Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

ブレス しあわせの呼吸

2022年09月30日 00時00分15秒 | 洋画2017年

 ◎ブレス しあわせの呼吸(Breathe)

 

 28歳でポリオを患い、呼吸器を2分はずすと死に至るかもしれないっていう患者を外へ引っ張り出して生活させ、さらにポリオ患者では最長の寿命を獲得するまでにいたるっていうのは凄いことで、それがこの製作ジョナサン・カヴェンディッシュの父親だっていうんだから、さらに驚いた。へ~って感じだが、この父親といろんなところに出かけた息子がそうなのね、とも。

 アンドリュー・ガーフィールドはこのどうしようもなく陰鬱になりそうな世界を大仰な朗らかさで演じ切ってるが、うん、いいんじゃないかな。奥さんのクレア・フォイも悪くなかった。それにしても、アンディ・サーキスはもともと役者で、いまもそうだが、これが初監督らしい。手慣れた感じに見えるけどね。

コメント

ミュンヘン

2022年09月29日 01時55分50秒 | 洋画2005年

 ◇ミュンヘン(Munich)

 

 なんといっても、キャストが豪華だ。スピルバーグのおかげなのかなっておもってしまいそうになるほど贅沢なキャスティング。エリック・バナ、ダニエル・クレイグ、ジェフリー・ラッシュ、マチュー・アマルリック、モーリッツ・ブライプトロイ、マイケル・ロンズデール、そしてなんといっても陰毛までさらけだした死体の演技までこなしたマリ=ジョゼ・クローズ、いやあ、堪能したわ。

 ただ、長い。

 パレスチナの過激派集団『黒い九月』のミュンヘン五輪の襲撃、つまり宿舎の中でふたり殺され、人質にされてヘリコプターに乗せられた9人がすべて殺害されるっていう残酷さに対する復讐をモサドが挑んでいくものの、やがて殺し殺されることに疑問を持ち始めるっていう筋立てはよくわかるんだけど、長すぎてね~。モサドの「神の怒り作戦」を担当するのは5人の専門職なんだけど、ときどきフラッシュバックで表されるミュンヘンの襲撃で殺されるのは11人、黒い九月の襲撃メンバーも11人と、このあたり妙にこんがらかるわ。

コメント

ザ・ミスト

2022年09月28日 01時46分29秒 | 洋画2017年

 ◇ザ・ミスト(Dans la brume)

 

 フランス映画とはおもえないようなパニック的な発想なんだけど、まあこうした不条理な世界ってのはやっぱりフランス的なのかな~ともおもっちゃった。ただ、発想として小松左京の『首都消失』とどうちがうんだ?ってのはずっと頭に浮かんでた。

 とはいえ、免疫不全症候群の娘をかつてのテレビドラマのジョン・トラボルタの部屋みたいな感じにして、まあ、円柱を寝かせたようなシェルターに住まわせてるんだけど、謎の霧がはびこる中、この娘を2階においたまま最上階に逃げるっていう設定が上手に活かされてる。

 ただまあ、そりゃおおむね想像はつくんだけど、メトロから砂嵐のような霧があがってきたときにつぎつぎに人が倒れて死んでいくところが撮られてないとね。しばらくしてアパートの住人や町の通りで倒れてる人達見つけて、あ、やっぱりねっておもうわけだけど、ふたりとも最初から霧を恐れてるのはちょっとね。普段だったら霧なんてふつうに吸い込んじゃうじゃんね。

 ぼくとしてはオルガ・キュリレンコがなんとなくお気に入りなもんだから、ああ、もうこんなに大きな娘を持っている母親役をやるようになったのかあっていう妙な感慨もあったんだが。しかし、そうか、この霧の中でも生きている犬がいるのはなんでなんだっておもってたら、なるほど、あの犬も免疫不全症候群だったってことね。しかし、それで娘やその初恋の相手が霧の中だけで生き残れるのか、それとも『グラデュエータ―』みたいなイメージシーンのようにふつうの外に出られるようになるのかはわからないけど、父親がシェルターに入っちゃってつまらないオチからすると、どうもそうじゃないんだねってことはなんとなく想像がつくわね。

コメント

燃ゆる女の肖像

2022年09月27日 01時32分51秒 | 洋画2019年

 ◎燃ゆる女の肖像(Portrait de la jeune fille en feu)

 

 なんてまあ綺麗な絵柄だこと。

 ビバルディの『四季』の『夏』がとっても効果的で、最後の場面、コンサートホールでノエミ・メルランがアデル・エネルを最後に観たという場面だけれども、そこでこの音楽がクレジットタイトルと共に掛かる。実に効果的でいいね。それにしてもノエミ・メルランのリスのような眼と小さな顔といったらないし、アデル・エネルの腋毛のもうもうとした中に媚薬を塗るところは凄味すらあるね。

 でもまあ、予算が乏しいのか、場面と構図が決まり切ったものになってるのが苦しい。ただその分、とっても落ち着いた静かさが醸されてはいるんだけどね。とはいえ、予告編を観たときの衝撃の方が本編よりも優ってて、観る前にこの映画が凄いんじゃないかって期待しちゃった分、ちょいと気が殺がれた。

コメント

ジーサンズ はじめての強盗

2022年09月26日 23時10分47秒 | 洋画2017年

 ◇ジーサンズ はじめての強盗(Going in Style)

 

 これといって目新しいものはなにもない『お達者コメディ シルバー・ギャング』のリメイク。モーガン・フリーマン、マイケル・ケイン、アラン・アーキンのモーニング常連仲間が銀行強盗をしでかす話。かれらがテレビで観てるのはアル・パチーノが銀行強盗をやらかす『狼たちの午後』で、なるほどそのオマージュだったのね。

 

コメント

マント―

2022年09月25日 21時44分13秒 | 洋画2018年

 ◎マント―(Manto)

 

 ナンディタ・ダース監督によるサーダット・ハサン・マントーの伝記映画なんだけど、かなり出来がいい。ぼくはそう感じた。もちろん、ぼくはヒンディー語もウルドゥー語も英語もわからないから、この脚本家にして作家の世界をよく理解できるわけじゃないんだけど、でも、1948年のインド・パキスタン分離独立の情景がかなり深く迫ってくるような気はした。

 マントーを演じたナワーズッディーン・シッディーキーも好かったしね。

コメント

影のない世界

2022年09月24日 20時31分41秒 | 洋画2011年

 ◇影のない世界(World without Shadow)

 

 クー・エンヨウ監督作品。マレーシアのクランタン州で影絵人形師を追いかけたドキュメンタリーなんだけど、かつては140人くらいいた人形師が15人ほどに減ってるらしい。現状は厳しいよね。影絵はワヤン・クリッっていうそうだけど、まあ、都市化と文化の発展がある以上、ひとつの到達した世界に到ってる影絵はこれ以上の発展は見込めないわけで、こういう伝統文化が衰退するのはもはや止められないんだよなあ。

コメント

私は確信する

2022年09月23日 00時06分38秒 | 洋画2018年

 ◇私は確信する(Une intime conviction)

 

 姉と双子の弟という子供を残して失踪した妻を殺したとして逮捕されたもののひとまず無罪になった大学教授ジャック・ヴィギエに対して検察が控訴したこのジャック・ヴィギエ事件は、フランスではかなり話題になったらしいんだけど、結局のところ、妻の死体も見つからず、愛人が関与しててなんらかの謎を抱えてるってことしかわからないまま現在に至ってるみたいだ。でも、年間4万人いる失踪事件で1万人は居所がわからないってのが現状らしく、この事件もそうしたもののひとつなんだけど、妙に騒がれちゃったんだね。

 その教授を演じてるのがローラン・リュカ、弁護士がオリヴィエ・グルメ、娘アルマンド・ブーランジェが家庭教師をしている子の母親がマリナ・フォイスなんだけど、彼女だけは創作みたいで、この設定がいまひとつよくない。最初の裁判で陪審員をしたことで、無罪を信じて弁護士を雇い、証拠集めに奔走するということになってるんだけど、シェフの仕事をなかば犠牲にしたり、恋人や親子の関係までぎくしゃくさせて、なんでそこまで情熱をかたむけるのか、そこのところがちゃんと描けてないんだよね。

 アントワーヌ・ランボーの演出も点描が多くて、テンポはいいんだけど、肝心のものはなんなのかっていう焦点がうまく定まってこない。

コメント

私は、マリア・カラス

2022年09月22日 01時56分22秒 | 洋画2017年

 ◇私は、マリア・カラス(Maria by Callas)

 

 ぼくは感受性が欠如しているのかもしれないんだけど、この未公開だという映像とインタビューとニュースと歌を編集されたものを観終わっても、これといった感慨がない。なるほど、こういう人生を送った人なのねっていう渇いた感想しかなく、才能に恵まれた女性だったんだなあとか、恋愛はいまひとつ成就させられなかったんだね、もうすこし歌を歌い続けることができたらよかったのにね、とかいうありきたりなことしか思い浮かばないからだ。

 たぶん、マリア・カラスの生きた時代とぼくの時代とが微妙にずれてるからなんだろうなあ。

コメント

アリー スター誕生

2022年09月21日 23時19分37秒 | 洋画2018年

 ◇アリー スター誕生(A Star Is Born)

 

 4度目のリメイクなんだけど、年代ごとに「これだろ」っていう作品は異なる。

 もちろん、それでいい。

 でも、なんていうか、まるで似てないとおもってたんだけど、レディー・ガガとバーブラ・ストライサンドがなんか似てるんじゃないか?っておもえちゃったりするのが、なんともね~。ま、ふたりとも歌唱力は抜群だしね。けど、コンサートの大きさっていうか人海戦術にはバーブラ版が凄いな~。

コメント

ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を

2022年09月20日 22時16分47秒 | 洋画2018年

 ◇ブラ!ブラ!ブラ! 胸いっぱいの愛を(The Bra)

 

 アゼルバイジャンが、すごくいいロケーション。

 駅近く、線路と道路の三角地帯に建っているホテルはロケセットかもしれないけど、もしもほんとにあるなら泊まりたいくらいの情趣だ。ま、汚くて泊まれないかもしれないけど。機関車の運転手を定年退職したミキ・マノイロヴィッチは、自分のディーゼル機関車にひっかかったブラジャーの持ち主を探すためにこのホテルに泊まるんだけど、いや、小さなベランダがなんともいい。

 で、ホテルの前庭に犬小屋があってそこに少年が住んでるんだが、こいつが電車が通過するのを報せるだけじゃなく、途中からブラジャーの主かもしれない女たちを紹介していく役目も担い、さらにミキ・マノイロヴィッチが変態の痴漢におもわれて暴行され、線路に鎖でつながれて殺されかけるときも助けようとがんばる。あ、やっぱり線路は右側通行なのか。

 破棄されるはずの貨車に住んで次なる機関士になったドニ・ラヴァンがいいね。わけのわからん機械の音をバックにラッパで演奏するのがいいね。これに手旗信号で答える信号所の職員チュルパン・ハマートヴァの役回りが最後の最後になってようやくわかるんだけど、ちょっとな~。

 それにしても、谷に突き出した山の先に村にキ・マノイロヴィッチは棲んでる設定なんだけど、これがいい。石造りで、山小屋みたいですごいな。しかしもうすこし良い話かとおもったんだがな~。ベリーダンスの踊り子まで出してくるんならもっと高級なブラジャーの方がよかったんじゃないかな。ま、チュルパン・ハマートヴァのパンティが干されててその横にかけて洗濯ピンチで留めてやるのはおもったとおりの展開だったけどね。

コメント

チリの闘い

2022年09月19日 21時45分45秒 | 洋画1971~1980年

 △チリの闘い(La batalla de Chile, la lucha de un pueblo sin armas)

 第一部『ブルジョワジーの叛乱』(La insurrección de la burguesía、1975年)

 第二部『クーデター』(El golpe de estado、1976年)

 第三部『民衆の力』(El poder popular、1979年)

 

 1973年に、サルバドール・アジェンデ大統領の社会主義政権が大きく揺らいだ。アメリカの支援を受けた軍部によるクーデターが勃発したからで、この監督のパトリシオ・グスマンも逮捕監禁されてる。まあ、かれの場合は、15日間の監禁のあとで亡命に成功しているし、本作の16ミリフィルムも無事だったからこうして観ることができるんだけど、でもなあ、長い。主張も強すぎ。がんがん切ってテンポをよくして、もうすこし情緒的にしてくれればなあ。

 

 

コメント

フジコ・ヘミングの時間

2022年09月18日 15時52分22秒 | 邦画2018年

 ◇フジコ・ヘミングの時間

 

 ピアノもわからず、もちろん弾けないぼくが、なにをいったところで仕方がないし、そもそも、大月ウルフが弟だってことすら知らなかった。だから、観ていて、ピアノがすんごい上手いなってのはわかるけど、これが天才なんだあ~っていう感慨は持てない。ぼくが素人すぎるからだ。

 でも、気さくな、飾らない人柄ってのもわかるし、ちょっと独特な雰囲気を醸してるのもわかる。かなり大雑把で、独自な生き方をしているんだろうってのもわかるし、ピアノを弾くタッチを観てると、もはや上手に弾こうっていうより、自分の意志とは関係なく指が直感的に鍵盤をたたいて音楽を奏でてるんだなっていう感じはする。もしかしたら、こういう人が、日常のすべてもふくめて天才っていわれる人間のかたちなのかな?

コメント

L.A.コンフィデンシャル

2022年09月17日 00時43分06秒 | 洋画1997年

 ◎L.A.コンフィデンシャル(L.A.Confidential)

 

 カーティス・ハンソンの監督作品の中では群を抜いておもしろいとおもっちゃうのは僕だけだろうか?

 ケビン・スペイシー、ラッセル・クロウ、ガイ・ピアーズ、キム・ベイシンガー、ジェームズ・クロムウェル、ダニー・デビート、デビッド・ストラザーン、ロン・リフキンと渋い連中をよくもここまでそろえたもんだっていうくらい渋すぎるキャスティングにも感心したし、なんといってもジェリー・ゴールドスミスの音楽がよかった。

 なんだか、ふとした拍子に奇蹟が起こっちゃったっていう感じだ。

 女優のヴェロニカ・レイクに似せて整形した娼婦として登場するキム・ベイシンガーの綺麗なことといったらないし、この相手役になった、母親が父親に虐殺されるのを目撃したという幼い頃の忌まわしい記憶から正義感の塊になってしまったラッセル・クロウとの恋愛劇が好い感じにからんでるわ。

 ちょっと驚いちゃうのが、この作品はジェームズ・エルロイのL.A.シリーズの第3部なんだけど、第1部が『ブラック・ダリア』だってことだ。ええっ、そうなの!?って感じで、映画を観比べるとまるでちがってて、とてものこと一連のシリーズの一作ずつとはおもえない。

コメント

blank13

2022年09月16日 22時57分40秒 | 邦画2018年

 ◇blank13

 

 斎藤工の監督出演作品なんだね。借金まみれで家族をないがしろにしてもいっこうに平気っていう不器用な親父リリー・フランキーの息子ふたりが高橋一生と斎藤工なわけだけれども、渇いた死と潤った葬儀の後の事実という対比は冒頭から見えているわけだからそれはさておき、全体に雰囲気は悪くはないね。静かな死と生の境界があるんだなっておもえるかな。ま、そんなところで、役者たちも想像を超えるものではなく、すべてが予想される中でこじんまりとまとまってる気がするね。

コメント