毎月のように廉価盤CDが発売されている。そのほとんどは繰り返し出ているアルバムだが、なかにはレコードで入手できないものもあり見逃せない。つい先日発売されたなかにアル・コーン&ズート・シムズの「ユー・エン・ミー」があった。このアルバムには少しばかり想い出がある。もう40年も前のことだが、中野ブロードウェイに「シャトー」というジャズ喫茶があった。ジャズ喫茶といっても本格的鑑賞店ではなく会話の邪魔にならない適度な音量だ。
あるとき、その店のマスターが、小生がサラ回している店に現れ、リクエストしたのがこのアルバムだった。マスター氏はフランク永井に似た感じの人で白ワイシャツにネクタイ姿からは所謂ジャズ屋には見えなかったが、よほどアル・コーンとズート・シムズのテナーデュオが好きだったのだろう。コーンの高音とシムズの低音が際立つようにアンプを調整し、いつもより音量を上げるとノリノリだった。当時はまだ国内盤で再発されておらずメジャーレーベルのマーキューリーとはいえオリジナル盤はそう容易く入手できない。マスター氏は何度もジャケットを見返し、満足そうに店をあとにした。
同一楽器のデュオチームは短命で終わるケースが多いが、このチームはジャズクラブのハーフノートを拠点に長きに亘って活動している。それは共にレスター・ヤングの信奉者であり、ウディ・ハーマン楽団のフォア・ブラザーズ時代から音楽理念が一致していたことによるもので音色やフレーズの濃淡あれど白人チームとは思えないほどドライブ感があったからだ。同一楽器のバトルもスリルがあり、それがジャズの醍醐味ではあるが、交互にほどよいバランスを保ちながらテンポよく演奏する協調性もまたジャズの美なのである。絶妙なコンビ「You 'n Me」はどちらも主役であろう。
その後「シャトー」を訪れたとき、小生の顔を覚えている様子がなかったので、返ってくる答えを知りながら悪戯心もあり、このレコードをリクエストした。生意気な若僧の若気の至りである。いまやオタクビル化した中野ブロードウェイにその店は疾うにないが、あのマスター氏はお元気だろうか。もしかすると簡単に入手できるようになった「ユー・エン・ミー」を聴いて満足そうな笑顔を浮かべているかもしれない。
あるとき、その店のマスターが、小生がサラ回している店に現れ、リクエストしたのがこのアルバムだった。マスター氏はフランク永井に似た感じの人で白ワイシャツにネクタイ姿からは所謂ジャズ屋には見えなかったが、よほどアル・コーンとズート・シムズのテナーデュオが好きだったのだろう。コーンの高音とシムズの低音が際立つようにアンプを調整し、いつもより音量を上げるとノリノリだった。当時はまだ国内盤で再発されておらずメジャーレーベルのマーキューリーとはいえオリジナル盤はそう容易く入手できない。マスター氏は何度もジャケットを見返し、満足そうに店をあとにした。
同一楽器のデュオチームは短命で終わるケースが多いが、このチームはジャズクラブのハーフノートを拠点に長きに亘って活動している。それは共にレスター・ヤングの信奉者であり、ウディ・ハーマン楽団のフォア・ブラザーズ時代から音楽理念が一致していたことによるもので音色やフレーズの濃淡あれど白人チームとは思えないほどドライブ感があったからだ。同一楽器のバトルもスリルがあり、それがジャズの醍醐味ではあるが、交互にほどよいバランスを保ちながらテンポよく演奏する協調性もまたジャズの美なのである。絶妙なコンビ「You 'n Me」はどちらも主役であろう。
その後「シャトー」を訪れたとき、小生の顔を覚えている様子がなかったので、返ってくる答えを知りながら悪戯心もあり、このレコードをリクエストした。生意気な若僧の若気の至りである。いまやオタクビル化した中野ブロードウェイにその店は疾うにないが、あのマスター氏はお元気だろうか。もしかすると簡単に入手できるようになった「ユー・エン・ミー」を聴いて満足そうな笑顔を浮かべているかもしれない。