Kinema DENBEY since January 1. 2007

☆=☆☆☆☆☆
◎=☆☆☆☆
◇=☆☆☆
△=☆☆
▽=☆

球形の荒野

2008年01月31日 15時02分34秒 | 邦画1971~1980年

 ◎球形の荒野(1975年 日本)

 監督/貞永方久 音楽/佐藤勝

 出演/竹脇無我 島田陽子 乙羽信子 芦田伸介 山形勲 岡田英治 藤岡琢也 笠智衆 田宮二郎

 

 ◎赤とんぼ

 なににしても、ぼくはこの映画は好きだ。

 封切られたとき、ほとんど偶然に観たんだけど、それ以来、和趣味の行列というか、このふしぎな物語に惹かれ続けてる。

 ぼくのような人間は少なくないようで、テレビドラマでは三船敏郎や田村正和が演じてるし、これに酷似したテレビドラマも仲代達矢や渡哲也とかだったか、ともかく、いくつか作られた。

 男の自己陶酔みたいなものもあるんだろうけど、ぼくがたまらなく面白いとおもったのは導入の部分で、帰国したいのにできない男の事情は、酷似した作品でも「非常に設定しにくいんだろうな~」というのがよくわかる。

 肝心な部分の説得力に欠けるのは、この作品の致命的な欠点ではあるんだけど、それを補って余りあるのが父親をおもう娘の心で、これはどの作も共通してしみじみしてて好い。

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イノセンス

2008年01月29日 15時41分31秒 | 邦画2004年

 ◎イノセンス(2004年 日本 100分)

 監督・脚本/押井守 音楽/川井憲次

 出演/大塚明夫 山寺宏一 田中敦子 大木民夫 仲野裕 竹中直人

 

 ◎GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊の続編

 ブレードランナー讃歌みたいとでもいったら怒られるんだろうけど、ともかく、描かれている近未来の市街地は凄い。

 どうしてこういう世紀末的な退廃が空間を覆っているのかわからないが、昭和時代に生きて、また20世紀の終わりを見届けたぼくらは、おのれが希望するしないに関わらず、ものごとの終末を垣間見ざるを得ない立場に立たされている。そんなことをおもいながら、観た。

 球体関節人形も含め映像は凄い。

 迷宮の中で禅問答しながら出口を探してゆくような物語で、続編かどうかなどという些細なことを問題にする必要はない。

 中華情緒の樺太も禍々しくて良い。

 自己陶酔的展開が少し辛い面もいささか感じられるものの、その画面のディティールに対する拘りと、圧倒的な迫力で展開される古謡的音楽の凄さは、脱帽する。

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裏窓

2008年01月22日 19時04分41秒 | 洋画1951~1960年

 ◎裏窓(1954年 アメリカ 112分)

 原題/Rear Window

 監督/アルフレッド・ヒッチコック 音楽/フランツ・ワッツマン

 出演/ジェイムズ・ステュアート グレース・ケリー レイモンド・バー

 

 ◎車椅子に乗った目撃者

 ♪モナリザの流れる庭に殺人なんて、なんてまあ、お洒落だこと。

 ま、愛しのリサを讃える歌は最後に流れるんだけど、前奏は住人の聞いているのは♪モナリザだ。

 心憎い演出で、こういうのがヒッチコックなんだろな。

 というより、もちろん、それもそうだし、庭に死体というトムハンクスも好きな設定や、覗かれる踊り子というデパルマも好きな設定とか、後世の物語に与えた影響は大なるものがあるんだよね。

 とはいえ、あらためて観直すと、たしかに、なにもかもが古色蒼然とした観はある。でも、それは仕方のないことだし、他人の生活を覗いてみたいという衝動は、この先もずっと人間の心の暗黒面として存在するだろうし、ことにそれが男女の奇々怪々にして淫靡なものであればあるほど、人は興味をそそられる。

 ヒッチコックの凄いところは、そういう人間の生まれ持った業を突きつけてくるところなんだよな~。

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推定無罪

2008年01月20日 13時03分25秒 | 洋画1981~1990年

 ◎推定無罪(1990年 アメリカ 127分)

 原題/Presumed Innocent

 監督/アラン・J・パクラ 音楽/ジョン・ウィリアムズ

 出演/ハリソン・フォード ボニー・ベデリア グレタ・スカッキ ブライアン・デネヒー

 

 ◎不倫相手が殺された。

 世の中、嫉妬ほど面倒かつ怖いものはない。

 人は、嫉妬する。

 事実に対して嫉妬するのはもちろんだけど、妄想で嫉妬することもたびたびある。

 この妄想嫉妬ってやつがほんとに面倒で、いったん妄想したら、ほんとのことをどれだけ提示されようが、納得しない。こういう嫉妬は、おもいこみの激しい我儘な人間によくある。まったく困ったものなんだけど、とち狂った人間ほど始末に負えないものはない。

 で、この映画なんだけど、相関図が厭ってほど凝縮してる。

 裏のある人物が入り乱れるため冒頭が混乱し、ていうか、ぼくが個人的に戸惑い、関係を把握するまでにちょっとばかり時を要した。新事実が出るたびに、戸惑ってばかりだったんだけど、もしかしたら、ぼくはこの映画に向いてないんだろうかと。

 とはいえ、最後のどんでん返しでようやく納得。

 いや~まじ、上司も妻も嫉妬は怖い。

 この作品が製作された頃は、まだDNA鑑定はできないのかな?

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鬼平犯科帳

2008年01月18日 22時59分03秒 | 邦画1991~2000年

 ◎鬼平犯科帳(1995年 日本 105分)

 監督/小野田嘉幹 音楽/津島利章

 出演/中村吉右衛門 岩下志麻 多岐川裕美 藤田まこと 石橋蓮司 蟹江敬三 遠藤憲一

 

 ◎主題歌はジプシーキングス

 一人舞台の見本みたいな映画なんだけど、というよりも、どうも役者が前面に出てくる時代劇ってのは、なんか長台詞が多くて、舞台みたいな雰囲気が漂ってて、こういうのは好き好きだとはおもうんだけど、だんだんときつく感じられるようになってきた。

 大学生の頃はそうでもなくて、ひとりの役者が滔々と喋るのは嫌いじゃなかったんだけどね。

 まあ、なんていうのか、観客というより視聴者は鬼平も必殺もテレビや原作が好きで、その雰囲気が大きくなった感じが出てれば、満足してもらえるんだろうから、この作品を独立したものと捉えない方がいいのかもしれないね。

 ただ、こぞって鬼平をほめるのはいささか引く。

 いや、それもいいとして、事もあろうに『ダメージ』の逆版の父子ドンブリまで展開するのは意外だったわ…。

 まあ、それもいいとしても、腕を落とした盗賊が風邪で死ぬのは、傷口から菌が入ったとしか思えないんだけど、それでもこの場合、鬼平は渋いと受け止められるんですかい?

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日本列島

2008年01月06日 12時47分13秒 | 邦画1961~1970年

 ◇日本列島(1965年 日本 115分)

 脚色・監督/熊井啓 音楽/伊福部昭

 出演/宇野重吉 芦川いづみ 二谷英明 大滝秀治 加藤嘉 鈴木瑞穂 北林谷栄 内藤武敏

 

 ◇原作は吉原公一郎

 熊井啓の第二作目。

 帝銀事件をあつかった処女作がそうであったように、ケレン味よりも渋味を優先させてる分、エンターテイメントを期待する人には不向きかも。けど、巨悪を許さないとする市民の戦いぶりという、熊井啓の基本路線を完成させた点は評価に値する。

 とはいえ、如何せん、地味で難しい筋運びであるのは事実だ。

 元英語教師の米軍通訳のしょぼくれ中年が主役で、正義感の独身記者を脇に置いてるんだけど、どうにも開放感はない。ま、あつかっているのが戦後の未解決事件から60年安保にいたる時代だし、当然といえば当然なんだけどね。

 熊井啓は、完成後、こんなふうにいってるそうだ。

「私は『日本列島』の主人公、秋山を通して時代を追体験してみたいと考えた。当時を追体験することによって、未来に対するイメージを明確にし、既成事実以前のエネルギーを回復する必要性を感じた」

 たしかにそのとおりなんだけど、こういう骨太な邦画はいつから作られなくなっちゃったんだろう。商業映画は観客がこんなものを求めてると信じて作られる。観客に新たな世界を提示しようという心意気はもうなくなっちゃったんだろか。

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