朝から眩しい光が射している小樽の街。
翠は珍しく病院勤務がお休みだった。
「翠ー、ロボティックス・エンジニアのサトウ君がお昼を食べさせてくれとメールがきた。なんかつくってよ!」
翠は、なんか頭良さそうな人ね、といいつつスーパーへ買い出しに出かけた。頭は良いけど・・・・!?、なんだよ。
その翠が帰ってきて・・・
翠「アチキー・・・、入船の坂道で小さなすごーく古いボロ車が、バタバタと音をたてて煙をまき散らしながらノロノロ走っていたよ!」
「何それ!?」
翠「白いさぁー箱車!。荷物一杯積んでんの!」
そのうちアチキの家へ、バタバタという音が近づいてきて、玄関前で停まった。
「こんにちはー・・・、サトウですぅー」
アチキが表に出て行くと、痩せ型で長身のロボティックス・エンジニアのサトウ君がやってきた。
おっ、久しぶりという挨拶も、そこそこに・・・・
「何!、その湘南ナンバーのフィアット!!、まだ乗ってんの?」
サトウ君「はい!!、去年エンジンを取り替えたから新車ですぅー」
「といってボディはボロだけど・・・。坂道で煙りまき散らして走っていたのは君かよ!!!」
サトウ君「煙吐くんですよぉー。時々エンストで停まるときもあって・・・。去年エンジンをバラしたけど限界だと思って新しいエンジンに乗せかえました・・・。でも、セッティングが今一だったかなぁー。一寸手伝ってぇー」
「新しいエンジンといっても中古のエンジンだろ!」
サトウ君「もちろん中古。だってボディに納まらないもん」
そういって荷物を下ろし工具箱を取りだし、後ろのボンネットをあけて治具で調整しだした。
サトウ君「こんなもんかなぁー・・・」
「バイクのエンジンみたいだなぁー。エンジンかけてみたらぁー?」
バタ・バタバタバタ・・バタ・・キューーん、シュ、シュ・・・・・
サトウ君「???・・・、あっ、ダメだ!!、応急用の治具じゃダメだなぁー」
なにしろエンジニアのサトウ君は、自分で全部修理できない車には、乗らないというボリシーなんだ。だから最近のハイブリッド車なんか部品の点数が多すぎて解らないといっていた。自分でエンジンをバラすからね。
「テスラにしたらぁー・・・」
サトウ君「あれ、全部電気だから修理簡単だよなぁー」
「その車で冬の北海道を回ってたんかい?」
サトウ君「設計部の仕事はリモートにしますっていうから、じゃあスキーをしながら仕事しようというので、北海道を走り回っていた」
「車内にある、あのボロいノートPCで・・・?」
サトウ君「一応ハイスペックの部品を集めてノートパソコンを組み立てたんですよ。見かけは廃物利用なのでしょぼいけど、動作は超ハイスペック。多分世界最速!。だけどすごく発熱するですよ。ホディが溶けるぐらい。そんときは雪の外にでて打つです。寒いっすよ!」
「あったりめえだよ!、(*^▽^*)」
サトウ君「苫小牧から大洗までフェリーで帰ろうと思って一寸立ち寄ってみたんですぅーー」
「高速でゆかないの?」
サトウ君「時速70kmまではでるけど、エンスト起こすから怖いっす。やっぱ下道ね」
・・・
翠「アチキー・・・お昼ご飯の支度ができたよーーん」
「じゃ飯!」
サトウ君「おおっ、ゴチになりますぅーーー!」
そういって飯を平らげ、ひとしきり遊んだ後、夕方バタバタと煙を吐きながら、サトウ君は苫小牧に向かった。明日は家のある湘南につくだろう。はて、国道6号線を都心方向に向かい上野、銀座をバタバタと煙を吐きながら通り抜けて、国道1号線を南下するのか・・・。
・・・
小樽の初夏の昼下がりは、湿度が低く気持ちがよい。
気持ちがよい時期に、気持ちのよい人が訪れた。