参りました。
戦闘シーンは一つもなくても、ここまで戦争の残酷さを訴えることができるのかと。
第二次大戦ドイツ降伏直後の、史実に基づいた物語。
1945年5月、デンマークはナチスドイツの占領から解放されるが
その海岸線には、200万個もの地雷がドイツ軍によって埋められていた。
その膨大な数の地雷を撤去させられたのが、現地で捕虜となっていたドイツ兵。
しかもその殆どが、戦争末期に徴兵された、兵役年齢に達していない少年兵たち。
彼らがどうやって地雷を撤去するのかというと
何の防御装置もなく、浜辺に腹這いになって、細長い棒で砂をつついて探すのです。
棒が地雷に当たったら、それを素手でそっと掘り出し、信管を外す。
ちょっと強く当ててしまったら爆発するし、処理を間違えても爆発する。
静かな砂浜に少年たちの心臓の音が聞こえるようで
こちら側も、手に汗を握って観ることになります。
そして実際、少年たちは次々と被曝して行く。
画面には青い海、白い砂浜、腹這いになって必死に探す少年たち。
いきなり凄まじい爆音がして巨大な炎が吹き上がり、そこに大きな穴が開く。
穴の中には、或いはその周りには、五体を吹き飛ばされた少年が。
手足を吹き飛ばされ、家に帰りたいと泣く少年。
或いは燃え上がって、黒焦げの塊になってしまった少年。
当初14人いた少年たちは、4人になってしまうのです。
彼らを監督するのは、デンマークの鬼軍曹。
作品冒頭、何の落ち度もない若いドイツ兵を情け容赦なく殴りつけ、
その暴力性に唖然とさせられます。
ドイツ軍に家族を殺されでもしたのか、或いは職業軍人としての矜持なのか、
そこは何も語られない。
地雷撤去の少年兵たちにも、最初はこれでもかと厳しく当たる。
しかし一緒に過ごすうちに、鬼軍曹にも父性が目覚めて来る。
軍曹の中の、憎しみと赦しと、どちらが最後に勝つのか?
実際にこの作業に当たった2千人の歳若い捕虜の、
半数近くが命を落としたのだそうです。
そしてこの史実は、デンマークでも殆ど知られていなかったのだと。
自国の暗部を明るみに出して、冷静に描き切ったデンマークの新鋭、
マーチン・サントフリート監督に拍手を。
地雷というものは、非常に安く作ることができるのだと
以前、読んだことがあります。
安いものは1個2~3ドルでできるのだと。
しかしその除去には、気が遠くなるような手間と費用がかかる。
1999年3月1日に発効した対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)に
アメリカ、ロシア、中国といった地雷生産大国は加盟していないのだそうです。
そして今も作り続けているのですね。
英語題は「Land of Mine」(地雷の国)
「ヒトラーの忘れもの」 http://hitler-wasuremono.jp/