People / 3x a Woman: The Misplaced Files
Telegraph Harp 2014
Mary Halvorson (g)
Kevin Shea (of Mostly Other People Do the Killing) (ds)
Kyle Forester (b)
Peter Evans (tp)
Sam Kulik (tb)
Dan Peck (tuba).
1 . A Song With Melody And Harmony And Words And Rhythm
2 . Supersensible Hydrofracked Dystopia!!!
3 . Zwischenspiel
4 . Reinterpreting Confusing Lyrics To Popular Songs
5 . Interoperable Intertrigo
6 . Piles For Miles
7 . Psychic Recapitulation
8 . The Virtuous Relapse
9 . The Caveman Connection
10 . The Lyrics Are Simultaneously About How The Song Starts And What the Lyrics Are About
11 . The Disambiguated Clone
12 . Prolegomenon
13 . These Words Make Up The Lyrics Of The Song
14 . What's So Woman About That Woman
音楽的というより精神的にハモる3人+ホーントリオの交感の妙
メアリー・ハルヴァーソンのことを知ったのは、仙川のカフェでの多田雅範氏との会話中だった。私が口にした「変拍子オルタナ・ロック」という一言に、多田氏が「そう言えば・・」とハルヴァーソンのトリオのことを話してくれたのだ。それまで彼女のことはまったく知らなかったが、ダウンビートの人気投票で3位ということよりも、ジャズ界のメガネ美人という言葉に心が惹かれた。
多田氏が送ってくれた音源をさっそく聴いてみた。「ん?あれれ?何?何だかこれ・・・凄いじゃん!」と心が震えた。ハルヴァーソンの不安定な歌声とギタリストなのにソロを一切弾かないストイックさにも痺れたが、肝は何と言ってもケヴィン・シェイ Kevin Sheaのドラムである。スウィングとかグルーヴとか呼ぶ以前に、ビートがダンスというより「盆踊り」しているのだ。
個人的に好きなドラマーの筆頭に、ロックバンド「ザ・フー」のキース・ムーンがいる。ホテルの部屋を滅茶苦茶にしたり、ロールスロイスでプールに飛び込んだりと伝説的な奇行で有名だが、本業のドラミングも超個性的。リズム・キープを無視して、ドラムを破壊するほどの派手なアクションで叩き捲り、ヴォーカリストより目立つ「リード・ドラム」スタイルは、文字通りのドラム革命として、音楽シーンに大きな影響を与えた。
果たしてケヴィン・シェイがキース・ムーンの影響を受けたかどうかは分からないが、あまりに奔放な叩きっぷりには、Moon(月)のラテン名Lunaが意味する「狂気」の血が流れているのは間違いない。その狂気はPierrot Lunaire(月に憑かれたピエロ)の如きこのトリオのサウンドの根本を成している。ひとつのジャンルやスタイルに収まらない気まぐれな音楽性、タイトルからして偏執狂的な歌の世界、音楽的というより精神的にハモる3人+ホーントリオの交感の妙。
ハルヴァーソンの日本での知名度がどの程度なのかは知らないが、大胆にもピープル Peopleと名乗り、人々の狂気を明ら様にするこのトリオを紹介する際には、ジャズ・ギタリストという肩書を語る必要はなかろう。
冒頭の会話で触れた変拍子オルタナ・ロックとは、ディアフーフ Deerhoofという日本人女性がヴォーカルを務めるアメリカのロックバンドのこと。ノイズロック/脱臼ロックと呼ばれながら、あくまでポップ性のある音世界を追求するスタイルは、ピープルにも驚くほど当てはまる。鹿(deer)と人(people)の想定外のリエゾンに驚くが、それよりも、初対面にも拘らずアイドルの魅力を力説する筆者との会話の中で、何故多田氏の頭にこのバンドが浮かんだのか、摩訶不思議である。それこそ音楽がもたらす奇跡的な以心伝心に違いない。音楽の魔法に深く感謝する次第である。
(2014年9月某日記 剛田武)旧JazzTokyo Five by Fiveより
People - Likelihood of Bang
ピーポーの
ピーポーによる
ピーポーのための
変態ロック
Deerhoof - Fresh Born - Juan's Basement