邦画かと思ったら、これはアメリカ映画だったのですね。
監督は「真珠の耳飾りの少女」「ハンニバル・ライジング」のピーター・ウェーバー。
岡本嗣郎のノンフィクション「陛下をお救いなさいまし 河井道とボナー・フェラーズ」が原作。
ゴダイゴの曲の作詞などで知られる演出家の奈良橋陽子が企画。
原爆投下のシーンから映画は始まり、それによって戦争が終結したというキャプションが。
そして、焦土と化した無残な日本の姿が画面いっぱいに。
進駐軍を率いて終戦直後の日本に降り立ったマッカーサー元帥(トミー・リー・ジョーンズ)から
太平洋戦争の責任者追究を命じられたフェラーズ准将(マシュー・フォックス)。
太平洋戦争の責任は誰にあるのか。
天皇の責任の有無は?
そこに、フェラーズと日本女性の恋愛が絡んで…
率直に言えば、周知のエピソードを並べ立てて作られた作品という感じで
しかも淡々としたストーリーで、それほど大きな感動はありませんでした。
日本の終戦直後の歴史に興味を持つアメリカ人がそうそういるとも思えないので
これは、日本での興行収入を狙って作られたハリウッド映画と考えてよいでしょう。
原爆投下で戦争は終わったなど、いかにもアメリカ目線です。
それでも、焼け焦げた東京の無残なシーンが画面いっぱいに拡がるのを見るのは
それだけでも胸が締め付けられる。
何もかもを失くし、飢え、目が虚ろな人々。
よくぞここから復興できたものだと。
そして例えば、近衛文麿(中村雅俊)がフェラーズ准将に
「日本の行った侵略行為は、かつての連合国のやり方を手本にしたものだった」
と言う場面。
日本が侵略したと責めるが、それは連合国から奪ったのであって
元々侵略した連合国は罪に問われないのに、どうして日本だけがこんなに責められるのか?と
詰め寄ったシーンは感動的でした。
アメリカ映画でよくここまで言わしめたものだと。
そしてクライマックスは、天皇とマッカーサーとの対談。
私は特に皇室擁護派ではありませんが
日本人の心の拠り所、故郷としての皇室の存在は、やはり意義のあるものと思っていますから。
自分の国に誇りが持てない子どもたちを育てているような今の教育には
一抹の不安がつきまとうので。
自分の国に誇れるものを持つこと、心の拠り所を持つ方が、
持たないよりもどれだけよいかと思わずにいられないのです。
観賞後読んだ資料によると、本作を企画した演出家の奈良橋陽子は
夏八木勲が演じた宮内省次官の関屋貞三郎の孫なのだそうです。
奈良橋は子供の頃から戦中戦後の事について祖父から聞いており、そこから
この企画を思いついたのだとか。
夏八木勲、天皇の側近として
「四方の海 皆同胞(みなはらから)と思う世に など波風の立ち騒ぐらむ」
という御製を詠じる場面など、いい味を出していました。
これが遺作のひとつとなったのですね。
「終戦のエンペラー」http://www.emperor-movie.jp/