極東極楽 ごくとうごくらく

豊饒なセカンドライフを求め大還暦までの旅日記

海の静脈巡礼の明日

2013年06月24日 | 環境工学システム論

 

 

【アサリが獲れない】

今朝からの作業で面白いことに2つのニュースが交差した。 その1つがNHKテレビ放送の「ア
サリをカキが救う? 国産アサリ復活の秘策」で、もう1つが、理化学研究所の「“土に還る”バ
イオマスの分解・代謝評価法を構築」というものだった。全差の前者のキャッチは「ここ数年、
国的にこれまでにない不漁が続くアサリ。今年は多くの産地がさらなる不漁に見舞われ、潮干
狩り
の中止にまで追い込まれました。原因はさまざまですが、干潟の環境悪化もそのひとつです。
そん
ななか三重県鳥羽市では、研究者と漁業者が協力して、環境が悪化した干潟でもアサリが育つ
新た
な養殖法を開発し、全国から注目を集めています。特産のカキの殻を使ったその秘策とは?」
とい
うもの。さっそくネット検索でニュース源と関連新規考案を確認。前者は2010年11月16日独立
行政
法人「水産総合研究センター」主催の会合同部会で養殖研究所は日向野純也博士の「アサリの天然
採苗および養殖におけるカキ殻加工固形物(ケアシェル)の利用」による。

 

干潟に農業排水や都市排水による排水有機物系の汚染物質が流入蓄積するとそれが還元分解され、
硫黄菌による硫化水素が生成排出されそれによりアサリの浮遊幼生が死滅するため、この硫化水素
を無毒化(カルシウムで中和)すればよい、その中和剤を牡蛎の貝殻でるくるということなのだが
それでけでなく、アサリの天然採苗・垂下養殖すれば、干潟がなくとも養殖でき生産性が上げれば
いいではないかということになり、ほかの貝類にも応用展開できるということで、世界中の貝類の
生産が日本の知財
で解決できる、基本的には。そうすればムール貝が好きなだけたべられる。^^;

また後者は、樹木や草花が春になると若葉や芽を出し、秋から冬にかけて葉を落としたり枯れたり
し、土へと還っていくのだが、地面に落ちた葉は土壌中の生物群により分解され栄養となり、それ
を糧として次の春にはまた新たな芽をつけるというサイクルを繰り返している(バイオマス・サイ
クル)が、今回、この土壌生物群による分解・代謝のメカニズム(循環システム)を包括的評価で
きる環境評
価技術を構築したというのだ。

この研究の実験では、稲わらのリグノセルロースを粉砕して立体構造を変化させ、その立体構造や
組成、熱力学的性質などを評価し、立体構造の変化によって微生物による共代謝の場がどう変化す
るかを調べ、リグノセルロースの立体構造の違いで分解代謝物が異なり、産生量も大きく変化する
ことや、分解した構造の違いでそれを利用する微生物群が変化し、最終的にそれぞれ異なる微生物
群集を形成することが分かった
という。リグノセルロースの持つ高次構造が、分解・代謝の経路や
微生物種などの微生物生態系に大きな影響-土壌中で起きている共代謝反応の化学的な理解や、農
林業や地球化学に関する土壌評価などへ応用できるとしたされている。また、これは映画『奇蹟の
りんご』の科学的な説明として使えるニュースになった。

【もう一丁】

 

上の写真は、最近、欧州連合(EU)は、果物や野菜などの表皮にレーザーでラベルを刻むことを許
可。紙製ラベルより環境汚染を減らしながら、コストを削減してくれ、果物の表皮を傷つけないう
ちに、自由自在に文字や画像などを刻まれていてとっても使いやすいというのだ。Qコードなども
刻印できるからトレサビリティーは充実できる。農水林業の工業化のあるいは高度化の促進に役立
つ。魚介類にも刻印できる。そうすると事業規模が算定でき、産業の活性度も測定できる。これも
面白いニュースだ。
 

 

 


  I once had a girl or should I say she once had me?
 She showed me her room "Isn't it good, Norwegian wood?"

 She asked me to stay
 And she told me to sit anywhere
 So I looked around
 And I noticed there wasn't a chair

 I sat on a rug, biding my time
 Drinking her wine
 We talked until two
 And then she said, "It's time for bed"

 She told me she worked in the morning
 And started to laugh
 I told her I didn't
 And crawled off to sleep in the bath

 And when I awoke I was alone
 This bird had flown
 So I lit a fire
 Isn't it good, Norwegian wood ?

 

 

  

 

  遠くでヘリコプターの音が聞こえた。こちらに近づいてくるらしく、音はだんだん大きくな
 っていった。彼は空を見上げ、機影を求めた。それは何らかの大事なメッセージを持った使者
 の到来のように感じられた。しかしその姿はとうとう見えないまま、プロペラの音は遠ざかり、
 やがて西の方向に消えていった。あとには柔らかくとりとめのない、夜の都市のノイズだけが
 残った。

  シロがあのとき求めていたのは、五人のグループを解体してしまうことだったのかもしれな
 い。そういう可能性がつくるの頭にふと浮かんだ。彼はベランダの椅子に座り、その可能性に
 少しずつ具体的なかたちを与えていった。
 
  高校時代の五人はほとんど隙間なく、ぴたりと調和していた。彼らは互いをあるがままに受

 け入れ、理解し合った。一人ひとりがそこに深い幸福感を抱けた。しかしそんな至福が永遠に
 続くわけはない。楽園はいつしか失われるものだ。人はそれぞれに違った速度で成長していく
 し、進む方向も異なってくる。時が経つにつれ、そこには避けがたく違和が生じていっただろ
 う。微妙な亀裂も現れただろう。そしてそれはやがて微妙なというあたりでは収まらないもの
 になっていったはずだ。

  シロの精神はおそらく、そういう来るべきもの圧迫に耐えられなかったのだろう。今のう
 ちにそのグループとの精神的な連動を解いておかないことには、その崩壊の巻き添えになり、
 自分も致命的に損なわれてしまうと感じたのかもしれない。沈没する船の生む渦に呑まれ、海
 底に引きずり込まれる漂流者みたいに。

                     -中略-

  彼の心は沙羅を求めていた。そんな風に、心から誰かを求められるというのは、なんて素晴
 らしいことだろう。つくるはそのことを強く実感した。とても久しぶりに。あるいはそれは初
 めてのことかもしれない。もちろんすべてが素晴らしいわけではない。同時に胸の痛みがあり、
 息苦しさがある。恐れがあり、暗い揺れ戻しがある。しかしそのようなきつさでさえ、今は愛
 おしさの大事な一部となっている。彼は自分か今抱いているそのような気持ちを失いたくなか
 った。一度失ってしまえば、もう二度とその温かみには巡り合えないかもしれない。それをな
 くすくらいなら、まだ自分自身を失ってしまった方がいい。

 「ねえ、つくる、君は彼女を手に入れるべきだよ。どんな事情があろうと。もしここで彼女を
 離してしまったら、もう誰も手に入れられないかもしれないよ」

  エリはそう言った。彼女の言うとおりなのだろう。何があろうと沙羅を手に入れなくてはな
 らない。それは彼にもわかる。しかし言うまでもなく、彼一人で決められることではない。そ
 れは一人の心と、もう一人の心との間の問題なのだ。与えるべきものがあり、受け取るべきも
 のがある。いずれにせよすべては明日のことだ。もし沙羅がおれを選び、受け入れてくれるな
 ら、すぐにでも結婚を申し込もう。そして今の自分に差し出せるだけのものを、それが何であ
 れ、そっくり差し出そう。深い森に迷い込んで、悪いこびとたちにつかまらないうちに。

                     -後略- 

                                     PP.361-370                         
                村上春樹 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』


こうして、冷静でいつもクールに自分のペースを守る多崎つくるは-冷静でもなければ、常にクー
ルに自分のペースを守っているわけでもなく、自分の抱える重みを支点の左右に、習慣的にうまく
振り分け-沙羅を求め、そしてこの物語は結ばれる。現代の純愛物語風小説というべき作品を熟っ
くりと読んでみて、構成のスケール違いを除けば、初期の1979年の作品『風の歌を聴け』を骨太に
貫く春樹イズムの音律(しら)べに引き込まれていたことに気付いた。

                                       この項了

 

例の、入水自殺未遂のニュースをテレビで見ていると、いつごろ彼と仕事上クロスしたのかの記憶
が戻って
くる。中国プラントでご一緒して、帰国後、シャドウマスクのフォトファブの前工程(レ
ジスト塗布・露光)の生産
会議だった。彼は浸漬コータの専門家で、帯状の低介在マスクローラ材
燐青銅(リンセイドウ
切断工程時に発生するデブリ(飛沫破片)の持ち込みによる収率低下問
題の解決が具体的なコ
ンタクトがはじめであり、寡黙で腹の据わった好印象が残っている。その後、
骨太な事業開発を目指して
いたわたしと袂をわかち、彼は早期退職の道を選んだ。その意味におい
て彼と私の関係は十全だ
ったと思いたい。と、そう彼女に話し、問題解決に同伴できなことの残念
さを伝えた。

 

コメント
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