南部でのリンチを曲にした「奇妙な果実」。強い意志で人種差別を歌うビリー・ホリデイ。その歌詞を危険視したFBIは、歌うのを止めさせようとして麻薬使用で逮捕する。ビリーに扮したアンドラ・デイの歌唱力と演技力は見事なものだが、男運の悪さと薬物の悪癖ばかり強調され、シンガーとしての偉大さが描かれていないのは残念だ。
ビリーの熱心なファンは観ない方がいい映画「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」である。リー・ダニエルズ監督は汚い手を使ってまでビリーを執拗に追い詰める連邦麻薬局長官のハリー・アンスリンガーにスポットを当てたかったのか?ケネディ大統領に表彰される彼の実際の映像まで出てくる。デーヴィッド・マーゴリックの研究本「ビリー・ホリデイと奇妙な果実」(大月書店刊)には、この曲を歌いだしたら逮捕されたことは事実として書かれているが、Anslingerの「A」も出てこない。
映画だから事実と違うのは仕方ないとしても、B級ポルノのようなシーンが多く、ビリーはセックス依存症と言いたげだ。歌唱ばかりか人生に於いても重要なレスター・ヤングが頻繁に出てくるが、「Lady And Pres」という肝胆相照らす仲に見えない。2019年のドキュメンタリー映画「BILLIE」に使われていた出所後のカーネギーホール・コンサートの賑わいや、多くのファンが見守るなか棺が担ぎ出されるフィルムを挟みリアル感を出そうとしているのだが、これが何とも陳腐でストーリーに一体感がないのだ。
救いは所々に「All Of Me」が流れることだろう。エンドロールでプラダを着たアンドラがこのビリーが愛した曲を歌うシーンがあり、ユーモアもありニヤリとする。「奇妙な果実」はビリーが自伝のタイトルにするほどの重要な曲であるが、「All Of Me」こそ女としてのビリーに相応しいと思う。隣ではにかみながら吹くプレスを見つめるビリーは美しい。You took the best So why not take the rest Baby take all of me・・・
ビリーの熱心なファンは観ない方がいい映画「ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ」である。リー・ダニエルズ監督は汚い手を使ってまでビリーを執拗に追い詰める連邦麻薬局長官のハリー・アンスリンガーにスポットを当てたかったのか?ケネディ大統領に表彰される彼の実際の映像まで出てくる。デーヴィッド・マーゴリックの研究本「ビリー・ホリデイと奇妙な果実」(大月書店刊)には、この曲を歌いだしたら逮捕されたことは事実として書かれているが、Anslingerの「A」も出てこない。
映画だから事実と違うのは仕方ないとしても、B級ポルノのようなシーンが多く、ビリーはセックス依存症と言いたげだ。歌唱ばかりか人生に於いても重要なレスター・ヤングが頻繁に出てくるが、「Lady And Pres」という肝胆相照らす仲に見えない。2019年のドキュメンタリー映画「BILLIE」に使われていた出所後のカーネギーホール・コンサートの賑わいや、多くのファンが見守るなか棺が担ぎ出されるフィルムを挟みリアル感を出そうとしているのだが、これが何とも陳腐でストーリーに一体感がないのだ。
救いは所々に「All Of Me」が流れることだろう。エンドロールでプラダを着たアンドラがこのビリーが愛した曲を歌うシーンがあり、ユーモアもありニヤリとする。「奇妙な果実」はビリーが自伝のタイトルにするほどの重要な曲であるが、「All Of Me」こそ女としてのビリーに相応しいと思う。隣ではにかみながら吹くプレスを見つめるビリーは美しい。You took the best So why not take the rest Baby take all of me・・・