アーノルド・ショー著「シナトラ 20世紀のエンターテイナー」、キティ・ケリー著「ヒズ・ウェイ」、ともにフランク・シナトラの評伝である。前者はサブタイトルのようにエンターテイナーとしてスポットライトを浴びたシナトラを描き、後者はマフィアとの関係という陰のシナトラに焦点を絞ったものだ。ともにシナトラという人物を知るには恰好の書だが、歌手シナトラを聴くレコードについては系統立てて書かれていない。その穴を埋めるように一時代を築き上げた歌手としてレコードから足跡を追う貴重な本が出版された。
シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパン代表、三具保夫さん著の「シナトラ My Way of Life」で、コロンビア、キャピトル、リプリーズと時代毎に数々のレコードが紹介されている。無味乾燥なディスコグラフィーではなく、丁寧に解説されたアルバムはコレクションの手助けにもなるだろうし、珍しい録音の紹介はマニアを唸らせ、巻末のベイシック・コレクションはこれからシナトラを聴こうという方には最良のガイドであろう。この書で初めて知ったのだが、グラミー賞にはカヴァー・デザイン賞があるようだ。アカデミー賞にしても作品賞が大きくクローズアップされるだけで、部門賞となるとその存在さえ知らないことが多い。
その記念すべき58年の第1回グラミー賞で、カヴァー・デザイン賞を受賞したのが、血を流すピエロの「オンリー・ザ・ロンリー」である。アルバム・チャートのトップに立ちながら最優秀アルバム賞はヘンリー・マンシーニの「ピーター・ガン」にさらわれ、カヴァー・デザイン賞を受け取るシナトラの表情には落胆の色が認められたというからかなりの自信作だったに違いない。最優秀アルバム賞を逃したとはいえ、以前拙稿でも話題にした「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」を初め、「エンジェル・アイズ」、「グッドバイ」等、すべての曲がシナトラが歌うために書かれたとしか思えない説得力のある歌唱はシンガーの極致といえる作品である。半世紀経った今でもそれはバラード集の傑作であり、半世紀後でもスタンダードの手本とされるものだろう。
前述の2冊の本は膨大な資料に基づき書かれたものだが、友人としてシナトラに接して書いた本にピート・ハミルの「ザ・ヴォイス」がある。ジャーナリストの目はシナトラ本人以上にシナトラを見つめていたが、三具さんはシナトラ本人以上にシナトラの音楽を知っている人なのかもしれない。
シナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパン代表、三具保夫さん著の「シナトラ My Way of Life」で、コロンビア、キャピトル、リプリーズと時代毎に数々のレコードが紹介されている。無味乾燥なディスコグラフィーではなく、丁寧に解説されたアルバムはコレクションの手助けにもなるだろうし、珍しい録音の紹介はマニアを唸らせ、巻末のベイシック・コレクションはこれからシナトラを聴こうという方には最良のガイドであろう。この書で初めて知ったのだが、グラミー賞にはカヴァー・デザイン賞があるようだ。アカデミー賞にしても作品賞が大きくクローズアップされるだけで、部門賞となるとその存在さえ知らないことが多い。
その記念すべき58年の第1回グラミー賞で、カヴァー・デザイン賞を受賞したのが、血を流すピエロの「オンリー・ザ・ロンリー」である。アルバム・チャートのトップに立ちながら最優秀アルバム賞はヘンリー・マンシーニの「ピーター・ガン」にさらわれ、カヴァー・デザイン賞を受け取るシナトラの表情には落胆の色が認められたというからかなりの自信作だったに違いない。最優秀アルバム賞を逃したとはいえ、以前拙稿でも話題にした「ウィロー・ウィープ・フォー・ミー」を初め、「エンジェル・アイズ」、「グッドバイ」等、すべての曲がシナトラが歌うために書かれたとしか思えない説得力のある歌唱はシンガーの極致といえる作品である。半世紀経った今でもそれはバラード集の傑作であり、半世紀後でもスタンダードの手本とされるものだろう。
前述の2冊の本は膨大な資料に基づき書かれたものだが、友人としてシナトラに接して書いた本にピート・ハミルの「ザ・ヴォイス」がある。ジャーナリストの目はシナトラ本人以上にシナトラを見つめていたが、三具さんはシナトラ本人以上にシナトラの音楽を知っている人なのかもしれない。