
パリの高校で哲学を教える50代後半のナタリー(イザベル・ユペール)。
ある日突然、夫に好きな人ができたと離婚を切り出され、
年老いた母親も他界、付き合いの長かった出版社からも契約を打ち切られる。
バカンスシーズンを前に一人ぼっちになってしまい、途方に暮れるナタリー。
予告編で、おおよそ以上の情報を得てからの鑑賞。
自分と同じ位の歳のヒロインが、人生の困難をどんな風に乗り越えていくのかと
楽しみにしていました。
しかし…

ナタリーが泣いたり怒ったり、騒いだりするシーンは殆どない。
何が起きても淡々と受け止め、諦念しているように見える。
一人になって、一番可愛がっていた教え子の所で彼女は休暇を過ごすのですが
彼からも、彼女の生き方を否定するようなことを言われる。
これだけのことが立て続けに起きたら
私だったら鬱になるか、ヒステリーを起こしていると思うのだけど。
映画の冒頭から彼女はセカセカと歩き廻るのですが
何が起きても、それは変わらない。
年中せわしなく歩き回るのは、立ち止まりたくないという彼女の意思の表れなのか。

結局私は、ヒロインに感情移入できないままに終わってしまったのでした。
「それでも人生は続く」映画の一つということなのか。
大体私は、映画の中で引用される哲学者アランの
「それがかなえられないものであり、幻であっても、希望を持つことそれ自体が幸福なのだ」
という言葉にも、全く納得できないのです。
叶えられない希望なんて、持つだけ無駄じゃないかと思ってしまう。
終盤で一人の部屋に帰った彼女、そして流れる「オーマイラブ、マイダーリン」と
いう「Unchained Melody」は心に深く沁みましたが…

原題「L'AVENIR」(THINGS TO COME)
公式HP http://crest-inter.co.jp/mirai/