、理詰めかつ感情の起伏の激しさのある映画に慣れていると、ほんのちょっと物足りなさを感じるかもしれない。でもさ、映画鑑賞ってのは、場面を眺めて想像してゆく事なんだな~と、あらためて感じさせられもする。

 それよりも、制作者側の勇気を買いたい。

 そもそも、原作者のハインリヒ・ハラーはヒトラーとも親交のあった登山家で、親衛隊にも入っていたらしい。けど、かれらは「ハラーの経歴と体験の映像化とはちがう」という信念を持ってる。それだけじゃない。この映画を作ったせいで、ジャン・ジャック・アノーは、また出演したせいで、ブラッド・ピットとデヴィッド・シューリスは、無期限に中国への入国は禁止されてるらしい。

 やっぱり、かれらにとってこの映画は、つくらないといけないものだったんだろう。だから、ダライ・ラマの母親役は、現実のダライ・ラマの妹ジェツン・ペマが演じてるし、ジャン・ジャック・アノーは、アルゼンチンをロケ地に選んだにもかかわらず、結局、チベットとネパールでも撮影している。

 肝が据わってるわ。

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雪之丞変化(1963)

2008年12月18日 01時07分57秒 | 邦画1961~1970年

 △雪之丞変化(1963年 日本)

 英題/Revenge of a Kabuki Actor

 原作/三上於菟吉『雪之丞変化』

 監督/市川崑 脚色/伊藤大輔、衣笠貞之助、和田夏十

 撮影/小林節雄 美術/西岡善信 音楽/芥川也寸志、八木正生

 出演/長谷川一夫 山本富士子 若尾文子 中村鴈治郎 市川雷蔵 勝新太郎

 

 △追悼市川崑その18

 もうなんか怨念の映画みたいな感じで、1935~36年にかけて、衣笠貞之助は『雪之丞変化』の三部作をつくった。

 これが『雪之丞変化』の映画における皮切りなんだけど、脚本を書いたのは、伊藤大輔と衣笠貞之助だ。もちろん、主役は若き日の長谷川一夫こと林長二郎。びっくりすることには、長谷川一夫は闇太郎ばかりか母親の役までこなしてる。

 まあ、そういう背景からして、この作品を戦後に撮り直したいって気持ちは、3人とも持ってたんだろう。

 で、ついに結実したわけだけど、本作、衣笠版の俯瞰の冒頭の秀逸さはないんだよね。

 しかも、告白場面で流れる音楽は八つ墓村!

 八木正生を起用してジャズにしたのは、やっぱり市川崑だからだろう。昆さん、ほんとにジャズが好きだね。

 っていうより、衣笠、伊藤、長谷川の3人のライフワークに挑むには、自分なりの色を出したかったから、ジャズにしたんじゃないかっておもうけど、う~ん、音楽面はまあそういうことにしても、絵づくりは凝っているようでいて、まだまだ市川崑らしさは中途半端な感じなんだよな~。

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銭形平次捕物控 鬼火燈篭

2008年12月17日 00時41分58秒 | 邦画1951~1960年

 △銭形平次捕物控 鬼火燈篭(1958年 日本 99分)

 原作/野村胡堂『銭形平次捕物控』

 監督/加戸敏 脚本/小国英雄

 撮影/牧田行正 美術/上里義三 音楽/鈴木静一

 出演/長谷川一夫 香川京子 淡路恵子 岸正子 太田博之 黒川弥太郎 伊達三郎

 

 △世代の差をしみじみと

 ぼくの場合、銭形平次といえば大川橋蔵だ。

 舟木一夫の歌とセットで、三ノ輪の万七の遠藤太津朗も強烈だった。遠藤さんはまあなんというか、橋蔵さんの引き立て役だったけど、あのブルドッグのようなこわもてさと愛嬌が魅力的だった。香川美子のお静もよかったしね。

 だから、どうしても長谷川一夫の銭形平次はしっくりこない。

 でもまあ、団塊の世代以上は長谷川一夫なんだろね。観客だけじゃなくて、舞台のようなセットと芝居で、みんなが揃って長谷川一夫をひきたててる。平次と島帰りの清次の一人二役は十八番なんだろうけど、頭巾を被って女装までという、雪之丞ばりのサービスに、縛り吊るされるという悲愴美まで、いやもうゲップが出るくらいに盛り沢山。

 まあ、フアンのための映画ってことで。

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竹取物語(1987)

2008年12月16日 01時34分33秒 | 邦画1981~1990年

 ◇竹取物語(1987年 日本 121分)

 英題/The Princess from the Moon

 監督/市川崑 脚本/菊島隆三、石上三登志、日高真也、市川崑

 撮影/小林節雄 美術/村木忍 衣裳/川上鈴雄

 衣裳監修/斉藤寛 衣裳デザイン/ワダエミ 特技監督/中野昭慶

 音楽/谷川賢作 主題歌/ピーター・セテラ『STAY WITH ME』

 出演/三船敏郎 若尾文子 沢口靖子 石坂浩二 中井貴一 中村嘉葎雄 岸田今日子

 

 ◇追悼市川崑その17

 どうも昆さん、SFファンタジーが好きな感じだよね。

 これまでにも『火の鳥』やら『つる』やらあったけど、やっぱり映像主体にものを考えると、そうなるんだろか?

 でも、なにも『未知との遭遇』にする必要はどこにもないわけで、月よりの使者は、やっぱり、当時の月世界に生きる者たちを考えて欲しかった。

 星の船についても同じだ。巨匠となってからはお仕着せの作品が多い気がして、なんとなく悲しかったんだけど、どうもそんなことはなかったみたいで、市川崑にとってかぐや姫は念願の企画のひとつだったらしい。

 プロデューサーの田中友幸も十年来の企画だったとか、まあ、宣伝の資料をうのみにすればの話だけどね。

 ただ、衣装だけは目の保養になったかな~。

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レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い

2008年12月11日 01時07分03秒 | 洋画1994年

 ◇レジェンド・オブ・フォール 果てしなき想い(1994年 アメリカ 132分)

 原題/Legend of the Fall

 原作/ジム・ハリソン『Legend of the Fall』

 監督/エドワード・ズウィック 脚本/スーザン・シリディ、ビル・ウィトリフ

 製作/エドワード・ズウィック、ビル・ウィトリフ、マーシャル・ハースコヴィッツ

 撮影/ジョン・トール 美術/リリー・キルヴァート

 衣装デザイン/デボラ・スコット 音楽/ジェームズ・ホーナー

 出演/ブラッド・ピット アンソニー・ホプキンス ジュリア・オーモンド カリーナ・ロンバード

 

 ◇20世紀初頭、モンタナ

 ふと、おもったんだけど、日本の田舎でもこの映画はそのまま成り立つんじゃないかと。

 とある田舎に大地主の家があって、まあ、時代は明治から大正にかけてのあたりで、三人の息子をもった豪農がいたとしよう。

 その末っ子が許嫁をつれて家に来るんだけど、そのとき、長男も次男もそろってその美貌に惑溺しちゃうんだ。で、兄弟三人がいっぺんに日露戦争とかに出征しちゃって、まったく不運なことに三男坊が死んじゃう。当然、許嫁は泣き崩れるんだけど、それを次男が慰めちゃう。ところが、次男は彼女を家に残したまま、海外に行っちゃうんだな。このあたりは次男がヒロイズムに包まれてるんで仕方ない。

 で、しばらくして帰郷すると、村から町へ出た長男は事業で成功して、議員にもなって、許嫁も嫁にしてる。父親だけが村に残ってて、しかも足を悪くして動けず、老い耄れてる。そこへちょっとわけありな女が流れてきて次男とできちゃうんだけど、次男が警察沙汰になったとき、その女が流れ弾で死に、次男は牢に繋がれちゃうんだ。すると、長男の嫁になったはずの許嫁が面会に来て、恋慕の情を告げるんだな。

 けど、次男が拒絶しちゃったもんだから、行き場もなくなった許嫁は自殺しちゃう。なんだか大変な状況になったところへもって、次男がさらに女を撃ち殺した警官に復讐しちゃったもんだから、事はいよいよ大変になるんだけど、これを父親と兄が救うわけだ。で、次男はふたたび海外へ向かうんだけど、ここで大団円。

 あらま、日本に置き換えても十分に兄弟の骨肉の恋愛劇になっちゃうのね。

 ということは、結局のところ、20世紀の初頭という時代は、どこの国でも似たような大家族がいて、社会はなんとなくキナ臭くて混沌としてるってことなのかしら?

 でも、それは同時に、似たような物語もまた作り易いってことなんだよね。

 ま、そんなことはいいけど、アンソニー・パーキンスはやはり好いわ~。ブラッド・ピットはもうすこし野性味があってもいいかなって気がした。ま、そんなことはなにもかも吹き飛ばしちゃうくらい、画面は美しく、このために感情を抑えた演出にしてるって感じだったけどね。

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おとうと(1960)

2008年12月10日 00時11分22秒 | 邦画1951~1960年

 ◇おとうと(1960年 日本 97分)

 英題/The Quick Draw Kid

 原作/幸田文『おとうと』 監督/市川崑 脚色/水木洋子

 撮影/宮川一夫 美術/下河原友雄 音楽/芥川也寸志

 出演/岸惠子 川口浩 田中絹代 江波杏子 岸田今日子 森雅之 伊丹十三 仲谷昇

 

 ◇追悼市川崑その16

 市川崑の岸惠子好きは筋金入りなんじゃないかっておもうくらい、ほんとによく使ってるし、また岸惠子もそれによく応えてる。たぶん彼女の魅力を一番よく知ってたんだろね。ラストカットの看護婦の部屋での仮眠から目覚めるや、蓬髪のまま片付けに飛び出してゆくところは、実に見事だった。

 まあ、それと、この映画を初めて観たのは、たぶん、並木座だったかとおもうんだけど、そのとき、えらく画面がダークで、やけに渋い色合いながら発色がちゃんとしてる印象を受けて、なんだか変な感じの絵だな~とか、大正時代のカラー写真とかあったらこんな感じかな~とか、勝手な感想を抱いてた。

 だけど、実はこの作品は、宮川一夫の発案した「銀残し」の初めての作品だったとかいうことを聞いて、

「なるほどね~」

 とおもったことがある。

 ところで、ずっと気になってることがひとつあって、この映画のロケ地はどこなんだろう?ってことだ。

 ぼくの知ってる運河や桜並木が出てくるんだけど、たぶんまちがってるだろうから誰にもいわない。

 

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インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国

2008年12月04日 10時21分22秒 | 洋画2008年

 ◇インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国(2008年 アメリカ 123分)

 原題/Indiana Jones and the Kingdom of the Crystal Skull

 監督/スティーヴン・スピルバーグ 原案・物語/ジョージ・ルーカス

 物語/ジェフ・ネイサンソン ガイ・ヘンドリクス・ディアス パブロ・ヘルマン ベン・バート

 脚本/ デイヴィッド・コープ

 製作総指揮/ジョージ・ルーカス キャスリーン・ケネディ

 撮影/ヤヌス・カミンスキー 衣裳デザイン/メアリー・ゾフレス

 音楽/ジョン・ウィリアムス

 出演/ハリソン・フォード カレン・アレン ケイト・ブランシェット シャイア・ラブーフ

 

 ◇1957年、ネバダ州

 原爆実験はなしだろ!

 黒澤明を尊敬する2人が撮ったとはおもえないような設定じゃんか。

 良識からすれば、ドル箱の日本で公開する以上、

「原爆をコミカルに扱えば顔を顰める人達がいる」

 という配慮をするべきだったんじゃないかと。

 そんなことしてるから前評判は高かったのに、さんざん叩かれて、つまんなくなったものをして、

「nuke the fridge」(核の冷蔵庫)

 とか言われるようになっちゃうんだ。ただ、ずっと見続けてきたシリーズの場合、どうしても観なくちゃいけないみたいな感情に支配され、観ちゃう。これが困ったもので、ほかにもそういうシリーズはいくつかある。ま、そういうこともあってシリーズ化されるんだろうけど、それにしても、懐かしのカレン・アレンだ。

 ちなみに、この作品が封切られた頃、水晶髑髏はオーパーツなんかじゃなく、ついこのあいだっていえるような時代に、大量生産されたものらしい。だからって、薄利多売された水晶髑髏の正体が見えちゃうと、なんだか、この作品がかわいそうにおもえてきちゃうから不思議だ。

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ぼんち

2008年12月03日 18時31分38秒 | 邦画1951~1960年

 ◎ぼんち(1960年 日本 104分)

 英題/The Son

 原作/山崎豊子『ぼんち』 監督/市川崑 脚色/和田夏十、市川崑

 撮影/宮川一夫 美術/西岡善信 音楽/芥川也寸志

 出演/市川雷蔵 若尾文子 京マチ子 中村玉緒 草笛光子 山田五十鈴 越路吹雪

 

 ◎追悼市川崑その15

 ぼんちいうたらあんなもんや、と、昔を知っている人ならいうだろう。

 放蕩を尽くす男の哀れを描かせたら、ほんと、市川崑はうまい。

 けど、和田夏十はこのときどういう気持ちで書いてたんだろね。そういうの、なんとなく興味があったりするんだけど、ま、余計なお世話か。芥川也寸志の音楽は、うん、大変なもので、ほかのところに書いてるから、ここでは書かない。

 それもそうだけど、二代目中村鴈治郎、ほんまによろしいな。

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