昨年も多くのアルバムが復刻され、かつてレコードで入手できなかった音源を聴くのは、昔の恋人に会ったような愛おしさを覚える。ほとんどは1,2度聴いたことがあり、ジャケットも薄っすらと覚えているのだが、数十年ぶりに聴くと一段と美しさを増したようで新たな恋心さえ生まれようというものだ。その多くの復刻盤の中に一度も聴いたことがないアルバムがあった。そのレコードの記憶といえば、異常に市場価格の高い希少盤ということぐらいで、雑誌に載っていたジャケット写真さえ思い出せない。
それはキャロル・クレヴェリングの「ヒア・カムズ」である。この度初めて知ったのだが、プロフィールが不明なことから幻の歌手といわれ、レコードもこの1枚のようだ。実力よりも流行に左右されやすい音楽の世界では、1枚のアルバムで消えていくのは珍しいことではなく、売れなければ次はないという音楽ビジネスには不可欠の選択により、埋もれていった歌手は枚挙に遑がない。当時売れなかったレコードだけに当然プレス枚数も少なく、高値を呼ぶのは当然のことであろう。
映画「罪じゃないわよ」で、メイ・ウェストがエリントン楽団をバックに歌った「マイ・オールド・フレーム」が最初に収録されている。ピアノのイントロに導かれた歌いだしは実にスムーズで、ややハスキーな声も魅力的だ。この曲の名唱というとビリー・ホリデイで、人生の辛酸を嘗め尽くした女心の表現は見事であった。キャロルは情に絆されることもなくクールな歌いようで、高音の伸びも安定している。海からほんの少しだけ姿を現した人魚のような神秘さを持つ上質なヴォーカルで、マニアが探し求めるのも頷けるアルバムだ。高値の花は罪じゃなく、罪作りである。
アルバム復刻に尽力されたシナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンの代表、三具保夫さんのブログによると、キャロルは今も南カリフォルニアで元気に暮らしているそうだ。今頃暖かい陽射しを浴びながらオールド・フレーム~昔の恋人と、歌の内容である過ぎ去った恋の思い出を懐かしんでいるのかもしれない。
それはキャロル・クレヴェリングの「ヒア・カムズ」である。この度初めて知ったのだが、プロフィールが不明なことから幻の歌手といわれ、レコードもこの1枚のようだ。実力よりも流行に左右されやすい音楽の世界では、1枚のアルバムで消えていくのは珍しいことではなく、売れなければ次はないという音楽ビジネスには不可欠の選択により、埋もれていった歌手は枚挙に遑がない。当時売れなかったレコードだけに当然プレス枚数も少なく、高値を呼ぶのは当然のことであろう。
映画「罪じゃないわよ」で、メイ・ウェストがエリントン楽団をバックに歌った「マイ・オールド・フレーム」が最初に収録されている。ピアノのイントロに導かれた歌いだしは実にスムーズで、ややハスキーな声も魅力的だ。この曲の名唱というとビリー・ホリデイで、人生の辛酸を嘗め尽くした女心の表現は見事であった。キャロルは情に絆されることもなくクールな歌いようで、高音の伸びも安定している。海からほんの少しだけ姿を現した人魚のような神秘さを持つ上質なヴォーカルで、マニアが探し求めるのも頷けるアルバムだ。高値の花は罪じゃなく、罪作りである。
アルバム復刻に尽力されたシナトラ・ソサエティ・オブ・ジャパンの代表、三具保夫さんのブログによると、キャロルは今も南カリフォルニアで元気に暮らしているそうだ。今頃暖かい陽射しを浴びながらオールド・フレーム~昔の恋人と、歌の内容である過ぎ去った恋の思い出を懐かしんでいるのかもしれない。