
道南の尻別川支流M川水系のオショロコマは成魚の腹部が真っ赤なことで有名で、ずいぶん昔に何かの雑誌でその写真を見てびっくり仰天したことがあった。こんなに腹部が赤くなるオショロコマを私は他に知らない。
2005年7月15日、そのアカハラオショロコマを撮影したくて、遠路北見市から道南へ走り、真狩川水系を調査したのがこのオショロコマとかかわった最初である。現地へ入ってみると、この付近では絶え間ない伐採と畑作地、酪農用地の造成で、河畔林はほぼ消滅、もはや自然度の高いオショロコマの森は完全に消えていた。どの支流に入っても水は生ぬるく、生体反応がほとんどない。時折小さなアメマスや放流ニジマス幼魚がかかるがオショロコマの生息できるような環境はなかなか見つからなかった。一日中かかって、入念な調査の結果、唯一オショロコマが生息する極めて狭い水域を奇跡的に発見できた。その場所を特定できるような表現はあえて避けるが、釣り人が一人入っただけで釣りきられてしまうような、本当にかわいそうにほど狭い水域に細々と生き残っていた。真っ赤な腹部は息を呑むほど鮮やかで、あまりのすごさに絶句、しばし撮影するのも忘れて眺めたのを思い出す。
手早く撮影してとりわけ丁寧にリリースした。多くの意味で極めて貴重な個体群でその貴重さ、絶滅危惧の緊急さはシマフクロウやイトウなどの比ではなく、早急にもっと積極的な保護が必要だと断言できる。2005年以降も毎年、このオショロコマの撮影をしてきたが、正に風前の灯火といった感じでかろうじて生き残っている。この貴重なオショロコマ個体群がいつ消えてしまうかは、まったく予断を許さない。
















