ツバのひろい羽飾りのついた帽子と、白い手袋を纏い颯爽と登場する姿は、ファッション雑誌ヴォーグから飛び出してきたような美しさだ。最初に見たときはドキッとし、二度目は心ときめき、次からは興奮のあまり抱きつきたくなる。58年のニューポート・ジャズ・フェスティバルの模様を収めたドキュメンタリー映画「真夏の夜のジャズ」のアニタ・オデイ登場シーンを思い出す。
「アニタ・オデイさん(米女性ジャズ歌手)23日、ロサンゼルス郊外の病院で死去。87歳。最近肺炎の発作に見舞われたことがあったという」 淡々と流される訃報記事。知らない方にとっては一老女の死としか受けとられないが、ジャズファンそれもアニタファンには大きな出来事だ。拙稿ごときではアニタの偉大さも素晴らしさも端的には伝えられないけれど、ジーン・クルーパ・ビッグバンドの若い頃から、絶頂期を捉えたヴァーブの一連の作品、70年代の自費出版のアルバムに至るまで、聴かずには死ねない名唱が揃っている。
ロバート・リチャーズの構図と表情が見事なイラストのジャケットは額に入れて我が書斎に飾ってある。「live at the city」と題された79年のサンフランシスコのライブで、声にかつての艶はないが、「真夏の夜のジャズ」同様、サイドメンがタジタジになる縦横無尽なアドリブは健在だ。インタビューでアニタは答えている。「私は才能がないので、フェイクせざるを得なかった・・・私の歌い方が嫌いなら、パティ・ペイジを聞いたらいいのよ」 姐御の啖呵は謙虚である。アニタの歌を才能と言わず何という。歌い方が嫌いなジャズファンは一人もいないはずだ。
このアルバムで司会者が、「Miss Anita O'Day !」と紹介する度、熱いものが込み上げてくる。額に飾ったジャケットに花を供えて、ハスキーで自由自在なフレージングに今夜ばかりは浸っていたい。ご冥福をお祈りします。
「アニタ・オデイさん(米女性ジャズ歌手)23日、ロサンゼルス郊外の病院で死去。87歳。最近肺炎の発作に見舞われたことがあったという」 淡々と流される訃報記事。知らない方にとっては一老女の死としか受けとられないが、ジャズファンそれもアニタファンには大きな出来事だ。拙稿ごときではアニタの偉大さも素晴らしさも端的には伝えられないけれど、ジーン・クルーパ・ビッグバンドの若い頃から、絶頂期を捉えたヴァーブの一連の作品、70年代の自費出版のアルバムに至るまで、聴かずには死ねない名唱が揃っている。
ロバート・リチャーズの構図と表情が見事なイラストのジャケットは額に入れて我が書斎に飾ってある。「live at the city」と題された79年のサンフランシスコのライブで、声にかつての艶はないが、「真夏の夜のジャズ」同様、サイドメンがタジタジになる縦横無尽なアドリブは健在だ。インタビューでアニタは答えている。「私は才能がないので、フェイクせざるを得なかった・・・私の歌い方が嫌いなら、パティ・ペイジを聞いたらいいのよ」 姐御の啖呵は謙虚である。アニタの歌を才能と言わず何という。歌い方が嫌いなジャズファンは一人もいないはずだ。
このアルバムで司会者が、「Miss Anita O'Day !」と紹介する度、熱いものが込み上げてくる。額に飾ったジャケットに花を供えて、ハスキーで自由自在なフレージングに今夜ばかりは浸っていたい。ご冥福をお祈りします。