デューク・アドリブ帖

超絶変態ジャズマニア『デューク・M』の独断と偏見と毒舌のアドリブ帖です。縦横無尽、天衣無縫、支離滅裂な展開です。

アントニオ猪木さんにコブラツイストをかけられたクリスチャン・マクブライド

2022-10-09 08:35:21 | Weblog
 「猪木信者」ほどではないが、10月1日に亡くなられたアントニオ猪木さんの試合はよく見た。なかでもモハメド・アリ戦は今でも覚えている。「世紀の凡戦」とか、土曜日昼間の試合だったので「真昼の欠闘」等と酷評されたが、立ち続けているアリに対して寝たまま闘う猪木さんのポジションは、ボクシングとレスリングという競技方法でみるなら理に適っているように思える。

 世界的に知名度が高かっただけにその交友は広い。プロレス評論家の門馬忠雄さんの記述によると渡辺貞夫とロマネコンティを飲む仲だという。また猪木さんのツイッターをご覧の方はご存知と思われるが、2014年にギターを手にセッションをしている。何とベースを弾いている対戦相手はクリスチャン・マクブライドだ。音が聴こえないのは残念だが、延髄斬りを決めた時と同じぐらい満足そうな顔をしていた。他にもパット・メセニーとのショットも残されている。熱烈なファンは業界を問わず数多い。

 ファースト・コール・ベーシストのアルバムから2017年の「Bringin’ It」を出した。日本のプロレス界を盛り上げた人には迫力のあるビッグバンドがよく似合う。ハイノートが小気味いいフレディ・ヘンドリックスに、エネルギッシュなフレーズに引き込まれるロン・ブレイク、ベティ・カーターに鍛えられたザヴィア・デイビス等、「元気が一番、元気があれば何でもできる」面々が並ぶ。斬新なオリジナル曲と、敬愛するフレディ・ハバード、マッコイ・タイナー、ウェス・モンゴメリーの楽曲構成は劇的な試合展開をみるようだ。

 国会議員としてフセイン政権下のイラクを訪れ、邦人人質解放に尽力しているし、北朝鮮との国交回復のために何度も足を運び、スポーツを通して友好を訴えた。1988年には観光も旅行も制限されていたソ連にプロレスラーを誕生させる目的で鉄のカーテンを潜っている。猪木さんにとっては地球もリングだったのかもしれない。享年79歳・・・人生の終わりを告げるゴングに涙す。
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

プロ野球という大看板がなくなる札幌ドームの施設命名権、一体全体誰が買う?

2022-10-02 08:32:33 | Weblog
 先月21日に札幌ドームが施設命名権(Naming Rights)を売却すると報じられた。スポーツ中継やニュースなどで命名した名称が出ることで宣伝効果が見込まれるからこそ企業がその権利を購入するのであって、日本ハムファイターズが来季から北広島市の新球場に移転してメディア露出が激減する施設を誰が買うのか。札幌市民の冷笑、嘲笑、嗤笑、失笑、譏笑、絶笑、放笑、爆笑が聞こえる。

 Rights と聞いて久しぶりにフィル・ウッズの「Rights Of Swing」を取り出した。61年の録音で58年のエピック盤「Warm Woods」以来のリーダー作になる。注目すべきはレーベルがナット・ヘントフ監修の「Candid」だ。僅か2年で消えたマイナーレーベルながらアビー・リンカーンの強烈な叫びに圧倒されるマックス・ローチの「We Insist!」や、黒人を差別した政治家を嗤った「フォーバス知事の寓話」で知られるチャールズ・ミンガスの「Mingus Presents Mingus」等、
メジャーレーベルとは一線を画す作品が多い。

 このアルバムは社会性が強いものではないが、当時ウッズが在籍していたクインシー・ジョーンズ楽団から選抜したメンバーで構成され、ウッズ自身の作、編曲という意欲的なものだ。ベニー・ベイリーをはじめカーティス・フラー、サヒブ・シハブ、ジュリアス・ワトキンスのホーンはよく鳴るし、ビッグバンドで培ったアンサンブルはタイトルの如くスウィングする。トミー・フラナガン、バディ・カトレット、オシー・ジョンソンの安定したリズム隊をバックに主役のウッズは気持ちよさそうに吹いているのでこちらも気分が良くなる。

 翌日の新聞に札幌ドーム社長のインタビューが載った。日ハム関連の売り上げは3割なので、ネーミングライツ売却で穴を埋めると。同じ紙面に札幌市は日ハム移転後に売上高が5割減ると出ていた。繋がった組織なのに損失額を誤魔化そうとするから差が出る。ドームも市もテレビ中継がなくなるためフェンスから撤去される広告収入を忘れてはいないか。引き算を勉強したほうがいい。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする