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☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

デビル

2024年12月22日 11時54分35秒 | 洋画2011年

 ◎デビル(Devil)

 

 おもしろかった。原案がナイト・シャマランだそうで、なるほど、エレベーターに罪を犯した5人の男女が乗り込んでて、実はその中に姿を変えた悪魔がいて、同乗してる連中をつぎつぎに斬殺していくっていう筋立てはそれだけでも充分におもしろいし、エレベーターのあるビルの上から自殺者が出ることでそれが悪魔を呼び寄せる儀式になってるっていう出だしもまたいい。

 この自殺者が実は他殺なんじゃないかって直感する刑事クリス・メッシーナもまた因縁めいてて、5年前に奥さんと子どもをひき逃げされてて、その犯人が実はエレベーターに乗ってるってのもいい。そう、ひき逃げが罪で、その贖罪をさせられるために悪魔に呼ばれたっていう感じになってるんだね。信心深い警備員ジェイコブ・バルカスが監視カメラからすべての出来事を見守ってて、おばあちゃんが言ったという「この世に悪魔がいるんなら、天使もいるんだから、罪を犯した者がそれを認めて改心しようとするなら天使はかならず手をさしのべる」っていうのは、うん、納得できた。

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ヘルプ 心がつなぐストーリー

2023年11月24日 22時56分35秒 | 洋画2011年

 ☆ヘルプ 心がつなぐストーリー(The Help)

 

 観てるうちに『ミシシッピー・バーニング』をおもいだしたけど、1960年当時の黒人差別問題を新卒の女性新聞記者の視点から描くっていうのもありかなっておもった。

 ただ、これはエマ・ストーンの物語っていうより彼女は狂言回しで、主人公は黒人メイドのヴィオラ・デイヴィスだったり、オクタヴィア・スペンサーだったりする。エマ・ストーンについては黒人メイドのシシリー・タイソンに育てられたのにその伏線が軽くて物語がかなり進んでから明かされるものだから、最初から黒人問題に理解があるように見える。この筋立ては、ちょっとどうかなあ。導入がちがうんだなあ。博愛な子ってのはすぐわかるようになってんだけどね。

 差別しているのに意識が高いとおもっているブライス・ダラス・ハワード一派に対して、ちょっとピントのはずれたことから仲間はずれになってるジェシカ・チャステインの存在は貴重で、たいがい世の中ってのはこういうものなんだなっておもわせるわ。とにかく、うわべをつくろうことの愚かさの話になってるけどね。

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ビューティフル・レターズ 綴られた言葉

2022年12月28日 12時49分33秒 | 洋画2011年

 ◎ビューティフル・レターズ 綴られた言葉(The Letter Writer)

 

 クリスチャン・ヴィッサとかいう監督なんだけど、こんな名前あるんだあ。ユタ州で活動してる人のようで、主役のバーニー・ダイアモンドっていう爺ちゃんに捧げられてるし、クレジットのところでまた葬儀の画像が出てるってことは撮影の途中で亡くなっちゃったってことなんだろうか?

 ただまあ、主役のオグデン・ハイスクールに通って、ブロポっていう町の小さな会場でライブをしてるアリー・アンダーウッドって子なんだが、なんだか母親の大事なお金を盗んだことにさして抵抗感がないように演出されてるのがちょっとね。

 なんにしても、このふたりの主役もさることながら、出演者の全員が基本的に善良な人たちってことと、どうにも演技が素人くさいってことで、いったい、この映画はなんなんだ?

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ハングリー・ラビット

2022年10月24日 22時40分11秒 | 洋画2011年

 ◇ハングリー・ラビット(Seeking Justice)

 

 代理殺人ってのは使い古された観はあるけど、巻き込まれ型のサスペンスとしては定型のひとつだね。でも、こういう標的を交換するときは交換するメリットがあるからで、このニコラス・ケイジの場合、ジャニュアリー・ジョーンズが暴行された復讐のお返しにしてはちょっと重い。難題をもちかけてくるガイ・ピアースは役によく嵌まってた。

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フェイシズ

2022年10月15日 01時48分49秒 | 洋画2011年

 ◇フェイシズ(Faces in the Crowd)

 

 ミラ・ジョヴォヴィッチは製作総指揮も兼ねてるんだけど、そうか、めざめると病室っていうパターンが好きなのかっておもわせる展開だったけど、それはさておき、相貌失認、別名失顔症は映画の題材としてはよくわかる。側頭葉の損傷で顔が認識できないってのはなかなか興味深い。でも、顔が判別できなくても人間ってやつはよく出来てて、後ろ姿でも遠くでも声だけでも雰囲気だけでも見分けはつくけどね。それがつかないって設定はちょっと苦しい。でも、苦しいからこそネクタイの結び方だの、血の髭だのがおもいつくわけで、ま、こんなもんかな。

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影のない世界

2022年09月24日 20時31分41秒 | 洋画2011年

 ◇影のない世界(World without Shadow)

 

 クー・エンヨウ監督作品。マレーシアのクランタン州で影絵人形師を追いかけたドキュメンタリーなんだけど、かつては140人くらいいた人形師が15人ほどに減ってるらしい。現状は厳しいよね。影絵はワヤン・クリッっていうそうだけど、まあ、都市化と文化の発展がある以上、ひとつの到達した世界に到ってる影絵はこれ以上の発展は見込めないわけで、こういう伝統文化が衰退するのはもはや止められないんだよなあ。

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世界侵略 ロサンゼルス決戦

2022年07月01日 20時58分20秒 | 洋画2011年

 ◇世界侵略 ロサンゼルス決戦(Battle : Los Angeles)

 

 いや、ほんと、原題どおりで、エイリアンかどうかはもはや問題ではなく、いきなり、見知らぬ異人がロサンゼルスを強襲してきたから海兵隊よ頑張ってくれっていう内容でしかない。

 とはいえ、まあ、アーロン・エッカートは健闘してるし、お言葉ですがエッカート2等軍曹、生き残ったのは美人だからではありませんっていう気の利いた台詞を吐くミシェル・ロドリゲスも頑張ってた。

 民間人と負傷兵を乗せたヘリがいきなり現れた敵機に撃墜されたあと、飛び込んだ建物に死体を見つけたとき、ハリウッドではお決まりの『子供には死体を見せないで。早く片付けて』というのが出てくる。現実味があるかどうかではなく、そういう決まりなのだ。これは良いことだとおもうんだな。

 しかし、瓦礫中で知り合う女医ブリジット・モイナハンよりヘリで爆死した女兵士の方が可憐な悲壮感があったかなあ。

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シャトーブリアンからの手紙

2022年06月20日 00時00分39秒 | 洋画2011年

 ◇シャトーブリアンからの手紙(La mer a l'aube)

 

 意外性がないのはきつい。フランスに進駐していたドイツ軍のナント地区司令官が暗殺された報復にシャトーブリアン収容所の政治犯らが日に50人ずつ3日間で処刑されるのをさまざまな視点から淡々と点描するというのはいいんだけど、どうもね。男女が分けられてて、レオ=ポール・サルマンがその収容されてる女性ヴィクトアール・デュポアに恋心を抱くのはわかるとしても、だからどうなんだ、手紙を渡すだけかって。

 ドイツ軍に作家マルク・バルベが従軍してて傍観者にはなってるんだけどそれだけなんだよな~。

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別離

2022年04月26日 22時42分52秒 | 洋画2011年

 ☆別離(Nader and Simin, A Separation)

 

 アスガル・ファルハーディー、うますぎるくらいうまい。脚本もさることながら、演出が上手なんだな。

 ファーストカットからしてその演出力は卓越してる。離婚はしなくないが自分と娘の将来を考えれば海外に移住することが最良の選択で、そのほかの道を選択するには離婚するほかないという妻の一方的な主張を、となりの夫が受け入れがたいという姿勢であらがいつつも平行線のまま調停員との話し合いが進んでゆくという主人公の置かれている立場と将来への不安とをひといきに見せてしまう。それも調停員の目線というフィクスで。見事だな。

 その後はラストまで脚本の勝利だね。夫の父親の痴呆、介護人のいきなりの不在、新しい介護人の事情つまり靴職人の夫が気難しいために警察沙汰になり収監されたことから生活苦になって朝五時半に幼い娘をつれて仕事に来ないといけないという不安定な事情のために疲れ果てていることから、痴呆の父親が徘徊し、それを家へ連れ帰ろうとしたときのラストまで語られない交通事故がすべての原因になっていること、この事故のために流産したんだけど、それをいえないのが痴呆の父親を外に出してしまったという介護人のミスがあるから真実をいえないという背景が、悲劇を生んでいくという実に巧みな構成はなかなかおもいつくものじゃない。

 日頃から庶民の生活をちゃんと観察している姿勢がものをいう、そんな映画だな。

 それにしても主演のレイラ・ハタミは気がいかにも強そうなんだけど、上品で綺麗だね。

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最強のふたり

2022年04月05日 02時03分28秒 | 洋画2011年

 ◎最強のふたり(Intouchables)

 

 頸髄損傷の富豪とその世話をする羽目になった黒人の物語ってのはこの映画の中だけで、実際はアルジェリアの青年らしいんだけど、でもまあこんなことが実際にあったんだね。ただ、ふしぎなもので、海外だと立場のまるで正反対な人間同士がひょんなことから深い絆を結んで生涯を共にするような関係を築いていったりするんだけど、邦画にはあんまりこういう物語がない。なんでなんだろう?

 おたがいがコンプレックスをもってて、それは仕事や財産だけではなくて肉体や病気や恋愛もあったりするんだけど、その足りないものを補い合えるような関係を築いていく物語で、おたがいが本能的に察知してひと目惚れするようなものなんだなと。人の出会いってのはこういうこともあるんだよっていう話だね。

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マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙

2022年02月22日 23時45分16秒 | 洋画2011年

 ◇マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙(The Iron Lady)

 

 晩年の脳がずいぶんと疲れたサッチャーから始まる。絶頂期でないのはいい選択だね。

 テロと過去の空襲と脳軟化症が重なるのも上手い。けど、物語の焦点が定まってないからなんかだれる。首相の時代がたしかにいちばん尺は取ってるんだけど、どうもね。とはいえ、やっぱり上手だ。フォークランド紛争の緊迫感はちゃんとあるしね。なにげない晩年の日常で終わるのもいいし。

 

 

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コンテイジョン

2021年12月15日 01時27分24秒 | 洋画2011年

 ◎コンテイジョン

 

 スティーブン・ソダーバーグはやっぱりすごかった。

 つうか、疫病に対するなんとまあ的確な予測だろうか。

 現代社会における疫病の蔓延とそれにあらがう医者や庶民たちの反応と対処法をこれだけ正確に言い当てて描いちゃうってのは、いやまじ、たいしたもんだ。人間がどうしても棄て切れない姑息な態度、つまり、自分と関係者をついつい優先しちゃうっていう本能にもにた行動をいやっていうほど見せつけてもくれる。また、それに対する正義感めいたものも見せてきたりして、そうしたことが上手に配分されてる。打楽器を主体にした単調で不気味なクリフ・マルティネスの音楽もまた好い。

 ちょっと驚いたのは、マット・デイモンの奥さんをやったグウィネス・パルトローで、世界で最初の罹患者になるんだけど、浮気して伝染病をうつされていともあっさり死んじゃうどころか解剖までされて頭の皮をめくられて脳まで掻きまわされて、その血がエリオット・グールドのマスクにまで撥ね飛んじゃうとかって、よくもまあこんな役を承知したもんだ。情けない話だけど、邦画の女優ならまちがいなく演ってないよ。

 それと、ケイト・ウィンスレットの貫禄はどうよ。どんどん凄みを増してくるね。

 ところで、ぼくはこの映画は観たとばかりおもってた。ていうより、バスの中で患者の症状が出て、咳込むと同時にウィルスが飛び散っていくカットがあるっていう憶えだったんだけど、ちょっと違ってた。あれれ?っておもった。そのとき、これ、もしかしたら初見かもしれないぞと気がついた。

 だけど、そうだとしたら、ぼくが前に観た伝染病が世界各国に瞬く間に広がる映画はなんだったんだろう?

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砂漠でサーモン・フィッシング

2021年12月05日 16時12分54秒 | 洋画2011年

 ☆砂漠でサーモン・フィッシング(2011年 イギリス 107分)

 原題 Salmon Fishing in the Yemen

 satff 原作/ポール・トーディ『イエメンで鮭釣りを』

     監督/ラッセ・ハルストレム 脚本/サイモン・ボーファイ

     撮影/テリー・ステイシー 美術/マイケル・カーリン 音楽/ダリオ・マリアネッリ

 cast ユアン・マクレガー エミリー・ブラント クリスティン・スコット・トーマス アムール・ワケド

 

 ☆イエメンで鮭釣り

 どうやら日本の釣り人口密度は、世界で第一位らしい。そりゃそうだよね。池釣り、川釣り、海釣り、釣り堀釣りと、そこらじゅうに釣りをする所がある。でも、イエメン共和国じゃそうはいかない。なんせ、アラビア半島の南のはしっこにあって、ものすごく乾燥してて、なんといっても、どでかい砂漠があって、しかも川がほとんどない。そんなところで、どうやって鮭を釣るんだ。釣りにまったく興味のないぼくでも、そう考える。だから、この映画を知ったときも、ま、砂漠ってのはイメージで、そこでしょぼい男と知的な女性の恋愛物なんだろなあ、とか、勝手におもいこんでいた。

 ところが、まるでちがった。なんの前知識もなく観たのが、余計によかったのかもしれない。

 この映画、好きだわ~と、素朴に感じた。

 実際、妻と乾燥しきった仲になっている水産学者のユアン・マクレガーも、ぼくとおんなじことをおもい、イエメンで鮭の養殖なんてばかげてると一蹴した。おそらく、この映画が上映されるまで、世界中の人はおんなじ反応をしただろう。けど、映画の中でイエメンの山岳地帯の降水量と豊富な地下水を知るにおよび、お、なんだか、まじな話じゃないか、とおもうようになるんだから、もう、製作者の術中に嵌ってる。しかも、英国が中東外交を考慮に入れた国家プロジェクトで絡んでくるとなると、奇想天外な夢の話がいよいよ現実味をおびてきて、決して相容れないような恋の行く末までもが現実味をおびてくる。

 このあたり、原作はどうなってるか知らないけど、脚本はめちゃくちゃうまい。

 で、結局、どんな主題になっているかといえば「釣りは、奇跡を信じてひたすら待つことが極意のように、人生における夢も恋も、ひたすら信じて待つことができれば、きっと叶う」という、くすぐったくなるような、でも感銘したくなるようなものだ。

 いいじゃないか~。

 他人が聞いたら一笑に付されるような、それどころか呆れかえられるような話が、どんどん大きくなっていって、やがて国家を動かすようなプロジェクトになっていくなんて、しかも、そのおおもとが、アラビアで雄一の立憲共和制のイエメンの王が、国内に緑を増やしてゆくために、まず、鮭の養殖をして水を豊富にするんだっていう筋の通る理屈を抱えた上で、富豪貴族の道楽と勘違いされるのを承知で「わたしは、砂漠でサーモンフィッシングをしたいのだ」とだけ口にするのは、脚本上の導入の都合とはいえ、なんだかいいじゃん。

 こういう、ほんとにできるかどうかはわからないけど、現実と理想の狭間にある夢に向かって進んでいく話って、わくわくするんですわ。

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カウボーイ & エイリアン

2021年12月04日 11時58分20秒 | 洋画2011年

 △カウボーイ & エイリアン

 

 西部劇にエイリアンを登場させるっていうのは発想としてはわかるんだけど、無理があるのは否めない。というより意味を感じない。エイリアンは異邦人なわけで、それって、なにも異星人である必要はなく、未来から来ようが超古代から来ようが、さらにいえば現代のわけのわからない怪物だっていいわけで、確立された世界に異物をぶちこむっていうのは、結局のところ、それに囚われてしまう分、作る側にも観る側にもよぶんな体力を消耗させる。よほどうまく作らないと、しらける。

 で、この作品はどうだったかっていうと、予想どおりおもしろくなかった。

 つまらないのはなぜだろうとおもいながら観てたんだけど、悪い奴にもかかわらずなんとなく救いがあるかもしれないなっていう主人公ふたりの物語だからなんじゃないか?とつまらないことを考えてしまうくらい、つまらなかったわ。ハリソン・フォードとダニエル・クレイグを並べればなんとかなるんじゃないかっていう安直さが、作り手側はそうはおもっていなかったかもしれないけど、観客には当然感じられるだろうしね。

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クライムダウン

2021年07月30日 17時28分46秒 | 洋画2011年

 ◇クライムダウン

 絵もいいし、音楽も悪くないのに、なんかこう散漫なんだよね。出だしなんか特にわくわくさせるんだけど、箱詰めされて埋められてた少女ホリー・ボイドを発見して、メリッサ・ジョージが連絡しようと山を下り始めるあたりから、ちょっと映画の出来が不安になってくる。
 最初は『人間狩り』か『ダーティ・ハンター』の亜流だとおもって、なんだかピーター・フォンダがいきなり復活してきそうな気がしたり、苗字つながりから当時けっこう好きだったスーザン・ジョージをおもいだしてたりしたんだけど、めんどくさそうなEUの要人の娘の誘拐が絡んでる雰囲気になってきたことで、なんだか興醒めし始めた。
 実際、知ってるのは誘拐犯のショーン・ハリスくらいなもので、だから余計にこんがらかったりして、ホリー・ボイドを助けたメリッサ・ジョージが町へ降りちゃってからのカーニバルの最中の活劇になると、もはや、興味はほとんど薄れた。
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