TRIO 3 Andrew Cyrille, Reggie Workman, Oliver Lake / VISITING TEXTURE
Intakt CD 282 / 2017
Andrew Cyrille: Drums 1939年11月10日生 77歳
Reggie Workman: Bass 1937年6月26日生 79歳
Oliver Lake: Saxophone 1942年9月14日 74歳
1. Bumper (Oliver Lake) 5:39
2. Bonu (Oliver Lake) 6:07
3. Composite (Cyrille, Lake, Workman) 6:39
4. Epic Man (Andrew Cyrille) 7:47
5. Stick (Oliver Lake) 4:55
6. A Girl Named Rainbow (Ornette Coleman) 6:59
7. 7 for Max (Andrew Cyrille) 2:50
8. Visiting Texture (Reggie Workman) 10:41
ジャズは死すともフリー(自由)は死せず。あわせて230歳の長老トリオから自由になれない人類へのメッセージ。
何でも今年は『ジャズ100周年』らしい。その起源は1917年にオリジナル・ディキシーランド・ジャズ・バンドが初めて「ジャズ」という単語を明記した商業用レコードを録音したことだという。つまりジャズ・レコード発売100周年と言う訳だ。ロックンロールが産まれたのは、ビル・ヘイリー&ヒズ・コメッツ「ロック・アラウンド・ザ・クロック」が映画『暴力教室』の主題歌として使われた1955年と言われる。音楽の起源など誰にも分かる訳が無いから、指標としてレコードや映画に登場したことを発祥としているのだろう。
100年のジャズの歴史の4分の3を生き抜いて来た三人のミュージシャンによるトリオ3は、恐らくジャズの遺伝子を尤も濃厚に継承するグループと言っていいだろう。その遺伝子の大部分は50年代末にニューヨークのジャズバーで産声を上げた(とされる)フリージャズのウイルスに感染しているようだ。アンドリュー・シリルはセシル・テイラーのドラマーとして11年に亘り活動、レジー・ワークマンは後期ジョン・コルトレーンやアーチー・シェップのグループに在籍、そしてオリヴァー・レイクは言わずと知れたセントルイスのBAG(ブラック・アーティスト・グループ)の核であり、70年代ロフト・ジャズの中心的存在としてシーンを育んできた。3人は90年代後半からトリオ3を名乗ってレコーディングとライヴ活動を続ける。アルバムは10作を超え、ニューヨークのヴィレッジ・ヴァンガードやブルックリンのロフトにことあるごとに出演している。
70歳を超えて現役で活動するミュージシャンは少なくないが、レギュラー・グループとして継続的に作品を発表している例は珍しい。しかもトリオ3は2007年からイレーネ・シュヴァイツァー、ジェリ・アレン、ジェイソン・モラン、ヴィジェイ・イヤーといったピアニストをゲストに迎え、表現の地平を開拓する意欲的な活動を行ってきた。活動20年目にあたる今年の最新作は、そういった共演で得た大きな許容力を三人だけで最大限に活用し、音楽的宇宙のビッグバンを追求するイマジネーション溢れるジャズ作品に仕上がった。最早技巧の確かさをひけらかすことは無く、自然体で奏でられる自由な旋律に、雁字搦めの現代ジャズ・シーンを解放する魔術が秘められている。円熟という避難所に身を阿ることを潔しせず、闘い続ける活動家の信念よ。
円熟の
境地に至る気
毛頭ない
Trio 3 - Oliver Lake, Reggie Workman, Andrew Cyrille at Vision Festival 17 - June 16 2012