
息苦しい映画です。
観終わった時には肩で息する、疲労困憊状態。
第二次大戦中、フランス北部ダンケルクの浜の、ドイツ軍に追い詰められた英仏軍40万人の救出作戦。
駆逐艦が救出に向かうも、空と海から次々と爆撃を受け、
ようやく乗り込んだ兵士たちも、再び戦局の海へ放り出される。

防波堤で救出を待つ兵士トミー、その兵士たちを救出に向かう民間船の船長ドーソン、
その救出を無事成功させるために空で戦う空軍パイロット、ファリア。
その3人が主な登場人物で、彼らの目線で物語は進むのですが
3人の性格も背景も、ろくに語られない。
特にトミーは、浜で悄然と救いを待つ、膨大な数の兵士のうちの一人に過ぎず、
ようやく船に乗れたと思ったら爆撃されて沈められ、
海に漂う重油で顔も真っ黒になり、他の兵士と殆ど見分けがつかなくなる。

まあでも、実際はそんなものなのだろうとも思います。
戦争において、歴史に残る、キャラの際立つ有名兵士はほんの一握りで、
殆どの兵士がトミーのように「その他大勢のうちの一人」で、
あのような状況においては訳も分からず、逃げ惑うしかないのだろう。
そして視聴者も、トミーと一緒に何度も海に沈められることになる。
ハンス・ジマーの、神経を逆撫でするような不協和音の音楽から逃げることもできず、
何度も溺れさせられ、息苦しいことこの上ない。

うっすらと対岸(イギリス)が見えるほどに近い所にいるのに帰国できないとは
どんなに悔しかったことだろう。
軍艦が次々に爆撃され絶望感漂う浜に、ユニオン・ジャックの小旗をはためかせた
無数の民間の小舟が近づいて来た時は、どんなに嬉しかったことだろう。
実際に、貨物船や遊覧船、漁船などの900隻もの民間船がこの時、救出に駆け付け、
この救出作戦は成功したのだそうです。
一般市民と兵士が協力して仲間を救おうという精神を「ダンケルク・スピリット」といい、
英国人の誇りとして、今も語り継がれているといいます。
あまりにも英国礼賛の作品で、多少鼻に付くこともあったのですが…
ようやくのことで救出されて、帰国した兵士たち。
勝つこともできず、民間人に助けられて帰るなんてと恥じ入る兵士たちを
生還できてよかったと、歓声や毛布や紅茶で暖かく迎える市民たち。
これが日本だったらどうだろう?とつい考えてしまいました。
お国の為に散ることが美とされ、あれだけの数の特攻兵を送り出した日本だったら…?

しかしあの、自分を犠牲にして敵機を攻撃し続け、ダンケルクの浜に不時着した
空軍パイロットのファリア。
戦闘機スピットファイアが燃え上がり、ドイツ兵に囲まれるところで
画面は終わってしまいましたが、あの後どうなったのだろう?
捕虜になったのならいいけれど、蜂の巣にされたりしなかったのかしらん?
クリストファー・ノーラン監督。
公式HP http://wwws.warnerbros.co.jp/dunkirk/