宇宙塵
アーティスト: atomicfarm
発売日:2016/12/14
品番:SZDW-1027
メディアタイプ:CD
ディスク枚数:1
価格:¥2,376(税込)
1. alien spell
2. きみをかいたい
3. 太陽 (扉を閉めている)
4. したい列車
5. からくり人間
6. たんぽぽ
7. つばめの仔
8. 宇宙塵
9. 4粒のざくろ
10. わらうきみたち
11. どろりぞろとたん
12. alien blues
今年の1月にサザナミレーベルから『原子力牧場の世界』で全国デビューを飾った"静岡の秘跡"atomicfarm(アトミックファーム)の新作が早くも登場。前作が過去の楽曲の再録音中心だったので、今作が本当のニューアルバムと言っていい。まず印象的なのは今までになく開放的なアートワークである。前作以前の彼らのアルバムはもよぽんによる奇怪なイラストが表紙を飾りどれも内向性を秘めた装丁だった。『原子力牧場の世界』にしてもシド・バレット似のもよぽんのポートレートを囲むサイケ文字は心の内側を吐露するのみで、外界へ開かれた意志を感じさせるものではなかった。
⇒初の全国流通盤が本日発売!atomicfarm(アトミックファーム)『原子力牧場の世界』
真っ青な青空をバックに聳えるモノリスはしかしながら地球上の創造物ではない。そう考えればグラデーションがかった青過ぎる空を見上げる私が立つ大地は、青い地球の豊穣な草原ではなく、空気の薄い星のひび割れたプラスチックの鏡面かもしれない。鏡の上に踏み締めるピンヒールの踵から扇状に広がる亀裂が、どう見ても不自然なほど規則正しい放物線を描いている。それに気付いたが最後、5インチの銀盤から流れ出す妙なるロックンロールミュージックが、果たして人間(ホモサピエンス)が自らの頭脳や手足を用いて演じて(PERFORM)いるかどうか確信が持てなくなり、そもそも自分自身からして、もしかしたら自律した感情を持つ生命体ではなく、誰かの記憶を植え付けられたアンドロイドかロボットに過ぎないのではないかとの疑念に囚われて、いても立ってもいられず、モノリスによじ登って天海に向かって全身全霊のSOSを手旗信号で発信するしか望みがない、無限の悲劇が繰り返される。
atomicfarm - 漂流 / Wandering
冒頭から飛び出すエフェクティヴなギタープレイは、形而上学的人間観察に基づいた高度な計算テクニックを応用したに違いない。自らの楽しみを聴き手と共有する親和性エフェクトを如何にして評価すればいいのか、言葉は無理でも絵に描くことは可能だろうが、残念なことにオレには絵心がない。やはり音楽には音楽で返答すべきだと思ったが楽器はすべて売り払ってしまった。だからこんな戯れ言を垂れ流している訳だが、そんな暇があるなら『宇宙塵』を何度もリピートして聴く方が百万倍有意義だろう。聴きながら彷徨う心の行方を問いただして、自らの矜持を正すが良い。
【Trailer】 atomicfarm - 宇宙塵
紙幅もそろそろ尽きてきたが、最後に内容について多少触れておこう。ヴォーカルのヴァラエティとギターの凝り方が更にエスカレートし、曲調も幅が広がった本作には、此れまでにないボサノバやバラード調の曲も在るが、もよぽんの中性的・演劇的歌唱により、どの曲も異世界の響きに溢れている。オレとしては「きみをかいたい」「からくり人間」のリズミカルなポップさ、「たんぽぽ」「宇宙塵」のメローなリリシズムが白眉。また、「どろりぞろとたん」のメルヘン妖怪奇譚も捨て難い。
あなたも是非、自分の推し曲からはじめて、放射能のように拡散して行くatomocfarmの世界を堪能して欲しい。
宇宙塵
惑星吐息
地球人
▼別の世界の宇宙塵
姚嘉兒 - 宇宙塵
姚嘉兒(ヤオチャー):
1986年7月19日香港生まれの女性シンガーソングライター(30歲)。ニックネームは「ヴィーナス(金星)」。「宇宙麈」は最新アルバム『Forever 永遠的 28』(2016年5月27日リリース)に収録。