TPP交渉の、深淵
アメリカ合衆国憲法・第1条第8節3項には、
アメリカの通商問題の決定権限は、各州政府にある、と記載されている。
つまり大統領にも、上院・下院議会にも、
さらに商務省にも決定権限は無い事になる。
商務省が存在しているにも関わらず、
米国政府がUSTRという別組織を作り、
通商問題の「意見取りまとめ」を行わなければならない理由は、ここにある。
これは議会=国会で地域性の高い問題、
一例として、カリフォルニア州が日本への、コメ輸出問題で強硬な政策を提出した場合、
別の州から選出された議員が、
「軍事上、同盟関係にある日本への強硬政策は好ましくない」と、
国家全体を見た「バランスある政策」を主張し、
緩和剤となる可能性のある物が、
国会ではなくカリフォルニア州の州議会がコメ輸出問題を決定するため、
地域エゴが露骨に出た強硬政策が採用される事を意味している。
また軍部・CIAが、政策を操作・誘導しようと考えた場合、
国会全体をコントロールするよりも、
はるかに容易に州議会であれば、コントロールし、支配する事が可能になる。
日本に対する、コメ問題のような通商問題に、
露骨にCIA・軍部の意向が直接、出て来る理由は、この憲法問題にある。
米国は、憲法修正条項を次々と作り、
しばしば憲法を変える国であるが、
米国の西部開拓時代、
先住民(インディアンと差別的に呼ばれてきた)との抗争・交渉=通商問題を、
一々、馬を走らせ政府首脳に「お伺い」を立てずに、
各地域ごとに「自由に交渉して良い」という意味で作られた、
この極めて古い合衆国憲法1条8節3項が、
基本部分を変更されずに、現在も使用されている理由は、
米国の通商政策を大統領・議会・政府から「取り上げ」、
CIA等の諜報機関、軍部の「自由裁量の下に置こう」と言う、
一種の「政府の骨抜き政策」、
極言すれば政府から決定権を奪い取る「クーデター目的」が、
主調低音として、この法律問題に継続してきた事を意味している。
日本が食料自給を高めるために、
交渉しなければならない相手が、アメリカ国家でも政府でもなく、
日本政府の、はるかに手の及ばない州政府・州議会にある事、
そこまで触手を伸ばし、交渉と情報操作を行う情報活動=諜報活動の能力が、
TPPに「参加表明」する日本側に「課題として」要求されている事になる。
この準備が全く整っていない日本政府の姿勢は、銃弾の乱れ飛ぶ戦場を全裸で走り回っているような無防備そのものとなっている。