シナトラお気に入りの作曲家、ジミー・ヴァン・ヒューゼンは戦時中、ロッキードのテストパイロットを副業にしていたそうだ。パイロットがCAを口説くために曲を作る話はありそうだが、作曲家の副業がパイロットとは驚く。それも飛ぶか堕ちるか分からない開発中の戦闘機である。上下にペンを走らせてインクの滑りをみる万年筆の試し書きとは違って、急上昇や急降下を繰り返す危険な仕事だ。
数あるヴァン・ヒューゼンの曲から梅雨時なので、「Here's That Rainy Day」を選んでみた。ミュージカルの挿入歌として1953年に発表されたものだが、そのミュージカルが失敗だったため曲まで忘れられようとしていた。その6年後にシナトラがアルバム「No One Cares」に選曲したことで火が付いた曲である。「All The Things You Are」や「Ev'rytime We Say Goodbye」同様、ミュージカルは大コケだったが曲だけ残ったケースだ。おそらくシナトラが取り上げなければ埋もれたままになっていただろう。ジョニー・バークによる歌詞も素敵だが、何よりもヴァン・ヒューゼンのメロディーはタイトルそのものだ。
感傷に浸る美しい旋律に惹かれるのかインストも名演が多い。どれを出そうかと迷ったが、丁度ピッタリのジャケットがあった。自由の女神像の上を注意して見てほしい。ほらヴァン・ヒューゼンが飛んでいるではないか。CTIのフレディ・ハバードときいて敬遠される方もおられるようだが、騙されたと思ってこの一曲を聴いてほしい。フリューゲルホーンで淡々と歌う。摩天楼に柔らく降り注ぐ雨が気持ちいい、そう言っているようだ。バックのジョージ・ベンソンがさりげなくサポートするのだが、アスファルトに自然と沁み込む雨粒の如くである。傘をたたんで少しばかり濡れてみようかと思わせるバラード表現だ。
テストパイロットの件は音楽関係者には内緒にしていた。相棒のバークに「歌が完成しないうちに、墜落して死んでしまうかも知れない作曲家に誰が仕事をくれるんだ」と言っていたそうだ。現在は航空機技術の向上や地上テスト、シミュレーションの導入、無人飛行で危険は減ったが、1950年代はおよそ1週間に1人の割合でテストパイロットが死亡していたという。
数あるヴァン・ヒューゼンの曲から梅雨時なので、「Here's That Rainy Day」を選んでみた。ミュージカルの挿入歌として1953年に発表されたものだが、そのミュージカルが失敗だったため曲まで忘れられようとしていた。その6年後にシナトラがアルバム「No One Cares」に選曲したことで火が付いた曲である。「All The Things You Are」や「Ev'rytime We Say Goodbye」同様、ミュージカルは大コケだったが曲だけ残ったケースだ。おそらくシナトラが取り上げなければ埋もれたままになっていただろう。ジョニー・バークによる歌詞も素敵だが、何よりもヴァン・ヒューゼンのメロディーはタイトルそのものだ。
感傷に浸る美しい旋律に惹かれるのかインストも名演が多い。どれを出そうかと迷ったが、丁度ピッタリのジャケットがあった。自由の女神像の上を注意して見てほしい。ほらヴァン・ヒューゼンが飛んでいるではないか。CTIのフレディ・ハバードときいて敬遠される方もおられるようだが、騙されたと思ってこの一曲を聴いてほしい。フリューゲルホーンで淡々と歌う。摩天楼に柔らく降り注ぐ雨が気持ちいい、そう言っているようだ。バックのジョージ・ベンソンがさりげなくサポートするのだが、アスファルトに自然と沁み込む雨粒の如くである。傘をたたんで少しばかり濡れてみようかと思わせるバラード表現だ。
テストパイロットの件は音楽関係者には内緒にしていた。相棒のバークに「歌が完成しないうちに、墜落して死んでしまうかも知れない作曲家に誰が仕事をくれるんだ」と言っていたそうだ。現在は航空機技術の向上や地上テスト、シミュレーションの導入、無人飛行で危険は減ったが、1950年代はおよそ1週間に1人の割合でテストパイロットが死亡していたという。