
東南アジアに行く度に、その逞しい生活力や猥雑なエネルギーのようなものに
圧倒されます。
今回はここ、トンレサップ湖でそれを実感しました。
カンボジアの真ん中にある、東南アジア最大の淡水湖トンレサップ湖。
ここには豊富な魚が生息し、トンレサップ水系で採れる魚は
カンボジア人のたんぱく質摂取量の60%を占めるのだそうです。
そしてここには、夥しい数の水上生活者がいるのです。
Wikipediaによれば、水上生活者がくらす場としては世界最大規模であり、
1ブロック1万人、100ブロック以上100万人が住むのだそうです。

粗末な船に葦のようなもので屋根と壁を作っただけのような住居あり、
派手なペンキで板壁を彩色して、テレビのアンテナをつけた住居もあり。
大体が開け放しているので、中での生活が丸見えだったりします。
同じような住居の中に、雑貨店あり、食料品店あり、
ガイドさんによれば学校もあれば教会、寺院まであるのだそうです。

私は数十人乗りの大きな観光船に乗ってクルーズしたのですが
その船が進むと、小さなボートがわらわらと寄って来る。
そしてあっという間に我々の船に十歳前後の子どもが乗り込んできて
観光客の間を歩き回り、突然、後ろから肩を叩いたりしてくる。
肩叩きが気に入れば、1ドルのチップをくれということらしい。
一番驚いたのは、観光船の窓辺にいた私の鼻先に
いきなり赤ん坊の顔が押しつけられたこと。
小舟に乗った母親が音もなく観光船に近づき、
赤ちゃんを高く掲げて、お恵みを、ということだったらしいのです。
いやはや…

帰ってから調べてみたら
ここで水上生活を営む人の大半は、ベトナム難民だと言われているのだそうです。
確かにここなら土地は要らない。
人間ってこんなにも逞しいのですねえ。
