1929年に発表されたミュージカル「Great Day」の挿入歌に「More Than You Know」がある。作詞したエドワード・エリスクのインタヴューが村尾陸男著「ジャズ詩大全」(中央アート出版社刊)に紹介されていて興味深い。ブロードウェイにもっていく前のトライアウトで、マリオン・ハリスという歌手がこの曲を歌ったとき、終わりに安っぽいゆらめくようなクライマックスをつけようとした。でも実際彼女がそう歌うと思いのほか効果的だった・・・
まったく人の影響を受けない作曲者のヴィンセント・ユーマンスが、一度だけ許したのはこの曲だけだったと語っている。作曲家は作詞家とコンビを組むことが多いので、ユーマンスも他の意見を取り入れながら曲を完成させたと思っていたが、これは意外だった。ということは、誰もが知っているスタンダードの名品「Tea For Two」も「I Want To Be Happy」も「Sometimes I'm Happy」も独断で創り上げたことになる。余程の自信があったのだろう。確かにどの曲も一度聴いたら二度目にはその美しいメロディを口ずさんでいるし、三度目はイントロだけで曲名を当てれるほどインパクトが強い。
そして「More Than You Know」も少しばかりの変更があったとはいえ、美しいことに変わりない。特にヴァースの素晴らしさは群を抜いている。それだけで独立した曲ができるほどで、いうなれば一粒で二度美味しいグリコのキャラメルだ。そんな甘いキャラメルに似て囁くように歌うのはセクシー女優のメグ・マイルスで、歌は上手いとはいえないものの、妙に惹かれるものがある。あなたが想っている以上に深く愛している、というラヴソングはビリー・ホリデイが歌うと女の哀しさが聴こえて少しばかり寂しくなるが、メグが歌うと「Just Meg and Me」のアルバムタイトル通り、自分だけの為に歌っていると勘違いをして嬉しくなる。
ユーマンスを納得させたマリオン・ハリスは、1918年に「After You've Gone」を初めて歌ったシンガーとして知られているが、ODJB(オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド)が史上初のジャズ録音をする前の1916年に「I Ain't Got Nobody」を録音しているので、最初のジャズシンガーといえる。安っぽいゆらめくようなクライマックスとエリスクに言われたが、このフレージングこそがジャズ歌唱の礎を築いたと言っていいだろう。
まったく人の影響を受けない作曲者のヴィンセント・ユーマンスが、一度だけ許したのはこの曲だけだったと語っている。作曲家は作詞家とコンビを組むことが多いので、ユーマンスも他の意見を取り入れながら曲を完成させたと思っていたが、これは意外だった。ということは、誰もが知っているスタンダードの名品「Tea For Two」も「I Want To Be Happy」も「Sometimes I'm Happy」も独断で創り上げたことになる。余程の自信があったのだろう。確かにどの曲も一度聴いたら二度目にはその美しいメロディを口ずさんでいるし、三度目はイントロだけで曲名を当てれるほどインパクトが強い。
そして「More Than You Know」も少しばかりの変更があったとはいえ、美しいことに変わりない。特にヴァースの素晴らしさは群を抜いている。それだけで独立した曲ができるほどで、いうなれば一粒で二度美味しいグリコのキャラメルだ。そんな甘いキャラメルに似て囁くように歌うのはセクシー女優のメグ・マイルスで、歌は上手いとはいえないものの、妙に惹かれるものがある。あなたが想っている以上に深く愛している、というラヴソングはビリー・ホリデイが歌うと女の哀しさが聴こえて少しばかり寂しくなるが、メグが歌うと「Just Meg and Me」のアルバムタイトル通り、自分だけの為に歌っていると勘違いをして嬉しくなる。
ユーマンスを納得させたマリオン・ハリスは、1918年に「After You've Gone」を初めて歌ったシンガーとして知られているが、ODJB(オリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンド)が史上初のジャズ録音をする前の1916年に「I Ain't Got Nobody」を録音しているので、最初のジャズシンガーといえる。安っぽいゆらめくようなクライマックスとエリスクに言われたが、このフレージングこそがジャズ歌唱の礎を築いたと言っていいだろう。