ボブ・トマスが書いたウォルト・ディズニーの評伝に「ピノキオ」の制作秘話が綴られている。ウォルトはストーリー作りに数ヶ月も悩んだ末、制作の一時中断を命じた。ピノキオをアニメーションとして実現するためには何か新しい要素を付け加える必要があると思ったからだという。そして捻り出したアイデアはピノキオの周りにおもしろくて華やかな登場人物を配置することだった。その登場人物とはコオロギのジミニー・クリケットである。
このジミニーが歌ったのが「星に願いを」で、1940年に映画の封切と同時にヒットし、その年のアカデミー賞歌曲賞を獲得した。以来ディズニーのテーマ曲として親しまれているので、ディズニーランドで耳にしたかたもあろう。おおらかで温かく優しさのあるメロディはディズニー主題歌に共通しているが、この曲はアドリブ発展が面白いとみえて多くのプレイヤーがレパートリーにしている。歌物を演奏するときは歌詞の持つ意味に沿い、その解釈が歌うフレーズに結びつき、そこから名演が生まれる、という不文律があるが、この曲はどの演奏もディズニーのイメージを損なわないロマンティックな名演が揃っている。
数ある名演でもジャック・モントローズと夭逝したボブ・ゴードンのコラボレーションは、今でこそCDで簡単に聴けるが、かつては幻の名盤として入手が難しいレコードだった。その内容の素晴らしさは、引用レコードが極めて少ないベーレント氏の著書「ジャズ」の中で、「ウエスト・コースト・ジャズを代表する作品」として紹介されたほどだ。モントローズのテナーは西海岸に吹く風のような爽やかさがあり、ゴードンの豪快なバリトンがそれに重なるとき、えも言われぬ音空間が生まれる。それは決してウエスト・コースを牽引するほどの力量は持ち合わせていなかった二人が最大のアイデアを出し合った最高の演奏だからだろう。
ディズニーは映画や遊園地で多くの夢を与えてきたが、その夢を一瞬にして奪ったこの度の大震災を見ると胸が痛む。ウォルトの作品「オズワルド」が、スタッフともどもユニバーサル社の買収にあったとき、「元気を出そうじゃないか。結局、最後は僕たちが笑うことになる」と兄のロイを励ました。ミッキーマウスが誕生する前の話である。被災に遭った皆様の一日でも早い笑顔を見られるよう、今はただただ星に願うばかりである。
このジミニーが歌ったのが「星に願いを」で、1940年に映画の封切と同時にヒットし、その年のアカデミー賞歌曲賞を獲得した。以来ディズニーのテーマ曲として親しまれているので、ディズニーランドで耳にしたかたもあろう。おおらかで温かく優しさのあるメロディはディズニー主題歌に共通しているが、この曲はアドリブ発展が面白いとみえて多くのプレイヤーがレパートリーにしている。歌物を演奏するときは歌詞の持つ意味に沿い、その解釈が歌うフレーズに結びつき、そこから名演が生まれる、という不文律があるが、この曲はどの演奏もディズニーのイメージを損なわないロマンティックな名演が揃っている。
数ある名演でもジャック・モントローズと夭逝したボブ・ゴードンのコラボレーションは、今でこそCDで簡単に聴けるが、かつては幻の名盤として入手が難しいレコードだった。その内容の素晴らしさは、引用レコードが極めて少ないベーレント氏の著書「ジャズ」の中で、「ウエスト・コースト・ジャズを代表する作品」として紹介されたほどだ。モントローズのテナーは西海岸に吹く風のような爽やかさがあり、ゴードンの豪快なバリトンがそれに重なるとき、えも言われぬ音空間が生まれる。それは決してウエスト・コースを牽引するほどの力量は持ち合わせていなかった二人が最大のアイデアを出し合った最高の演奏だからだろう。
ディズニーは映画や遊園地で多くの夢を与えてきたが、その夢を一瞬にして奪ったこの度の大震災を見ると胸が痛む。ウォルトの作品「オズワルド」が、スタッフともどもユニバーサル社の買収にあったとき、「元気を出そうじゃないか。結局、最後は僕たちが笑うことになる」と兄のロイを励ました。ミッキーマウスが誕生する前の話である。被災に遭った皆様の一日でも早い笑顔を見られるよう、今はただただ星に願うばかりである。