Zooey's Diary

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ある少女の夢「ガール」

2019年07月18日 | 映画

15歳の少女ララの夢はバレリーナになること。
難関のバレエ学校への入学を果たし、血のにじむような努力をするが、
トランスジェンダーである彼女にとって、それは平坦な道ではなかった。

清楚な美少女のララが、長いブロンドの髪を後ろに結ってレオタードを着ると
胸がまったく平らであることに、観る側は違和感を覚えます。
どうしても目立たせたくないという彼女の意向で、男性器をガムテープで堅く押さえつけ、
おかげで肌に炎症を起こし、トイレに行くのもままならない。
おまけに第二次性徴を迎えている彼女の身体は、精神的には女である彼女の意向に
逆らって、色々な問題を引き起こす。
外科的な性転換手術は18歳まで待たなければならず、彼女は次第に追い詰められていく…



ララを演じているのはどういう人だろう?と、観ていて猛烈な興味を持ちました。
ベルギーのアントワープ・ロイヤルバレエスクールに通う現役トップダンサー、
ビクトール・ポルスター。
彼は普通の男性であり、500人を超える候補者の中から選ばれたのだそうです。


私はバレエを観るのは好きで、新国立劇場、Kバレエ・カンパニーなどで
毎年、様々な舞台を観ていますが、男性と女性の踊りは違います。
男性ダンサーは普通、ポワント(トゥシューズを履いてつま先立ちで踊ること)はしない。
ビクトールも当然、ポワントは未経験であったが、この役のために猛練習をして
代役なしで、あの踊りのシーンが多い撮影をこなしたのだそうです。
画面の中でララは何度もトゥシューズの中で血を流していましたが
それは実際、ビクトール・ポルスターにも重なるところがあったのでしょう。



意のままにならない身体。
周囲からの好奇の目やいじめ。
只でさえ難しい思春期の身体と心の揺れに、トランスジェンダーとしての苦悩が重なり、
激しく踊る彼女を写す画面は、彼女の心を表すように大きく揺れていく。
彼女を心配する父親が、実に理想的な慈愛に満ちた親なのですが
彼に「大丈夫か?」と聞かれるのが、ララは嫌でたまらない。
「お前はいつも大丈夫としか言わない」と嘆く父親。
「だって大丈夫じゃないから」とララ。
そして彼女は、衝撃的な結末を引き起こすのですが…



2009年にベルギーの新聞で、トランスジェンダーの少女がバレリーナになるための葛藤を
記した記事を読んで、当時18歳のルーカス・ドン監督は衝撃を受けたのだそうです。
それから9年の歳月をかけて完成したという本作。
第71回カンヌ国際映画祭でカメラドール(新人監督賞)、ある視点部門の
最優秀演技賞、国際批評家連盟賞受賞。


映画「Girl/ガール」
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