頓智咄を原作としたテレビアニメの「一休さん」は、禅僧一休宗純の愛称で「狂雲集」という優れた詩集を遺している。自由奔放で戒律や形式にとらわれない生き方をした人で、70歳を超えても愛人がいて、死ぬまで浮気はやめられなかったそうだ。飲酒、肉食はもとより女とは僧にあるまじき行為だが、当時の仏教界の腐敗ぶりに嫌気がさし抵抗したもので、その反骨精神が共感を呼び、一休咄に代表される頓知咄を生み出す元になっている。
一休さんが聴いてもおそらく馬の耳に念仏と思われる曲に「Ain't Misbehavin'」がある。ファッツ・ウォーラーの作で、「浮気はやめた」と邦題が付いていて、ウォーラー自身の歌はもとよりジミー・ラッシング等、歌の内容通り男性ヴォーカリストに好まれる曲だ。ジョニー・ハートマンも55年のベツレヘム盤「Songs From The Heart」でとり上げていて、ラルフ・シャロン・トリオにハワード・マギーが加わったワン・ホーンをバックに、「Fall in Love Too Easily」、「We'll Be Together Again」というバラードの名作をバリトン・ヴォイスで歌い上げている。ほどよい甘さと渋さが見事に融合した心からの歌が堪能できるアルバムだ。
72年に来日したハートマンは、日野皓正とアルバムを残しているが、初来日は63年のことになる。この時はジャズ・メッセンジャーズの一員としてだが、その甘い歌声に酔った方も多いことだろう。帰国後間もなく吹き込んだコルトレーンとの共演盤は、名実ともにハートマンの代表作であり、バラードシンガーとしての名声を不動にした名盤でもある。「浮気はやめた」にしても、コルトレーンとの「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」にしてもまるで歌詞を演じるような歌い方は役者のようであり、ヒロインとしての女性を肯かせる説得力を持つ。歌を演ずるハートマンの名刺には、「Actor」と肩書きがあるという。
一休は、「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」という味わい深い句も遺しているが、一方で「美人の陰に水仙花の香有り」とか「美人の婬水を吸う」といった今時のフランス書院やマドンナメイト専属の作家にひけをとらない描写もしている。美人を眺めて一休の句を思い出し、橋の端で一休みも悪くない。
一休さんが聴いてもおそらく馬の耳に念仏と思われる曲に「Ain't Misbehavin'」がある。ファッツ・ウォーラーの作で、「浮気はやめた」と邦題が付いていて、ウォーラー自身の歌はもとよりジミー・ラッシング等、歌の内容通り男性ヴォーカリストに好まれる曲だ。ジョニー・ハートマンも55年のベツレヘム盤「Songs From The Heart」でとり上げていて、ラルフ・シャロン・トリオにハワード・マギーが加わったワン・ホーンをバックに、「Fall in Love Too Easily」、「We'll Be Together Again」というバラードの名作をバリトン・ヴォイスで歌い上げている。ほどよい甘さと渋さが見事に融合した心からの歌が堪能できるアルバムだ。
72年に来日したハートマンは、日野皓正とアルバムを残しているが、初来日は63年のことになる。この時はジャズ・メッセンジャーズの一員としてだが、その甘い歌声に酔った方も多いことだろう。帰国後間もなく吹き込んだコルトレーンとの共演盤は、名実ともにハートマンの代表作であり、バラードシンガーとしての名声を不動にした名盤でもある。「浮気はやめた」にしても、コルトレーンとの「マイ・ワン・アンド・オンリー・ラブ」にしてもまるで歌詞を演じるような歌い方は役者のようであり、ヒロインとしての女性を肯かせる説得力を持つ。歌を演ずるハートマンの名刺には、「Actor」と肩書きがあるという。
一休は、「門松は冥土の旅の一里塚めでたくもありめでたくもなし」という味わい深い句も遺しているが、一方で「美人の陰に水仙花の香有り」とか「美人の婬水を吸う」といった今時のフランス書院やマドンナメイト専属の作家にひけをとらない描写もしている。美人を眺めて一休の句を思い出し、橋の端で一休みも悪くない。