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新国立劇場で、オペラ「ドン・ジョヴァンニ」を鑑賞して来ました。
この劇場ではここ2~3年で「魔笛」「トスカ」「死の都」「ナブッコ」「リゴレット」など
色々観てきましたが、私にはこれが一番印象的でした。
何故なら私は映画「アマデウス」が好きで、何度も繰り返し観て、
「ドン・ジョヴァンニ」はその中に大きく出てきたからです。
タイトル・ロールは、ウィーン国立劇場の人気バリトン、アドリアン・エレート。
指揮はオーストリアの重鎮、ラルフ・ヴァイケルト。
プログラムの中の田辺秀樹氏の解説によると
歌劇「ドン・ジョヴァンニ」を作曲者モーツアルトの父親コンプレックスと関連付けて
理解しようとするのは、今では珍しいことではないのだそうです。
確かにあの映画の中で、モーツアルトの才能を妬む作曲家サリエリは
「ドン・ジョヴァンニ」の公演に何度も足を運び、ドン・ジョヴァンニが騎士長の亡霊によって
地獄に引きずり込まれるシーンで、こうつぶやくのです。
あの恐ろしい亡霊は、墓から蘇った父レオポルトだと。
父親は死後も息子に取り憑いて、完全に支配していると。
「ドン・ジョヴァンニ」は、父親の死後数か月間で作曲された歌劇なのだそうです。
ザルツブルクの宮廷音楽家であった父レオポルトによって
息子ヴォルフガングの才能は育てられ、花開いた。
しかし息子の就活や恋愛、結婚、仕事について父親はことごとく反対し、
モーツアルトの生涯において、父親との葛藤は最大の問題であったというのです。
その葛藤と心理的抑圧を抱えてこそ、あの数々の名曲は生まれたのだと。
あの映画の中では、モーツアルトは実に軽佻浮薄な男として描かれていましたが
父親への複雑なコンプレックスを確かに抱えていたなあ…
ザルツブルクでモーツアルトの家を訪れました。
そこは観光名所となっており、世界中から観光客が集まっていました。
父レオポルトへの手紙、というのも展示してあった気がする。
天才作曲家のその活動の原動力が、実の父親との葛藤であったとしたら…
親子関係って難しいものだとつくづく思います。