![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1f/35/3220aa40fa1fdc0f6e7d8f303c9060b8.jpg)
私は「遠い太鼓」や「雨天炎天」などの、春樹の紀行文が好きなのです。
久しぶりのこの新作、楽しみにしていました。
ボストン、アイスランド、ミコノス島、NY、フィンランド、ラオス、トスカナ、熊本などを巡る、
幾つかの雑誌に書かれたものを集めたという紀行文集です。
丁度私が去年行ったばかりのミコノス島やNY(しかもヴィレッジ・ヴァンガード!)が
出て来るなんて、これは嬉しい。
一つ残念だったのは、この旅のうちの殆どはカメラマン同行で行ったらしいのに
写真がとても少ないこと。
しかもその少ない写真のうちの何枚かは、著者のポートレート。
例えば、ラオスの紀行文の中で
”僕はルアンプラアバンの街でいろんなものを目にした。
寺院の薄暗い伽藍に無数に並んだ古びた仏像や、羅漢像や、高名な僧侶の像や、
その他わけのわからない様々なフィギュアの中から、自分が個人的に気に入ったものを
見つけ出すのは、ずいぶん興味深い作業だった。”
という文の横にあるのは、ラオスのホテルのポーチで読書する著者の写真。
ポーチの白い壁と藤の椅子と著者が映っているだけ。
ルアンプラアバンの街並み、寺院の伽藍や仏像の写真なんて一枚もない。
ギリシャ編に関しては、3枚のうち3枚までに著者が映っている。
いや、作家ってやっぱり自己愛が強いのかしらん…?
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/71/37/4138a2f816357dc5f8f50cbd0b2a8538.jpg)
タイトルの「ラオスにいったい何があるというんですか?」というのは
著者がラオスに行く途中に、中継地のハノイで、あるヴェトナム人から発せられた質問であるらしい。
ヴェトナムにない、一体何がラオスにあるというんですか?と。
(その質問に対して)
”僕は今のところ、まだ明確な答えを持たない。
僕がラオスから持ち帰ったものといえば、ささやかな土産物の他には、いくつかの光景の記憶だけだ。
でもその風景には匂いがあり、音があり、肌触りがある。
そこには特別な光があり、特別な風が吹いている。(中略)
それらの風景が具体的に何かの役に立つことになるのか、ならないのか、それはまだわからない。
結局のところたいした役には立たないまま、ただの思い出として終わってしまうのかもしれない。
しかしそもそも、それが旅というものではないか。
それが人生というものではないか。”
ここは綺麗にまとめられすぎているような気がしますが
全体に力を抜いて書かれたような感じの、ゆるくて楽しい紀行文集です。
「ラオスにいったい何があるというんですか?」 http://tinyurl.com/h3kmupw