デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

秋吉敏子、88歳、88鍵を語る

2018-07-29 09:26:20 | Weblog
 今月10日のことだ。黒柳徹子さんが司会を務める「徹子の部屋」に秋吉敏子さんが出演するときいて録画した。昼12時からの放送なのでテレビの前に座ることが難しい。こう言っては紫綬褒章や朝日賞、ジャズマスターズ賞を受賞されている音楽家に失礼だが、これがコンサートなら録画してまでは観ないだろう。20年ほど前にソロライブを聴いたのだが、この時秋吉さんのトークに引き込まれた。

 ジャズ誌のインタビューや、その著書「ジャズと生きる」(岩波新書)、「孤軍 その人生と作品」(全音楽譜出版社)で語られている内容と重なるものの、トークは表情からその時の感情がダイレクトに伝わってくる。アメリカのジャズ生活や、ジャズメンとの交流は大変貴重な体験であり、聞き手のこちらもリアルなジャズシーンに浸ることができるし、何と言ってもミュージシャン名のネイティブな発音は嬉しい。バードランドのピー・ウィー・マーケットや、マイルスのゴー・ゴーに乗せてアナウンスするカタカナ表記とは違う発音に興奮したのは小生だけではあるまい。

 ライブとテレビでは話の内容も違うが、人生で一番辛かったという満洲から大分に引き揚げてきた頃の話は遠くを見るような目だった。一方、ジャズ・レコードのコレクターからテディ・ウィルソンの「スイート・ロレイン」を聴かせてもらってジャズの魅力を知った時の様子は口調からも当時の興奮が伝わってくる。バークリー音楽院へ留学した56年に録音した「ザ・トシコ・トリオ」は今も燦然と輝くアルバムで、アメリカに通用する日本人初のジャズレコードと言っていい。マイルス・バンドに参加したばかりのポール・チェンバースと、ピーターソン・トリオのエド・シグペンのサポートが本場ならではの空気感を醸し出している。

 女性の年齢を記すのは甚だ失礼と思うが御年88歳である。鍵盤の数と同じだと笑っておられた。番組のラストで「サマータイム」を弾いたのだが、これが素晴らしい。アメリカに渡った時は日本人ゆえの差別もあったそうだが、今このピアノを聴いてバカにするアメリカ人はいないだろう。9月15日に東京文化会館でルー・タバキンとのコンサートが組まれている。テレビで放映されるなら録画しよう。
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西城秀樹の「至上の愛」を聴いたことがあるか

2018-07-01 09:20:08 | Weblog
 記憶が曖昧なので調べてみるとリリースは1975年8月25日というから43年前になる。レコード店で新譜の入荷箱をチェックしているとセーラー服を着た可愛い子が、「至上の愛、入ってますか?」と店員に聞いた。えっ!ジャズを聴く女子中学生は珍しい。コルトレーンならここにありますよ、と声を掛けようと思ったら店員が出したのは歌謡曲のシングル盤だ。この時、5月16日に63歳で亡くなった西城秀樹の名前を知った。

 アイドルといえばルックスだけでろくに歌えないものと決めつけていただけに、その歌唱力に驚いたものだ。「愛」とか「恋」の付くタイトルは山ほどあって、曲名に本や映画のタイトルを並べると同じものがあっても不思議はないが、アイドル音痴の小生でもコルトレーンの代表作と同じとなれば記憶に残る。4部構成の組曲のカバーは考えられなかったが、エルヴィン・ジョーンズがこの神への讃歌をテーマにした曲に挑戦した。「Tribute to John Coltrane : A Love Supreme」は、1992年に新宿ピットインでライブ録音されたものだ。注目すべきはウィントン・マルサリスで、腹心のマーカス・ロバーツとレジナルド・ヴィールが脇を固めている。

 97年にマーカスからマッコイ・タイナーに変わったメンバーで生を聴く機会があった。エルヴィンやマッコイは何度も聴いているがウィントンは初めてだ。ケイコ・ジョーンズの強烈な香水とやたらと長いトークには閉口したが、演奏内容は申し分ない。ピットインの時はコトレーン色が強かったが、この時はウィントンのアイデアが全面に出ている。確かに批判の通りテクニックが目立ち、ジャズロボット感は歪めないが、アンコールで吹いた「I Remember Clifford」は感涙ものだ。初演のジジ・グライスのアレンジを拝借するでもない、モーガンのソロを引用するでもない。目を閉じるとブラウニーが見えた。

 プロ野球の試合中、5回裏終了後に審判の休憩に合わせてグラウンド整備が行われる。札幌ドームでは、このインターバルに西城秀樹の大ヒット曲「ヤングマン」が流れ、ファイターズガールがYMCAダンスを踊る。それに合わせて踊る観客の様子が微笑ましい。今日は黒岩静枝さんを中心に「DAY BY DAY」のメンバーと仲間が、日本ハムを応援するイベントが組まれている。参加者は年々増え、今年は18名だ。皆でYMCAダンスを踊ってみようか。
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