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☆=☆☆☆☆☆
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△=☆☆
▽=☆

江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者

2009年06月30日 19時33分52秒 | 邦画1971~1980年

 ◇江戸川乱歩猟奇館 屋根裏の散歩者(1976年 日本 76分)

 監督/田中登 音楽/蓼科二郎

 出演/宮下順子 渡辺とく子 中島葵 秋津令子 石橋蓮司 八代康二 長弘

 

 ◇誰しもが一度は撮りたい原作

「たぶんそれは一種の精神病ででもあったのでしょう」

 原作からはかなり逸脱した観はあるけど、田中登なりの耽美さで乱歩の世界を描こうとすればこうなるんだっていう見本のような作品になってんだろうね。

 乱歩は周期的に映像化されるけど、多くの場合、その出来栄えにがっかりする。ほんとにどうしようもない作品が羅列されちゃうんだけど、そうした中でこの作品はそれなりの異彩を放ってた。まあ実際、ピエロが登場するのもこれだけのような気もするしね。随所に感じるもどかしさっていうか。屋根裏という理想的な世界の美しさ、ピエロとのまぐあいの厭らしさ、人間椅子の官能さなどは滑稽さはありながらも幻想的な美しさがなければいけないのに低予算のせいか時代のせいかもどかしいんだな、なんとなく。

 ところで、ぼくも乱歩には夢中になった。中学生の頃だった。講談社の金文字箱入り上製本の全集が毎月発刊されるのが楽しみで、かならず買い求め、ひたすら読み耽ったもんだ。

『屋根裏の散歩者』もそうした中で読んだ。いかにも乱歩らしい独白調の作品で、その特徴的な文章に勝る映像はいまだに出会ってない気がするんだよね。

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39 刑法第三十九条

2009年06月28日 15時14分53秒 | 邦画1991~2000年

 ◇39 刑法第三十九条(1999年 日本 133分)

 監督/森田芳光 音楽/佐藤俊彦

 出演/鈴木京香 堤真一 岸部一徳 吉田日出子 山本未來 勝村政信 國村隼 江守徹

 

 ◇リアルさに拘ったの?

 とはあんまりおもえないんだけどな~。

 実際に「刑法第39条」を主題にしていて、そこにおける問題について提起しようとしているのであれば、もうすこし現実味が欲しかったような気がしないでもない。

 たしかに、筋運びは面白い。でも、堤真一がひとり芝居の役者をしているという背景のせいもあってか、どうしようもなく大仰な面が多々見られるし、かとおもえば、他の出演者たちは逆にもごもごと台詞を濁していて、粘着性の高い表情と動作で演じようとしているように感じられる。このギャップはどういうことなんだろね。

 演出とすれば、うん、わからなくはないけど、主題が主題だけに、もっと地味な性質の犯人像を持ってきて、徹底したリアリズムに訴えるべきだったんじゃないかっておもうんだけど、どうなんだろね?

 だって、ヒロインの鈴木京香の眼鏡もなんだかあざとさばかりが鼻についてくるような印象だったし。

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歓びの毒牙

2009年06月19日 16時55分46秒 | 洋画1961~1970年

 ◇歓びの毒牙(1969年 イタリア 98分)

 原題/L'uccello dalle piume di cristallo

 監督・脚本/ダリオ・アルジェント 音楽/エンニオ・モリコーネ

 出演/トニー・ムサンテ スージー・ケンドール マリオ・アドルフ エヴァ・レンツィ

 

 ◇なにやらデ・パルマ

 殺される女優の白い衣装のせいか、殺しのドレスを思い出しそうな雰囲気が少しだけあったかな。

 といっても、カメラワークはさほど見るべきものはなく、ポジションも一か所だけだし、設定も逆なんだけどね。

 でも、なんでかうまく説明できないんだけど、匂いが同じなんだよね。金髪の美女が連続して殺されて、四人目が眼の前で刺されるというトリックはなんともデ・パルマ的で、ていうより、逆に、デ・パルマがダリオ・アルジェントから学んでるっていいかえた方が正解なんだろね、たぶん。

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ほたるの星

2009年06月07日 02時43分10秒 | 邦画2003年

 ◇ほたるの星(2003年 日本 101分)

 監督・脚本/菅原浩志 音楽/中西長谷雄

 出演/小澤征悦 菅谷梨沙子 山本未來 絵沢萠子 役所広司 余貴美子 佐藤允

 

 ◇昔の日活児童映画みたい

 両親的な映画だったわ。

 筋立ても演技も絵作りもどことなく古色蒼然とした印象なのはなんでなんだろう?

 世界観なんだろうか、脚本なんだろうか、作り手の姿勢なんだろうか?

 ま、それはそれで調和は保たれてるからいいんだろうけど、なんていうか、ちばてつやの『蛍水名子』をおもいだした。

 それと「星」って地球の事なんだね。こういう解釈というか意味づけが古色蒼然とした印象を漂わせてるのかもしれないね。

 ところで、ほたるって霊を呼ぶっていうんだけど、ほんとうにそうなんだろうか?

 会いたい人に会えるなら、もう、ほたるをつかまえておもいきり掌合わせて頼み込むんだけどな~。

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自殺マニュアル

2009年06月05日 01時48分21秒 | 邦画2003年

 △自殺マニュアル(2003年 日本 83分)

 監督/福谷修 音楽/西村麻聡

 出演/森下千里 中村優子 安藤希 三坂知絵子 藤真美穂 祖父江唯 英由佳 高橋里奈

 

 △安易に作った感がありあり

 期待していなかった分救われたというのが偽らざる感想だわ。

 筋立てらしいのは自殺を本気で志願する者には黒いディスクが送られてくるという部分だけで、後はかろうじて音楽が聴けるという感じで非常に後味が悪い。というくらいしか感想を書けないというのはなんとも悲しい。

 ちなみに、出演している森下千里や中村優子や安藤希はそれなりに活躍してるのにね。

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伊藤の話

2009年06月04日 11時13分04秒 | 邦画2007年

 △伊藤の話(2007年 日本 74分)

 監督/秋原正俊 音楽/スティーヴ エトウ

 出演/温水洋一 田丸麻紀 加藤夏希 烏丸せつこ 江口のりこ 十日市秀悦

 

 △小泉八雲『伊藤則資の話』

 なんというか、音楽だけ出来が良いとは…というのが素朴な感想かしらね。

 原作がしっかりしているにも関らず、どうしてここまで素人臭い映画になるのか不思議でならないんだよなあ。平面的でべったりした絵作りと照明。単調な筋運び。役者もこれがまあ烏丸せつこの他は演技にはなってないような印象だし。

 あ、これはあくまでも僕だけの感想ね、ほかの役者さんを悪くいうつもりはないんだ。けどさ、なんとなく悲しいじゃない。温水洋一の名前に頼っておんぶにだっこみたいな印象を受けちゃうのは。

 

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旅の贈りもの 0:00発

2009年06月03日 11時51分26秒 | 邦画2006年

 ◇旅の贈りもの 0:00発(2006年 日本 109分)

 監督/原田昌樹 音楽/浅倉大介

 出演/櫻井淳子 多岐川華子 大滝秀治 黒坂真美 石丸謙二郎 細川俊之 樫山文枝

 

 ◇懐かしい瑞々しさ

 懐かしの自主製作映画が35㎜にされた感じとでもいえばいいんだろうか。

 脚本も音楽も好感が持てるし、使用されている展望車は良なんだけど、なんだろね、全体的に印象が淡い気がするんだよね。まあ、なんといえばいいのかわからないんだけど、年季の入った職人映画ではないなって感じかしらね。

 あ、ぼくはこの映画は嫌いじゃないよ。ていうか、僕好みの内容と作りであることはまちがいないんだよね。

 でも、この映画に誰がお金を出したのかよくわからなくて、ほんと、よく成立したな~って気はする。だって、どうしたところで、これが大ヒットするのは難しいもんね。良質な作品をめざそうという気持ちもわかるんだけどね。

 あ、何遍もいうけど、ぼくはこの映画は僕好みの筋立てと主題なんだよね。

 いやまじな話、原田昌樹っていう監督はたぶんとっても優しい人だったんだろうなっておもうわ。そういう優しさはにじみ出てる気がするよ。

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イーオン・フラックス

2009年06月02日 14時15分10秒 | 洋画2005年

 ◇イーオン・フラックス(2005年 アメリカ 93分)

 原題/Æon Flux

 監督/カリン・クサマ 音楽/グレーム・レヴェル

 出演/シャーリーズ・セロン アメリア・ワーナー ソフィー・オコネドー

 

 ◇シャーリーズ・セロンのためにある作品

 いやもちろん『モンスター』とかあるんだけど、やっぱり彼女はどこまでも美しくあってほしい。

 まあ、彼女の場合、なんとなく自分の美しさを仇におもってるような印象があったりして、その美貌を誇るような作品には出ないようにしているように見えたりもするんだけど、この作品だけは違うんだよね。どこまでも綺麗だ。

 ただまあ、原作はどうなってるのか知らないんだけど、2011年に致死性のウイルスが突如発生、人類の99%が死滅、ワクチンで生き残った500万人の地球の話で、妹が自然妊娠故に殺害されたり、主人公が君主&不妊研究者の妻で自然妊娠遺伝子を抱えていた事でDNA破壊を命ぜられながらもクローン化したために前世の記憶が蘇えちゃったから暗殺できないとかいった筋立てはなんとも解り辛い。

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ギミー・ヘブン

2009年06月01日 12時09分38秒 | 邦画2004年

 ◇ギミー・ヘブン(2004年 日本 121分)

 監督/松浦徹 音楽/nido 安部潤

 出演/宮崎あおい 石田ゆり子 小島聖 北川えり 江口洋介 安藤政信 松田龍平

 

 ◇ガーベラの雨は秀逸

 共感覚という感覚を主題にした目の付け所は、良。

 絵と言葉と文字と音楽が混然となる世界は興味深いけど、すこしばかりPCに流れる映画内撮影のカメラ位置は不自然だし、なにより殺害の理由が独りよがりで曖昧すぎる気がするんだよなあ。

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