
Ordvician Flowers VOL.6@ Ikenoue Bar GARIGARI
SACHIKO, NORD, JUNKO + Takayuki Hashimoto, Sarry (from Osaka)
open 19:00 start 19:30 charge 2000yen + drink

井の頭線池ノ上駅前すぐの地下にあるバー「GARIGARI(ガリガリ)」は高円寺「無力無善寺」と並ぶ魔窟ライヴハウスである。内装の毳毳しさや姦しさや禍々しさは似ているが、超ドメスティックな無善寺に比べ無国籍感抜群のガリガリは、ヴードゥー経の邪神が奉ってある気がする。この現場でライヴを体験するのは3年半前の2013年12月奇しくも橋本孝之の属するコンテンポラリー・ミュージック・ユニット.esの初の東京ツアー以来。細かく見比べた訳ではないが、この店内は時間の経過の仕打ちを全く被っていないかのように思える。レーベル「Musik Atlach」が主催するイベント「Ordvician Flowers」の6回目。
⇒T.美川+.es(ドットエス)/Tangerine Dream Syndicate/浦邊雅祥/冷泉@池ノ上GARI GARI 2013.12.15(sun)
●Sachiko

かつては光束夜、OVERHANG PARTYのベーシストとして8,90年代地下音楽の屋台骨を支え、現在はヴォイス/エレクトロニクス奏者としてソロ/コラボ活動する女性ミュージシャン。「Musik Atlach」主宰者でもある。都合で最後の10分間しか聴けなかったが、電子ドローンの中に浮遊するファムファタルのオーラはガリガリの邪神への鎮魂歌であった。
●Junko+Takayuki Hashimoto

非常階段の歌姫としてだけではなく、一個体のノイズ有機体として世界中の極端音楽界と交わる交歓留楽声=Junkoと、コチラもユニット.esとは別に単独で他流試合や道場破りを実践するエクスペリメンタル音楽シーンの鬼才=橋本孝之の、ほぼ初対面コラボレーション。高周波ノイズで評判の両者だけに、左右の鼓膜が破裂する超音波の鬩ぎあいを予測したが、正反対の敬意と親愛の念に満ちた仲睦まじいデュエットに心が和んだ。声とサックスのアヴァンチュールの行方に注目したい。
●NORD

何も無いステージに大量の電子機器が運び込まれる。ぼんやり光を放つエフェクター群の前に座った片山智はマッドサイエンティストにしか見えない。後方左に内田静男、右に長谷川洋が黒子のように控える。お香に火をつけ、煙が店内に漂い始めると同時に、低い電子音が流れ出す。お経の呟き、嵐の前兆の風雨、水中の破裂音、遠くの咆哮、様々な音が浮かんでは消える。極めて映像的だが、視覚的に風景を幻視するのではなく、飽くまで聴覚刺激として脳内に現出するサウンドヴィジョンの物語である。映像の無い音だけの夢に引き摺り込まれる感覚は、真のサイケデリックと言えるかもしれない。
●Sarry

2004年から大阪で活動を続けるふじゆき(vo)と821(b)からなるデュオ。.esとの共演も多く、橋本孝之が先輩として慕う関係だと言う。サンプラーを多用してベースだけで産み出すダークなアンビエントトラックの上にクリスタル・ヴォイスが漂うスタイルは、巫女のような呪術性に溢れていて、魔窟の装飾に良く似合う。時にハードコアやヘヴィロックと化すベースプレイは、アンビエントよりもロックに魂を捧げているように思えた。ロングセットを体験してみたい。
魔窟には
魔術を歌う
ひとがいる

